陰謀の日本中世史 (角川新書)

著者 :
  • KADOKAWA
3.56
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  • (8)
本棚登録 : 901
レビュー : 70
  • Amazon.co.jp ・本 (344ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784040821221

作品紹介・あらすじ

ベストセラー『応仁の乱』の著者、構想三年の書き下ろし!

本能寺の変に黒幕あり? 
関ヶ原は家康の陰謀?
義経は陰謀の犠牲者?
俗説、一蹴!
『応仁の乱』の著者が史上有名な“陰謀”をたどりつつ、
“陰謀論”を徹底論破する。

史実とフィクションは明瞭に違う!
◆本能寺の変に黒幕あり?→いない。光秀をバカにしすぎ
◆関ヶ原は家康の陰謀? →違う。家康も追い詰められていた
◆義経は陰謀の犠牲者? →誤り。義経の権力は砂上の楼閣だった

他、
■足利尊氏=陰謀家説は疑わしい
■後醍醐天皇は黒幕ではなく被害者だった!?
■富子はスケープゴートにされた
■騙されやすかった信長
■「三成が家康の伏見屋敷に逃げ込んだ」は俗説
■「小山評定」は架空の会議

「事実」はドラマや小説より面白い。
陰謀論の誤りを最新学説で徹底論破!!
トンデモ説やフェイクニュースが溢れる世の中で騙されないために。
陰謀論の法則まで明らかにする、必読の歴史入門書!

感想・レビュー・書評

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  • 陰謀論で溢れかえる巷のトンデモ歴史観を、歴史学の視点からバッサバッサと痛快に斬って捨てる歴史マニア向けの心得本です。
    以前より私も歴史のトンデモ話には眉をひそめていた一人ですが、何で歴史学からの批判が無いのかなあと思っていたら、やはりアホらしくてまともに取り合ってられないということでしたね。
    ですがたとえアホらしくても、学界と一般大衆をつなぐ共有観念としてこのような取り組みは必要だと思っていたのですが、氏のようにある程度名が通った学者が徹底的に斬って捨ててくれたことで、とても良かったと思いました。

    日本中世の話がメインテーマなのでいまひとつ一般の人にはわからないトンデモ歴史もあったと思いますが、この時代はNHK大河ドラマでよく取り上げられる戦国時代を除き、あまり知られていない部分なだけに割と言いたい放題の分野であったとも言えます。
    なので、トンデモ歴史自体が少なくて言った者勝ちのようなところがあるのですが、あと学界自身でも学説としてそういう傾向がよく見受けられるようで、『第六章 本能寺の変に黒幕はいたか』より前の時代ではむしろ研究史整理的な論述も結構あって、これはこれで割と楽しまさせてもらいました。

    氏が言う陰謀論には法則があって、いちいちもっともなことだと頷けることばかりなので、歴史オタクや小説とかからのニワカファンの方はよくよく注意した方が良いでしょう。
    ・最終的な勝者が全てを予測して状況をコントロールしていたと考える。
    ・結果から逆行して原因を引き出す。
    ・事件によって最大の利益を得た者が真犯人と考える。
    ・挙証責任を批判者側に転嫁する。
    ・因果関係の単純明快すぎる説明。
    ・論理の飛躍            などなど。

    私も山岡荘八原作の小説とかドラマとかを観ていて、たいがい全てを予測した動きをとっている人がいるので、苦笑してしまったことが結構あります。まあ小説だからいいですけどね。
    井沢元彦なんかはもっとひどくて(結構、氏とバトルしているようですが)、「学説」ぶって古い古い学説をこれでもかといたぶり、最新学説をさも自分が考えた説のように振る舞い、怨霊と最大受益者だけで歴史がまわっていて、細部の証明は批判者に求めるということで、歴史学者はアホらし過ぎて誰も相手にしていなかったのですが、こんな非生産的な相手にも世の中全体の情報リテラシーのレベルアップに向けてよく付き合っているなあと感心してしまいます。
    あと、氏がよくやり玉に挙げていたのは、立花京子とか明智憲三郎とかですが、自分も立花京子の『信長と十字架』を読みましたが、確かにあまりにもアホらし過ぎて沈黙が支配してしまうのですが、これを誰も批判できない会心の学説だと思ってしまうところが、トンデモ歴史を唱える人たち共通の快楽なんですね。
    ちなみに『信長と十字架』では信長の盛衰の背後でシナリオを描いていたのはバテレンだったという話ですが、当時私はそれならバルカン星人黒幕説を唱えようかなと思っていたのですが(笑)、氏もそれなら宇宙人黒幕説でもよいのでは?と書いてあったので、やはりこのあたりの感覚は共通だと思い少し嬉しくなりました。(笑)

    今後は氏の専門外になるとは思いますが、最後に触れていた近現代史における歴史修正主義者どもの与太話もバッサバッサと斬ってみて欲しいなあ。

    • 夜型さん
      mkt99さん、こんばんは。
      いい本ですねえ。呉座先生の活躍っぷりは目覚ましいですねえ。
      百田氏も井沢元彦氏も本郷和人氏も彼の手によれば...
      mkt99さん、こんばんは。
      いい本ですねえ。呉座先生の活躍っぷりは目覚ましいですねえ。
      百田氏も井沢元彦氏も本郷和人氏も彼の手によればバッサリでした。
      お邪魔しました。
      2019/08/26
    • mkt99さん
      夜型読書人さん、こんにちわ。
      コメントいただきありがとうございます!(^o^)

      そうですね。この本はこれまで歴史学者が敬遠してきたよ...
      夜型読書人さん、こんにちわ。
      コメントいただきありがとうございます!(^o^)

      そうですね。この本はこれまで歴史学者が敬遠してきたようなことを、目下活躍中の新進気鋭の歴史学者が痛快に斬って捨てているところが良いですね。
      まだまだ斬って捨てて欲しい方は何人もいるのですが・・・。(笑)
      2019/08/31
  • 日本史好きな私にとって
    第一章~第七章の内容も非常に興味深い内容でしたが,
    終章の『陰謀論はなぜ人気があるのか?』
    が一番勉強になりました。

    陰謀論の特徴を
    ①因果関係の単純明快すぎる説明
    ②論理の飛躍
    ③結果から逆行して結論を引き出す
    という3つに分類した上で、
    何故陰謀説が人々に受け入れられるのか
    という問題に対して納得のいく回答が得られ,
    満足しました。

    「フェイクニュース」「ポスト・トゥルース」
    といった言葉に代表されるように,
    誤った情報が蔓延る現代において,
    ここで記載された情報を
    自らのリテラシーとして吸収したいと思いました。

  • 派手に踊る「陰謀」という語、カバーと同じ大きさの真っ赤な帯、開くと強調したいセンテンスを太字フォントで表した文。ちょっと怪しめの歴史本にありがちな特徴を造本から取り入れているのは、おそらく意図的で、そういう本をよく読む層に届けようとしたのかな、と勝手に推察。
    文章はかなり素人(自分のような)向け。『応仁の乱』[ https://booklog.jp/item/1/412102401X ]もだが、本書の方がより砕けている。実際は史料を丁寧に読み解いて分かることなのだろうけれど、歴史上の人物の意図等をカッコでくくり「××は『○○しよう』と考えたのである」と言い切るのは明快で読みやすい。読みやすいということはその気になればホラも吹きやすい訳だが、頭を冷やして読むと主張されていることは全般的に穏当な内容で、ポイントごとに史料が裏付けとして挙げられている。逆に真っ当な方法でこの主張に反論したい時は、この史料と根拠を覆す必要があるのだな、と分かる。怪しい本の場合それが無いことが多い。
    終章「陰謀論はなぜ人気があるのか?」に著者の言いたいことが全部詰め込まれている印象。陰謀論やトンデモ説の「猫の首に鈴をつける」。
    この本を読んだ人にはこちらもおすすめです、を挙げるならこの一冊。[ https://booklog.jp/item/1/488759528X ]

    残念だったのは、自分の中世史の基礎知識が貧しいため、人物名がどうしても混乱してしまうこと。似た名前多すぎ。

  • 「応仁の乱」より面白かった。日本史に、意外にわかっていないことが多いことを痛感。いつも思うのですが、鎌倉時代はすごく血なまぐさい時代だったんですね。室町時代もしかり。

  • 陰謀論や、脚色された小説やドラマはわかりやすくて楽しいけど、それを史実と勘違いしないようにしたい。一次史料を読み解くのが一番なんだろうけど、研究者でもない一般人にはなかなかできることではないので、複数の本を読んで知識をつけ、何が正しいのか自分で判断する力をつけるのが良いのだろうな。、

  •  日本史に興味があるなら小説家が書いたものや刺激的なキャッチフレーズ(「真実」とか「陰謀」とか「新発見」とか)のものを避けるべきである。そして、高校の日本史教科書又は高校日本史の参考書、もう少しやさしいのだと、『漫画 日本の歴史』あたりを読んだ方がよろしい。
     歴史研究書の体をなしたトンデモ本があふれていて大変危険なのである。
     司馬遼太郎みたいに「これは小説である」と書けばよいものを(作品名失念。)。

  • #麒麟がくる はそれなりに評判がよかったように思える。しかしながら専門家にとっては「光秀の動機などどうでもいい」のであって「学問的に意味がない」し「ああいううので盛り上がるのは素人」であって「時間の無駄」だから「相手にしない」らしい。
    著者はそのような風潮に警鐘をならす。放置していれば「陰謀論」が「社会的影響力」を増すと。確かに、なぜ本能寺の変が起こったのか?は現代社会にとってはハッキリ言ってどうでもいい話ではある。 しかしながら、現代社会でも陰謀論は存在する。著者の狙いは「イデオロギー対立と直接関係のない中世の陰謀を題材に陰謀論のパターンを論じれば、人々が陰謀論への耐性をつける一助になるのではないか」というものである。
    人はどうしても歴史に「因果」を求めてしまう。それは「単純」であるほどいい。その方がわかりやすいしスッキリするからである。ただしそこには「論理の飛躍」や「結果から逆行して原因を引き出す」という思考に陥りやすいという問題がある。本書は「歴史」に学ぶというよりも「歴史学」に学ぶというテイストではあるが、全く学問的な業績にはならない「研究」をあえて行う著者の誠実さは傾聴に値するように思える。本書で大河ドラマを振り返ってみるのもいいのかもしれない。

  • 梶原景時に関して、京都との関わりに触れているところが嬉しい。

  • 本能寺の変をはじめとする日本中世史における数々の陰謀・謀略(があったのではないかとされる事件)について、最新の研究成果も踏まえた先行研究を抑えつつ、歴史学の手法に則って客観的・実証的に分析し、陰謀論の誤りをただしている。
    「足利尊氏は陰謀家か」「日野富子は悪女か」「本能寺の変に黒幕はいたか」といった陰謀論の検証を軸に、日本中世史(政治史)の様々な最新学説を瞥見でき、知的な面白さがあった。20年ばかり前になる高校時代の日本史の教科書の記述も、だいぶ古びてきているんだなということを感じた。
    本書は、陰謀論に引っかからないための耐性を身につけるのに有意義な本であるといえる。当時の人々も未来が完全に見通せたはずはなく、試行錯誤の中で歴史を歩んできたのであり、現在の結果を知った状態から逆算して歴史上の因果関係を考えることには、慎重にならなければならないと感じた。

  • 現代に生きる我々は、様々な情報に簡単にアクセスてきるため、歴史上の出来事についての徹底的な検証には疎くなってしまう。どうしても新しい説や興味深い説に思考が引っ張られてしまう。本書はそういった陰謀を現存史料から一つ一つ丁寧に反証している。歴史を学ぶ者にとっては、中立的に真摯に取り組むことが大切であると感じた。

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著者プロフィール

国際日本文化研究センター(京都市)助教。専門は中世の日本の歴史研究。著書に「日本中世への招待」「陰謀の日本中世史」など。

「2020年 『1偉人1分 まんがでサクッと日本史』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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