ジェニーの肖像 (偕成社文庫4028)

制作 : 中山 正美  山室 静 
  • 偕成社 (1977年4月30日発売)
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  • Amazon.co.jp ・本 (228ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784038502804

ジェニーの肖像 (偕成社文庫4028)の感想・レビュー・書評

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  • 恩田陸の『ライオンハート』より

    直訳的な訳が多少気になったがあとがきによると
    それは訳者の意図によるものらしい
    (それでもやはり所々首をひねるところはあった)

    情景の描写が非常に美しく、ストーリーもとても素敵で
    どんどん引き込まれた。
    登場人物たちのセリフや考え方に、少し読むのを止めて考えさせられるようなこともしばしばあった。
    是非、原文で読んでみたいと思う。

  •  最初の頁をひらく。「飢えというものには、ものを食べないための飢えよりもひどいのがある。そして、それがわたしにとりついていた飢えであった」。
     つづく箇所で、画家にとって冬や貧乏よりも悩ましいのは自分の思い描いていることを思い描いているとおりに描けないことだ、といったことが語られる。表現欲と表現力との落差をなげく芸術家、という図はいつの時代の書き手も思いうかべそうなライトモティーフだ。
     そんな売れない画家が冬のある日、ひとりのなぞめいた少女と出会う。これもまた、ともすればありがちな展開か。言葉をひとしきりかわしたのち、青年は別れ際につげられる。
    「あなたに、わたしが大きくなるまで待っていてほしいの」
     少女がひとりの女になるころには青年はもはや青年をとおりこしてしまっている、というのが通常の時間感覚というものだ。おなじ時の流れにいるかぎり、青年はそのままでは少女の成長を待てない。若さを失ったあとでしか女とふたたび出会うことはできないはずだ。
     だが、もし待てるとしたら? ふたりの生きている時間の流速がことなっていて、かけあしで大人になっていく彼女が彼に追いつくとしたら?
    「わたし、いそぐわ。いそがなくちゃならないわね」

     ふと気づくとひきこまれている、いつのまにか読み手をまきこんでいる。ありがちなと形容したのはこちらの誤りだった、と読み終えたあとになって気づかされるとき、では『ジェニーの肖像』と題されたこの小説の推進力は、作者のロバート・ネイサンによってどのようにテクストに織りこまれていたのだろうか。
     人物造形の妙、暮らしや季節のあざやかな描きわけ、知的に裁断された簡潔な文体。そうした要素のどれもが読む楽しみではあったのだけど、それらすべてをさしおいて魅惑的だったのはやはり、〈時間のすれちがい〉とでも呼べそうな着想の独自さだ。絵描きの青年と幻想的な少女という、ともすればただの陳腐なロマンスに堕しかねない組合せが、作家の想像力が発明した〈時間の超越〉という第三項によってむすばれることで、ある奇妙な美しさをおびはじめる。
    「わたしがどこにいようと、どうでもいいじゃない? あなたはわたしのところへは、こられないんですもの。わたしだけが、あなたのところへこられるのよ」
     もちろん追いつくことには追いぬくことが、あらかじめふくまれている。ただし、それをはかない悲劇ととるか、美しい宿命ととるかは好みの問題として不問に付しておく。

  • 恩田陸『ライオンハート』から。

  • イッツ・ア・「誤訳の殿堂」(苦笑)
    1ページに10箇所は誤訳があるというおそるべき本ですが、内容の美しさを考えると、やはり一度は目を通しておきたい……かな。
    貧乏な絵描きの「私」と、時の流れを超越した「運命の少女」ジェニー。2人の純粋で、それがゆえに悲劇的な恋の結末にはひたすら涙でした。
    北星堂書店さんから出版されているものはまだ手に入るので、よろしければぜひ。

  • 何度か芝居にもなった本書。若い画家の前に現れた女の子は、世界とは違う時間の流れにいて……。これ以上はネタばれになるので口をつぐみますが、おすすめですよー。

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