騙し絵の牙

著者 : 塩田武士
制作 : 大泉 洋 
  • KADOKAWA (2017年8月31日発売)
3.79
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  • レビュー :108
  • Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784040689043

作品紹介

昭和最大の未解決事件「グリ森」をテーマに描いてから、約1年――。
『罪の声』塩田武士の最新刊は、大泉洋“主演小説”!
塩田武士×大泉洋
新しい<小説の形>がここに! そして最後は“大泉洋”に騙される!

芸能事務所、さらには大泉洋本人との共同企画により、主人公に俳優・大泉洋を「あてがき」して社会派長編小説を執筆。
2013年から構想開始し、プロット改稿を幾度となく重ね、取材・執筆すること約4年。雑誌『ダ・ヴィンチ』連載を経て、この度単行本化!

出版、映像、音楽……エンタメ業界は、スマホと「時間の奪い合い」になった。既存のエンタメ産業は、「過渡期」真っ只中である。
本作『騙し絵の牙』では、出版界のなかでも「レガシーメディア」と言われるようになった「雑誌」の編集部を物語の舞台に、業界全体を映し出して「エンタメ産業のうねり」を圧倒的リアル筆致で描く。
さらに、そんな窮屈な時代に風穴をあけるような、太陽のような明るさと才知に長けた主人公に、俳優・大泉洋をあてがきして物語を創作。実在の俳優と物語の主人公がリンクする、新しい読書体験に!

●痛いほど圧倒的リアリティ、ウィットに富んだ会話の応酬! 「小説のなか」で大泉洋が動く!●
大手出版社で雑誌編集長を務める速水。誰もが彼の言動に惹かれてしまう魅力的な男だ。
ある夜、上司の相沢から自身の雑誌の廃刊を匂わされたことをきっかけに、速水は組織に翻弄されていく。
すると次第に彼の異常なほどの“執念”が浮かび上がってきて……。
斜陽の一途を辿る出版界で牙を剥いた男が、業界全体にメスを入れる!
小説を愛するすべての読者へ贈る一冊。

騙し絵の牙の感想・レビュー・書評

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  • まさに、エンタテインメント小説のお手本のような!
    今、「なんか面白い本ない?」と聞かれたら、迷わずこれをお勧めしますわ、間違いなく。
    いやぁ、カルチャー誌の編集長、速水に心を持って行かれましたよ。
    あてがきされた某大泉洋が脳内で速水として語り、歌い、笑い、泣き、悩み、そして牙をむく。
    いろいろと身につまされる部分もあるけれど、それ以上に、速水の、一人の人間としての魅力にはまる。文芸への愛、そのゆるぎない一本の筋の「もう一つの意味」を知った時、彼の魅力は百万倍の輝きを増す。早く映像で観たい観たい!

  • 紙の本を愛する人、紙の雑誌を愛する人、本屋さんを愛する人全てに読んで欲しい。
    大泉さんモデルの編集長が担当する雑誌が廃刊になる。それを知り廃刊を阻止するため全力で頑張ると言う粗筋。
    ざっくり言えばそれだけだけど、紙の本を愛する自分には終始心痛い展開や描写、世間の本に対する価値観に涙が出そうになった。でも自分の興味のない物に対してなんて所詮そう言うものなんだろうと思う反面本当に紙の本に価値はないのか?と聞かれたら絶対そうではないと私は思う。
    少なくとも自分にはそうだった。
    苦しい時に救ってくれた本。
    勇気をくれた本、冒険したり、喜怒哀楽色々な本があって体験して。
    一度しかない人生だけど本を読むことで沢山の世界をみれて体験できる。
    だったら電子書籍でもいいんじゃない?と言う人も居るだろうけど、勿論それでもいい時はある。けど、電気や電波が届かない時に読めない小説は本当に自分にいつでも寄り添ってくれるのだろうか?
    気軽にパラリとめくる。それ一冊だけで電気も電波もいらない。
    それに電子書籍だけになったらサイン会は無くなるのだろうか…書店もなくなるのか?
    自分の大好きな本を胸に抱えてドキドキしながら待つ喜びも、憧れの作家さんを前に緊張する経験も無くなり、装丁の面白さを楽しむこともなく重さを感じることも、本を閉じた音も聞けない世の中がくる。
    なんて寂しくつまらない世の中なのだろう。
    出版界が生き残るためにも改革は必要だろう。
    それでも、どうか読書人が絶滅危惧種にならない世の中であってほしい。

  • まずは、他の素晴らしい作品を押し退けて本屋大賞2018ノミネート作品という事で、普段の読書よりも厳しい評価となっています。
    また、最初本屋で見掛けた時は『去年の本屋大賞3位の罪の声が素晴らしかった塩田さんの新刊なら楽しみ!』と手に取ったら、『よく知らない俳優さんとのコラボレーション作品か(>_<)つまらなそうな企画本でガッカリ』と読むのをやめた上で、ノミネート作品読破のために読んだので、更に厳しい評価となっています。


    実在する人気俳優・大泉洋さんが「映像化された際に僕が主演できるような小説はない?」と長年尋ねられ続けた編集者がおそらく面倒になって、「もう私がつくります!」と、
    作家の塩田さんへ執筆依頼した事から始まった、エッセイを42万部売る大泉洋さんの人気に乗っかった売り上げだけは抜群の超色物企画小説。

    塩田さんが大泉洋さんの作品をくまなく研究して作った主人公なので、「語り口」やモノマネなどが大泉洋さんに酷似してるらしく、大泉洋さんのファンには嬉しい作品なのでしょう。

    しかし、雑誌の編集者として有能且つ小説を無くしたくないという情熱は素晴らしい主人公は、
    大泉洋さんが実在の編集者に対して『映像化した際、私が主演できるかもしれない小説が書かれるなら、“ベッドシーンくらいあるんだろうね?” 』というリクエストから、
    奥さんとは全く幸せな家庭を築けず、奥さんの精神的な窮地にも全く寄り添わず歩み寄らずに、『有能な部下と、愛情は全くなしの何となくの不倫』をする一面があり、
    個人的には全く共感出来ない屑だと思いました。

    ベッドシーンは小説に不要だと思っていますが、書くにしても奥さんか恋人との愛あるベッドシーンで良いと感じ、
    主人公に 『有能な部下と、愛情は全くなしの何となくの不倫』をさせる理由が全く分かりません。不倫は一般的にカッコ良いと言いたいのでしょうか?


    また、出版社を舞台に繰り広げられる内容も、本や雑誌が売れない現代が舞台なのでひたすら暗く、本や雑誌の未来に関しては救いもなく終わります。
    加えて、帯で『そして最後は“大泉洋”に騙される! 』と煽り、騙し絵の牙という秀逸なタイトルでありながら、
    該当するラストのどんでん返しは『牙』というほど鋭くはなく、『騙し絵』というほど緻密ではなく、どんでん返しに至る経緯を省き過ぎで違和感しかなく、別に大泉洋さん本人とリンクしてるわけでもなく、誇大広告的なタイトルと帯でした。


    更には、表紙と裏表紙と章の合間に全9枚の大泉洋さんの写真が掲載されており、表紙に人物写真が載るだけでもキャラクターを想像して構成する楽しみが壊されかけて嫌なのに、
    章の合間の写真は前の章のラストシーンとリンクさせるような作りとなっており、写真を見た瞬間に『想像で構成した主人公はこんな顔をしてないし、こんなポヤポヤした表情をしてない』と感じ、完全に小説を読みながら想像して構成する幸せを壊されて、非常に不快でした。

    偶然にもこの作品の前後に『校閲ガール ア・ラ・モード』と『彼方の友へ』を読み、3作続けて出版社が舞台の作品だった事から自然と対比するようになり、
    素晴らしかった他の2作に比べて、読書の最大の幸せの想像を奪うという、まともな小説ですらない今作品が、1年の中で厳選された10冊となる本屋大賞2018にノミネートされた事が信じられません。

    同じく2017年に出版されて、同じ舞台の『彼方の友へ』を今作品の替わりに選ぶべきだったと思いますし、
    作品の質ではなく、本当に売り上げと後の映像化の見越みのみで選んだとしか思えない本屋大賞自体に呆れるばかりでした。

  • カルチャー誌の編集長が出版不況と社内政治の荒波に呑まれ、廃刊の危機に遭いながら、それでも編集者としての道を模索する物語。

    知らない小説編集の世界を覗くのはおもしろい。
    と同時に、とことん未来のない出版界の現実に悲しくなった。
    「なぜ編集者になったのか」と自問した主人公が、紙媒体を離れてなお編集者たらんとする結末は、これからの編集者が向かうひとつの道でもあると思った。
    紙は手段であって目的でない。

    最後のトリックは「騙し絵の牙」というほどのものだったのかなぁ?
    さほど騙された! という感はなく、個人的には「そうだよね」とただ頷く着地だった。

  • なかなか食えない1冊である。

    俳優・大泉洋に当て書きしたかのような雑誌編集長・速水輝也が主人公。彼の率いる雑誌「トリニティ」は大出版社・薫風社のカルチャー誌だ。カルチャー誌は旅行やエンタメ、ライフスタイルなど、号によって表情を変化させるのが常だが、文芸畑出身の速水は小説や漫画にも重きを置いていた。こだわりの紙面で、評価する人は評価する雑誌だが、売れ行きはすれすれだ。人々の暇つぶしはスマホでたのしめるお手軽なゲームや動画に流れ、紙の出版物の先行きは厳しい。
    大物作家の久しぶりの大型連載、女性タレント作家の意欲作、新人作家の掘り起こし、ドラマやアニメ、さらにはパチンコなどの他のメディアとのタイアップ。速水はあの手この手を駆使して雑誌の生き残りを賭ける。
    業界には海千山千のさまざまな面々がいる。風見鶏よろしく、社内の有力派閥にすり寄る脂ぎった上司。部下以上、恋人未満の若い野心的な女性編集者。風貌は冴えないが、得体の知れない凄みのある同期。
    出版業界の裏事情を描くその筆致はなかなかの重厚感である。やがて来る、新しい出版の「形」を予言するような内容も読ませる。
    編集者としての実力も経験も兼ね備えた速水は奮闘する。しかし、厳しい時代にもまれ、したたかなライバル出版人たちに出し抜かれ、水底に沈もうとする。

    メインストーリーはそうした物語である。これはこれで単体でも読み応えのある作品と言えるだろう。
    だがここに、「騙し絵」というタイトルがある。プロローグとエピローグで挟むと、この物語はまるで違う様相を見せる。全体を丸ごとえいっとひっくり返してしまうかのような力技である。
    「大泉洋」という、二枚目なのか三枚目なのか判然とせず、何色にも染まりそうな俳優をイメージキャラクターに据えた狙いはここにあるのか、と唖然とする。

    速水の話術やちょっとしたギャグなどは、正直なところ、文章で読むといささか空滑りな感じはある。このあたりは映像の方がうまく行きそうである。
    また、あまりにもステレオタイプな打算的な業界人や、派閥同士の暗闘は、少々戯画化され過ぎて「薄い」感じは否めない。
    だがメインストーリーの重厚さ、タイトルの巧妙さ、映像化を連想させるような本の作りの合わせ技の発想はやはりすごいと言わざるを得ない。

    しかし、と嘆息が出る。
    もしかして、それは裏返せば、「出版業界の裏側」という内容のみでは乗り切れない、ということなのか。
    何だか先ごろ話題になった、全文公開して「キャッチコピーを付けてください」とキャンペーンを打った作品を思い出した。どんでん返しの感覚も少し似ている。
    おもしろかったのだが、いささか複雑である。

  • 図書館で借りたもの。
    初読みの作家さん。
    ある夜、上司の相沢から自身の雑誌の廃刊を匂わされたことをきっかけに、速水は組織に翻弄されていく。
    すると次第に彼の異常なほどの“執念”が浮かび上がってきて……。
    主役の速水は、俳優・大泉洋を当て書きして描かれた。…だけど大泉洋では脳内再生されなかったー!

    出版業界や出版社の内部のあれやこれが詳しく描かれている。
    本はたくさん読むけど、ほとんどが図書館で借りてるから、、この文を読んでいたたまれない気持ちに…。

    『売れっ子作家にとっては、図書館が充実すれば、不利に働くが、売れない作家にとっては図書館の売上が初版部数に与える影響が大きい。これからの作家を支えるという点ではありがたい存在だが、手放しで喜べない現状がある。数年前から公立図書館の書籍貸出数が、販売数を上回る状態が続いている。』


    自分の雑誌はもちろん、なぜそんなにしてまで「小説を作ること」「発表できる場所を残すこと」にこだわったのか。
    その理由が切なかったな。

  • 表紙が大泉さんで作者が「罪の声」の方だったので、どんな話かと思った。雑誌の廃刊が続く出版業界の不況の話など、必死で雑誌を守ろうとする速見が随分とかっこよくオシャレだな~、イメージが大泉さんっぽくないな~(すみません)と思いながら、家族の話や売れない作家の話など切ない話も盛り込みながら、飽きることなく面白く読めた。ただラストになるとわりとお金の問題で生臭い駆け引きがあるので急に展開が変わった気がした。
    そして読後、こうやって手にとって直に表紙を見て、帯や見出しを見て、厚さを見て、パラパラと中身を見て、よし読もうとわくわくできる紙媒体の本って本当に楽しいし、これからもずっと必要なものだと自分は思いました。

  • 大泉洋の当て書きという情報だけで読んでみた。出版業界の話だったとは。大手出版社の高給取りも大変そうだ…。
    終盤までぐいぐい引き込まれて、「ああ、出版業界どうなるんだろう。もうダメなのかな」なんて考えていた。「出版社なんていらないってことですよ」の一言はホント刺さった。
    が、ラストでぐるんっと小説の空気変わって驚いた。変な話、全然違う小説みたいな。中盤の小道具がそんなに活きてくるとは!というのも驚き。個人的には終盤までの空気感が好きだったから、複雑ではあるけど。
    が、これ大泉洋の当て書きって、すんごい納得。ラストまで含めて。そりゃ芸能界で活躍する人たちがピュアホワイトなわけはないよなー。(←偏見)

  • 編集者の本、しかも電子化が進む今の話。
    だけど、それより、速水さん!
    登場人物の動きが目に浮かんで、おもしろかった。
    大泉洋さん、ぜひドラマでやってください!

  • なかなか骨のある小説。プロローグとエピローグが生きている。作家の表現力も素晴らしい。

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