蜘蛛ですが、なにか? 14 ドラマCD付き特装版 (カドカワBOOKS)

著者 :
  • KADOKAWA
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本棚登録 : 9
レビュー : 2
  • Amazon.co.jp ・本 (324ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784040739328

作品紹介・あらすじ

小説14巻とオリジナルドラマCDがセットになった特装版です。

▼14巻 あらすじ▼
世界の害悪であるエルフを滅ぼすため、最後の決戦に向かう魔族軍。一方、エルフ側として参戦するシュンたちは、死んだはずのクラスメイトや親友との再会に、大きな決断を迫られることになり……。
ついにエルフの里の戦い、開戦! 魔族や転生者の運命やいかに……!?

▼ドラマCD あらすじ▼
古典の授業を受けていたはずが、気づけば異世界に転生していた日本の高校生たち。学園で再会したシュンたちは、互いが持っている情報を交換し始める。ユーリの固有スキル『夢見る乙女』の能力を試してみることにした彼らだったが、それは生死を懸けた悪夢のようなダンジョン探索の始まりで……。
一方、悠々自適な魔族領ライフを送っていた「私」は、いつのまにか見知らぬダンジョンに放り込まれてしまう。しかもまた“蜘蛛”に戻ってるんですけど……!?
転生者たちは、無事ダンジョンを攻略できるのか――!?

感想・レビュー・書評

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  • いま大人気の転生ものですが、普通、侯爵夫人とかに転生するのにこの女子高生が転生したのはなんと蜘蛛!?
    まわりはみんなお互い餌の環境のなか、文字通り食うか喰われるかの戦いをしながら彼女は必死に女子高生だったときにはしたことないくらい頭を使って生き延びようとするのです。
    必死なんですが、時々立ち止まって内省したりするのが妙に可笑しい。
    「12国記」の同じく無感動だった女子高生も、別の国に飛ばされ、戦う中で生きることに覚醒するのですが、これはそのおちゃらけバージョンでしょう。
    30年たってここまで成熟した、と言ってもいいのか……なぁ。

    2021/03/31 更新

  • 冒険の夢、郷愁の夢、共闘の夢、きっと本当は……見果てぬ夢。

    いよいよアニメ放映開始と歩を同じくとし、この十四巻が発売されました。
    書籍単独の通常版のほかにバリエーション違いとして、初の「ドラマCD」付き特装版という形で発売されたのが本商品となっています。

    ドラマCDを抜きとした十四巻単独の内容としては通常版の方のレビューで述べさせていただいたので割愛させていただきます。
    よってこの星四つの評価はドラマCD単独に向けたものであることをご承知ください。

    収録時間は58分ほど。
    主人公「私」が孤軍奮闘するパートと、同じく現代日本からの転生者「シュン」たちが共闘して苦難に立ち向かうパートに分かれ別々に進行する、本編を彷彿とさせる構成を取っています。
    少なくとも二クール放映されるアニメもそれに則ったものでしょうか。

    ところで先に注意事項を申し上げておきます。
    書籍本編は推定クライマックスパートに入ろうという頃合いであり、また視点人物が切り替わりつつ、複数の登場人物の行動が複雑に絡み合っていくこの物語『蜘蛛ですが、なにか?』。

    ファンの贔屓目ですが、軽快ながらに壮大、勇壮にして悲壮なこの物語のことはネタバレ抜きで最初から楽しんでいただきたいので十四巻から読み始めさかのぼることは全くおススメできません。
    とは言え、ドラマCD単独を取り上げますとむしろアニメから入る新規ファン層向けであるように見受けられます。
    書籍はいったん置いておいてドラマCDの方だけを聴いて楽しむ試みは問題ないでしょう。

    一応、主人公「私」視点を聴く上で押さえておいた方がいい要素を以下列挙しておきます。
    この作品において時系列を語るのはかなり難しいのですが、ドラマCD中、ネタバレ要素を唯一取り上げるとすれば……。
    主人公「私」が紆余曲折を経たのち、ちょっと禍々しい響きの「魔族領」なるところに辿り着いたタイミングという点が挙げられるでしょうか。

    その紆余曲折については記すと長くなるので省略しますが、少なくともアニメ序盤におけるダンジョンの過酷なサバイバル生活を潜り抜けたあとの時間軸であること。ならびに酸いも甘いも噛みしめ人間的(?)にひと回りもふた回りも成長したという前提は押さえておいて損はないかと存じます。

    すなわちひと段落もふた段落も、なん段落かついてから、ご褒美とばかりの休息、風雲急を告げるパートが多いこの作品において珍しい「凪」のような時間が繰り広げられるのですが……。

    だからこそ、有閑タイムを過ごしていたところを急転直下、いきなり意味不明なダンジョンに放り込まれるという突拍子もないシチュエーション下でも即座に適応してのけたのでしょうか。
    即座に一人ノリツッコミな寸劇に移行できたのも下積みの経験があってかもしれません。

    時に、このドラマCDのシナリオは半分真面目、半分ギャグ時空なお祭り回のような仕様になっています。
    小説本編がこの時のことを落穂拾いのごとく取り上げてくれたのなら評価は青天井なのでしょうが、先のことはわかりはしないので現時点での評価と割り切ることを、平にご容赦ください。

    先に申し上げた通りに先入観を持たない新規層の方々の方がいっそう楽しめるでしょうね。
    声優さん個々人のファンの方が作品を知らずに買い求めるという意味では、シナリオを楽しむための予備知識不要というのは利点であるので良し悪しかと。

    全く知らないのも問題ですが、前提知識として知っておくべきはアニメ公式WEBサイトをざっと見した程度、つまりは放映開始直前までの開示情報程度でよろしいかと存じます。
    なおシナリオを担当されたのは原作者「馬場翁」先生ではなく、アニメの方で脚本家としても関わっておられる「広田光毅」氏という点。監修が入っているかないかといえば半々といったところですね。

    先に細部をあげつらっておくと。
    主人公の口から出ないとおかしいだろうレベルの固有名詞が出ない、キャラクターの表層をなぞった描写に終始する、裏事情や今後の展開を知っていると本編と矛盾する……など、それなりに際どい言動は目立ちます。
    本編の一部として捉えるにしては齟齬があるため、「正史」として捉えることはわりと難しかったりします。

    反面、使える情報が限られているなか、見事にキャラ各々に見せ場を作りつつ基本コミカル、だけど〆はしんみり……。話としては基本を押さえており、大筋を追っていく分には特に問題はありません。
    それと、構成が全編しっかり詰められているため、案外差し込む余地のない「日常回」がここに来てやってきた意義は大きいでしょうね。現時点の本編でいいとこなしな面々がここに来て魅力を発掘してもらえたのは嬉しい。

    それでは前置きはここまで。
    ここからは軽く本ドラマCDの内容について個人的な感想を交えつつ紹介していきます。
    副題にある通り、今回は主人公をはじめとした異世界転生者達に各人ひとつずつ与えられた特典スキルの内からひとつ「夢見る乙女」が巻き起こした騒動が主題となっています。

    ちなみに、情報公開として足並みを揃える意味合いもあったのか。
    本商品の発売一ヶ月前に発刊された設定資料集『蜘蛛ですが、なにか? EX』で本編で日が当たった/当たらなかった一切合切ひっくるめて総勢二十六名分すべてが紹介されていたりします。

    で、今回がそのうちひとつ「夢見る乙女」の凶悪性がこの上なく描かれます。
    気になるその効果は保有者が眠っている時に見た夢をストックしておき、それをダンジョンとして異空間上に実体化させるというものです。ただし素体が「夢」なだけあって保有者に制御できない部分も大きい。

    戦闘や日常に役立つ利便性の高い能力ではないものの、舞台構築という意味一点に的を絞ればおそらく二十六名中一、二を争うこと必至でしょう。
    ぶっちゃけ震撼しました。コレ、本編に出てきていいレベルの能力じゃない。

    とは言っても今回に限っては危険は危険なんですが、バラエティ番組やアトラクションに挑んでいるような感覚と言いますか、視聴者を意識した体当たり企画的な描かれ方をしています。
    よってか、ダンジョン内で待ち受けるトラップやモンスターたちを相手にしてもどことなく緊張感がありません。一応公式設定ではあるのですが、前述した通りに本編から独立したお祭り回としての趣はやはり強いでしょうね。

    実際、出現した空間に単身巻き込まれたか、集団で挑んでいったかの違いこそあれ主人公「私」と「シュン」たちは同じようにカオスな展開に頭を悩ませる羽目になるのだから納得ですね。
    二陣営ともに等しく、しっかりボケとツッコミから成るハイテンション・トークを繰り広げてくれます。

    で、まずは作品のすべてを引っ張ってくれる我らが主人公「私(CV:悠木碧)」について。
    前提はさきほども語りましたが、彼女はハイテンションなノリで声と音だけで伝えなければならないドラマCDにしっかり乗っかってくれます。メタなネタも自ら振っていくポジションで正しくやりたい放題。

    ひとり芝居を感じさせないように、声の幅が非常に大きく取っておりリスナーを飽きさせません。今後の演技の幅にも期待を持たせていただけていますね。間の持たせ方という意味ではアニメ顔負けかもしれません。

    ただし、作品序盤(書籍一~三巻)の演技に寄せた感はあるのでどうも長じた後の彼女だとは想像しづらい。
    もっとも主人公が作中で転機を迎えた後でも演技がガラッと変わるか否かも想像しづらい、実際にお出しされるまでのお楽しみだったりします。その辺は自称コアなファンこと私のわがままですね。
    どうぞ余談とばかりに、お受け取りください。

    続き、人間サイドについて思ったことを紹介ついでに軽くコメントしていきます。
    今回は前世では同じ高校に通う生徒と先生で、諸縁あって異世界でも同じ学園に通っている以下六名の男女の出演となります。サプライズ出演などは特にないのでご了承ください。

    ではまず、こちら側の主人公「シュン(CV:堀江瞬)」。彼はニュートラルな普通の少年です。
    普段は周りに押され気味で気弱かつ巻き込まれ系の演技ですが、王道の主人公タイプなのでシナリオのクライマックスにおけるベッタベタなシチュエーションにもガッチリとハマりますね。

    その親友にして、前世男子で現世女子なTSヒロイン「カティア(CV:東山奈央)」はしとやかな令嬢と蓮っ葉な少年を自然体で切り替えつつ、男性陣と女性陣の両方にその時々で馴染む立ち位置が光ります。
    どっちが素なのかその時々の場面ではわからなくなるってのがポイントですね。たぶん本人も意識していないタイミングが結構あるというのがまさに自然な演技という形で素晴らしかった、と思います。

    ペット枠に転生してしまった「フェイ(CV:喜多村英梨)」はキタエリによる安定のサバサバ系女子ですね。
    言いたいこと言ってくれる枠、現世ドラゴンとは言え純正女子の視点からのツッコミはやはり貴重かと。
    明確なツッコミ枠がいてくれないと後述の「ユーリ」のボケは吸収しきれなかったと思うので敢闘賞でした。

    それから今回結構目立ったのが転生で恵まれたため増長慢心気味な俺様系男子「ユーゴ―(CV:石川界人)」。
    俺が俺がタイプのため、前に突出しぎみなところは本編でも難点でしたが、今回に限ってはその危うさも見えつつ敵を切り払う勇猛さ、頼もしさという形で現れた上、郷愁に心揺れる一幕も見せた彼の株が地味に上がりました。

    現世に輪をかけてアニメキャラ風に作ったようなキャラが頼もしい岡ちゃん先生こと「フィリメス(CV:奥野香耶)」ですが……。転生が同時期のため、現世では同年齢(外見は一回り幼い)というギャップがデカい。
    また、真意を見せずなにか底知れないものを隠している貫禄を見せないといけないので大変でしたねと言っておきます。ゲテモノ好きでアニメオタクっていう彼女を語る上で外せない点を拾っておられたのも良かったです。

    最後に異世界最大の宗教の聖女候補という――華の中に何かきな臭いものも感じる肩書を持つ、同じく転生者「ユーリ(CV:田中あいみ)」。
    第一声から感じた印象としては宗教に徹底的に傾倒していることもあってなんだか空虚だな……というものでした。けれど、同時にキラキラしたなにかが詰め込まれていると感じるなど、つまりは可愛いけど怖い。

    先に挙げたスキル「夢見る乙女」の保持者が彼女ということもあって今回のドラマCDで間違いなく株がストップ高クラスに跳ね上がりましたね。彼女が今回の舞台を提供しただけでなく、彼女自身も周囲からズレた天然ボケっぷりを単身全力でばら撒いたこともあり、シナリオで果たした貢献はまさしく段違いといえるでしょう。

    さらに言えば苦手なものを相手にすると全力でうろたえる女の子らしさがあったり、望郷の思いは人一倍だったりということが涙ぐむ演技でわかったりと、今回のドラマCDの主役は彼女であると思わせるものがありました。

    と、まとめるに。
    一人ノリツッコミが楽しい安定の「私」パートと掛け合いの楽しさが光る「人間」パート。
    状況の過酷さとは裏腹に内心はお気楽軽快に進む前者と、一応緊張感は保ちつつも仲間内の空気で乗り切っていく後者。双方の温度差を楽しむという試みはしっかり成功しているように思えました。

    それとちょっとしたお蔵入り情報の開示があったりで最新刊まで読んだ読者にも飽きさせない工夫もありました。
    あとは巨悪を打倒し、新展開を臨む14巻に付属するという観点に立てば、特にユーリの描写補足がされた意味合いも大きいですね。先の展開がさらに読みづらくなりました。
    あと、シュンの周りの面々、相当濃いな、よく隠れてたな……ということがわかったのも収穫かと。

    さてもさても。
    夢といいつつ、しっかり現実にも影響を残すタイプの話だったのでこのエピソードが『蜘蛛ですが、なにか?』という作品と世界観にどのような足跡を残すのか? という一抹の不安もあるはありますが……、いい夢でした。
    はい、悪い夢ではなかったですよ、と。それだけはなんとなしに言えたのですね。

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著者プロフィール

小説投稿サイト「小説家になろう」に2015年5月より『蜘蛛ですが、なにか?』を投稿開始。初投稿作品だったが一躍人気作になり、本作で書籍化デビュー。アニメ化も決定しており、WEB版はPV数4億6000万を超えるヒット作となっている。(2019年9月現在)

「2021年 『蜘蛛ですが、なにか? 14 ドラマCD付き特装版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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