- Amazon.co.jp ・マンガ (178ページ)
- / ISBN・EAN: 9784040641089
作品紹介・あらすじ
コミックス第1巻続々重版!
『墜落JKと廃人教師』のsoraが描く異世界ファンタジー!!
老いて理性を失ったドラゴンを葬り、代替わりを促進する“ドラゴンの詠み手”としての力に目覚めたセナ。
新たな風のドラゴンの王・リシュカルに伴侶となることを迫られて、セナは――!?
感想・レビュー・書評
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2020/02/13(木)購入。
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自分何者なのか、知ることができてメデタシ
………とはいかないようですね -
それは、凍てついた心を解きほぐし、時を動かす魔法の言葉。
世界観の説明と、メインキャラクターの紹介を行いつつ早速話を動かした一巻に続きますが、今回は少し立ち止まって心境の整理をしてみようという巻でした。
つまりは、過去に縛られてしまっている主人公「セナ」とメインヒーロー(?)の「キース」に課せられた言葉の呪縛を解いて前に進もうという二巻です。
ふたりの過去に踏み込むと共に痛みは消えるわけではないのだけれど、前を向く意志は示せたことになります。
なお、このふたりに対して。
奇しくも「よかったね」「羨ましい」というふたつの言葉を「呪い」として投げかけ(られ)てしまったのは偶然とみるべきか、必然とみるべきか?
どちらにしてもセナは仲のいい友達に励ますつもりが、キースにはその養父が王族という晴れ舞台へ送り出すつもりが、混乱して、表情を取り繕うこともできずに言葉足らず、結果「呪い」の言葉にかけてしまう。
本心ではそう思っていないとしても、結局心の動きを外に伝えるのは「言葉」だけ。
この辺りのやり取りは、思ったことをそっくりそのまま伝えられるとは限らない、って残酷さが浮き彫りになったようで、相当恐いですね。
親しい仲から一転、加害者/被害者のような形で決定的な断絶が生まれてしまうというのは。
この辺は、村を焼かれたなどの劇的さとは縁遠いんですが、だからこそ読者にも通じるような現実的ないたたまれなさに通じて胸を締め付けるので、こういう演出も悪くないと思います。
養父のそれがどう見ても、悪役に見えてしまうのも。
それのフォローに回る、前世では似たシチュエーションから同じ言葉を発してしまった主人公といい。
しかし、呪いの言葉を払うのもそれまた言葉に他ならず。
セナがキースに対してこうだったかもしれないという解法を示せたのは、一巻から引き続き「ワンフレーズが変えてしまう世界」というテーマに沿っているように思われて心に染みます。
少し意地悪いことを言ってしまえば、王城に入ったその後亡くなってしまった養父の心境を知る術はないわけですが、別に関係ないだろうと言い切れてしまう信頼関係が生まれたのは大きい。
ふたりは今後、物語を引っ張っていってくれるのでしょう。
ちなみに一巻の引きから引っ張った風のドラゴンの王「リシュカル」との関係については現状保留と言ったところ。
主人公は詠唱を完成させ、乱心する彼を正気に返らせましたが、それはそれと親愛は保たれています。
個人的にはドラゴン周りの戦闘描写、破壊描写が少々ごちゃごちゃしている感もあると感じましたが、それが味になっている部分もありますし、その辺も話の本題ではないので別に気にしません。
なによりひきつった表情から生まれた誤解にまつわる心情描写が申し分なかったので、作画は満点です。
と、それはそれ。
その一方で、これ以上内面の問題に向き合っている暇は与えられていないようです。
全体の話の進行については、ラストに集約されている気がしますが、主人公がこの世界における力の鍵を握る「ドラゴン」に与える影響は相当なものと明言されています。
結果、キースの父王が野望を剥き出しにしました。
この漫画、どいつもこいつもわりと危なっかしいんですが、「覇道」路線を歩みたい小国の王などはその最右翼と言って過言ではないです。
そして、その渦中に巻き込まれて主人公が難儀するだろう構図も見えてきました。
三巻は、激動と苦難の展開が期待できそうです――。