オール・アメリカン・ボーイズ

  • 偕成社
4.51
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本棚登録 : 163
レビュー : 19
  • Amazon.co.jp ・本 (362ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784037269807

作品紹介・あらすじ

黒人の少年ラシャドはポテトチップスを買いにいった店で万引きを疑われ、白人の警官から激しい暴行を受け入院する。それを目撃した白人の少年クインは、その警官が友人の兄のポールだと気づき現場から逃げた。事件の動画がテレビやネットで拡散し、ラシャドとクインが通う高校では抗議のデモが計画され、2人はそれぞれの人間関係の中で、揺れ動く自分の心をみつめることになる。
事件の当日からデモが行われるまでの8日間を、黒人作家のレノルズが黒人の少年ラシャドの視点から、白人作家のカイリーが白人の少年クインの視点から交互に描き、まさにアメリカの今を映し出す感動作。
ブラック・ライブズ・マター(BLM)の運動が大きなうねりとなっている全米で30万部を突破。
ウォルター・ディーン・マイヤーズ賞、アメリア・エリザベス・ウォールデン賞受賞作。ニューヨークタイムズ・ベストセラー。

感想・レビュー・書評

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  • ジョージ・フロイドさんが「I can’t bleathe」という言葉を残して亡くなった事件を発端に大きなうねりとなったBLM運動。
    日本でも多くのメディアで取り上げられているが、アメリカの黒人高校生の身に似たようなことが起こったら…という視点で描かれている物語。

    他の方のレビューでも書かれているが、黒人の高校生ラシャドの物語を黒人作家であるジェイソン・レノルズが、白人の高校生クインの物語を白人作家であるブレンダン・カイリーが書いている。
    同じ地域に住み、同じ学校に通い、共通の友人が開くパーティーに参加しながらも、それぞれが属するコミュニティは全く違う。

    ラシャドは、絵が好きないたってまじめな高校生。
    友だちと会う約束の前に、立ち寄った雑貨店で、リュックの中の財布を探そうとしゃがんだところに、運悪く白人の年配の女性が転んで倒れ掛かる。
    それを見た店員が、ラシャドに万引きの疑いをかけ、話も聞かず通報してしまう。

    駆け付けた警官は、店の前でラシャドに必要以上の暴力をふるい、ラシャドは意識を失い病院へ運ばれる。
    その現場をたまたま通りがかった、同じ高校に通うクインが見てしまう。暴力をふるっていた警官は、幼なじみグッゾの兄、ポールだった。
    アフガニスタンで戦死した軍人だった父親は、地域の英雄。しかし父親の不在はクインの家族にとっては厳しい現実。そんな日々で、クインに兄のように接し、バスケットボールを教えてくれたのもまたポールだった。


    本のタイトルにもなっている「オール・アメリカン・ボーイズ」とは、「全くアメリカ人らしい(白人の)少年たち」という意味合いで使われるそうだ。
    我々外国人は、目にする情報だけで白人、黒人をカテゴライズしがちで、それも大きな問題であるが、アメリカの人々自体が、この言葉に象徴される呪縛にとらわれていることも、読み進むにしたがって見えてくる。


    物語の終盤で、クインもラシャドも自分の行動を決める時が来る。
    心に残ったフレーズを以下にあげるが、彼らの行動を変えるキーワードにもなっている。


    「言うって、なにを?しっかり、しゃんと顔をあげなさいって?それを言ってどうなるのって、あなたを見たときに思ったわ。人間以下の扱いをされた人には、なによりもまず人間として接してあげなくちゃって。気持ちを楽にしてあげたかったら、たんに被害者扱いしちゃいけないわ。あなたはあなた、ラシャド・バトラーでしょう。なによりもまず」p.276フィッツジェラルドさんの言葉。

    忠誠や誠実が大事なんじゃない。なにを信じて、なにを守るために立ち上がるかってことが大切なんだ。p.305クインの言葉

    "不正が行われているときに中立であろうとするならば、抑圧する側に立つのを選んだことになる"p.330南アフリカで人種差別と闘ったデズモンド・ツツの言葉を引用して。

  • オール・アメリカン・ボーイズ | ジェイソン・レノルズ、ブレンダン・カイリー/著 中野怜奈/訳 | 9784037269807|NetGalley
    https://www.netgalley.jp/catalog/book/201455

    イラストレーター 岡野賢介 | kensuke okano Illustration
    http://kensukeokano.com/

    オール・アメリカン・ボーイズ | 偕成社 | 児童書出版社
    https://www.kaiseisha.co.jp/books/9784037269807

  • 抵抗しない、口答えしない、黙って手を上げたまま、言われたとおりにする

    これが、黒人が安全でいるために、親から子へ伝えられる言葉だと書かれていました。こんなことを教えないといけないなんて・・・


    黒人の子が万引きを疑われ、居合わせた警官に拘束された。
    身動きができない状態で殴られ、地面に叩きつけられ、重傷を負う。

    その子は、チームメイトの友だち。
    殴った警官は、頼りにしてる優しい近所のお兄さん。

    なんでこんなことに!?
    人種差別を感じていなかった子どもたちの間でも混乱が広がり・・・


    黒人の子ラシャドのパートを黒人作家が
    白人の子クインのパートを白人作家が描くことで
    それぞれの家庭の実態まで伝わってきます。
    幾度となく繰り返されるこの問題を、肌で感じられるストーリーでした。

  • 黒人作家レノルズと白人作家カイリーが、それぞれラシャドとクインというふたりの主人公の視点から交互に話をすすめていく作品。原著は2015年。BLMのきっかけになる事件が全米各地で起きたころに書かれた作品で、レノルズに関していえば、2019年に日本で出版された『エレベーター』や『ゴースト』よりも先に書かれている。

    物語自体は、ラシャドが身に覚えのない万引きを疑われて警官から過度な暴行を受け、それを目撃していた白人少年クインは、その警官がふだんから親切にしてもらっている近所のお兄さんだと知って思い悩み……という、ある意味図式的な展開。でも、少年たちふたりと、その学校や友人たちの状況がとてもリアルに描きこまれているので、こういうことは至る所で起きているのだろうと納得できた。

    ラシャドの父さんの告白が衝撃。隠しつづけて、息子達にたいしては強くて正しい父親を演じてきたことを、かなぐりすてたのは勇気ある行動だった。そしてラシャドと看護師さんや、病院の売店のおばさん、そして例の白人の女の人とのやりとりやなんかは、ジェイソン・レノルズの面目躍如で、こういうふうに頼れる大人が登場するのはとてもいい。

    警官のポールに関していえば、「いい人」でも暴力的になりうるし、それが「正義」だと信じこんでいれば、いくらでも正当化しようとするというのが、こわい。ここ最近のニュースやSNSで、そういう人たちをたくさん見るし。どうすりゃいいんだろうね。

  • 多様な国家アメリカについて、日本でも黒人差別が話題になることはしばしばあるが、身近な事として捉えることが出来ない人が大半ではないだろうか。日本においても差別というものは存在していると思うが、この本に書かれている通り、何もしない事も差別の一端を担っているかもしれないという事を理解すべき。
    一人一人がなせる事は小さな事かもしれないが、小さな事の積み重ねが大きなうねりとなり、世の中を変えるなんてことはざらにある。
    この世に生を受けたからには、何かを成す事を求められていると思う。歴史に名を残すほどの偉業を成し遂げるというのとは違っても、家族、友人、仲間に支えられ、時には支え、お互いに力を合わせてよりよい人生を送る事が出来ると幸せだ。
    異国の物語としてではなく、日本も人口減少社会を迎える中、コロナにより少し沈静化しているが多様な人々が一緒の空間で過ごすことが増えるだろう。また働き方改革という名の下、ワーケーションという言葉も浸透しつつある中、異国で暮らすというスタイルを選ぶ人も増えるだろう。そんな方々は差別を受ける側に回るかもしれない。受容性の高い、相手を受け入れる度量のある人間に少しでも近付けるように心掛けることで、世の中の前向きな変化に貢献できるといいな。
    より良い世の中への一歩としてこの本を紹介したいです。

  • 読んでみて興味をもつには、最適かと。

  • BLMの根っこにあるアメリカの社会背景がずっしりと心に残った。黒人の少年の目線だけでなく、白人の少年の視点からもそれぞれ一人称で描かれた小説。引き込まれて一気に読了。

  • この本を読んでみて、黒人差別によってアメリカで起こっていること/きたことが、見えてきました。
    人種差別が、わたしにとってあまり身近ではなかったので、知れるきっかけになり、この本に出会えて良かったと思っています。

    わたしは、1787年に制定された合衆国憲法に、白人一人に対して黒人は5分の3人とかぞえるとする条項があった、というのがかなりショッキングでした。
    憲法で差別が正当化されていたというのも、
    5分の3人っていうのも。

    でも、人種に関係なく、それに抗議する声もちゃんとあったというのが救いに思える。

    黒人に対する差別だけじゃなくて、他にも様々な差別が存在しているように思うので、
    差別せず加担しないで生きられたらいいな。
    20210419

  • 状況や心情の丁寧な描写に説得力のある作品。
    人種問題そのものよりも、人種問題の存在する世界で人の心や姿勢がいかにあるべきかを問われた印象。
    物事は事実と真実に基づいて判断されるべきで、その点において、当事者でない遠い異国の者が差別を語るのは細心の注意が必要だと思うので、沈黙や中立は差別主義者への荷担と言うのはやや乱暴で一概に同意できない。
    が、公権力の過剰暴力には断固反対できるので、デモがそこに焦点を絞った点は個人的な読後感として良かった。
    問題の根はウチソト意識にあると思う。
    「信じる」ことの危うさを感じる。

  • 差別がある社会に生きる「わたしたち」を浮き彫りにしていく小説。黒人と白人という二人の視点人物から、同じ街・同じ高校・同じ事件を描いていく1週間という構成が効いています。アメリカの地方都市が舞台ですが、日本にも重なる物語。

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