彼方の光

  • 偕成社
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  • Amazon.co.jp ・本 (301ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784037447908

作品紹介・あらすじ

 少年と老人は、無事カナダにたどりつけるのか――最初から最後まで、はらはらしどおしのストーリーで、一気に読んでしまいます。
 ハリソンにむりやり連れてこられた少年サミュエル。最初のうちは、おびえているばかりで、足手まといになっていますが、しだいにハリソンの体を案じるまでになり、ハリソンが病に倒れてからは、必死に守ろうとします。
 ハリソンも魅力的なキャラクターで、怒りっぽくて、サミュエルがあれこれ尋ねると、「うるさい。寝てろ」などというのですが、奴隷として生まれた自分たちの人生について、自分の過去について、ぽつりぽつりと語ります。ときに皮肉っぽく、ときに感情的に語るハリソンの言葉には、自分たちも人間であるという思いがこもっています。
 この作品には、地下鉄道と称される黒人奴隷の逃亡に手を貸した人々に助けられながら命がけで逃げた奴隷の思いが丁寧に描かれています。
 さまざまな資料から得た実話を下敷きにしているため、リアリティーがあり、感動的です。
 人の命について、人が平等に生きるということについて、深く考えさせられる作品です。

感想・レビュー・書評

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  • 「砂糖の世界史」を読んだ後、知らなきゃと思っていた、奴隷制度のこと。
    選書用に回ってきた本の内容が、より詳細な逃亡の内容に、最後まで苦しい気持ちのまま、読み進めた。
    どうして、アメリカにアフリカの人がいるのか?ってあまり疑問に思わなかった。「風と共に去りぬ」を観ても、そこにひっかかったりはしなかった。また、最近のアメリカで起こった、警察官が黒人を必要以上に痛めつけたりすることにも、浅い怒りしかなかった。

    自由を求めて、何代に渡って苦しんだサミュエルやハリソンの先祖。

    自分もいっしょになって隠れ、逃亡し、生きた心地がしなかった。

    自分がその時、その立場だったり、また白人だったら、どうしただろうか。

    深く考えさせられた。

  •  11歳、ケンタッキー、地下鉄道

  • 逃亡奴隷は彼方の光(カナダ)を目指す。実話ではないが、史実に基づいて書かれた物語。黒人の人権について学ぶにはよい本。

  • 奴隷が自由になるまでの物語。
    籠から飛び出してすぐは心が前に進めず、自由が何かもわからなかった少年が最後に自由民らしく堂々と振る舞うことによって自由民となる。
    一人の努力だけでは成長できず、多くの人と、さまざまな方法での協力が必要となる。
    まるで暗がりの中でさらに目隠しをされて進むかのような、自由への道のり。
    光は本当にあるのだと信じられるような旅。

  • ちょっと物足りなかった。ラストシーンはとても良かった。

  • 児童書として出ており、子ども(小学校高学年以上)が読めるような文章、内容ではあるが、大人の鑑賞にも堪える作品。
    BLM運動を理解するには米国の黒人奴隷の歴史を知る必要がある。ハリエット・タブマンの伝記『自由への道』や絵本『あなたがもし奴隷だったら…』などとともに読むといいと思う。

    フィクションではあるが、史実に基づいて書かれているので、黒人奴隷の扱いがいかにひどいものであったか、逃亡した奴隷はどうやってカナダまでたどり着いたか、地下鉄道のメンバーはどんな人たちであったかなどが物語とともによくわかるようになっている。
    しかし史実を扱うだけならアメリカ史の本を読んだっていいわけで、物語のダイナミズムが味わえなければ意味がない。
    その点もこの物語は非常にうまく書いてあって、飽きさせない。
    奴隷として辛酸をなめつくした老人ハリソンと、まだ人生の入り口に立ったばかりの少年サミュエル。地下鉄道に携わる人たちも純粋に黒人を助けたいと思っている人ばかりではない。人物描写の的確さが、この物語を支えている。

    大人としては映画「それでも夜は明ける」やコルソン・ホワイトヘッドの『地下鉄道』はじめ多数の名作があるので、それらとつい比べてしまうけれど、これは子どもに読ませられる、大人も読める、そして物語として面白いという点で大いに評価できると思う。

  • 逃亡奴隷の話。
    すごく細かく描かれていてリアルだった。
    ハリソンとサミュエルの関係や、最後の最後に捕まってしまう場面など、驚いたりドキドキしたりした。

  • ケンタッキーの奴隷少年のサミュエルは、母親をおぼえていない。まだ小さかった頃に他に売られていったのだ。世話をしてくれているリリーと旦那様の家の雑用をしている。サミュエルが旦那様の皿を割ってしまった日の夜、馬小屋の仕事をしている年老いた奴隷のハリソンが、サミュエルを連れて脱走をする。カナダへ逃げて自由になるのだと言う。ハリソンは、なぜ急に脱走をしようと言うのか、なぜサミュエルを連れていくのか。二人の自由への逃亡が始まる。

    逃亡奴隷を逃がしてくれる地下鉄道という組織(システム?)を信じて、カナダを目指す。途中ハリソンが病気になったり、白人に捕まったりしながらもカナダへと向かう。きっと成功すると思いながらも、ハラハラさせられるし、なんと言っても大きな賭けだ。後半、様々な理由が明らかになっていくのだが、一気に読ませる。短い章だてになっているのも読みやすいのかも。

  • 黒人の少年サミュエルは生まれた時から当たり前のように白人の奴隷として生きてきた。自身の世話をしてくれていた年老いたハリソンとカナダへの逃亡をはかる。実話をもとにされている。奴隷、人種差別、昔の話のようで未だに差別はある。きちんと知っておきたい事実。

  • 黒人の少年サミュエルは、物心ついた時から白人のお屋敷で働く奴隷でした。
    ある朝早く、父親代わりのハリソンに、北への逃亡を告げられ屋敷を抜け出します。「自由」が何かもわからないサミュエルにとって、逃亡の先にあるものが実感できないまま、命がけの道を進みます。
    実話に基づいて描かれたこの作品には、誰かの気持ちひとつで握りつぶされてしまう黒人の命や、彼らの逃亡に手を貸す人びとの心の内が、とても丁寧に描かれています。
     人種間の溝が再び大きくなっているこの時代だからこそ、歴史を知ることが大切なのでしょう。

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著者プロフィール

シェリー・ピアソル:アメリカのオハイオ州在住。ウースター大学で文学士号、ジョンキャロル大学で教育修士号を取得。教師や歴史博物館の学芸員を経て作家になる。邦訳作に『彼方の光』(偕成社)がある。

「2021年 『空から見える、あの子の心』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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