騙し絵の牙

著者 :
  • KADOKAWA
3.67
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本棚登録 : 1841
レビュー : 311
  • Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784040689043

作品紹介・あらすじ

昭和最大の未解決事件「グリ森」をテーマに描いてから、約1年――。
『罪の声』塩田武士の最新刊は、大泉洋“主演小説”!
塩田武士×大泉洋
新しい<小説の形>がここに! そして最後は“大泉洋”に騙される!

芸能事務所、さらには大泉洋本人との共同企画により、主人公に俳優・大泉洋を「あてがき」して社会派長編小説を執筆。
2013年から構想開始し、プロット改稿を幾度となく重ね、取材・執筆すること約4年。雑誌『ダ・ヴィンチ』連載を経て、この度単行本化!

出版、映像、音楽……エンタメ業界は、スマホと「時間の奪い合い」になった。既存のエンタメ産業は、「過渡期」真っ只中である。
本作『騙し絵の牙』では、出版界のなかでも「レガシーメディア」と言われるようになった「雑誌」の編集部を物語の舞台に、業界全体を映し出して「エンタメ産業のうねり」を圧倒的リアル筆致で描く。
さらに、そんな窮屈な時代に風穴をあけるような、太陽のような明るさと才知に長けた主人公に、俳優・大泉洋をあてがきして物語を創作。実在の俳優と物語の主人公がリンクする、新しい読書体験に!

●痛いほど圧倒的リアリティ、ウィットに富んだ会話の応酬! 「小説のなか」で大泉洋が動く!●
大手出版社で雑誌編集長を務める速水。誰もが彼の言動に惹かれてしまう魅力的な男だ。
ある夜、上司の相沢から自身の雑誌の廃刊を匂わされたことをきっかけに、速水は組織に翻弄されていく。
すると次第に彼の異常なほどの“執念”が浮かび上がってきて……。
斜陽の一途を辿る出版界で牙を剥いた男が、業界全体にメスを入れる!
小説を愛するすべての読者へ贈る一冊。

感想・レビュー・書評

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  • まさに、エンタテインメント小説のお手本のような!
    今、「なんか面白い本ない?」と聞かれたら、迷わずこれをお勧めしますわ、間違いなく。
    いやぁ、カルチャー誌の編集長、速水に心を持って行かれましたよ。
    あてがきされた某大泉洋が脳内で速水として語り、歌い、笑い、泣き、悩み、そして牙をむく。
    いろいろと身につまされる部分もあるけれど、それ以上に、速水の、一人の人間としての魅力にはまる。文芸への愛、そのゆるぎない一本の筋の「もう一つの意味」を知った時、彼の魅力は百万倍の輝きを増す。早く映像で観たい観たい!

  • 「そういうことか…!!」
    351ページを読んで、表紙・裏表紙を三度見してしまった1冊。

    ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
    大手出版社で雑誌「トリニティ」の編集者を務める速水輝也。

    しかし出版社上層部から「トリニティ」廃刊の可能性を示唆されたことから、それを食い止めようと奔走する。

    果たして速水と「トリニティ」の行く末は?
    そして彼の生い立ちから見えてくる、速水の“本当の目的”とは…?

    ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
    俳優・タレントの大泉洋さんを当て書き(特定の俳優がその役を演じると、あらかじめ決めて書かれたもの)した「騙し絵の牙」。
    当て書きなだけあって、各章の扉絵は大泉洋さんのモノクロ写真が使用されています。
    これだけビジュアル的にも大泉洋さんを挟み込まれると、速水=大泉洋としかイメージできなくなってきます。
    雑誌「トリニティ」を守ろうと、男くさい闘いを展開していく速水の姿は、ドラマ「ノーサイド・ゲーム」を彷彿とさせます。

    装丁(本の見た目全般)を担当されたのは、星野源さんのCDジャケットなどもデザインされた吉田ユニさんです。
    大泉洋さんの姿と、その影が女性の像になっている意味がわからなかったのですが、351ページでタイトルの意味も含め、初めてその秘密が明かされます。

    プロローグとエピローグは速水の視点ではなく、速水の同期の小山内の視点で書かれていたため、最初は小山内が主人公と勘違いしてしまい、第1章に入ってからしばらく混乱しました。
    ☆4つといきたいところでしたが、プロローグでの混乱があったため、総合3.8とし、☆3つとさせていただきました。

    プロローグが、なぜ小山内視点で書かれているのかは、エピローグまで読むとわかります。
    そして第6章までの話を踏まえてエピローグに入りましたが、エピローグの展開に文字通り目を丸くしてしまいました。

    ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
    322~332ページの展開には、今の時期のニュースと小説家・藤岡の姿が重なってしまい、せつなくなりました。

    追い込まれたとき「なぜ助けてと声をあげなかったのか」と言う方がいますが、そう声を上げるつもりでいた相手が、その日その時その声を受けとる余裕がなければ、その声はなかったものになってしまいます。
    そしてその声を受けとるはずだった方も、その時はそんなに重要なやりとりだとは思いません。
    そんな状況で、本人と相手を誰が責められるでしょうか。

    第3者である者にできることは、その事実を静かに受け入れ、ただ黙って両者を見守ることだけだと思います。

  • 予想以上に厳しい出版業界の現状と先行き。
    深まっていく社内抗争。
    家族の危機。
    ページをめくるたびにめまぐるしく変わっていく速水の状況にハラハラさせられっぱなしだった。
    エピローグを読むまで結論も全く想像できなくて。
    読み終わってから、あの部分が伏線だったのか!と気付く爽快感。
    それと同時に、速水が小説に情熱を注いでいた理由を知って切なさも感じて。

    緊張感が途切れることなくよみきれて、いろいろな感情がこみあげて。
    大満足!(*^^*)

    大泉洋ファンとしては、このセリフそのまま言いそう!この行動やりそう!と実感する箇所がいくつもあった。
    作家さんの観察力のすごさには脱帽…!

    でも、「最後は大泉洋に騙される」というキャッチコピーには「?」となってしまった。
    騙されたわけではないのでは…?
    なぜ自分は編集者になったのかという問に対し、「今この業界に必要なもの」という形で速水は答を出しただけで。
    ともに働いてきた同僚たちにしたら、紙媒体ありきだった速水の行動は裏切りのように感じてしまうのかも知れないけど、騙されたという表現には違和感を覚えた。
    速水には一本筋の通った確固たる意思があって、当初思い描いた紙媒体ではないけど、時代にあわせて手段を変えてでもその意思を貫こうとした結果なのだろう、と私は解釈した。

    でも。
    エピローグとプロローグが小山内目線で語られることを考えて読み進めていけば、また速水への見方は変わるのかも…?!
    …もう一回読んでみよう笑

  • 紙の本を愛する人、紙の雑誌を愛する人、本屋さんを愛する人全てに読んで欲しい。
    大泉さんモデルの編集長が担当する雑誌が廃刊になる。それを知り廃刊を阻止するため全力で頑張ると言う粗筋。
    ざっくり言えばそれだけだけど、紙の本を愛する自分には終始心痛い展開や描写、世間の本に対する価値観に涙が出そうになった。でも自分の興味のない物に対してなんて所詮そう言うものなんだろうと思う反面本当に紙の本に価値はないのか?と聞かれたら絶対そうではないと私は思う。
    少なくとも自分にはそうだった。
    苦しい時に救ってくれた本。
    勇気をくれた本、冒険したり、喜怒哀楽色々な本があって体験して。
    一度しかない人生だけど本を読むことで沢山の世界をみれて体験できる。
    だったら電子書籍でもいいんじゃない?と言う人も居るだろうけど、勿論それでもいい時はある。けど、電気や電波が届かない時に読めない小説は本当に自分にいつでも寄り添ってくれるのだろうか?
    気軽にパラリとめくる。それ一冊だけで電気も電波もいらない。
    それに電子書籍だけになったらサイン会は無くなるのだろうか…書店もなくなるのか?
    自分の大好きな本を胸に抱えてドキドキしながら待つ喜びも、憧れの作家さんを前に緊張する経験も無くなり、装丁の面白さを楽しむこともなく重さを感じることも、本を閉じた音も聞けない世の中がくる。
    なんて寂しくつまらない世の中なのだろう。
    出版界が生き残るためにも改革は必要だろう。
    それでも、どうか読書人が絶滅危惧種にならない世の中であってほしい。

  • 初塩田武士さん。
    大泉洋をあて書きしたとあって、頭のなかの映像はまさに大泉洋が動き回っていました。大泉洋が好きだから余計にイメージしやすかった。
    私は面白いと思いました。紙の本。私は紙の本が好きでいつまでも紙の本を読みますよ。

  • 廃刊の危機に追い込まれた雑誌の編集長・速水の活躍、葛藤を描く一冊。
    表紙のモデルに大泉洋を使っていることから、かなりエンタメ性の高い作品。雑誌の存続の為に出版業界でどのようなことが繰り広げられているのか、本好きな人間にとっては、結構重目の問題を取り上げているのに、エンタメ性が効いていて、全体的に読みやすかった。
    映像化を踏まえた単行本化だったのか、映像になった作品も見てみたい気がする。

  • 活字離れ。
    出版不況。
    読書人口の減少。

    電車の中で本を読む人とスマホを開く人の割合を比べることすら無意味だ。

    舞台は大手出版社の雑誌編集部。

    主人公 速水輝也は雑誌「トリニティ」の編集長。

    新聞記者から「小説を世に出したくて」転職してきた。


    雑誌編集の、出版業界の、そして会社組織の最前線の現場の息づかいが激しく伝わってくる。


    小説は何のためにあるのか。
    雑誌は誰のためにあるのか。

    組織内でのコップの中の権力闘争に翻弄されながら、良い作品を、読み応えのある小説を、世に問うていこうと主人公たちは奮闘していく。

    知恵は現場にあり。
    対話の最前線にこそ、人とのふれあいの中で、人生の醍醐味は味わえる。

    そして、時を捕らえることの重要性。

    今そこにある課題を、危機を捕らえ損なうと、取り返しのつかないことになることも。

    プロローグとエピローグのみ、主人公の同僚 小山内甫の語りで物語が語られる。そこにまた二重三重に深く人間を描ききる醍醐味があった。

    幾重にも仕掛けが施された、読み応えのある大作。

  • 大泉洋を「当て書き」した作品。
    公私共に順風満帆と思われていた大手出版社雑誌編集者の速水だが、出版業界不況の中、自らの雑誌に廃刊の危機が。社内抗争に巻き込まれ、同時期に家庭内トラブルも抱えることに。速水のとった行動は、そしてその訳は。。。
    コメディタッチなところも面白く、出版業界の内情も興味を持って読めた。速水の編集にかける真意は驚き。

  • 主人公は大泉洋をイメージしての当て書き。
    話しに入って行きやすくて楽しめた。
    それにしても出版業界って大変なんだね。
    その辺の危機感を、この作家が持っていることに興味深く感じた。

  • 1979年生まれの若い作者であるが,読ませる小説を書く。この作品,本屋大賞2018の10作品にノミネートされたそうな。小説命の書店員さん達がお勧めする理由は読めば判る。ここまで若い作家の読ませる作品に出会うのは,僕もしばらくぶりだろう。
    でも(ここから手のひらを返して本音) このエピローグはどうにも頂けない。鼻に付く、ああ臭いくさい。どうしてこのエピローグの部分をこの本の”編輯者”わ切り落とさなかったのか!所詮編集者というもんはその程度なのかと知れた。

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著者プロフィール

塩田武士(しおた たけし)
1979年兵庫県生まれ。関西学院大学社会学部卒。新聞社勤務中の2010年『盤上のアルファ』で第5回小説現代長編新人賞を受賞し、デビュー。2016年『罪の声』にて、第7回山田風太郎賞受賞、「週刊文春」ミステリーベスト10 2016国内部門で第1位となる。2019年『歪んだ波紋』で第40回吉川英治文学新人賞を受賞。他の著書に、『女神のタクト』『ともにがんばりましょう』『崩壊』『盤上に散る』『雪の香り』『氷の仮面』『拳に聞け!』『騙し絵の牙』がある。『罪の声』の映画化が2020年公開決定し、小栗旬・星野源の共演が決まっている。

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