チェロの木

著者 :
  • 偕成社
4.37
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本棚登録 : 276
レビュー : 43
  • Amazon.co.jp ・本 (40ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784039639301

作品紹介・あらすじ

木は、見たり聞いたりしてきたことを、歌ったのかもしれない、楽器になって-森の木を育てていた祖父、楽器職人の父、そして音楽にめざめる少年。大きな季節のめぐりの中で、つらなっていくいのちの詩。小学校中学年から。

感想・レビュー・書評

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  • 美しい、美しい一冊。装丁も内容も絵も、そのメッセージも、何もかも美しい。
    いせひでこさんは、阪神淡路大震災の復興支援【1000人のチェロコンサート】に参加され、その体験から絵本【1000の風1000のチェロ】を発表。
    その後、十数年来の創作モチーフである「木と人」を、本作品で結実させた、と後書きにある。
    そうか、それでいせさんの深い思いがどのページからもじーんと伝わってくるのだ。

    【やまばとの子どもが鳴いているね・・】で始まる一ページ目には、チェロのケースの中で寝る赤ちゃんの姿。
    「ぐぜり」と「さえずり」の違いを、今の地に住んでから知った私は、ここでほっと胸を撫で下ろす。良かった・・ついて行ける・・

    そんな「ぐぜり」のことを教えてくれたおじいさんは森の木を守り育て、お父さんは楽器作りの職人である。
    その息子である私は、お父さんの作ってくれたチェロを、子どもたちに教えるという道を歩む。
    守り、引継ぎ、伝えていくことの大切さ。
    そこには、多くのひとの技と願いと祈りがあり、つまりそれこそ守り引き継ぎ、伝えていくものなのだ。
    ページを開くたびに、いせさんの描く緑と蒼と群青が流れ出すよう。
    そして、どのページからも音楽があふれてくるような、くらりとするほどの美しさがある。

    【大きな木のような人】を描いた頃は、まだ文章がぎごちない翻訳のようだったが、この作品にはその片鱗も無い。
    感情におぼれない、無駄のない端正な文章。
    いせさん、あなたは心の中でどれほどこの作品が熟するのを待ち続けたことだろう。
    私の心にも確かに届いたメッセージを、今度は身近な誰かに伝えたくなっている。
    長いので読み聞かせには向かないが、高学年くらいからならじゅうぶん受け止められるだろう。
    プレゼントにも最適。
    傍に森があってもなくても、いせさんの世界を味わい、そしてオルグされてみませんか?

    • 8minaさん
      nejidonさん、こんばんは

      はい、しっかりオルグされております。本棚にはグレーシリーズ
      から、関連する柳田さんとのお話も並んでお...
      nejidonさん、こんばんは

      はい、しっかりオルグされております。本棚にはグレーシリーズ
      から、関連する柳田さんとのお話も並んでおります。
      さすがにPROCESSは高くて手がでず、図書館で借りましたが
      手元に欲しい1冊です。長田弘さんの有名な詩”最初の質問”と
      いせさんの絵本は手元で繰り返し読んでいます。
      2014/03/08
    • nejidonさん
      8minaさん、こんにちは♪
      コメントありがとうございます!
      おお、グレーシリーズもすでにお持ちなのですね!
      なんと素敵な本棚なんでし...
      8minaさん、こんにちは♪
      コメントありがとうございます!
      おお、グレーシリーズもすでにお持ちなのですね!
      なんと素敵な本棚なんでしょう。
      そう、確かにPROCESSは高値です!でもこうなったら欲しいですよね。
      絵本は、特にいせさんの本は美しいので、表紙を見えるようにして置きたいものです。
      残念ながら我が家の本棚は、そういった贅沢なディスプレイはできません。
      収納スペースがかなり厳しいのです(笑)

      大量の花粉が飛散していますが、春は確実に近づいていますね。
      少しずつ近づく、そのことによって、長いこと楽しみにしていられます。
      2014/03/10
  • いせひでこさんの絵本には優しさと愛情をすごく感じます。

    この物語はチェロ・ヴァイオリンづくりの一家の話ですが、木と楽器に対する愛情があふれています。おじいさんが育てた森、お父さんが手塩にかけて製作したチェロ、そしてそのチェロを演奏するパブロ(おそらくパブロ・カザルス)、さらにはパブロが教会で演奏するバッハの無伴奏チェロ組曲に聞き入る聴衆、それに心を打たれた少年。一つ一つの場面が、いせさんの色鮮やかで淡い水彩画と共に心に沁みてきます。まるで詩のような美しい文章に、淡く優しい煌びやかな絵、たまらなくうっとりしてしまい、何度でも読み返したくなります。

    これはやはり著者のいせひでこさんの心の中を映し出しているのではないでしょうか。木を慈しむ気持ち、その大切な木が生み出された楽器への愛情があふれかえっているように思います。そしてその楽器に関わる人達、演奏者、指導者、音楽を愛する人達へも向けられる深く愛してやまない優しい気持ちが、美しい絵とまるで詩のような文章からグイグイ伝わってきます。

    私は楽器を演奏することはできないのですが、きっとどんな楽器でも演奏される方でしたら、私以上に心に響くのではないでしょうか。

  • いせひでこさんの作品に接したのは初めてですが、水彩画が何とも言えずいい雰囲気です。
    物語も素敵で心に染みて染みて、とても穏やかな気持ちにさせて貰いました。

    絵本は子供が読むものと決めつけてはいけないですね!
    大人が自分のために読むのにふさわしい作品だと思います。

    こんなに素晴らしい作品に出会えてブクログのレビュアーさんに感謝です。
    いせひでこさんのファンになりました。
    知り合いの司書さんお勧めの「ルリユールおじさん」だけでなく、他の作品も必ず読みます!

  • 6年生の国語、「海の命」の教材末で紹介されている絵本です。

    音楽、というのは不思議なものですね。

    形がないのに、なにかをあらわし、
    すぐに きえてしまうのに
    その存在は、まるで永遠のようにも思えます。

    その理由が、わかったような気がしました。

    楽器は こんな風に、森から生まれて
    自然の営みを、記憶している。

    だから、「ことばではあらわせないこと」も
    表現できるのですね。

    そして演奏する人が、森羅万象の世界と
    こころを共鳴させると、
    パブロさんの演奏のように
    「曲といっしょにどんどん自由になっていく」のでしょう。

    「曲をつくった人がいる。
    それを演奏する人がいる。
    その楽器をつくる人がいる。
    音楽が時間をこえてみんなをつなげていた。」

    大きな視野で 物事を捉えるとき
    今まで気づかなかった、感動に出会うことがあります。

    音の世界の 素晴らしさを、美しい絵と共に 伝えてくれる、一冊です。

  • 本の表紙を開けると、チェロのケースの中で穏やかに眠る赤ん坊の絵が目に留まります。

    少年の祖父は豊かな森を守り、樹を育てます。少年の父親は、祖父が守った森の木を使って、バイオリン、チェロを作る楽器職人でした。そして少年と3代にわたる物語。

    豊かな森の中で、木々の木漏れ日を浴び、小鳥の声を聴きながら、確かな自然の営みの中で少年は成長していきます。

    「森の木は、鳥の声や、自然の声を聴いて大きく育つ。だから楽器は森の声で歌うんだ。」とても感銘したフレーズでした。チェロの音楽をこのような言葉で語ってくれる伊勢さんの絵本に感謝です。

    木と本と音楽、慈しみ育まれる命、伊勢さんの描かれる絵が好きです。

  • とても美しい絵。
    時間をつぶすために立ち寄った図書館で、なんとなく手に取った本だけれど、絵の美しさに惹きこまれた。
    光あふれる、しんと冷えた清浄な森の空気が感じられるような絵本。

    祖父から父へ、父から子どもへ注がれる愛情や、受け継がれていく想いが感じられる。
    眺めるだけでも素敵な絵本。
    いつか、手許に置きたいな。

  • 森の木を育てていた祖父と楽器職人の父。そして、その楽器を奏でる演奏家のパブロさん。絵と文が軽やかに音を奏でて行く。「木は、見たり聞いたりしてきたことを、歌ったのかもしれない、楽器になって」少年は森に抱かれて木が見ていた景色を感じていく。彼が選んだ仕事は子供たちにチェロを教えること。ああ、祖父が育て、父が作り、演奏家が奏でた森の木々の音を子供たちに伝える仕事を選んだのだな。真っ赤に燃える秋の森の絵がすごく好き。

  • 森の木を育てる祖父、その木を使ってバイオリンやチェロを作る父。その二人の元で育てられたわたし。ある日、父が作るチェロを待ち焦がれていたパブロさんと出会う。森が語りかけるようだ、と喜ぶパブロさん。そのパブロさんの演奏会を父と聞きに行くことになり──。
    主人公の少年がチェロと共に育つ様子を描いた物語。「十数年来の創作のモチーフ″木と人″を本作品に結実」(カバー折返し文を引用)させたとのこと。いせひでこさんの世界観が溢れる物語でした。絵も言葉も美しくうっとり。特にお気に入りは、表紙、秋の森、雪が森ごと世界をつつみこむところ、はじめて音を出すところ、奥付の絵です。主人公がパブロさんの演奏会で、チェロに魅了される心境もよく伝わりました。いせひでこさんって、絵だけでなく言葉も魅力的ですよね。切り株の木についての場面は、もうメロメロになりました。文に魅了されつつ頁をめくると、あの見開き。は〜(*^^*)ほんといせひでこさん大好きっ!
    出版社ホームページに、いせひでこさんのメッセージがありました(*^^*) ご興味ある方はぜひ見てみてください。http://www.kaiseisha.co.jp/news/publish/418-20130301.html

  • 本屋で一目惚れして購入した絵本。
    森の生命力の透明で力強い感じや、少年と祖父の、そして少年と父との絆や関わり方が絵の中に滲んでいてうつくしい短編小説をよんだような感覚になった。
    この人の他の絵本も読んでみたい。

  • いせさんの講演会で聞いたが、震災を受けて物語の結末を書きかえたそう。
    優しい色遣いの絵本。
    チェロの作られていく様(特に洗濯物みたいに干しているところなど)が描かれていて、チェロに対する愛が溢れている。
    特に少年が森の中で降ってくる雪をじっと見上げるシーンが印象的で、眺めていると静かな気持ちになる。

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著者プロフィール

1949年北海道生まれ。東京藝術大学卒業。
『マキちゃんの絵日記』で野間児童文型新人賞、『水仙月の四日』で産経児童出版文化賞美術賞、『ルリユールおじさん』(講談社)で講談社出版文化賞絵本賞を受賞。
このほか、おもな作品に『まつり』『大きな木のような人』『あの路』(文・山本けんぞう)(いずれも講談社)、『1000の風1000のチェロ』『チェロの木』(ともに偕成社)、『わたしの木こころの木』(平凡社)など。
また長田弘の詩集『最初の質問』『風のことば 空のことば』(ともに講談社)も手がける。

「2020年 『けんちゃんのもみの木』 で使われていた紹介文から引用しています。」

いせひでこの作品

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