- Amazon.co.jp ・本 (340ページ)
- / ISBN・EAN: 9784040669052
作品紹介・あらすじ
静かな山の中で祖父と暮らす石蕗柊のもとに、祖父の昔の教え子だという男・藤澤和章が訪ねてくる。このまま一生山を出ずに生きていく、そう思っていた自分はなんて狭い世界しか知らなかったんだろう…生まれてはじめて触れた人の肌の熱さに和章への想いを自覚する柊。だが彼の瞳はいつも柊ではない"誰か"を見ていた…。「ふったらどしゃぶりWhen it rains,it pours」から一年、消えない傷を抱えた和章の愛と再生の物語。
ナイトガーデン (フルール文庫 ブルーライン)の感想・レビュー・書評
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はー、やっぱり一穂さん好きだわ…。
前作ありきのスピンオフものだけど、前作とはまた違う雰囲気を醸し出しているのはさすがといったところ。
恋を失って傷ついた和章と、祖父と二人暮らしをする柊が出会い、惹かれあう。野生児のような柊と、人との関わりを嫌い都会で生きていた和章がどうやって恋に落ちていくのか、そして何を知っていくのか。恋物語であると同時に喪失と再生の物語でもある稀有な作品。一穂さんを好きで良かったと実感できます。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
読後自分の中で色んな気持ちが駆けめぐって、それをうまく論理立てて説明する自信がない。
一言でいえば、それはとてつもない安堵かもしれない。自分を許さない和章をちゃんと許してくれる人が現れたことに。
罪悪感に苛まれながら、それでも手放すこともできなくて、幼なじみの整を囲い込むことでしか愛せなかった和章。愛しているのに受け入れられない矛盾。いびつな関係が破綻してどこかほっとした一方で、すべてを失ってしまった喪失感に絶望する。
そんな和章の心に整の別れの言葉が抜けない棘のように突き刺さる。大切な中味を失った空っぽの入れ物みたいな自分に。
そんな和章の前に文字通り降ってきた一条の光。山奥で隠遁生活をしている祖父と共に暮らす柊。あらぬ誤解、父母すらも100%の力で自分を信じてくれなかった事に傷ついて、逃げるように祖父の元にやってきた。
逃げるのも闘い方のひとつだと鷹揚に見守ってくれる祖父もまた心に深い傷を抱えている。
それぞれ過去を引きずりながらもひっそりと過ぎていくやさしい時間。それが、ずっと前に進めずにいた和章をやがて再生していく。
和章はつくづく不器用な人間なのだと思う。でもこんなにもやさしさと情熱を内に秘めていたのか…とも。
一見とりつく島もないように見える冷静さは、心にない事は言えない誠実さだ。
整は整でちゃんと幸せになっている。自分も幸せになっていい。そう想える相手に和章が出会えて本当に良かった。
『ふったらどしゃぶり』と対の作品として、ぜひともセットで読んでもらいたい。 -
前作では不憫な役回りでしたが、
ようやく幸せをつかめたようでよかったです。
スランプだった仕事もきっと順調にこなすでしょうし
ちょっと重いくらいの愛情を持っている和章だけれど
柊ならそれも受け止められる素敵なカップルだと思います。 -
もう毎回一穂さんの作品を読むと同じことを書いている気がするのですが、毎回毎回こうも訴えかけてくるラブストーリー(男同士ですが)を書けるのかなぁと感心と感動させられます。
ゆっくりとじっくりと世界に入れる文章に、それぞれの人生にもがいて苦しむ柊と和章がほどけるように近づいていく姿に思わず切なくて嬉しくて涙してしまいました。
これは別作品「ふったらどしゃぶり」に登場していた藤澤和章と中卒で植物園でアルバイトをしている石蕗柊のお話です。
感情の見えない和章とはつらつとして真っ直ぐな柊。二人はタイプが全く違うんですが、柊の実直さが前作の整とのことで閉じこもっていた和章の殻をそっとめくっていく感じに切なくてときめきました。
それにしても和章は恋仲になると、あんなに優しくてデレデレになるんですね。思わぬギャップにこっちがどうにかなりそうでした。 -
間違っていてもいいんだ、と言ってくれる人がいれば、あるいはそれを認めることができれば、とても救われるとは思うけど、現実にそれをするのはとても難しいよね、と思いました。
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和章幸せになれてよかった。
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水の流れるような透明感と清冽な美しさ、穏やかさ溢れる文章。情景や想いの切り取り方、人物一人一人の心の切り取り方がとても綺麗でするすると物語に引き込まれます。
心の色の見えにくい和章の消えない痛みと喪失感、野生児のようにのびのびと明るく生きながら心を閉ざして狭い世界に自らを閉じ込めて生きる事を選んでいた柊。
互いに消えない痛みの中で時を止めて生きてきた二人がゆっくりと心を重ね合い、人肌の温もりと共にお互いの心をそっと預けあって前に進もうとする姿が丁寧に優しく描かれ、柔らかな思いにそっと包まれます。
喪失と再生というある種の王道でありながら、風景と人の想い、取り巻く世界の全てがとても丁寧に柔らかく、幾重にも折り重なるように描写されていく所に引き込まれました。
和章の心の中にあった情熱的な色がゆっくりと色づき、花を咲かせていくその様の美しさに、胸がいっぱいになりました。
人物の描写、心のうつろいようが本当にたおやかで美しい。
二人の視線が交差しながら、お互いが何を知り、どう向き合い、どんな風に気持ちを重ねていったのかが手に取るように伝わり、時にしんとしたり、ハラハラしたり。
それでも積み重ねた物語のその先で二人が前に進むことが出来て良かった、と瑞々しさに胸が詰まるようなお話でした。
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