石を抱くエイリアン

著者 :
  • 偕成社
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本棚登録 : 142
感想 : 23
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  • Amazon.co.jp ・本 (190ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784037271800

感想・レビュー・書評

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  • 「姉さん」と呼ばれる主人公と仲間たちの中学3年の2010年から2011年3月。震災に向けて移ろっていく当時の世相が懐かしい。鉱物好きの高浜が、いい味を出している。

  •  一つ目に読んだ、トーキョー・ラブストーリーが気に入ったので、続きで同じ作者様の本を読んでみました。

     ただ、こっちのほうがテーマが重かった。
     2000年生まれの子供たちのことを書いてほしい、と言われた作者さんが、作者さんなりにその年代の子供たちのことを見つめ、書いていたのだけれど、その年代に生まれた子供たちには避けられない問題が一つあって、そのことが彼女たちの物語を少し暗いものにしてしまった。

     私はゆるやかで穏やかなハッピーエンドを希望していたのだけれど、そんなものがなくて、少し重くて切ない話になってしまった。
     悲恋ではない。
     なぜならそれは「恋」ではないから。
     アンハッピーエンドでもない。
     なぜならそれは「エンド」じゃないから。

     物語としては終わってしまうかもしれないけど、そこから先を考えるのは読者の自由。

     そう思わないとやってられないような話ではありました。
     ただし、登場人物はみんな優しいので嫌な後味の話ではありませんでした。

  • 中学三年生の市子と同級生たちの話なのだが、青春小説かと思い読み始めたらまったく違っていた。日本人が今考えなければいけない、原子力がテーマだった。それと同時に世界中で起きた、大きな事件についても触れられている。大人にこそ読んで欲しい。

  • 濱野さんは反原発派というのはわかりました。
    小説の体だが、読者への問いかなあ。
    2014年3月初版。二〇一〇年―二〇一一年三月、わたしたちは中学三年生だった。
    この文面から察知すればよかったですが、現実世界の出来事を盛り込んだ話。つまり何が起こるかもうお分かりでしょう。
    ノンフィクション風だが、テーマ先行の感が拭えない。
    その年の青少年らをリアルタイムに追っているかのようで、振り返って書いたものには違いない。
    特に原子力政策に疑問を持つところなど、5年前に展開させていれば見方も変わったのですが。
    激情的にせず、しかし無難に閉じなかったところは評価。

  • 正しく、思春期やさぐれモードだなあ、と

  • 原発のことについて書かれているのは珍しいと思った。

  • 2010年、中3女子のあたしには、希望が(物理的に)ない。なぜなら、辞書から「希望」の項目を切り取ったから(電子辞書は断念)
    なんか笑えます。
    やけにリアルとリンクしてるなぁと思ったら、これも伏線だったのかなぁ、と。
    夢だの恋だの、文化祭だの。いろいろあって、最後は、あの3.11へ…
    最後は不覚にも泣きました。
    …うん、希望はあるよ。

  • 1995年に生まれ、2011年に15歳になった子供たちが主人公。
    それだけで、なんとなくラストが予想できてしまう。

    物語の中では、主人公・八乙女市子。通称姉さん(アネさんなのかネエさんなのかのルビ表記はなし)は、自分たちが生まれた時、阪神淡路大震災や地下鉄サリン事件のあった年に生まれ、今がこういうものが流行っていて、こんなニュースがあってというような事をよく語る。茨城県の、まあまあ田舎の中学校が舞台。
    姉さんは、同級生たちみたいに夢や希望が語れない。まだ、自分が何をしたいかもわからない。
    いつも寝癖がトレードマークの高浜偉男(よしお)は、日本一の鉱物学者になりたいと言う。理系には賢くて、マイペースで(でも絶妙に運が悪い)偉男が、突然、クラスで姉さんに告白。
    変なヤツくらいにしか思ってなかった偉男だけど、同じ班で、一緒に行動するうちに、偉男の良い所もわかってくる。


    希望が無いから、家にある辞書から希望の項目を切り取った姉さん。そんなことしなきゃいけないほど、現実の毎日がひどいわけでもなく、中学生で将来が見えないなんて当たり前とも思うけど・・・
    2011・3の後に、それでも、希望を持って良かった。

  • 1995年生まれの子たちを主人公にして3.11を絡めた話。あの時、彼らはちょうど中学校の卒業式を終えたばかり。そして1995年といえば、阪神大震災にサリン事件。日本のマイナスの節目とともに歩んできた感のある子らだ。
    舞台となるのは茨城県内のある地方都市。特に代わり映えのない中学3年生、八乙女市子の日常がゆるやかに綴られる。話題の中心は、自分の誕生日にいきなり市子に告白した偉生。鉱物学者になるのが夢だという彼は変わり者というか、クラスの中でどうしても浮いてしまうタイプの生真面目な男子で、市子は付き合う気などまるでないのだが、イベントやクラスの行事を通して友情のようなものを感じ始める。実際、とても良い奴なのだ。しかし、彼は大地震の時、運悪く祖父母を訪ねて福島県内の海岸沿いにいて、その後消息はない。市子は偉生がいなくなったという事実をどうにか受け止めて高校生として新生活を始める。という話。
    最初は夢も希望も持たなかった市子が震災のあとに希望らしきものを見つけるというオチなのだが、なんだか薄っぺらいなぁ……という印象はある。
    あと、文体がなんというか、母が娘の真似をして書いてみたけど、昭和の言葉遣いがなかなか抜けません、という空気を醸していて、読んでいると微妙な気分になる。例えば、最初の方に市子が家中の辞書から「希望」の項目を切り取ってしまうエピソードがあるが、そういう行為をして自虐的な喜びに浸ること自体、昭和40年代生まれっぽいわーと感じてしまうわけで。
    実は我が家に1995年生まれの娘がいて、彼女らが中学生のときにまとっていた空気はもう少し違っていたように感じたし、自分が「UFO」の振り付けを必死で覚えた世代なので、文体の無理っぽさはどうしても気になってしまうのだった。

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著者プロフィール

熊本県に生まれ、東京に育つ。『フュージョン』でJBBY賞、『トーキョー・クロスロード』で坪田譲治文学賞を受賞。主な作品に『トーキョー・クロスロード』(第25回坪田穣治文学賞受賞)、『この川のむこうに君がいる』『with you』(ともに青少年読書感想文全国コンクール課題図書選出)、『石を抱くエイリアン』『南河国物語』『Mガールズ』ほか、「レガッタ! 」シリーズ、「ことづて屋」シリーズなどがある。

「2023年 『金曜日のあたしたち』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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