高山なおみのはなべろ読書記 (ダ・ヴィンチBOOKS)

著者 :
  • KADOKAWA/メディアファクトリー
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  • Amazon.co.jp ・本 (205ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784040671406

感想・レビュー・書評

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  • 「ダ・ヴィンチ」誌上にて連載された
    高山さんが鼻とベロで味わった本にまつわる文章と
    その本をイメージした料理レシピをまとめたエッセイ。


    相変わらずどこか切なくて
    それでいて心地いい。

    何でもない日常の強さを描きながらも、
    言葉にできない言葉や
    声にならない感情を
    偽ることなく、
    ごまかすことなく紡いでくれる。

    まるで猫を抱いて
    肉きゅうを触らせてもらってる時の
    あの甘やかで夢見るような感覚。

    だから、いつまでもいつまでも
    ゆらゆらと読み続けていたくなる。

    そして高山さんが作る沢山の料理は
    目にも心にも栄養を与えてくれる。


    谷口ジローの漫画『ふらり。』を読み、実測地図を日本で初めて作った伊能忠敬と江戸時代に思いを馳せながら作る
    「こんにゃくの煮しめ」。

    西加奈子の『ふくわらい』にインスパイアされて作る
    ほうれん草と卵を落とした「鍋焼きうどん」。

    吉田篤弘の『それからはスープのことばかり考えて暮らした』にハマり、
    昔のボーイフレンドが住んでた町にそっくりだという月舟町をイメージして作る
    「じゃがいものサラダのサンドイッチ」。

    小川洋子の『ことり』を読み、
    おせちの残りのハムを入れて作る
    「豆のポタージュスープ」。

    万城目学の『かのこちゃんとマドレーヌ夫人』をお風呂に浸かりながら読み、
    梅干しやカレイの干物が好きな渋好みのかのこちゃんに食べてもらいたくて作った
    「卵としらすのチャーハン」。

    湯本香樹実の『わたしのおじさん』に出てくる主人公の少女が食べられるように甘口に作った
    「かぼちゃ入りのカレーライス」。

    川上弘美の『パレード』にて、
    真夏のある昼下がりにそうめんの支度をしながら語られる
    センセイとツキコさんの昔話。
    (完全再現した錦糸卵、煮茄子、きゅうりの千切り、みょうが、わけぎ、青じそを用意したそうめんが本当に美味しそう!)

    木皿泉の『昨夜のカレー、明日のパン』を読み、
    季節のひとめぐりを愛おしむ文章を繰り返し繰り返し読んで作る、
    ギフが好きな
    「どぼどぼにウスターソースをかけた焼売」。

    あるひとりの老人と最愛の猫との絆を描いた吉本隆明の『フランシス子へ』を読み、
    娘のばななさんが隆明さんからよく作ってもらったという
    「バター入り卵焼き」を再現したり。

    他にも梨木香歩の『家守綺譚』から「鶏肉の煮物」、
    武田百合子の『犬が星見た ロシア旅行』から「ウズベク風雑炊」、
    石井桃子の『家と庭と犬とねこ』から「けんちん汁」、
    山田かおりの『株式会社家族 私も父さんに認めてもらいたい篇』から関西人なら分かる「焼きそばライス」、
    木皿泉の『すいか』から「梅干しのおにぎり」、

    中でも図書館で運命の出会いをした
    堀江敏行の『なずな』のエピソードは良かった!
    姪でまだ2ヶ月の赤ちゃん、なずなと
    40代のおじさんとの触れ合い描写に胸を鷲掴みにされ、
    (コレは絶対読んでみたい!)

    おじさんが作る「グラニュー糖トースト」を再現した写真に
    しっかり胃袋も掴まれた(>o<)


    ここに出てくるほとんどの本は
    過去に僕も読んだことのある本だけど、
    徹底的に感性が違うのか
    高山さんの感想に気づかされてばかりだったなぁ~(汗)

    そして幼少の頃から物語に登場する料理があると
    必ず味を想像し、レシピまで考えていたという高山さんだけに、
    どれもお腹がきゅるきゅると鳴りだすくらい料理写真がそそられるし、
    (レシピがまたシンプルかつ分かりやすいので、紹介された本を片手に作ってみたくなる)

    貸し本屋でのゲラの校正、
    お風呂に浸かりながらの本読み、
    風呂上がりに飲むチェリオへの憧れ、
    朝起きてパジャマのまま作る「名なしのスープ」、
    お気に入りの夕方の図書館、
    旦那さんとのパン屋への散歩など、
    何気ない日常の積み重ねこそが
    強く輝くのだということに
    あらためて気づかされた。

    いつまでもこの世界には居られないことを、
    心のどこかでちゃんと知っているのは高山さんだと思う。
    だから高山さんの文章は
    永遠に朽ち果てない音楽のように美しく儚く胸に沁みる。

    それにしても唯一無二の文章が書けて
    自分のイメージを料理で再現できるなんて、
    本当にうらやましいかぎり。


    ちょっと切ない文章に目がなくて、
    本が好きで、食べることが大好きな人ならオススメです。

    • vilureefさん
      またまたお邪魔します。

      高山なおみさんのエッセイ!
      読みたいな~。
      彼女の文章って独特の間があって切なくて、なんとなく私はノラジョ...
      またまたお邪魔します。

      高山なおみさんのエッセイ!
      読みたいな~。
      彼女の文章って独特の間があって切なくて、なんとなく私はノラジョーンズの音楽と通じるものがあるんですけど、どうでしょう??(^_^;)

      さて、このエッセイに出てくるのでしょうか、「なずな」?
      とーっても素敵な育児小説です。
      子供を産んだ今も子供が苦手な私ですが(笑)、この小説を読んだ後は赤ちゃん時代の育児が懐かしくなりました。
      円軌道の外さんも絶対気に入りますよ~(^_-)-☆
      2015/09/29
    • yamatamiさん
      円軌道の外さん

      お久しぶりです。こんばんは!
      円軌道の外さんのレビューを読んで、このエッセイをたまらなく読みたくなって手に取りました...
      円軌道の外さん

      お久しぶりです。こんばんは!
      円軌道の外さんのレビューを読んで、このエッセイをたまらなく読みたくなって手に取りました。

      円軌道の外さんのおっしゃっていた高山さんの文章の儚さ、切なさ、美しさという印象、とても共感します。

      そして私は、円軌道の外さんの感想に気付かされてばかりです。

      とにかく、すてきな一冊に出会わせていただいてありがとうございました!とお伝えしたかったのです(*^_^*)
      2015/10/27
  • 高山なおみさんが読んだ本の感想と、そこからイメージしたお料理のレシピがのっています。

    その高山さん、子どものころ、たべものを口いっぱいに頬張って、
    息を吸いながら食べるクセがあったそうです。
    そうすると、鼻と食べものが近くなるぶん、匂いを直に感じ取れるからだとか…。
    まさに”はなべろ”ですね~。

    『それからはスープのことばかり考えて暮した』じゃがいもサラダのサンドイッチ
    『家守奇譚』鶏肉の煮物
    『かの子ちゃんとマドレーヌ夫人』卵としらすのチャーハン
    『センセイの鞄』そうめん
    『昨夜のカレー、明日のパン』焼売
    『家と庭と犬と猫』けんちん汁
    『フランシス子へ』バター入り卵焼き
    『ムーミン谷の十一月』肉桂ビスケット
    他にも、こんにゃくの煮しめ、豚の生姜焼き、豆の煮込み、五目ごはん…、
    定番のお料理が続くなかで、驚いたのは焼きそばライス。
    (パンじゃなくて、ごはん?!)

    温めて薄く膜が張った牛乳と甘食。(あぁ、たまらなく昭和)
    夏が来るたびTVドラマ「すいか」を見て、
    お風呂のフタをぎりぎりまで閉めて、タオルをしいて本を読む高山さん。
    なんか親近感わきます。

    お料理本って、眺めるのは大好きなんですが(笑)、
    作ってみるのはせいぜい1、2品。
    でもこの本は、作りやすそうなメニューが多くて♪
    そして、読みたい本がまた増えた…(笑)

    • koshoujiさん
      うさこさん、何を隠そう、私はお料理得意なんですよ。
      学生時代と就職してからも2年間は一人暮らしだったので、殆ど自炊してたので。(^^)/ ...
      うさこさん、何を隠そう、私はお料理得意なんですよ。
      学生時代と就職してからも2年間は一人暮らしだったので、殆ど自炊してたので。(^^)/ 
      ま、それがさておき、「楳図和夫さんに電車の中で描いてもらったまことちゃん」。
      河北の読者に驚きの目で迎えられ、大好評のようで、2日ですでに400人が見に来ました(笑)。
      うれしい限りです。
      次にどんなお宝を出そうか考えているのですが、
      あまりに初っ端インパクトのあるのを出したせいで困っています(笑)。
      で、次は、私の名前をキャンディーズの蘭ちゃんが呼んでくれた40年前のラジオの肉声(音源)。
      或いは、テニスの東レパンパシでパンフレットに書いてもらった
      数人の外国人女子選手のサインとプレーの画像を掲載する予定です。(^^)/
      ただ、蘭ちゃんが私の名前を呼んだ音源は、
      仙台の〇〇〇〇くん(笑)と、
      私の本名を明らかにせざるを得ず、悩んでいるところです。
      まあ、本名がわかっても別に危害を加えられることはあるまいと思っていますが。
      フェイスブックなどは本名でみなさんとやりとりしていますからね。
      漢字までは出していませんが。
      2016/04/12
  • 高山なおみさんが鼻とベロで味わった本の話と、そこから生まれた料理の物語。

    ぱらぱらとめくった時にちらちらと見えた「家守綺譚」の鶏肉の煮物、「それからはスープのことばかり考えて暮らした」のじゃがいものサラダのサンドイッチ、「かのこちゃんとマドレーヌ夫人」の卵としらすのチャーハン、「すいか」のおにぎり、「ムーミン谷の11月」の肉桂ビスケ…
    わー!!早く読みたいよー!!

    読みたい本も増えました。
    レシピと写真を見ているだけでなんだかお腹がすいてきます…
    読書欲と食欲がムクムク…秋にぴったりの一冊でした。

    高山なおみさんのさっぱりしているけど優しい文章、本とご自分の生活、日常とに寄り添って綴られた一文一文にリラックスしながら読むことができました。

  • ふくう食堂/本だな/はなべろ
    http://www.fukuu.com/html/4honn/041/index.html

    キチム kichimu 吉祥寺
    https://kichimu.wixsite.com/2020

    高山なおみのはなべろ読書記 高山 なおみ:一般書 | KADOKAWA
    https://www.kadokawa.co.jp/product/301405003101/

  • 本と、本にまつわる料理たち。
    合間にレシピもあり、肩肘張らずにゆったりのんびり読める。

  • このタイトルの意味ってなんだろ、と思ったら「鼻さぐり、ベロさぐり」からとのこと。
    ニヤリとして、タイトルまで高山なおみさんらしい。
    作者の生活と本とお料理。
    散歩で見つけた喫茶店、下町のドンペリ、棒がいっぽん。
    以前暮らした街、オーリィ君、じゃがいもサラダのサンドイッチ。
    旅先のこと、幼い頃の思い出、読んでいる本と現実の境があいまいな感じが心地よい。

    ご飯も食べず、布団にくるまってただ本を読む、そんな日もあり、羨ましい…。

  • 入院中のベッドで時間も気温もわからないままうつらうつら読んでいて、高山さんの読んでる本と、読んでる高山さんと、それを読んでるわたしとがないまぜになって、どこまでが自分かわからなくなった。
    なんて生々しいんだろう、なんて、全身で読書するんだろう。読書、て行為でいいのかな。
    読んだ本はもう一度読み返したくなったし、知らなかった本も読んでみたく思った。
    昨夜のカレー、明日のパン、の引用で、引用なのに涙がでて仕方なかった。月日は巡るけど、日常のピースは似てても同じではないこと。わかってても、知らんぷりして喜んだり驚いたり、していたい。
    1話ごとのレシピも簡単そうで、作りたくなる。そんでまた本に潜りたくなる。
    高山さんに料理があって、ほんとうに良かったなぁと思う。

  • 【紙の本】金城学院大学図書館の検索はこちら↓
    https://opc.kinjo-u.ac.jp/

  • なんてことないのだけど(失礼ですみません)するすると読みやすいし紹介された本も読みやすい。
    料理のレシピの写真がいい箸休め。
    こういう本を読んでると不思議と余裕のある暮らししてる気分になれる。

  • 読書やすみにチビチビと.
    はじめに…で出てくる「ちびくろサンボ」は子供の頃から大好きで今でも思い出してホットケーキにバターたっぷりで食べたくなる!!
    ついこの間 「そんなにぐるぐるするとバターになっちゃうよ!食べちゃおうかなー❤︎」といって友達の子供を泣かせてしまった…反省してるけど…可愛いすぎるっ!! .
    美味しいものが食べたくなる本でした.
    作りたくなる…というか作ってもらいたくなったなー.

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著者プロフィール

1958 年静岡県生まれ。料理家、文筆家。レストランのシェフを経て、料理家になる。におい、味わい、手ざわり、色、音、日々五感を開いて食材との対話を重ね、生み出されるシンプルで力強い料理は、作ること、食べることの楽しさを素直に思い出させてくれる。また、料理と同じく、からだの実感に裏打ちされた文章への評価も高い。著書は、経験や体験に裏打ちされた料理書や料理エッセイのみならず紀行記や日記、絵本など多数。

「2023年 『帰ってきた日々ごはん13』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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