考えたことなかった

著者 :
  • 偕成社
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  • Amazon.co.jp ・本 (160ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784037273903

作品紹介・あらすじ

ある日、ネコに声をかけられた。
「わたしは、未来のおまえなのにょー。」
このままだと、おれの将来、たいへんなことになるらしい。

いったい、どうして?

知らないうちにさせられてる競争。
「ふつう」は男子がおごるもの?
おばあちゃんがなんでもやってくれる祖父母の家の「居心地の良さ」。

感想・レビュー・書評

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  • 「いいたいことがあります!」の続編というか、兄妹につながっていた。
    今回は、陽菜子の兄である颯太が気づいたこと。

    母が働き始め、妹に家事もやるべきだと言われ、勉強も部活もあって忙しいのに…と思っていた颯太。

    祖父母の家へ行く途中に、野良ネコに告げられた未来の自分の惨めな最後。
    気になりながら過ごすうち、祖父母の家での横柄な祖父の姿を見て思い感じたこと。
    そのあとその野良ネコに颯太の最後じゃなくて祖父のことだったと聞かされて…。

    自分の行動を振り返りながらなんとか祖父にも思いを伝える颯太。

    変わろうと思えば変われるってこと。
    それはいくつになっても同じ。

    男だから家事はしなくていいと思って育ってきた世代には身につまされる思いだろう。
    男だからこうとか、女だからこうとか…という決めつけは今では通用しないと思う。


    ここのところ、図書館でYAコーナーに人の動きがなく誰も借りていないようなので児童書を読むことが増えた。
    中学、高校ともなると読書よりも勉強や部活などで忙しいので仕方ないのかもしれない…。
    そういえば自分も確かに10代の頃は、あまり読んでなかったな。

    今まで手に取ることもなかったけれど時代とともに内容も変わってきてるんだなぁと感じた。
    文字も大きくてサクッと読めるので、たまにはいいかもしれない。

    「目からうろこが落ちる」と言いたい。

  • Netgalleyにて読了。

    本作『考えたことなかった』は私立中学に通う2年生の颯太が主人公。
    妹の陽菜子が主人公になっている『いいたいことがあります!』と対になっているようだが、残念ながら陽菜子の物語はまだ読んでいない。

    同じ価値観で育てられたはずであっても、兄と妹、男子と女子で扱われ方が違ってしまう。
    学校でいくら男女平等を教えても、家庭内にジェンダーギャップがはびこっていれば日本のジェンダーギャップ指数はそう簡単に好転することはないだろう。
    そういった現実を、三世代の実生活にファンタジー要素も加えて描くことで、児童にもハードルを下げて自分事としてとらえやすいストーリーとなっている。

    魚住直子さんの作品では『園芸少年』が好きなのだが、本作は決められたテーマがあって書かれたのかな?という固さが若干ある気がする。

  • 女の本屋 > わたしのイチオシ > 魚住直子作 西村ツチカ絵『考えたことなかった』 投稿者◆佐川知子(偕成社編集部) | ウィメンズアクションネットワーク Women's Action Network
    https://wan.or.jp/article/show/10286#gsc.tab=0

    考えたことなかった | 偕成社 | 児童書出版社
    https://www.kaiseisha.co.jp/books/9784037273903

  • 男だから、女だから。
    古い価値観を何の疑問もなく受け入れるのではなく、少し考えてみれば、世界は広がるし、物事はスムーズに動く…かもしれない。頭カチカチになる前にこういう考え方を学んだ方がいいのかも。

  • 言われてみればそうかも、、と感じました。
    でも、この本の内容が全て正しいとは感じなかったです。少しモヤモヤとしました

  • 主に家事労働におけるジェンダーバイアスを扱った、啓蒙的な児童文学。前作『いいたいことがあります!』(2018)の主人公:陽菜子(小6)の兄:颯太(中2)を今度は主人公として、男子側の目線からの、いわゆる「有害な男性性 toxic masculinity」への "気づき" を等身大かつプチ・ファンタジーな物語のなかで描く。
    (※わたしは前作を読んでいません)

    ファンタジーエンタメとしてのどんでん返しのギミックが逆『すずめの戸締まり』でウケた(双方のネタバレ) 人語が使える猫が出てくるし……

    > あれっ、と颯太は思った。前に「しくみ」について考えた気がする。なんだったっけ。えっと、そうだ、競争だ。「サル山のサル」と先生はいうけど、なんでも結局、競争するしくみになっているじゃないか、と思ったんだ。
    > 「なんでも結局、競争するしくみ」と「男は仕事だけたくさんやって、女が家のことをやるしくみ」って関係があるのかな。(p.124)

    うおおおお 『家父長制と資本制』! 上野千鶴子! マルクス主義フェミニズム!!
    単にジェンダーバイアス・家父長制の話に終わらずに資本主義との関係まで扱うとは思っていなかったのでテンション上がった。まぁでも「男らしさ」の呪縛からの解放という観点では絶対に必要なことだよな。

    >「あと、男のひとが仕事だけをたくさんやって、女のひとが家のことや子どものことをやるしくみと、なんでも競争になっているしくみも、なにか関係があるかもって思ったよ。さっきのがんばる、の話に近いけど、ひとつしか価値がない感じが似てる気がするんだ。これはまだ考え中だけど。」(p.160)

    「ひとつしか価値がない感じ」か…… なるほど…… このあたりは自分もまだまだ不勉強なのでちゃんと学びたい。

    > 「針って結局、短い棒じゃん? それに穴があいてて、糸を通して使うでしょ。単純な道具なのにおもしろくない?」(p.134)

    ここ生殖の暗喩? 資本主義と男性中心主義の関係だけでなく、今度は男性中心主義と異性愛中心主義の関係についても取り上げてほしいですね〜(上野千鶴子の次は竹村和子だ!)
    でも結局わたしは異性愛規範を内面化しているので颯太と原さんの同い年・別学の優等生同士の関係を応援したくなってしまいます。


    >「わたし、ひとつ気がつくと、ぱっと視界がひらけた感じがするの。その瞬間、正しいことがぜんぶわかった気がする。でもあとで考えると、ちがうんだよね。ひとつ気がついても、それでぜんぶわかったわけじゃないの。
    > ほら、なにかがきっかけになって急にわかることを『目からうろこが落ちる』っていうでしょ。でも、わたしのうろこは一枚じゃなくて、何枚も何枚も貼りついてる。だから、うろこが一枚落ちても、まだたくさんあるから、これからもいろいろあると思うの。」(pp.139-140)

    ここがいちばん良かった。そうだよなぁ。
    これはこの本のような啓発・教育コンテンツそのものへの批評でもある。つまり、「今のあなたは間違っている。これが正しいことなんだ。だからこの"正しい答え"を学びなさい」というような、1つの正解・正義を押し付けて、それを了解すれば "終わる" ものではなく、まさに、たくさんのうろこを一枚一枚剥がしていくように──本のページを一枚一枚繰っていくように──漸次的で自己内省的に「考えたことなかった」ことを考えて、その都度学んでいく、まさに家事のような日常的な営みこそが真に伝えるべきことである。……いい啓蒙フィクションだなぁ〜〜


    野球部の優秀な後輩:岩田くんとのエピソードも良くて泣きそうになった。
    「いつもすごくがんばっているひと」という表現の二面性・皮肉性をさらにもう一回ひっくり返してポジティブに肯定する流れが鮮やかだった。岩田くん出来た後輩すぎてちょっと引くけど……

    > 「いやいや、おれも投げられるようにがんばるから。」
    > そういいながら、どんなにがんばっても岩田に勝てないかもしれない、と頭のすみで思った。
    > だけど、競争することがいちばん大事なことじゃないかもしれない。競争はおもしろいときもあるけど、でも競争に勝つことだけが唯一の価値じゃない。
    > それより、前の自分は気がつかなかったことに気がつくことのほうが大事かもしれない。
    > となると、がんばるのは、勝つためじゃなくて、気がつかなかったことに気がつくためだ。
    > ちょっとだけ、わかった気がする。
    >「よし、いくぞ。」
    > 颯太は岩田を置いて、全速力で走り出した。(pp.147-148)

    「がんばるのは、勝つためじゃなくて、気がつかなかったことに気がつくため」 いい言葉や……
    そうして最後に岩田くんを追い抜いていくのが、「競争」のためではなく「気がつかなかったことに気がつく」ための姿として肯定されるのが感動的。

    ・まとめ
    じぶんの好みでいえば、タイムトラベル的な建て付け(「未来」の自分や家族の姿を知った特権的な状態で、「こうならないために頑張れ」と「現在」の人物に一方的に教え諭す構図)には忌避感を覚えるところもあるが、とはいえ、よく出来たジェンダー教育児童小説だと思う。
    親や祖父母などの「大人」が主人公である「子ども」に教え諭す構図は児童文学では基本的に成立しにくい(そんなお話どんな子どもが読みたいと思う?)し、そうしたジャンル論の必然性と、本作の扱う父権制というテーマからの要請(権力者が立場の弱いものを抑圧してはいけない)が偶然にもうまいこと重なっているので、そうした土台のうえで「啓発」ものをやるためには、本作のように「自分が自分に教え諭す」=「自分で気づく」という個人に閉じたコミュニケーションの構図をとる必要があった、というのはわかるので文句を言うほどではないが……。

    女の子を主人公にした前作『いいたいことがあります!』は実際に読書好きの小学生女子に人気らしい(母親談)けど、それは「なんで女のじぶんだけ家事の手伝いをさせられなきゃいけないの……」という積極的に共感しやすい事柄について扱ってくれているから、という面も少なからずあると思う。それに対して本巻は、男子・男性にとってある意味では「目を逸らしたい」事柄について扱っているので、前作のように今度は読書好きの男子小学生が進んで楽しく読めるのか……?という思いは正直ある。べつに男子だけじゃなく、こっちも女子が読んでいくことも大切だとは思うけど。
    そこは司書および学校図書館教育の腕の見せ所か。がんばれ!!!

  • 「いいたいことがあります!」の続巻。
    前巻では。学校が遠い、部活があるなどのの事情でお手伝いをさせられなかった兄が主人公となる。物語は初めから突然、「にょい」となき、言葉を喋るネコに出会うところから始まる。届け物に行った祖父母の家のことや、部活でレギュラーを脅かされる新人が出現したり、同級生の女子との会話から、男女の役割の差や、気付かぬうちに決めつけていることに気づいていく。猫の不思議さはあまり気にならず、あ、ファンタジーだったのか?と思った。4年生くらいから勧められそう。

  • 題名がキャッチー。何を考えたことないんだろう?ってとこから気になった。
    内容は堅苦しく言うと、男の役割と女の役割の固定観念を打破しようってことかな?でもそれだけじゃなくて、男とか女とか関係なく思い込みはキケンだってことも教えてくれている。
    おじいちゃんが、孤独死する前に変わってくれてよかった。
    こういう話を子どもが読むと、聡い子は教訓めいてるなーとか思うのかしら?これを自分も考える切欠になるといいなと思った。

  • 男の仕事、女の仕事、それぞれの役割分担。でもそんな常識おかしいと考えるきっかけをくれる本。中学生から。

  • 「にょい」
    中学2年生の颯太はネコに声をかけられた

    「わたしは、未来のおまえなのにょー。」
    このままだと将来たいへんなことになるので、若いころの自分に忠告しにきたのだという

    「なんで颯太くんがわたしの分まで払うの?」
    ジュースをおごろうとしたら気を悪くした女の子

    「もし岩田が入ったら、おれ、ベンチに入れなくなるよ。」
    実力主義の野球部のレギュラー争い

    「おまえはそんなことをしなくていいよ。」
    家事をしなくてもいい祖父母の家

    ──そもそもそういうしくみになっているじゃないか。

    「なんでも結局、競争するしくみ」
    「男は仕事だけたくさんやって、女が家のことをやるしくみ」
    どこか似てる気がするんだけど……

    〈ジェンダーバイアスと、どこかでつながりあった社会のしくみに気づいて考えはじめる男の子の物語。〉──カバー袖の紹介文

    中学受験を半年後にひかえた妹の陽菜子の視点で語る『いいたいことがあります!』(2018年)もあわせて読むと、世の中が立体的に見えてくる

    狂言回しのしゃべるネコにベーソスを感じる中高年にも、2022年10月刊

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著者プロフィール

1966年生まれ。広島大学教育学部心理学科卒業。『非・バランス』で第36回講談社児童文学新人賞を受賞しデビュー。『Two Trains』で第57回小学館児童出版文化賞、『園芸少年』で第50回日本児童文学者協会賞を受賞。作品に『いいたいことがあります!』『超・ハーモニー』『クマのあたりまえ』『だいじょうぶくん』などがある。

「2022年 『考えたことなかった』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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