りかさん

著者 :
  • 偕成社
3.71
  • (76)
  • (95)
  • (152)
  • (8)
  • (1)
本棚登録 : 663
感想 : 72
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (225ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784037444204

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 段飾りの雛人形が印象的な表紙。

    主人公のようこは、自分と同世代くらいだろうか。
    1970年前後に生まれた女の子が、小学生の頃のお話だ。

    いわゆるリカちゃん人形が欲しかったのに、おばあちゃんがくれたのは、日本人形のりかさん。
    ちょっとガッカリしたけれど、このりかさん、なんとようこと意思疎通ができるのだ。
    雛祭りの頃、大きな蔵のある登美子ちゃんのおうちに、りかさんを連れて遊びに行くと、登美子ちゃんの段飾りの雛人形や古いお人形達の声が聞こえてくる…。
    人形たちとその持ち主たちとの思い出が、人形の中に宿っている、ようこは、りかさんを通して人形たちの声を聞き、そこにある障りを解決していく。


    りかさんをようこに託したおばあちゃんは、手を出さず、その子の力を信じて見守るところが、「西の魔女が死んだ」のおばあちゃんを思い起こさせる。

    「こういうお話大好き」というレビューがおおいのだが、私は『人形モノ』がとても苦手なのだ。
    小学生の頃、
    美内すずえさんの「妖鬼妃伝」(1981年「なかよし」に連載)
    や、
    あしべゆうほさんの「悪魔ディモスの花嫁」シリーズ(プリンセスコミック)
    を、怖いもの見たさで読んだトラウマが未だに残っていて、落ち着いて読めない。
    あの絵柄が脳内に満ちて、背筋がゾクゾクしてしまう。

    そして、「リカちゃん」じゃなく、「りかさん」を渡されて、ちょっとガッカリですむようこちゃん、いい子すぎやしませんか⁉︎
    「リカちゃん」が売り切れで、誕生日に「ハルミちゃん」を渡され、かなりブーたれたかつての私からすると、とんでもなく良い子である…その時点で感情移入できず…。

    それは置いといて。この作品、表紙の雰囲気とは違い、心あたたまるお話というわけではないと思うのだ。

    かつては日米友好の証として日本に来た西洋人形が、太平洋戦争のせいで酷い仕打ちにあう物語もあったりするのだから…実際にこういう事があったのだろう。
    戦争とは、人間の心をこうも変えてしまうのか…と
    ゾクゾクの理由は、トラウマのせいだけではなかったはず。
    2022.1.14

    • 図書館あきよしうたさん
      ロニコさん、こんにちは。

      とても不思議な作品を読まれたんですね。

      梨木香歩さんは私の好きな作家さんなので、あー、こんな作品も書かれていた...
      ロニコさん、こんにちは。

      とても不思議な作品を読まれたんですね。

      梨木香歩さんは私の好きな作家さんなので、あー、こんな作品も書かれていたのかぁ、読まなきゃと思いました。

      リカちゃんが動いても怖いけど、りかさんも迫力ありそうですね(笑)。

      ハルミちゃんは、私記憶になかったので、ググってみました。リカちゃんそっくりなんですね~。でも、ウチの娘もそうでしたが、お名前が「リカちゃん」じゃないとだめなんですよね。
      ブーたれたことまで覚えてられるなんて、ロニコさんかわいいです(笑)。

      最近かなり遅読になってしまったのですが、ロニコさんのレビューを読んだら、なんとか時間を作って読んでみたいと思いました。
      2022/01/15
    • ロニコさん
      あきよしうたさん、こんばんは^_^

      コメントをありがとうございます♪

      梨木香歩さんの本は、いくつか読んでおりますが、「家守綺譚」なども大...
      あきよしうたさん、こんばんは^_^

      コメントをありがとうございます♪

      梨木香歩さんの本は、いくつか読んでおりますが、「家守綺譚」なども大好きです。
      あの世界観は好きなのですが、人形モノはどうも苦手で…いえ、とても良いお話なのですよ。

      あきよしうたさんも、是非機会があれば読んでみてください。
      ページ数としては、短いお話です。
      2022/01/15
  • 1999年初版から20年、再読。 
    何回読んでも、大好きな世界。
    ようことおばあちゃんが感じとる世界がとても好き。こんな世界を描ける梨木香歩さん、凄いです。
    りかさんを通して人形たちのざわめき、想いをたくさん聴いた。
    人形はそれぞれの想いを抱えて、そこにいる。
    アメリカから親善大使として贈られてきたアビゲイルも、いっぱいの愛を蓄えられて、その愛を届けるために来たのに…。その悲しみを引き受けて守り続けている汐汲み人形も憐れ。
    人は業が深いから人形を必要とした、と同時に人形を慈しむ気持ちも持ち合わせている。
    人形の使命は人間の感情の濁りを吸い取ることだという。
    「濁り」この言葉は、ようことおばあちゃんが桜染めをしている時にもでてくる。
    植物染料は媒染をかけてようやく色をだす。するとどうしてもアク(濁り)が出る。そのアクを含んだ色を「少し、悲しげ」だと著す。
    一つのものを他から見極めようとすると、そこに差別が起きる。この差別にも澄んだものと濁りのあるものがある。澄んだ差別をして、ものごとに区別をつけて行かなくてはならない。自分の濁りを押し付けない、とおばあちゃんはようこに言う。
    とても大切なことを伝えている。
    濁りやアクを「少し、悲しげ」と受け入れ、そこから澄んだ方に向かう、それは梨木香歩さんの変わらない志向なのだろう。
    「媒染を変えたら、出てくる物語も変わるだろう。ようこちゃんは、媒染剤みたいな人になれるよ」 なんて善い言葉でしょう。

  • ひな祭りの前に『人形の家』を読んでいたころに知人から勧められ、人形やぬいぐるみと人との関係に興味が尽きないところ。

    ゴッテンの人形の家 に出てくる人形たちはエミリーとシャーロットの家に暮らしていたけど、りかさんは外からやってきます。

    おばあちゃんから電話で、今度のひな祭りに何が欲しい?と聞かれたようこは、リカちゃん人形が欲しいと答えます。
    おばあちゃんは、

    「お人形のりかちゃんなら気立てのいい子だ、雛祭りにはぴったりだ…よし。」

    怪しいですよね気立てがいいとか…おばあちゃん、知ってるのかな…
    で、やって来たのは半紙に『りかちゃん』と筆で書かれて古い箱に入れられた、真っ黒な髪の市松人形だったのです!

    あーあーあー。と人ごとなので面白く読んでいたんですが、
    このりかちゃんにもちゃんと思いがあるのです。人形の家のトチーのように、願うのとはちょっと違いますが、思いのようなものが、特定の人に伝わるのです。その夜のりかのメランコリックな感情の粒で翌朝目覚めたようこは、いつもと違う部屋の感覚、草原の朝の気持ちよさを感じて、箱に入れたままのりかちゃんを出して声をかけてみる。

    おばあちゃんからのりかちゃんの説明書を読むと、ようこがりかを幸せにする責任があるという。毎朝着替えさせ、髪をとかして、箱膳をしつらえて一緒に朝夕の食事をする…など。

    ある日りかちゃんからいつもと違う空気を感じ、ようこはりかちゃんと話せるようになる。ようこの家のお雛様たちがもめているのだ。
    この時のようこのあまり驚かない感じもとってもおもしろい。

    この家のお雛様はりっぱなものだけど、お内裏様に問題があったのです。
    ここも、大河ドラマ『光る君へ』を観てる人にはおおお!ってなるエピソード。

    りかちゃんからようこはりかさんと呼んでくださらない?と言われるように、とても頼りになるお人形。どうやらおばあちゃんともこうして話してきたようだ。

    それからりかさんとおばあちゃんの助けをかりて、この家のお内裏様、
    お友だちの登美子ちゃんの家の人形たちの問題にもりかさんがかかわってゆく。
    登美子ちゃんのおじい様は相当な人形の収集家で、後半の物語では戦争中の出来事まで遡り、ようこのおばあちゃんの助けを得て人形たちを幸せにしてゆく。
    怨霊とも違った、優しい人形と人とのつながりの世界が描かれます。

    ようことおばあちゃんの関係がどんどん深まって素敵なものになってゆくのは
    『西の魔女が死んだ』にも通ずるものがありました。
    おばあちゃんは、ようこが大人のように「ちょっとはなしがあって」なんて言って、大人ぶってかわいいこと。と思っても、そういうことは口にださないセンスがある。(ようこ談)

    人形に興味があるあるのかないのか、登美子ちゃんのセリフにもはっとさせられる。
    人形たちが昨日と違う場所にいた時、夜中の大冒険から元の場所に戻れず落ちたふりをしている。そういうことを察してからは、人形だけでなく世の中の物はみんなふりしてるだけなのかなぁって思い始めたと言うのです。
    なんと哲学的な少女たち!
    ご飯はご飯のふり、わたしはわたしのふり、お母さんはおかあさんのふり…

    これもまた、児童文学を超えた、大人のお人形を愛したひとたちに響く物語とおもうのです。

  • 近所の博物館で催されていた「ひいな展」に寄せてもらった。
    その時の 御殿飾りの雛、享保雛、立ち雛…
    を 解説付きで見させてもらった
    その時の 解説をしてくださった方が
    「これらのお雛様を飾るとき、その雛人形たちがいっぱい話しかけてくださるのです」
    というお話しを聞いた

    その話しを行きつけの図書館の司書さんにお話ししたところ
    ぜひ この 一冊を と 手渡された

    ファンタジーは事実をなぞる
    出逢て良かった 一冊です

    • chineseplumさん
      人形って本当に不思議ですね。
      この本とは素敵な出あい方をなさったのですね。図書館の司書の方も素敵な方ですね。
      人形って本当に不思議ですね。
      この本とは素敵な出あい方をなさったのですね。図書館の司書の方も素敵な方ですね。
      2013/05/15
  • 児童書なので、1時間くらいで読める短さ。でももっとたくさんのりかさんの話を読んでみたかったなあ。
    この人の本をたくさん読んでるわけじゃないけど、なんかふわふわしてとらえどころがないっていうか、なんかちょっと現実から不思議にブレてるイメージがあった。すごくオリジナルな世界なので、没頭するというよりは鑑賞する感じ。
    でもこれは今まで読んだこの人の本より、作品の世界との距離が近かったような気がする。すんなり入り込めた。
    りかさんがすごく素敵だし、人形たちの存在感がすごい。不気味だけど、ユニークで愛らしくもあり。
    アビゲイルの話は泣いてしまった。
    「人形たちは可愛がられることが使命なの」っていう言葉にうるる。こどもたちもそのためにうまれてくるのだ。

  • 再読。
    思えば、私が読んだ梨木香歩2作目。そして、確実に梨木ファンになったきっかけの本でした。ああ、出会えてよかった。

  • ようこは自分の部屋に戻り、箱を見た。お人形のおいてあった下には、着替えが幾組かたたんであり、さらにその下のほうにもう一つ、箱のようなものが入っている。開けると、和紙にくるまれた、小さな食器がいくつか、出てきた。「説明書」と書かれた封筒も出てきた。中には便せんに、おばあちゃんの字で、つぎのようなことが書いてあった。『ようこちゃん、りかは縁あって、ようこちゃんにもらわれることになりました。りかは、元の持ち主の私がいうのもなんですが、とてもいいお人形です。それはりかの今までの持ち主たちが、りかを大事に慈しんできたからです。ようこちゃんにも、りかを幸せにしてあげる責任があります。』…人形を幸せにする?…どういうことだろう、ってようこは思った。どういうふうに?

  • 図書館から借りて読む。
    懐かしい雰囲気のお話で、始終安心して読むことができた。なんでも知っていて頼れるおばあちゃんと、優しくて気立ての良いお姉ちゃんが欲しくなるようなお話。
    少し難しい言葉遣いもあるが、娘が小学4年生くらいになったら勧めてあげたい。

  • 思わずほったらかしてあった人形の髪の毛を梳かしてしまいました(笑)。世界のすべてに命があるように感じる子どもの頃。その感じを残したまま大人になる人もいるのですね。後篇、人形が語る秘密の話に涙が止まりませんでした。平和の大切さってわかる人とわからない人がいるのでしょうか。平和を大切に思う人の小さな声が世の中を変えるといいのに。

  • 人形の使命とさまざまな思いを描く。しっとりとして品のあるファンタジー。

全72件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1959年生まれ。小説作品に『西の魔女が死んだ 梨木香歩作品集』『丹生都比売 梨木香歩作品集』『裏庭』『沼地のある森を抜けて』『家守綺譚』『冬虫夏草』『ピスタチオ』『海うそ』『f植物園の巣穴』『椿宿の辺りに』など。エッセイに『春になったら莓を摘みに』『水辺にて』『エストニア紀行』『鳥と雲と薬草袋』『やがて満ちてくる光の』など。他に『岸辺のヤービ』『ヤービの深い秋』がある。

「2020年 『風と双眼鏡、膝掛け毛布』 で使われていた紹介文から引用しています。」

梨木香歩の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×