暗殺拳はチートに含まれますか? ~彼女と目指す最強ゲーマー~ (ファンタジア文庫)
- KADOKAWA (2017年12月20日発売)
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感想 : 2件
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Amazon.co.jp ・本 (312ページ) / ISBN・EAN: 9784040725543
作品紹介・あらすじ
VR格闘ゲームで活躍するプロゲーマー高校生・平田鋭一は偶然、同級生美少女・一色葵が「暗殺拳流派」の継承者だと知ってしまう。その技に惚れ込んで、勢いでゲームに誘ったら……なぜか彼女と付き合うことに!?
感想・レビュー・書評
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ハートを揺らす距離は何センチ? みつめて? そらして? 一瞬でした。
「仮想現実(バーチャルリアリティ)」というジャンルがあります。
古くはSFから生まれ、人間の脳に人造の五感を与えることで現実そっくりそのままの認識を与えるそんなギミックは、それに基づいた数々の発想を世に送り出してきました。
果たしてどちらが本当の現実なのか?
創作の側から現実の扉を開く「メタフィクション」や「サイコサスペンス」に新たな切り口を与え、仮想世界からの脱出を目指す「サバイバル・アクション」などなど。
開拓してきたジャンルの例は枚挙にいとまがありません。
時に2019年5月現在、コンピューターのグラフィック描画の速度や精緻さが向上し、五感のうち「視覚」に訴えかける技術は現実でも実用の領域に入ってきて久しいですね。
続き、既存の「ゲーム」にスポンサーが付くことで「eスポーツ」という概念が生まれ、高額の懸賞金によってプロゲーマーという職業がいよいよ将来の夢の視野に入ってきたそんなご時世ですが。
これは、そんな今からちょっとだけ進んだ未来のものがたり。
リアルとバーチャル、従来なら対立していた概念が二人三脚、歩を合わせ青春を描くぜ! という気合の入った物語なのです。
著者は「カクヨム」での連載を経て、同名のこの作品から商業レビューした「渡葉たびびと」 先生。
奇想とほんのりエッチなコメディを盛り込みつつ、地に足の着いた筆致によって読者に衝撃を伝えます。
イラストは『ド級編隊エグゼロス』などの「きただりょうま」先生。
少年漫画に沿いつつ、ソフトエッチでキュート、迫力に満ちた一コマを届け、作品を彩ります。
そんな二人がタッグを組んで王道の「ボーイ・ミーツ・ガール」を描くのです。
今よりちょっとだけ未来、高校生の身空にしてVR格闘ゲーム「プラネット」でプロゲーマーとして二足の草鞋を履くそんな主人公「平田鋭一」は伸び悩んでいました。
同級生にして高校生社長「最上珠姫」というスポンサーもついて上々と行きたい主人公。
しかし、一撃は入れられてもあとには続かず、上位ランカーの壁を前に足踏みをしていたところに現れたのがまさかのヒロイン「一色葵」なのです。
まさかの目潰しからはじまるラブコメディなのです。
一撃に対しては他の追随を許さない鋭一だからこそ、葵の攻撃をさばき、超速で恋人としてお付き合いすることになった出会いはまさに流れるよう。
ここでかわせずに「目を奪われた」読者が大多数だったことは言うまでもなさそうですね。
で、ここからはリアルで初々しく恋人付き合いをするカップルと、ゲームで荒々しく拳の付き合いをする二重生活の幕開けです。
VRゲーム「プラネット」内ではふたりはアバターにチェンジ、デザインとネーミングが切り替わるんですが、あくまで二者の関係は対等、語感からして地続きという感触がたまりません。
詳細は伏せますが、まさにライトノベルだからこそできるイラストと文章の協同体制と考えると本当にたまりません。
この中でヒロインが格闘漫画やゲームにしか見られないような「暗殺拳」の現代の継承者という設定を伝え、強さと孤独の理由をしっかり教えてくれるのが上手い。
あと、先も言ったような気もしましたがこの小説、「ゲーム」と「リアル」の価値がどちらかに偏るわけでなく、等価にいい意味で高め合うように描かれているのが気持ちいいです。
「ゲーム」に「リアル」では得られなかった自己実現の場を手に入れ、かと言ってそこだけでは安住せず「リアル」でもしっかり楽しくデートをします、そしてそれが「ゲーム」を楽しみ勝つ上で大事です、相互補完です
と、書くことでふたつの舞台と「勝つこと」と「楽しむこと」の一見、二律背反していることの両取りって欲張り感を実現しています。
まさに新時代のライトノベルって感じでとても好みですね。
ヒロイン「一色葵」の完成度も高いです。
きまぐれにどっか行っちゃいそうな儚さを見せつつ、しっかり微笑んで目潰ししてそこにいる現実感は無二。
可愛らしさとしなやかさ、強さを「野良猫」ってあだ名に象徴して詰め込んで、ビジュアルもテキストもついてく感じは本当の本当に上手い。
主人公「平田鋭一」も彼女をエスコートしつつ、等身大の視点を提供してくれているので、ふたりのコミッショナー「最上珠姫」と合わせてスリーマンセル。
この辺り、主人公チームって形でがっつり結びついていて役割分担している感じが好きですね。
人称の提供と王道の主人公、作劇上の華を務めるプリマドンナ、舞台を円滑に回しつつ座長として存在感を発揮、と。
続き。
すれ違う個性的な人々やゲーム的なギミックが格闘に乱入する楽しさ。
打ち合いが間を演出し、一瞬の交錯が決着をつける迫力ある格闘シーン。
などなど……見どころは本当に多いのですが、続きは次巻で触れたいなと思います。
最後に。
「戦うこと」と「楽しむこと」をストレートに謳い上げつつ、今まではちょっと暗いところにいたちょっとだけ変わった舞台に光射す解放感は何物にも代えがたかったです。
仮想現実もまた現実の一部なんですよと包み込み、互いのどちらかを否定するわけでなく肯定したかったという作者の思いはしっかり伝わった気がします。
紛れもない快作でした!詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
これはなかなか面白いアイディアの作品だった
現代社会で暗殺技術を持ったキャラが生活しているという設定の漫画・ライトノベルはそれなりの数が存在している。それらの多くはその暗殺技術を活かすバトルモノか、暗殺技術とのギャップを狙った日常モノのどちらかであるような気がする。そうなってしまうのは、やはり普通の現代社会に暗殺者が溶け込むのが難しいからだろうね
ところが、本作では現代社会に溶け込めないはずの暗殺技術を体感型対戦ゲーム「プラネット」の場に落とし込むことで上手く活かしている。
更に葵は暗殺技術を持っているゆえに周囲と触れ合えなかった、皆と遊べなかった孤独感があることで、より「プラネット」を楽しめるようになっている
暗殺技術は相手の命を奪う技術、それを活かそうとすれば本来なら命の遣り取りが必要となってしまう所、本作ではそれを遊びの場で活かせるようにしたアイディアがとても良い
タイトルではチートなんて表現してるけど、その暗殺技術で倒された側もとても楽しそうにしていたのが印象的。それが出来るのも全ては本作で展開される勝負が「遊び」だからなんだろうな
そして物語は鋭一の勘違い告白から始まる。個人的には勘違いで恋人関係になってしまう導入ってそれ程好きではないんだけど、展開が進み何故葵が鋭一の告白を受けたのか説明され、最終的には葵の全てに惚れた鋭一が告白し直す展開があることで何となく許せてしまった
というより暗殺技術を持ち周囲に壁を作っていた葵を「プラネット」の世界に引きずり込むにはそれくらいの導入がないと無理だったのかもね
それに勘違いから恋人関係が始まるのは確かだけど、暗殺技術継承者なんて凄まじい背景を持つ葵への鋭一の対応って、基本的に思い遣りが有るし何よりもその技術を恐れないし否定もしないんだよね。なし崩し的に始まってしまった関係だけど特殊な背景を持つ葵には鋭一以上にマッチする恋人は居ないかもね
細かい部分でツッコミどころが多いのは気になるけれど、今後の展開についても期待したくなる内容だった
著者プロフィール
渡葉たびびとの作品
