- Amazon.co.jp ・本 (310ページ)
- / ISBN・EAN: 9784037269005
感想・レビュー・書評
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5年前イスラム過激派の仕掛けた同時多発テロによる爆発で、双子の姉の一人ローズが犠牲になった。当時5歳だったジェイミーには彼女との記憶がほとんどなかったが、ショックを受けた両親は不仲になり、父親は酒に逃げ、母親は家を出てしまう。彼は姉とともに父親の仕事のために湖水地方に引っ越してきたが、新しい学校で隣の席にいたのはイスラム教徒の少女だった。
10歳の少年が、喪失から立ち直れない家族を受け入れ、異教徒に対する自他の先入観から抜け出す過程を、彼の目を通して描く。
*******ここからはネタバレ*******
テロによる家族の突然の死と、それを引き金にした両親の別れ、仕事もせずに悲しみと酒に浸る父親、転校先の学校でのいじめ……、10歳の少年には重すぎるものを背負いながら、それでも淡々と物語るジェイミーが痛々しすぎます。
もう一人の姉ジャスが、15歳の誕生日から両親の望むローズっぽい恰好をやめました。彼女は身代わり役から自分自身になることを決意したのですが、両親はそれにも衝撃を受けて、悲しみます。気持ちはわかるけど、自分勝手じゃないかと憤りを感じるのです。
クラスメートのイスラム教徒スーニャがジェイミーの唯一の友人となりますが、それまで彼女に友達がいなかったのは、彼女がイスラム教徒だから?現実にイギリスの学校ではそんなことは珍しくないのでしょうか?それは、テロがあったから?その前から?移民が増えたから?
あとがきででも、そういうところに触れて欲しかったと思いました。
家族を捨てたとはいえ、母親には最後まで子どもたちへの愛を示してほしかった一母親としては、彼女の子どもたちへの無関心さがとても辛い。
物語の中では、スーニャの言動に突飛で理解しがたいところもあります。いきなり「わたしはスパイーダ―ガールなの」って言ったり、おそろいの指輪を彼にプレゼントしたり、最後には彼の前でヒジャーブを外してしまったり……。
主人公は10歳。語り口も幼いので、難易度的には高学年からでもいいと思いますが、母親の不倫とか出てくるから中学生以上におススメしたいです。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
ロンドン同時多発テロで姉を亡くしたジェイミー。それ以来、家族の心はバラバラになってしまう。みんなのヒーロー、スパイダーマンはジェイミーのところへやってくるのでしょうか…? お兄ちゃん、お姉ちゃんがいる人におすすめな本です。
(YA担当/95line) -
とても難しい題材なのに、全ての年代の人が読み、各々で沢山のことを考えられるんだろうなぁと思う本だった。
私もずっと色んな事を考えながら読み進めれた。
重い内容なはずなのに、ジェイミーのおとぼけ感に笑わされたり、ほっこりしたり。
大切なことが沢山書かれている本に出会えた。
今こそ、全世界で読まれないといけない本だと思う。
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宗教の問題って難しいことだと思うけど、こうやって小さい子も読めるように物語にするのは素晴らしいことだと思った。
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ジャスの双子の姉ローズはテロに巻き込まれて死んだ。5年たっても立ち直れない両親はとうとう離婚してしまい、ジャスとぼくは父さんと一緒に田舎に引っ越してきた。父さんは酒を飲み、イスラム教徒を呪い、ローズの遺灰を手元から離さない。そんな中、新しい学校でいじめられたぼくを助けてくれたのは、イスラム教徒の少女スーニャだった。
暗いテーマなのに、主人公ジェイミーのユーモアセンスが、全体を明るくしてくれる。「大人が正しいとは限らない」と悟って、本当に大切なことをみつける子どもたちは、いつも明日を見ている。大人をも照らす光となって。 -
ロンドンに住むジェイミーの姉・ローズは、テロによる自爆事件でバラバラになって亡くなった。両親とローズの双子のジャスミン(ジャス)は、なかなかショックから抜け出せないまま5年がたった。でもジェイミーは事件があった時はまだ5歳だったので、あまり実感がない。
ローズは、半分は母親の希望でお墓に埋葬され、半分は父親の希望で火葬されツボに入れられ居間に置かれている。毎年命日になると海に散骨しようとするが、父親は散骨することができずにいる。父親は酒びたりになり、仕事もあまりしなくなってしまった。母親は、遺族サポートグループで出会った男性と一緒になるために家を出てしまう。父親はジャスとジェイミーを連れて、田舎町へ引っ越すことにする。田舎にはイスラム教徒は住んでいないだろうと思って…。
ところが、ジェイミーは転校したクラスでヒジャーブを着けたイスラムの少女スーニャの隣の席になってしまった。
新しい学校になじめないジェイミーは、だんだんとスーニャと仲良くなっていくのだが…。
テロという現代的な事件をきっかけにしているが、社会にある様々な偏見や差別に子どもの生活の中から向き合っていく。そして、失ったものへの悲しみにどう立ち向かっていくのか、重いテーマながらも、ジェイミーのユニークな視線に引っ張られて読み進められる。
でも、周りの大人の対処がどうなんだろうと思うところも多々ある。