チェロの木

著者 :
  • 偕成社
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本棚登録 : 488
感想 : 79
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  • Amazon.co.jp ・本 (40ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784039639301

作品紹介・あらすじ

木は、見たり聞いたりしてきたことを、歌ったのかもしれない、楽器になって-森の木を育てていた祖父、楽器職人の父、そして音楽にめざめる少年。大きな季節のめぐりの中で、つらなっていくいのちの詩。小学校中学年から。

感想・レビュー・書評

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  • しみじみと、いいお話だった。
    少年のおじいさんが、森の木を育て、お父さんが、その木で、バイオリンやチェロなどの楽器を作る。チェリストのパブロさんは、とうさんに注文して出来上がったチェロを弾いて、「森が語りかけてくるようだ」と、とうさんをだきしめていった。
    教会の演奏会で、そのチェロで、演奏された、バッハの曲は、素晴らしかった。

    パブロさんのバッハは、
    森をわたる風のようだったり、
    川の流れのようだったり、
    祈りのようだったりした。
    ことばではあらわせないことを
    思いおこさせるようだった。
    そんなふうに歌うチェロを、
    とうさんは工房の木の板からつくりだしたのだ。
    曲をつくった人がいる。
    それを演奏する人がいる。
    その楽器をつくる人がいる。
    星がめぐるように、
    音楽が時間をこえてみんなをつなげていた。

    ……文章が詩的で、とても美しい。
    森の中の自然を絵描いた水彩画が、とても、とても美しかった。

    とうさんにつくってもらった少年のチェロは、時をこえて、いまもあたたかい音をだしている。

    、、、素敵な話。読めて良かったです。
    この本は、レビューを読んで、知りました。
    どうもありがとうございました。

    • りまのさん
      大野弘紀さん〜!

      フォローを頂き、嬉しい驚きでした!大野さんのレビューに、どんなに憧れたことでしょう。
      本当にありがとうございます!いせひ...
      大野弘紀さん〜!

      フォローを頂き、嬉しい驚きでした!大野さんのレビューに、どんなに憧れたことでしょう。
      本当にありがとうございます!いせひでこさん、今日はじめて読んだのですが、とても良かったです。ルリユールおじさん 、他のレビュアーさん方が、素晴らしいレビューをなさっているので、短い感想にしましたが、この本も、ぜひ読んで頂きたいです。私は図書館で借りました。読めて良かったです。
      大野さんのレビュー、また読める事、愉しみに待っています♪
      2021/08/07
    • yyさん
      りまのさん

      こんにちは。yyです。
      本棚を拝見していて、このレビューに目が釘付けになりました。

      素敵です☆彡  私も読みます!...
      りまのさん

      こんにちは。yyです。
      本棚を拝見していて、このレビューに目が釘付けになりました。

      素敵です☆彡  私も読みます!
      私、チェロの音色が大好きなのです。
      パブロといえば、
      あの伝説のチェリスト、パブロ・カザルスと同じお名前。

      ブクログって、こんな素敵な発見があって楽しい!
      りまのさん、ありがとうございます。
      2021/09/18
    • りまのさん
      yyさん
      ありがとうございます!
      本当に、コメント頂いて、光栄に 思います。
      チェロの音色は、私も 大好きです。好きすぎて、大人になってから...
      yyさん
      ありがとうございます!
      本当に、コメント頂いて、光栄に 思います。
      チェロの音色は、私も 大好きです。好きすぎて、大人になってから、ほんの少し、習っていたことも、ありました。アルバイトが忙しすぎて、続けることが、できませんでしたが。

      この絵本、私は、図書館で借りて読みました。素晴らしかったです。ぜひ、楽しんで、お読みくださいね (*^^*)
      2021/09/18
  • チェロの木
    2013.03発行。字の大きさは…大。
    絵と文は、いせ ひでこ(伊勢英子)さん。

    お爺さんが育てた森の木を、お父さんがチェロに作り、私が弾いています。
    A3見開きの大きさの絵本に描いています。

    本を開くと、透明な、優しい、力強い、暖かい・・・ぬくもりが、目に飛び込んできます。
    ページを開けて行くと、いせさんの落ち着いた色遣いと、美しい青色が目に入って来ます。
    そして、力強い赤や、緑色が、やさしい薄い緑色が、透き通るような青が、何かを訴えるような青色が、心温まるオレンジ色の夕焼けが、私の胸の中に、す~と・・・入って来ます。
    素晴らしいです。

    ゆっくり2度、3度と絵だけを見ていきます。

    【読後】
    この絵には、広がりがあります。
    無限に広がって行くような、体の内から飛び出て行くようなものを感じます。
    物語を読んで、心温まる、いい一家なんだな・・・読んでいて、心が穏やかに、お爺さんへのぬくもりと、お父さんへの尊敬が、感じ取れる物語です。
    本当に素晴らしいです。
    2020.10.15読了

  • 周囲から沢山の影響を受けて、年を重ねて主人公が最後に選んだ自分の道。
    淡々と優しく進んでいく物語のような絵本でした。

  • 素敵な絵本! 
    表紙を開くと、生まれて間もない命が
    チェロケースの中で眠りについていました。
    静かな森の 楽器工房。

    少年はお父さんが作った できたばかりのチェロを届けに
    パブロさんの家に連れて行ってもらいます。
    「待ったかいがあった。森が語りかけてくるようだ」
    なんて詩的な感謝の言葉でしょう!

    教会で、パブロさんのバッハが歌います。
    《曲を作った人がいる。
    それを演奏する人がいる。
    その楽器を作る人がいる。
    星がめぐるように、
    音楽が時間を超えてみんなをつなげていた》
    このフレーズ、人と時空がつながる感じで、しびれます。

    お父さんが少年に、子ども用のチェロを作ります。
    ニスを塗っては乾かす作業を重ねるお父さん。
    浮かび上がってくる木目を見てお父さんが言います。
    「その木だけが持っている音のかたちなんだ」
    音のかたち…!☆彡 

    そして、絵本の最初のページにあった言葉が甦ります。
    「鳥はああやって、さえずる練習をするんだよ。ぐぜりっていうんだ」
    少年の奏でるチェロは「ぐぜり」から始まったに違いありません。
    ふと、長男に4歳の時に持たせた
    1/8サイズのチェロのことを思い出しました。 

    この絵本の存在は、このブクログで知りました。
    素敵な 時間 と 空気 を、ありがとうございます。

  • 美しい、美しい一冊。装丁も内容も絵も、そのメッセージも、何もかも美しい。
    いせひでこさんは、阪神淡路大震災の復興支援【1000人のチェロコンサート】に参加され、その体験から絵本【1000の風1000のチェロ】を発表。
    その後、十数年来の創作モチーフである「木と人」を、本作品で結実させた、と後書きにある。
    そうか、それでいせさんの深い思いがどのページからもじーんと伝わってくるのだ。

    【やまばとの子どもが鳴いているね・・】で始まる一ページ目には、チェロのケースの中で寝る赤ちゃんの姿。
    「ぐぜり」と「さえずり」の違いを、今の地に住んでから知った私は、ここでほっと胸を撫で下ろす。良かった・・ついて行ける・・

    そんな「ぐぜり」のことを教えてくれたおじいさんは森の木を守り育て、お父さんは楽器作りの職人である。
    その息子である私は、お父さんの作ってくれたチェロを、子どもたちに教えるという道を歩む。
    守り、引継ぎ、伝えていくことの大切さ。
    そこには、多くのひとの技と願いと祈りがあり、つまりそれこそ守り引き継ぎ、伝えていくものなのだ。
    ページを開くたびに、いせさんの描く緑と蒼と群青が流れ出すよう。
    そして、どのページからも音楽があふれてくるような、くらりとするほどの美しさがある。

    【大きな木のような人】を描いた頃は、まだ文章がぎごちない翻訳のようだったが、この作品にはその片鱗も無い。
    感情におぼれない、無駄のない端正な文章。
    いせさん、あなたは心の中でどれほどこの作品が熟するのを待ち続けたことだろう。
    私の心にも確かに届いたメッセージを、今度は身近な誰かに伝えたくなっている。
    長いので読み聞かせには向かないが、高学年くらいからならじゅうぶん受け止められるだろう。
    プレゼントにも最適。
    傍に森があってもなくても、いせさんの世界を味わい、そしてオルグされてみませんか?

    • 8minaさん
      nejidonさん、こんばんは

      はい、しっかりオルグされております。本棚にはグレーシリーズ
      から、関連する柳田さんとのお話も並んでお...
      nejidonさん、こんばんは

      はい、しっかりオルグされております。本棚にはグレーシリーズ
      から、関連する柳田さんとのお話も並んでおります。
      さすがにPROCESSは高くて手がでず、図書館で借りましたが
      手元に欲しい1冊です。長田弘さんの有名な詩”最初の質問”と
      いせさんの絵本は手元で繰り返し読んでいます。
      2014/03/08
    • nejidonさん
      8minaさん、こんにちは♪
      コメントありがとうございます!
      おお、グレーシリーズもすでにお持ちなのですね!
      なんと素敵な本棚なんでし...
      8minaさん、こんにちは♪
      コメントありがとうございます!
      おお、グレーシリーズもすでにお持ちなのですね!
      なんと素敵な本棚なんでしょう。
      そう、確かにPROCESSは高値です!でもこうなったら欲しいですよね。
      絵本は、特にいせさんの本は美しいので、表紙を見えるようにして置きたいものです。
      残念ながら我が家の本棚は、そういった贅沢なディスプレイはできません。
      収納スペースがかなり厳しいのです(笑)

      大量の花粉が飛散していますが、春は確実に近づいていますね。
      少しずつ近づく、そのことによって、長いこと楽しみにしていられます。
      2014/03/10
  • ○絵と言葉とが1つにとけあって、物語を届けてくれる

    語り手がチェロとともに歩いてきた人生を振り返る

    おじいさんとの小さな頃の思い出
    チェロの工房で仕事をしていた父さんの思い出
    はじめてチェリストに出会った日
    森の夏
    父さんの作ったチェロ
    チェロの音色
    森の秋
    森の冬
    クリスマスに間に合わなかったぼくのチェロ

    わたしは今もチェロを弾き続けている

  • 「ルリユールおじさん」を描いた、いせひでこさんの作品。
    あぁ楽器って自然のものから出来てたんだよなぁということを思い出した。
    森で育った木が、ある日切り倒され、板となり、丁寧に削られて、チェロとなる。
    そうやって作られたものは大事にしたいと思う。

    誰かのために作るって、いいなぁと思う。

    そういえば自分は、作った人の顔が見えるもの、が好きだなぁ。

    そして、誰かのために作るのも好きだ。

    水彩画の絵にも引き込まれます。

    読み聞かせで読んでみたい。今はコロナでボランティアも出来ないけど…。

  • 人から人へ、チェロを通して繋がっていく、世界の温かさや人生の素晴らしさを知り、更に元を辿れば自然から繋がっていたことを知り、その途方もない悠久の時に想いを馳せつつ、眠ってしまった主人公。

    素敵な音を奏でるチェロの中には、おそらく、おじいさんが育てた森の木も含まれている。そのチェロには、何百年にも及び、森の木が見たり聞いたりしてきたことを歌っているだろうと思った主人公は、すごく純粋で感受性の強い子かもしれない。

    しかし、人は本来、自然から生まれてきた存在で、そうした想いに至ることは、きわめて当然なことなのではないかと考えると、この絵本で教えてくれることは、すごく大切なものだと思い至る。

    もしかしたら、子供の頃に読んでも、あまりピンとこないかもしれない。木だって、命があり生きていることは、多感な子供時代において、つい忘れがちになりやすい。だが、大人になって読んだ時に、記憶の奥底に眠っていたそれにようやく気付いて、こんな大切なことを伝えようとしていたのだということを知って、感傷に耽る。木の年輪を撫でながら想いを馳せる主人公を見ていると、なんともいえない気持ちが湧き上ってくる。

    いせひでこさんの、滲みがかった水彩画は、人を小さめにして、背景の四季折々の自然の雄大さを表現しており、木漏れ日の差す夏の森や、文字のない冬の森の一枚絵はため息が出るほどの美しさです。

    「マキちゃんのえにっき」で、いせひでこさんも、娘さんの麻木さんもチェロを弾いていたことを知って、その想いの丈が詰まったのであろうと思われる、素晴らしい絵本だと思いました。子供の頃に分からなくても、大人になるまで大切に取っておきましょう。いつかきっと、その大切さ、素晴らしさに気付くときがやってくるはず。

  • いせひでこさんの作品に接したのは初めてですが、水彩画が何とも言えずいい雰囲気です。
    物語も素敵で心に染みて染みて、とても穏やかな気持ちにさせて貰いました。

    絵本は子供が読むものと決めつけてはいけないですね!
    大人が自分のために読むのにふさわしい作品だと思います。

    こんなに素晴らしい作品に出会えてブクログのレビュアーさんに感謝です。
    いせひでこさんのファンになりました。
    知り合いの司書さんお勧めの「ルリユールおじさん」だけでなく、他の作品も必ず読みます!

  • 弦楽器の中でチェロがいちばん好きだ。チェロの音はお腹にほどよく響く。ヴァイオリンは頭に響く、ヴィオラは胸に響く、チェロはお腹に響く。
    もう一度人間に生まれ変われなかったら困るので、生きているうちにチェロを弾きたいと思っている。

    弦楽器職人の父、チェリストのパブロさん、そして人間よりも長い時を生きる森の木々。そこから人間の手によって削り出されるチェロ。

    本書は木の物語であると同時に、時の物語でもある。
    「私」が幼い頃、父が作ってくれた子供用のチェロが、父とパブロさんの亡き後も残っているという、当たり前のようでいて不思議な事実。

    私の持っているヴァイオリンをf字孔からそっと覗くと、ちょうど第一次大戦後にフランスで作られたものだとわかる。製作者(男性)の名前も記してある。それを見るたびに、そのしらない作者に思いをはせる。

    彼は戦争による暴力をはじめ、自分の作った楽器がいとも簡単に破壊される可能性をどう感じただろうかとか。

    彼はアジアの一男性が自分の作った楽器を弾いているなど思いもよらないだろうとか。

    彼には家族がいたのか。それとも淡々とひたすら孤独に楽器を製作していたのか。どんな食べ物が好物だったのか。彼自身楽器は弾けたのか。どんな曲が好きだったのか。どうやって日々の気晴らしをし、どのように死んだのか。

    その楽器は物であると同時に時間である気がして仕方がない。何せ時間芸術である音楽を奏でる道具だから。しかも木でできているから。それはまだ生きている。だから、書物と同じように、預けるべき人を、あるいは代わりにその人を探してくれる人を探さなければならない気がしている。それを生かし続けてくれる人を。

    本書はそのことを強く思い出させる。人の一生の短さ。木が育つまでの途方もない時間、楽器ができるまでのさらに途方もない時間……
    本書の作者は、木にこだわりがある人なだけに、木の絵がとても多様で、そこがもっとも魅力的だ。人は脇役。木が主役。

    時間は人間の心理の中にしか存在しないが、木はその時間を生きることができる。人間を超えた時間を生きることで、木々は空間に変わる。

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著者プロフィール

[著者紹介]いせひでこ(伊勢英子)
画家、絵本作家。1949年生まれ。13歳まで北海道で育つ。東京藝術大学卒業。創作童話『マキちゃんのえにっき』で野間児童文芸新人賞を受賞。絵本の代表作に『ルリユールおじさん』『1000の風 1000のチェロ』『絵描き』『大きな木のような人』『あの路』『木のあかちゃんズ』『最初の質問』『チェロの木』『幼い子は微笑む』『ねえ、しってる?』『けんちゃんのもみの木』『たぬき』など、単行本・エッセイに『旅する絵描き』『七つめの絵の具』『わたしの木、こころの木』『こぶしのなかの宇宙』『猫だもの』『見えない蝶をさがして』『風のことば 空のことば』など多数。


「2022年 『愛蔵版 グレイがまってるから』 で使われていた紹介文から引用しています。」

いせひでこの作品

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