- Amazon.co.jp ・マンガ (194ページ)
- / ISBN・EAN: 9784040642468
作品紹介・あらすじ
柄の悪いOLのシイノは、彼女の死を知りある行動を決意した。女同士の魂の結びつきを描く鮮烈なロマンシスストーリー!
感想・レビュー・書評
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即日重版おめでとうございます。
Twitterで知って、紙の本になるのが嬉しくて、色んな人が手を伸ばしたんだということも嬉しくて、そんな意味でも心に残った作品です。
親友マリコの自殺。
父親からのDVとレイプ。そこから始まるマリコの純粋で時に歪んだ願望。
それらを全て側で見てきた筈のシイノでさえ、マリコが死んでしまうなんて〝思わなかった〟。
マリコの遺骨を、彼女がかつて行きたいと願っていた海に撒くために、シイノは小さな旅に出る。
そこには何食わぬ顔でマリコを弔い、マリコの仏壇を荒らされ怒りを見せる父親がいた。
不思議だった。
なんで、あんなことをした父親が、そんな怒りを見せられるのか。
マリコは誰かの弱さの犠牲になった。
ああ、そういうことか。
彼女はシイノにも、自分を否定するように求める。
そして、彼女だけが世界をひっそりと閉じたのだ。
私も、結末の知らない物語の終わりを持っている。
彼女が何を結末と思い、その世界をひっそりと閉じたのか、ずっとずっと考えて、もう10年は経つ。
シイノの言う、きれいなあの子だけを残して、後はゆっくりと輪郭がボヤけ、置いていかれた過去になっていく。
誰が悪いとか、何が原因かとか、そういうことの意味を持つのは、生きている者だけだ。
それなのに、考えることを止められずにいる。
この作品を疾走するのが、シイノで良かった。
オッサン甚だしいOLだけど、本気で怒り、本気で泣き、それでも駆け抜ける姿がとても好きだ。
読んでいて苦しいのに、マリコがシイノを慕った意味がよく分かるほど、彼女は光だった。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
殺人と自殺、どちらで大事な人を失うほうがより悲惨か。
答えは個人によって違うが、自殺の方がより救いがないという人が多いのでないか。
殺人なら犯人を憎める。事故なら当事者を憎める。だが自殺は、その選択に至るまで追い詰めてしまった、そうせざるえないほど追い詰められていたのに気付かなかった自分を責めるしかない。
この物語はOLシイノとマリコの逃避行であり、短いバカンスの話である。開始時点でマリコは既に故人だ。シイノは親友の骨壺を奪って逃走する。マリコとは中学からの付き合いだが、彼女は父親から肉体的・性的虐待を受け心を病んでしまっていた。
あらすじを説明すると陰惨で救いのない話に思えるがそんなことはない、主人公のパワフルな行動力とコミカルなセリフ回しが吹っ切れた明るさを持ちこんでいる。会社も日常も全てぶっちぎり、親友が生前見たがっていた海をめざすシイノ。そこに在るのは紛れもなく愛だ。友情だ。あふれんばかりの哀しみだ。
シイノはマリコにLINEを送る。
「送れるのに もうあんたには通じてないんだよねェ」
シイノは居酒屋で一人飲んだくれる。
「あんたにはあたしが いたでしょうが!」
シイノは断崖でたそがれる。
「どんなに心から心配してみせたって そんなもんじゃどうにもならない所にあの子はいたんだよね」
マリコはファミレスで呟く。
「わたしはねただ シイちゃんが心配して本気で怒ってくれるのがうれしいだけ それだけ」
シイノは叫ぶ。
「あたしがまだここに居るのに 死んでちゃわかんないだろ!」
この漫画のすごいところは、マリコの哀しみが特別大袈裟じゃない、淡々とした演出で表現されるところ。二人分牛丼を頼むシイノ。マリコから来た手紙を「たち」と、まるで人間のように呼ぶシイノ。
深夜バスでシイノが抱いて眠る骨壺が、中学生のマリコにさしかわったシーンはずっしりきた。
人間はキレイごとで出来ちゃいない。
マリコは可哀想な被害者で、生き延びられなかったサバイバーだが、そんなぶっ壊れたマリコを大事に思う一方、メンヘラな言動を面倒くさがっていたシイノも確かにいて、でも彼女は決して「マリコが悪い」とは口にしない。マリコの死を心底哀しみ、先に逝ってしまった彼女を罵倒しても、絶対に「あんたのせい」とは言わないのだ。
それはマリコが死ぬほど言われ続けた言葉だから。
プラトニックな同性愛にも分類できそうだが、正直ふたりの結び付きが強すぎて、先入観で縛られた枠に嵌めにくい。また嵌める必要も感じない。友情というには切羽詰まりすぎて息苦しいが、マリコがシイノに依存するしかないのもよくわかる。仮に二人が一緒に住んでも、共依存の悪循環に落ち込んで上手くいったとは思えないが、その「もしも」を想像せずにはいられない。
ぶっちゃけロードムービーに仕立てて引き延ばす気になればいくらでもできる内容なのだが、さっくり一冊にまとめてるのも凄い。読んでるあいだ胸がぞわぞわした。むずかしい表現は一切使ってないのに、ちょっとした言葉や見せ方でひしひしと感情が伝わってくる。
この作品が言おうとしてるのはこれに尽きる。
「あんたには あたしがいたでしょうが!」
私は幸いにして親しい人間を自殺で亡くしたことはないが、その経験がある人は心の内側で今も叫び続けているんじゃないか。
「あんたには あたしがいたでしょうが!」
故人を大事に思い、生きてほしいと願っていた自分は、けれども自殺を食い止める防波堤になれなかった。凄まじい無力感、あるいは裏切られた怒りと悲しみと悔しさ、ひょっとしたら罪悪感。
最後の手紙の内容は明かされないが、私達には想像できる。結果として死を選んでしまったが、あそこまで想ってもらえるマリコは幸せかもしれない。生前はどんなに辛くて痛くても、この人だけはと実感できる誰かに出会えたのだから。
同時収録の短編はオッサンと青年の話。
メキシコとの国境をめざす裏社会の元・殺し屋と、インディアンの末裔の青年の旅路を描くのだが、西部劇の世界にタイムスリップしたようなハードボイルドな世界観がたまらない。
荒野と岩山が大部分が占めるストイックな画面作りの中、濃密なヒューマンドラマを魅せてくれる。というか、この作者さんの抽斗多すぎ……表題作とは全然テイストが違うのに、完成度でまったく劣ってない。若い女性同士のドラマも描けば、アメリカが舞台のドンパチも描く。しかも一巻に満たない短いページ数の中で、ちゃんと余韻を持たせて完結してるのだ。素晴らしい才能だ。これで新人さんならこれからますます伸びそうで末恐ろしすぎる……。 -
親友のマリコが死んだ──それがOLのシイノが外回り中に聞いたニュースだった。父親に虐待され、恋人に暴力を振るわれ、それを懸命に助け続けてきたシイノですら予見できなかった突然の死。やり場のない思いを抱えたシイノは、マリコの遺骨とともに旅に出る──。
目を背けたくなるほどの虐待や暴力の傷痕を描きながらも、その反動のように破天荒な行動に出るシイノにはコミカルさもあって読んでいて胸がすくような思い。女同士の友情を超えて依存関係と言ってもいい二人。マリコが死んだことで、シイノは糸の切れた凧のようにその感情を発露させていく。その爆発する一瞬を逃さないシーンの切り取り方が抜群に上手い。読んでいて息をのむほどの臨場感がたちこめている。
一方的に虐待し続けてきた父が遺骨を守ろうとし、写真に涙を落とすシーンは人間の脆さが伝わってくる。弱い人間だからこそ、マリコに暴力を振るうことでしか生きていけなかったのだろうか。逆を言えば、マリコをひたすら守ることでしか生きていけなかったシイノもまた弱い人間だったのかもしれない。
「なみだはにんげんのつくることのできる一番 小さな海です」
シイノの旅の目的地は海だった。読んでいて寺山修司先生の詩が思い浮かんだ。彼女に自らの弱さをぶつけたあらゆる人たちの涙が、その海を形作ったのかもしれないなと。マリコが受け止め続けてきた弱い人々の涙が海になり、それがシイノを受け止めて生かしたのだとすると、歪んだ部分があっても二人の絆は確かだったんだなと思った。それにしても、遺骨に説教し始めるシーンの落差がすごすぎるよね(笑)
「もういない人に会うには 自分が生きているしかないんじゃないでしょうか…あなたの思い出の中の大事な人とあなた自身を大事にしてください」
この言葉が胸に残る。マリコも同じ気持ちだったのかもしれない。シイノを自分から解放して生きる選択をさせ、なおかつ自分のことを忘れさせない方法。それが死ぬということだったのかもしれないなと感じた。線香よりも煙草の煙が似合う女同士の物語に圧倒された。 -
逃げ出した先でもまだ暴力。。
マリコ…辛かったね。
人生諦めたくもなるよね。
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あたしは骨になったマリコと、最初で最後の旅に出た。
ブラック企業に勤め柄の悪いOLのシイノは親友のマリコの死を知り、ある行動を決意した。女同士の魂の結びつきを描く鮮烈なロマンシスストーリー!
職場の自分のミスや責任を押し付けるバカな男たちにウンザリしやさぐれているシイノトモヨは、小学校から親友で暴力親父から虐待されているマリコと助け合い、生きてきた。
母に家に帰って来てもらう為に、暴力親父に殴られながら家事をして世話してきたマリコは、自傷癖や相手に執着するクセなど生きづらさを抱え生きてきて、社会人になってもDV彼氏に執着してしまうコワレ方をしてしまう。
そんなマリコを、見捨てず助けようとしてきたシイノは、マブダチのマリコを弔う旅の中で、マリコが残した手紙を読みながらマリコが何を思っていたのか?何を望んでいたのか?考えながらマリコが行きたいと言っていた場所に向かいながら、親友マリコの「どんなにシイちゃんを好きで頼りにしていたか」を実感しながらも、マリコへの愛情と「なんでDV彼氏に会ってんだよ」とかのもどかしさや「なんでアタシを一緒に連れて行かなかった」という悔しさを、シイノを助けるマキオの言葉などとに助けられながら、マリコを弔う旅をしていくストーリーが、映画のカメラワークのような躍動感と情に厚くて情が深いシイノトモヨというキャラクターの疾走感やマリコとシイノの「アンタは知らないけど、ワタシにはアンタしかいなかった」という友情以上のロマンシスに、グイグイ惹き込まれながら切なくなりながらも、爽やかな後味がある傑作ロマンシス・ロードムービー漫画。
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1話の疾走感がすごく良かった
この人しかいないって思う人ともう二度と会えなくなったらどうやって生きていけばいいのか
綺麗な部分しか思い出せなくなるのは嫌だな
エゴこそ若さだし愛だった -
画力すごいです。ほんとに新人さん?
ただし表紙(カラー)と中の絵が別人に見える。
ロマンシス・ストーリーってブロマンスの女性版の意味ですかね? -
強烈。マリコみたいな子いるんだろうな。でも、シイちゃんみたいな人はそういない。旅を終えたシイちゃんは、歩み出せるんだろうな、そう思えるエンディングでした。
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みんな、こいつは読んどいた方がいい。ガツンときた。