スマホが神になる 宗教を圧倒する「情報革命」の力 (角川新書)

著者 :
  • KADOKAWA
3.41
  • (3)
  • (3)
  • (10)
  • (0)
  • (1)
本棚登録 : 67
感想 : 14
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (216ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784040821146

作品紹介・あらすじ

IT社会になり、SNSが人間関係に激しい変化をもたらす中、スマホ向けゲーム「ポケモンGO」が社会現象になった。アメリカで無宗教者がこの20年で8%から18%に急増、その背景に過剰なネット依存というレポートが出され、宗教関係者は危機感を募らせている。退屈な時間をなくし、信仰する時間までも奪うインターネット、スマホの普及。ネットは今後、既存の宗教にどんな影響を与え、人々の信仰をどう変えていくのか分析する。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 宗教とはなんなのか
    法律では「超自然的、超人間的本質の存在を確信し、畏敬崇拝する信条と行為」と習います。
    でもそれは布教側からであって信仰する側からすればなんなのか。

    日本的には「救いを求めるコミュニティ」
    ではないかと思います。
    友人曰く仏陀が日本の仏教を見聞きしたら「この教えって誰の?」って絶対聞くって言ってましたσ^_^;
    まあ今はコミュニティってスマホが代替していってて信仰の入る隙というか時間がなくなってきてるように思います。

    そういう意味でいうとこの本はよくわかります。

  • 『スマホが神になる 宗教を圧倒する「情報革命」の力』
    著者 島田裕巳
    角川新書 2016年

    宗教に関しての数多くの著作で知られる著者の宗教側からみた最新機器に関する論考。本書をの主張を簡潔に述べるのであれば、最新機器により宗教は今、岐路に立たされている。といったところだろう。詳しく解説しよう。
    まずは本書の肝になる部分を引用する

    ただし、ローゼンは、インターネットのインパクトは、必ずしも宗教界にとって好ましいものではないかも知れないと言い、『MITテクノロジー・リビュー』誌が伝えている。インターネットが盛んに利用されるようになったことと、宗教界に所属する人間が少なくなったこととのあいだの相関関係について触れている。
    これはシカゴ大学の総合的社会調査のデータを、オーリン工科大学の教授、アレンダウニーが分析したものである
    まず、基本的なこととしては、アメリカ国民のなかで、どの宗教団体にも所属していない人間は、1990ねんの8パーセントから、2010年には18パーセントに増えた。これは、無宗教の人間が2500万人増えたことを意味する。
    ダウニー教授は、この無宗教の増加と関係していると考えられる、教育や社会経済的地位、宗教的な背景を分析したが、それでは説明がつかないという。
    では、その原因は何なのか。
    教授の仮説は、インターネットの使用者の劇的な増加だというのだ。

    精神科医の片田珠美は、『孤独病ー寂しい日本人の正体』(集英社新書)という著者の中で「ネットで簡単で気軽という利便性を考えれば、人を孤独から救う宗教と同じ機能をネットが代替しているのはよくわかる気がする」と述べている。ネットは、「現代人の孤独を癒す格好の道具」だというのだ。

    スマホを手に入れた人間は、年がら年中、それをいじり、画面に見入るようになっていく、そうなれば、神について思いを馳せる時間は必然的に奪われていく。その面ではイスラム教の信仰とスマホは共存できない。スマホは、信仰を弱体化させることに結びついていく可能性がある。

    そうした反応が、イスラム教以外の宗教で起こらなかったのは、これまで述べてきたように宗教としての構造に違いがあるからだが、欧米や日本のような先進国では、すでに「世俗化
    」が大幅に進行していて、日常の生活において信仰はさほど重要な役割を果たさなくなっている。

    宗教というものは、究極的には個人のものであり、たった1人でも特定の信仰を持つことはできる。
    だが、たいていの場合には、その周囲に同じ宗教を信仰している家族や仲間がいるわけで、その点では、宗教は共同体的で、社会的なものである。
    (中略)
    地域共同体もなく、家も共同体としての性格を失ってしまえば、そこには宗教など存在しようがない。資本主義社会は、宗教の存在基盤を脅かす方向に向かってきた。今やそのことがはっきりとした形をとり、世界的に、無宗教が増える事態が生まれているのである。

    つまり、宗教自体がスマホなどの最新機器や資本主義の共同体の解体を促進するという一つの作用により、信者が激減(主に新興宗教が)しており、これからもスマホは進化していき、神の代理のようなものになり、その時宗教はどういうものになるのか、またはスマホ教それ自体が解体される日もあるのか。そのような内容である。

    最新機器を導入し、うまく信者数を増やした事例として、真如苑が挙げられている。うまく適応した事例なのだろう。


    これからの宗教について考えさられる1冊であった。宗教が消えるということは個人的にはないと思っている。宗教の機能からして、やはり、救いの面は大きく、今のような目まぐるしく変わっていく昨今どうしても適応できない人間も出てくる。そのような人たちを救うという側面でやはり、宗教のような中間団体の存在は必要不可欠であると考えるからだ。よって、私が考えるに、宗教は小集団化していき、何かを求めて、集まり、そして解散して、また何かを求めて集まるというようなグループの役割が強まっていくのではないかと考える。
    だいぶ、ビジネス文脈の考え方であるが、このような宗教の集団が、今後生き残っていくのではないだろうか

  • 宗教学者によるスマホ社会の考察。スマホはイスラム教との相性が良いらしい。メッカの方向や祈りの時間など必要な情報が簡単に手に入る。意外な感じもするが、イスラム教で大切なのは型を実践することであり、他の宗教のような忠誠心が必要ないというのは知らなかった。 著者は、ポケモン GO を事例として考察しているけれど、ポケモンをやらない人や知らない人には、あまり良く分からない考察かもしれない。 ポケモンの話だけで1/3くらいのページを使っている。もっと鋭い洞察を期待したが、大体ニュースなどで知っていることが多かった。 本の厚さ同様、中身も薄い。

  • 【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/689988

  • 確かに、スマホ(そしてAI・IoTも、もはや同義)が、あらゆるビジネスを破壊している。
    紙の書籍はもちろん、音楽CD業界も、DVD&TVなど映像も含めたコンテンツビジネス業界。
    もちろんゲームも、パッケージゲーム(家庭用ゲーム機)は、完全にスマホに置き換わった。
    自動車産業も、電気自動車になってしまえば、既存の内燃エンジンノウハウは必要ない。
    さらに自動運転になってしまえば、物流が大きく変わってしまう。
    「医療」も「教育」も、遠隔での操作が出来るならば、地域による格差は無くなっていく。
    そんな中、「宗教」こそスマホに駆逐されてしまうのではないか?というのが本書。
    今まで「ビジネス」にしか注目していなかったが、言われてみれば確かに!
    そもそも宗教の意味って、「神を信じる」にある。
    浮世が不幸だから、極楽に救いを求める。
    「たとえ貧乏でも正直に生きていれば、神様が天国に連れて行ってくれる」
    これが基本の考え方。
    宗教の宗派によって多少違いはあれど、基本は「神を信じる」ことにある。
    スマホが万能で、スマホこそが神だから「宗教を駆逐する」という訳ではない。
    単純に、スマホ依存になって、時間が限られるのだ。
    アメリカでは、キリスト教の日曜礼拝の参加者が激減しているそうだ。
    それも納得できる。
    わざわざ救いを求めに教会に行くか?
    スマホであらゆるものが手に入る(ような気がする)。
    ゲームやったり、動画見たりで十分に忙しいのだ。
    逆にイスラム教は、祖国からヨーロッパに亡命していることで、ヨーロッパでのイスラム教信者が増えているらしい。
    イスラム教は「神」を崇める宗教ではないために、スマホのよう便利なIT機器と相性がよかったらしい。
    それらも今後はどうなるか分からない。
    確実に、想像すら出来ない未来が近づいて来ているのを感じる。
    既存の考えに固執していては、間違いなく取り残されてしまうだろう。
    「宗教」すら変わっていく未来で、我々は果たしてどうやって生き残るのか?
    (2016/11/28)

  • 2018/1/1-3読了。

  • 文科系の研究者にといっては論文を書くことが最も重要な仕事。
    ユダヤ教のポータルサイトaish.com
    ユダヤ人のディアスポラとポケモンGo
    どちらもそれぞれの場所で使命を果たすと次の場所へ移っていく。ユダヤ人の目的は神の火花を集めてイスラエルへと帰還すること。
    スマホの最大の敵は、水没、紛失、破損

  • こんなに中身がない本を久々に読んだ。島田さんはもう少しじっくり考察を深めてから文章にしてほしい。年々切れ味が鈍っていないか。

  • 「スマホが神になる」角川新書。2016。島田裕己さん。

    タイトルほどの衝撃性は無かったです。ちょっとハッタリ...。
    でも、宗教とスマートフォンを巡る蘊蓄というか、ふむふむエッセイとして、読み易く楽しめました。



    ここ数年、著作を愉しんでいる宗教学者・島田裕己さん。
    別段、何かの宗教の魅力を語るのではなくて、むしろ実は寺社仏閣を見物的に愉しむガイドのような読み方も出来る人です。
    (真面目な宗教学の著作もある方なんでしょうが)

    この本も、特段、すごく大きな期待もせずに(失礼)ふらっと読んでみました。

    #

    ●スマートフォンがとっても普及しています。

    ●ネットも出来て、ゲームも出来て、色んな事が出来て便利ですね。

    ●便利なだけではなくて、「孤独なとき」「暇つぶし」「ちょっとさみしい時」にも、貴重な存在ですね。

    ●ところで、「孤独なとき」「暇つぶし」「ちょっとさみしい時」に貴重だったのが、宗教、特に新宗教と呼ばれるものでした。(一般には「新興宗教」と言うとピンときますね)

    ●例えば、創価学会・天理教・PL教団とかは、高度経済成長の時代に、ぐんと信者の数を増やしました。その時代に、大勢の若者、少年少女が、集団就職などで大都会に出てきました。

    ●その人たちは、知人のいない大都会で、孤独で寂しくて暇だったわけです(もちろん、仕事は大変だったでしょうが、休日に何をするか、ということで言うと)。

    ●遊ぼうにもお金もあまり無いし、そもそもタウン情報のようなものが無い。知人もいない。そういう方々をターゲットにして新宗教は飛躍的に信者を増やしました。

    ●そうなると、ネットやスマホの普及にともなって、新宗教は、近年ぐんぐんと信者を減らしています。大変です。(一部の例外も触れられています)

    ●つまり、新規の信者獲得が難しい上に、既存の信者さんの子供世代が、離脱することが多いということです。需要が減っているのでしょう。

    ●そういう意味では、スマホが、グーグルが、「神」に取って代わるというような言い方すら出来るのか。

    と、言うのが大筋です。
    「新宗教の戦後現代史」としては、面白かったです。

    一方で、スマホが神なのか?という提起については
    「まあ、そう言えばそうなのかもしれませんね」という感じです。
    宗教、という言葉にどういうイメージを持つかですが、
    「集団的に熱狂して何かに行動する」とか
    「教義や神体があって、それを維持したり擁護するのに激しい態度も厭わない」
    と、言ったような印象だとすれば、スマホにはそういうのは無いような気がしますね。

    ちょっとこう、編集者根性のタイトル案かなあ、という感想...。

    ※新宗教についての分析はあっても、当然ですが、それぞれの新宗教について、擁護も非難もありません。そのあたりの姿勢は安心して読めます。


    #

    それはそれとして、スマホなどデジタル機器の歩みや、世界の宗教状況についてのお話がちりばめられています。
    それは面白かった。

    ●最近だと、アメリカ合衆国の方が、欧州よりもキリスト教はまだしも熱心である。

    ●欧州は、徐々に「脱キリスト教」が進んでいる。

    ●韓国では、北朝鮮との緊張関係の影響か、グーグルマップが使えない。だから、ポケモンGOも配信されていない。

    ●インターネットの網羅性が、ある種の「全能感」を醸し出す可能性。キリストと悪魔の挿話。

    ●(ネットだとかスマホとは限らないけれど)RPGゲームの物語は、たいていは宗教がらみの昔からある物語と似ている。「英雄」「通過儀礼」「父殺し」。

    ●「暇つぶし」としてのRPGゲームってすごいねえ、という話。目標を与えてくれてやりがいを与えてくれる。

    ●北米を中心に、キリスト教の中の、プロテスタントの中の、「福音派」のお話。割と過激な保守主義、キリスト教原理主義。スマホ否定。中絶否定。これがけっこう、勢力が強い。共和党支持層とかぶっている。つまり今で言うと、「トランプ支持層」。

    ●北米以外でも「福音派」は伸びている。保守反動、民族主義、反知性主義と関連?

    ●今、世界で伸びている宗教は少ない。比較的に巨大な勢力、キリスト教に次ぐNO.2であり、徐々に差を詰めているのが、イスラム教。

    ●イスラム教の特性は、教義うんぬんというよりも、「生活上の決まりごとを守る」「社会システム」ということ。キリスト教や仏教のイメージで言うと、けっこう違う。

    ●イスラム教は「メッカの方向」とか「礼拝の時間」とか「ラマダンの期限」とか、生活の細かいことが多い。これが、スマホのイスラム教便利アプリを使うと便利らしい。普及しているそうな。

    ●中世までのキリスト教では、「利子を取る」ということが教義的に禁じられていた。なるほどだから、ヴェニスの商人=ユダヤ人=キリスト教的に悪人、という図式になるのですね。

    などなど。

  • スマホが宗教界に与えた影響についての本。スマホといっても、スマホの話題の半分ぐらいはポケモンGoの話だった気がする。
    キリスト教の一部ではポケモンにたいして強い拒否反応を持っているのだとか。理由は、ビードルなどのポケモンが男根の形をしているから少年たちはゲイになるというよく分からない理由。そんなこと思う人そうそういないと思うのだけど。
    真如苑という宗教のサイトのQ&Aには退会方法について詳しく書かれてるらしい。どこぞのウェブサービスよりも優しいとのことだ。宗教って案外、気楽に入って気楽に出れるもんなのかも。
    なお、イスラム教はテクノロジーの発達にたいして寛容だそう。確かに、イスラム国はYouTubeとかTwitterとかの最新テクノロジーを駆使してるイメージがあるしなぁ。ただ、この本を読んでいると、イスラム国はやっぱりイスラム教の法に則っていないような気はした(イスラム教は人を裁くのは神のみという考えが主流らしい)。
    ちなみに、韓国ではGoogleマップが使用できないから、ポケモンGoもできないのだとか。それは知らなかった。韓国人はそれについてどう思ってるんだろう(ポケモン自体、人気なのかどうか知らないけど)。
    後、ポケモンのサトシの父親についても言及していて笑った。そろそろ最大の敵として登場したら熱い展開にはなりそうな気はする。
    後、神とポケモンということから、アルセウスについても言及があった。神のポケモンということから、もしアルセウスがポケモンGoで捕まえることができるようになったら、神を捕まえるゲームとして宗教界にまた論争が起きるとのことだ。その発想はなかった。
    意外だったのが、15~19歳の男女だと、スマホの普及率は男が96.4%で、女が90.7%らしい。その年代だと、女のほうが多いと思ってたのでちょっと意外。
    ただ、この本で一番驚いたのは、後がきの「実は私は
    、スマホを持っていない。」という一文かもしれない。これだけスマホについて語ってるのにまさか持ってないとは思わなかった(ポケモンGoなどは、妻のスマホを借りてやったことがあるらしい)。

  • 確かにスマホは凄い!

  • 今まで読んだ本の中で、全く読む価値がなかったと思ったのはこの本だけかもしれない。
    「スマホが神になる」を示すための検証が十分ではない。テーマであるスマホと神は、前者は潜在能力とこれからの展望の未知性、後者は具体性の欠如という性質を持っているものであり、検証に際して本質を整理しておく必要があるように思えるが、それがなされていないために具体→一説という半ば行き当たりばったりの展開が多く見られる。著者の予想が前提になっている場合もあり、納得できる論理展開はあまり見られない。
    そもそも著者はスマホやスマホのアプリにあまり詳しくないようで、そこでもまたズレが生じてしまっている。
    読み返そうとは思えない。

  • スマホやポケモンGOと宗教との共通点が面白かった。
    情報革命や資本主義による世界的な宗教の退潮は興味深い。
    宗教学は広範囲すぎてとっつきづらいので、こういう身近なところから俯瞰できるのは良い。

全14件中 1 - 14件を表示

著者プロフィール

島田裕巳(しまだ・ひろみ):1953年東京生まれ。宗教学者、作家。東京大学文学部宗教学宗教史学専修課程卒業、東京大学大学院人文科学研究科博士課程修了。放送教育開発センター助教授、日本女子大学教授、東京大学先端科学技術研究センター特任研究員を歴任し、現在は東京女子大学非常勤講師。現代における日本、世界の宗教現象を幅広くテーマとし、盛んに著述活動を行っている。 著書に、『日本人の神道』『神も仏も大好きな日本人』『京都がなぜいちばんなのか』(ちくま新書)『戦後日本の宗教史――天皇制・祖先崇拝・新宗教』(筑摩選書)『神社崩壊』(新潮新書)『宗教にはなぜ金が集まるのか』(祥伝社新書)『教養としての世界宗教史』(宝島社)『新宗教 戦後政争史』(朝日新書)等多数あり。

「2023年 『大還暦 人生に年齢の「壁」はない』 で使われていた紹介文から引用しています。」

島田裕巳の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
ジャレド・ダイア...
アンデシュ・ハン...
三浦 しをん
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×