人工知能は人間を超えるか ディープラーニングの先にあるもの (角川EPUB選書)

著者 :
  • KADOKAWA/中経出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (264ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784040800202

作品紹介・あらすじ

グーグルやフェイスブックが開発にしのぎを削る人工知能。日本トップクラスの研究者の一人である著者が、最新技術「ディープラーニング」とこれまでの知的格闘を解きほぐし、知能とは何か、人間とは何かを問い直す。

感想・レビュー・書評

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  • 人工知能は、3回目の春を迎えている。
    春をもたらしたのは、ディープラーニングと特徴表現学習。これにより過去2度のブームで終わるのではなく、大きな飛躍の可能性が出てきている。

    「AI vs 教科書が読めない子供達」から本書へ。
    本書では、AIの可能性についてより詳しく説明されている。

    ブレイクスルーは、認識・運動の習熟・言語の意味理解。これだけ読むとよくわからないが、本書を読むと凄さがわかる。

    これは、人間が当たり前に出来ていること。
    赤ん坊から幼児にかけて出来るようになることが、AIはとにかく苦手。2度の冬は、この峠を乗り越えられなかった。

    犬!猫!って認識するのが難しいとか、長いもの!短いもの!丸いもの!角ばっているもの!が混ざっているとアームで握るのも難しい、木と森の違いのような当たり前のことの意味がわかならない 等

    むしろAIは、大人にならないと出来ない、難しい法律やレントゲンから診断は得意というからパラドックス的で不思議。

    これからわかることは、専門性は持たせられるが、汎用性を持てなかったということ。少しでも新しいこと(例外)をしようとすると人間のお膳立てが必要になってしまう。

    このお膳立てがとにかく手間がかかるらしい。
    ところが、お膳立てなしにAIが自分で学習出来るようになったというのだからスゴイ!

    AIの苦節60年の歴史を変えるかもしれないのだから、すごく興奮する。

    2015年の時点では、筆者はAIはまだ宝くじと言っている段階。当たるかもしれないし、当たらないかもしれない。それでも当たれば大きな社会変化を生む技術と。

    現在の状態にもすごく興味が湧いてくる。
    本書が発売された年に、AIが囲碁のチャンピオンに勝っているが、これは想定よりだいぶ早いらしい。

    認識の峠を越えたAIが、どうなっていくのかとても楽しみ。

  • 人工知能開発における”ディープラーニング”の概念は、情報関係を学ぶ子供から教えてもらいました。

    人の脳の中も、多層で複雑なニューラルネットワークと外部感覚器官からの刺激の間の関係で成り立っていると思うのですが、この機能を再現することがいかに困難であるか。人工知能の機能構築を考えていくと、逆に脳科学の世界と密接に係り、自分たちの内側にある世界を記述することが複雑で困難であるかを改めて理解することになる。

    物を他の物から区別して理解すること(特徴量を見出す)、そして言葉の概念を付与していく。区別された事象に意味のネットワークをどのように構築していくか。象徴的には「猫を見て、猫と理解すること」を機械の中で再現することが、どれほど困難なことであったのか。

    従来の人工知能のアプローチ(IBMのワトソン、ディープブルーでさえ)では、多くの入力応答系の教え込みが必要であり限界がある。機械が自分自身で特徴量の抽出、意味ネットワークを構築していく機会学習のアルゴリズムがディープラーニングの意味するところ。

    「シンギュラリティー(特異点)」という考えがあるようで、これは人工知能が自分の機能以上の人工知能を自己再生できる時点を表した物。これ以降は指数的に人工知能の能力が爆発していくという懸念。ターミネーターの世界を想像しつつ、そうは話が単純ではなく、人の思考や創造性はもっと複雑でしなやかだと思う。I will be back!

  • 2015年の作品ですが、人工知能の研究の歴史と現在の到達点について、順を追ってわかりやすく解説されています。決して煽ることなく、それでいて、ダメ出しもすることなく冷静に人工知能について書かれているのが印象的です。

    機械学習、ディープラーニングといった技術については、他の本も読みましたが、本書を読んでもまだストンと腹落ちしたわけではありません。(何となくのイメージは掴めたようですが)
    人工知能が人間を征服するかという問いかけに対しては、知能で人間を超えることはあっても、人工知能は生命ではなく、生命体として人間を超えるような自己複製を短期間で繰り返すことはあり得ず荒唐無稽と一蹴されてたのには、なるほどなと思いました。それよりも怖いのは、軍事応用や産業上の独占であるという指摘も、頷けました。

    やはり難しい人工知能ですが、少しでも概要をわかりたい方にはお勧めの1冊です。

  • 4年以上も前の本になるが、人工知能の現状理解のため、松尾豊さんの頭の中を覗いてみたく読みました。
    ディープラーニングとはどのようなもの(何ができて、何ができないか)で、近未来に実現できそうなことと暫くできそうにないことを知っておきたいということもありました。

    専門家でない人はいたずらに人工知能を過大評価するし、そうでないものも人工知能と言ったりする。
    逆に松尾さんのような専門家は困難さがよくわかっているだけに技術を過少評価しがちだが、正しい人工知能の理解のためには信頼性が高い。
    PythonやTensorFlowをいじくりまわしてみれば、もう少し理解度が増すのでしょうが、そこまで深入りするわけにもいかないので概要理解だけ。

    本書を読んで、人工知能がそう簡単にはできそうにないことが自分でも判断できるようになった気がします。
    ・手足を伸ばして仰向けに寝ている子猫をカワイイと感じること。
    ・「お前なんか大嫌いだ!」が、本当は「大好きだ!」ということを理解すること。
    などは超難しいでしょうね。

  • 本著は人工知能やディープラーニングの初心者向けの本と言える。人工知能の初心者向け本としては、棋士の羽生善治氏が書いた「人工知能の核心」が良書として挙げられる。こちらは、テレビの映像が流れるように書かれているのに対して、本著は人工知能の定義、歴史、ディープラーニング、社会への影響といった具合で教科書的に書かれている。

    結論を先に言うと、仕事で新規事業やサービスを検討している場合や自分の会社に対してどう影響してくるのか知りたい場合は、松尾氏の本著が良いだろう。雑学として、あるいは人間の知性とは何か知りたい場合は、羽生氏の本が良い。

    どちらも良書なので、できれば両方読むのが良い。順番をつけるとすれば、羽生氏→松尾氏と読むと分かりやすい。

  • 2015年頃読んで、初めてディープラーニングの触りを理解した本。素人向けの入門書としてはとても良いと思います。
    ちなみに、ちょうどこの頃に娘が一歳くらいだったので、子供の成長と具体的にイメージを比較しながら読んでました。そして、改めて人間ってすごいんだなぁー、と思ったりしてました。

  • 人工知能の歴史、課題など著者の経験、思いと合わせて展開。
    ド文系の私には機械学習の項目からだんだん理解が怪しくなってきた。
    ただ、すごいスピードで人工知能はその能力が高まり、身近に広がってきている。倫理の問題、仕事での活用の仕方、子供達をどう教育して行くか、自分で考えて行かなければならない。

  • 松尾豊「人工知能は人間を越えるか」読了。AIの定義や歴史がまとまっていてAIに対する過度な期待や誤解が解消された。2015年発行との事だが初学者には十分な内容かと思う。著者のAIにかける思いが伝わってきて感動を覚えた。昨今のAIの趨勢にも数多の技術者の思いが籠っていると感じ見方が変わった。

  • これだけ流行っている人工知能(Artificial Inteligence)。何か知っておかないとなあと思って購入した一冊。勝手に勉強してどんどん頭がよくなるというぼんやりしたイメージしかなかったけど、なんとなくそのアルゴリズムを知って、人工知能が人間を支配するのはまだまだ先だなと思った(AIには欲望がないから)。また、人工知能は1950年代から開発されていて最近のブームはあくまで特微表現学習、ディープラーニングの分野であることを知った。本書から人工知能の開発は知能の定量化、アルゴリズム化でロマンのある分野だと感じたし、それと同時に知能に関わる反面、倫理や哲学にも絡む、サイエンスだけではない分野であることに非常に興味を感じた。そう感じられたのも著者の人工知能に対する熱量が伝わってきたからだと思う。ただニューラルネットワークやディープラーニングの考えがいまいちつかめなかったので、pythonとかで手を動かしながらなにかやれたらなあと思った。あと、人工知能と飛行機の例(飛ぶ原理をはばたきではなく、揚力に気が付いたこと)がアイデア発想の原点として今更ながらすごくぐっときた。


    特微量:機械学習の入力に使う変数のことで、その値が対象の特徴を定量的に示す(p46)

  • AIについて語る前に知っておかなきゃ行けないことがてんこ盛り、分かりやすいし非常におすすめ。

    松尾さんはただのaiバブルとなることを避けようとしている。そのために発信することの重要性も分かってて色んな団体を運営したり著作を出してるんだな、というのがヒシヒシと伝わってきた。
    人工知能の発展を時系列に紹介していて、その時代ごとの新発見をどこが凄いのか分かりやすく説明してくれる。

    G検定とるぞぉ。

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著者プロフィール

1953 年、新潟県五泉市生まれ。1978 年東京教育大学教育学部芸術学科(彫塑専攻)卒。1989 年、毎日新聞社主催・毎日郷土提言賞富山県優秀賞受賞。
著書に『新潟街角の芸術̶̶野外彫刻の散歩道』(新潟日報事業社,1987)、『富山の野外彫刻』(桂書房,1991)

「2015年 『パブリックアートの展開と到達点』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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