亜人シェアハウス1 (1) (ドラゴンコミックスエイジ)

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  • KADOKAWA (2024年4月8日発売)
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Amazon.co.jp ・マンガ (162ページ) / ISBN・EAN: 9784040754000

作品紹介・あらすじ

コミュ障で社畜な佐藤計は、たわいのない会話ができる友達を作るべくシェアハウス入居に応募した。
住んでいたのは氷見山千雪(雪女)と蛇ノ目メメ(メデューサ)と伶夢・インキュリア(インキュバス)の3人。
そこは人間には目に入らないはずの亜人専用シェアハウスだったーー。
人間とはちょっと違う亜人との暮らしは戸惑うことばかり!
計は種族の壁を乗り越え、絆を深めることができるのか…?
前途多難なシェアハウス生活スタート!

感想・レビュー・書評

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  • 夢と現と、男と女、どっちでもいいけど、そうじゃないとイヤだといえる君がいる。

    結論から言えば『ぜんぶきみの性』の「浅月のりと」先生、性癖フル詰め合わせセットのような漫画でした。
    つまりは愛と情熱がマシマシで最高ということです。
    それとレビューとしては、裏表紙のあらすじ+帯などの情報にプラスαする形で語っていく方針です。これから手に取られる方の邪魔にはならないでしょうが、どうしても多少はネタバレが混じりますのでご注意を。

    なお、作品としてはタイトル通りに魔物の血が入ったヒロインたち(軽く「モンスター娘」のエッセンスも入っています)との同居生活が軸になります。この手のジャンルに親しんだ方にとって説明は不要でしょう。

    ただ、独自色も強めに出ているため先行作品との区別化は十全にできていると考える所存です。
    とりあえずジャンルとしてはわかりやすくハーレムものでラブコメディと捉えてもいいのでしょうが、一巻表紙を飾る第一のヒロイン(?)「伶夢・インキュリア(愛称:レム)」がいきなり持っていきました。

    後述しますが、本作は主人公「佐藤計」こそをヒロインと定義しても間違っていないと思います。
    佐藤さんは自他ともに認める凡人男性ですが、なんというかヒロインを攻略するだけじゃなくて、ヒロインから攻略される立場も似合うんですよ。私が読んでて思った感想に過ぎないのですが、なぜだか。

    そんなこんなで佐藤さんが人外ヒロインたちと同居する渦中に置かれる中でも、好意の矢印が双方入り混じる。渋滞気味の人間模様をさっそく繰り広げてくれました。
    小悪魔攻め、ツンデレ、天然クール。恋愛に向ける性格は人それぞれな中で佐藤さんは気弱受け……かなぁ?

    個々の話のページ配分こそ控えめでしたが、主人公が現状を受け入れて周囲のメンバーの間に溶け込むまでの流れもスムーズで説得力もありました。くわえてコメディの命であるテンポも良好ということになります。
    さっそく双方が双方を振り回してくれてるのでわちゃわちゃとしても申し分なかったです。

    時に、アパートなどの集合住宅ならもっとたくさん同居人をお出しできるのでしょうが、ルームシェアなだけにひとまずは属性過多気味な以下三人のヒロインとのドタバタコメディが軸になるのかもしれません。

    そんなわけでヒロイン三人(+主人公)の属性について軽く触れておきましょう。
    まずは「TS(性転換)」もできる男の娘インキュバス(時々女の子)、前述の「レム」くん。
    それから「AR(年齢退行)」、温度変化でオトナとコドモを行ったり来たりな雪女(&主人公の職場の上司)「氷見山千雪」さん。最後に「男装」してる長身巨乳メデューサ(天然クール)の「蛇ノ目メメ」さん。

    ……などと色々ぶっ込んでますが、その渦中にいる主人公は本当にいい意味でパッとしません。
    けれど主人公はナイスなキャラでした。ひたむきで真面目な精神性の一点突破で信頼を勝ち取ったのもうなづけましたから。その上でコミュ障で過労気味なので同性異性問わず距離の詰め方がバグってるのが面白い。

    そして、小悪魔じみた男の娘として振る舞うだけに遠慮なく肉食系やってる「レム」くんが強い。
    インキュバスとサキュバスが兼ねることもあるという伝承をしっかり拾ってきてますけど、インキュバスを基本にするというのはこの種のレーベルにしては珍しいですね。まぁ男の子の状態でもガチで艶っぽいのですが。主人公がなんというか受け身なので、そっちの方がしっくりくるってのもまぁ確かな話だったりします。

    と。物語がはじまったばかりということもあってまだ様子見段階ですが、けっこう際どかったですねー。
    それもこれも浅月先生がティーンズラブでも実績を積まれた上で、全年齢向けというラインも心得ていらっしゃる漫画家さんだからこそなのかもしれません。ギリギリを攻めた色気といえます。

    とは言え主人公の佐藤さんはラッキースケベはしても、そこからは踏み込んでこない弱気な男です。
    なので先ほどの繰り返しですが、彼自身も受け身なヒロイン枠に転じてる部分もあります。そこが上手い。
    男性を基本にするレムくんの性別がどっちにも転び、どう功を奏すのかがわからないのも強みでしょうか。

    さて、話の筋にも軽く触れておきます。佐藤さんは天真爛漫だけど危ういところもあるレムくんの内面にさっそく踏み込んでしまい、勘違い込みですが将来のパートナーとして認められていくことになります。
    レムくんは現実は元より夢の中ならなおのこと自在に振る舞えるので、佐藤さんと自分の双方女体化して攻めに転じ距離を縮める。だなんてアダルティなシチュエーションを自然にに組み込めるのはすごいですよ。

    淫魔・夢魔はどうしてもそういうイケないこと込みで話を作っていかないと元来の特性を活かしきれない中、一般作品ではどうしても一線を越えるところまで踏み切れないというジレンマがあると私は思うのです。
    その点、夢という限定空間から読者&主人公を次第に慣らしていく試みはさっそく成功しているかもしれません。具体的には最初はレムくんが女の子の状態、異性間のそれから同性同士へハードルを下げていく形で。

    その上で夢の中というワンクッションを挟んだとはいえ、いつまでもキスシーンだけでは終わらせませんよ? とばかりにレムくんはさっそく踏み込んでくれました。私個人としてはキスシーンはキスシーンとして大事に描いてくれそうな予感を感じるなど、作者に信頼を置けるのですけれどね。

    あと補足しておきたいところとしては18禁作品では無双するけれど、本来そんなに強い魔物ではないはずのインキュバス/サキュバスが亜人のコミュニティーの中で特別なものになった理由に唸らされました。
    なるほど亜人だ。この作品のタイトルは亜人でなくてはならない。

    今後の話の広げ方としては、インキュバスが下級悪魔とされている以上はほかの悪魔が取っ掛かりになりそうですが、これは独り言として置いておきます。
    タイトル通り、奇妙なシェアハウスの住人たちによる日常モノに終始してもいいでしょうから。

    大まかなレビューとしては以上になります。
    現状、ヒロインが三名というのは一気に出すには多いけど、今後を考えるとちょっと物足りない感じなので二巻以降どうなるかはわかりません。シェアハウスの縛りをどう活かしてくるか、楽しみではある一方で。

    ともあれ、一巻時点で主人公含めたメインキャラの性格、性質、行動原理、心の芯たる部分をすっきり読者に飲み込ませてくれたあたり、作品としては強いんですけどね。さらに今後もキャラの深掘りと話の広げ方が期待できるといったところでしょうか。ラストのなんとも言えないシュールな引きも好みだったりします。

    キャラ紹介としては佐藤さんとレムくんに傾き過ぎていてほかふたりのヒロインに手が回らなかったことを申し訳なくなる気持ちもありますが、その辺は続刊のレビューで機会がありましたら。
    「TS(性転換)」ネタに釣られて手に取った漫画なのですが、そこを呼び水にした「ゆでガエル理論(ゆっくりとした環境変化に慣らされるいつしか手遅れになっている法則)」にしてやられた感があります。

    心の琴線、性癖に触れるか否かは人それぞれなことは変わりません。
    けれど組み立て方が巧みだったので、TSをきっかけとしてほかの属性に引き込まれたわけです。
    他方、寂しいことを言っておくと、私は今後も「男の娘」やら「BL」に積極的に興味を持つことはないかもしれません。面白い作品が結果的にそうだったなら別にいいというスタンスを今しばらくは貫くと思います。

    しかし総評として、そのケのない読者であってもこの子は男の子でもいいや、いや、だからこそイイ! って引き込めた、パワーあふれる漫画だとも述べておきます。
    なのでここはひとつ、本作のセールスポイントとして強弁! する形でお暇させていただきますね。では。

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著者プロフィール

主に成年向けコミックで活動中の作家で、一般向けコミックは今回が初めて。同人誌などで描いていた「性転換モノ(TS=トランスセクシャル)」ジャンルで一般誌デビュー。

「2023年 『ぜんぶきみの性 6』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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