蒙古の波 (白狐魔記 2)

著者 :
  • 偕成社
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感想 : 37
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  • Amazon.co.jp ・本 (235ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784037442200

感想・レビュー・書評

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  • 白狐魔記(しらこまき)、第二巻。

    修行により人に化けることができるようになった狐の白狐魔丸(しらこままる)は、源平の戦いの後、長い眠りから覚めると、時は鎌倉時代になっていた。
    北条時宗が執権となり、今にも元の大軍が押し寄せようとしている…。

    『白狐魔記』は一巻ごとの読み切りなので単冊で読めると聞いていたが、いざ『蒙古の波』を手にとって見ると、一巻である『源平の風』のあれやこれやが出てくるので、どう考えても巻順に読む方がいい。話は一巻ごとの読み切りではあるが、全く繋がっていないわけではないので、先に後の巻を読んでしまうと盛大なネタバレになってしまう。というわけで、白狐魔丸が事あるごとに佐藤忠信のことを思い返している様にしんみりした。八十五年の月日が経っていても、眠っていた白孤魔丸にしてみれば、ほんの数ヶ月前の出来事なのだ。
    『源平の風』では、白狐魔丸が妖狐となるまでに前半の多くが割かれていたので、それで義経らとの邂逅部分が少なかったのかと思ったのだが、白狐魔丸がただの狐でなくなってしまった二巻あっても、彼が人間とガッツリ苦楽を共にするというお話ではないようだ。狐の目から見た人間の来し方を、掻い摘みながら、時に他人事のように、時に感情移入しながら見ていく様は面白い。
    白狐魔丸が度々人間の考えや行動に疑問を持ったり、「武士など嫌いだ」と思ったりする姿に共感が持てる。
    歴史の当事者としての視点ではないという部分は面白くもあり、描きにくくもあるだろう。白狐魔丸が竹崎季長の戦場での様子を見るために、行ったり来たりして先回りする様は、作者も苦労したのでは?などと想像すると面白い。

    以下、多少ネタバレです。
    今回は、市谷小平太との出会い、ブルテ・チョノとの出会い、竹崎季長との出会いと話が分散している印象も受けた。元寇の描写は、さほど描かれていないにしてもむごく、実際の元の領土拡大がそのような酷いものだったことを考えても、義経像と照らし合せることには違和感があるが、途中で解き明かされる物語の「繋がっている」感は気持ちが良い。この物語を手に取った時、「数ある歴史的出来事の中で、なんで元寇?」と思ったが、「だからか!」と謎が解けた気になった。
    ブルテ・チョノは結局なんだったのか?
    竹崎季長は、日本史で名前を覚えただけの存在だったが、この物語では始終エネルギッシュでどこかファニーな人材であった。
    雅姫の物語は、この後どうなったかも含めて、スピンオフとして読んでみたいものだ。

    『蒙古の波』は物語としては一巻に比べると少し散逸な印象を受けたが、この物語で描かれたことも、もしかしたら三巻以降に繋がっているのかもしれないと思うととてもワクワクする。仙人についても、今後もっと描かれるだろうか?
    続刊に期待。

  • ここにきてなぜ元寇だったのか?
    と不思議だったけど、
    きちんとつながりが説明されていて、なるほど納得。

    狐さんが相変わらず、真面目で、修行好きで、
    とても好ましい。
    武士なんてくだらない。
    という狐さんの言葉がとても重たい。
    なんのために戦うのか。
    何故家来は死に、主人だけが生き延びるのか。

    にしても、元寇といえば「神風」だけど、
    あれを狐さんの力によるものとするとは、
    めちゃくちゃ面白い。


    ただ、あちこちが複線なのか登場人物や出来事が
    散らばりすぎだなあという印象。
    伏線が回収されるのを楽しみに次に行きます。

    • nejidonさん
      ゆいちゃんさん、はじめまして♪
      フォローして下さりありがとうございます。
      司書さんをなさっているんですね。
      児童書を読まれている様子、...
      ゆいちゃんさん、はじめまして♪
      フォローして下さりありがとうございます。
      司書さんをなさっているんですね。
      児童書を読まれている様子、なんだか嬉しいです。
      今年は少しずつサトクリフを読もうと予定しています。
      年末に自伝の「思い出の青い丘」を読んで非常に良かったものですから。
      読書について楽しいお話が出来たら嬉しいです。
      どうぞよろしくお願いします(*´▽`*)
      2021/01/15
    • ゆいちゃんさん
      nejidonさん

      はじめまして。
      コメントありがとうございます!とてもうれしいです。
      今年は改めて児童文学を読んでいこうと思っているので...
      nejidonさん

      はじめまして。
      コメントありがとうございます!とてもうれしいです。
      今年は改めて児童文学を読んでいこうと思っているので、ぜひおすすめを教えてくださーい!
      nejidonさんの本棚を参考にさせてもらうと思ってフォローさせていただきました。

      サトクリフ!自伝読んだことないです。
      私も自伝から読んでみようかな。
      すてきな情報ありがとうございました♡
      2021/01/16
    • nejidonさん
      ゆいちゃんさん、お返事をありがとうございます!
      児童文学は楽しみが大きいですね。私も大好きです。
      お勧めを言えるほど読んでもいないのです...
      ゆいちゃんさん、お返事をありがとうございます!
      児童文学は楽しみが大きいですね。私も大好きです。
      お勧めを言えるほど読んでもいないのですが・・・
      ゆいちゃんさんのお好みもあるでしょうし。
      カニグズバーグなどいかがでしょうか?
      でもでも、お好きじゃなければすぐやめて下さって構いませんからね。
      そうそう、サトクリフを読んでいくというテもありですね♪
      こちらこそ、お勧めがありましたら教えていただきたいです!
      2021/01/17
  • 何故武士は主君のために死なないといけないのか、仲良くなった武将は主人のために死ぬ。義経だけ生き残ったと知り理不尽におもう。多分これがテーマで最期に知るような気もするので楽しみである。

  • 読みやすく面白い。この世界観が好きです。

  • 読書会のお題は「鎌倉時代」
    今年は大河ドラマ関連で盛り上がっていますね

    しかし興味ある本が見つからない…
    検索かけて思い付いた!
    知ってる本がある(^o^)それは児童書ジャンル
    やったー!これで乗り切ろう

    このシリーズを読んだのは少し前 再読です
    児童書にしては珍しい歴史ものでおそらくあんまり読まれてない気がするけど面白いと思うよ?
    フィクションでファンタジーなんです
    人間ではないものからの目線で語られる事柄はじんわり心に残ります

    サクセスストーリーになりがちな戦国の世に
    人間はどうして戦うのかと問いかけるテーマ
    今の時代も変わらないかもしれない

    読書会で語ったならば先輩メンバーさんの興味を引いたみたいで嬉しかったです
    今後も自分のわかる範囲での紹介をしていきたい

    北条時宗は嫌なやつ扱い
    日蓮が天の気を変えてしまう!
    雅姫つねひめ

    時輔ときすけに仕える小平太

    フビライ・ハン
    チンギス・ハンー義経説がここにも!
    竹崎季長すえなが

  • もうこの軍勢が日本に攻めてきて、鎌倉武士が守ろうとする話だった。しらこまが、あちこち旅をして、いろんな人と出会うのがおもしろい。
    義経が出てきたことと、狼が義経の知り合いだったことにおどろいた。
    義経が生き延びて大陸にわたっていたってことはいいけど、しらこまと同じで、ぼくも、家来の命と引きかえにしたのが少しいやだ。弁慶と一緒に戦った方がよかったと思う。
    仙人はいつ帰ってくるのかな。やりたくないのに、もうこの船をしずめて、たくさんの人を殺しちゃったのはつらかったと思う。かわいそう。
    竹崎季長が、白こま丸がきつねだって見破ったのがすごい。(小5)

  • このシリーズにハマっています。

    元寇って、日本史で出て来たな、嵐が日本をまもってくれたんだっけ、くらいしか覚えていませんでしたが、
    この小説で出てくる竹崎季長のエピソードで、みるみる日本史の中での印象的な出来事になりました。

  • 今回は元寇のお話。それはともかく、前巻からあれだけ寝続けるのはさすがに寝過ごしガチ勢すぎませんか?休日を丸々一日寝て終えたときの罪悪感は相当なものなのに全く動じないのは聡すぎる…あと、健脚すぎ。そして、相変わらず、修行が大好き。
    新キャラやら物語を貫く設定みたいなのが出てきて壮大なお話になりそうな、そんな予感をさせる巻でした。そして相変わらずキツネさんが可愛くて好きになった。

  • 白孤魔記の2巻目
    源平の戦いの後に眠りについた白孤魔丸
    85年の長い眠りから目覚めたところから始まる

    仲良くなった武士の遺言を果たすため
    日本を旅してまわるなんて、いい奴だなー

    どんどん力をつけていくのに
    その力に溺れずにいるのは偉いと思う

    次巻も楽しみ

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著者プロフィール

1952年、東京都生まれ。中央大学大学院文学研究科修了。1986年、『ルドルフとイッパイアッテナ』で講談社児童文学新人賞受賞、同作でデビュー。1988年、『ルドルフともだちひとりだち』で野間児童文芸新人賞受賞。1991年、路傍の石幼少年文学賞受賞。2013年、『ルドルフとスノーホワイト』で野間児童文芸賞受賞。「どうわがいっぱい」シリーズの作品に、「もぐら」シリーズ、「ペンギン」シリーズなどがある。

「2022年 『がっこうのおばけずかん シールブック 』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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