江夏の21球 (角川新書)

著者 :
  • KADOKAWA
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本棚登録 : 38
レビュー : 4
  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784040821627

作品紹介・あらすじ

日本のスポーツノンフィクションのシーンを塗り替えた表題作はじめ「スローカーブを、もう一球」「異邦人たちの天覧試合」など、山際淳司を代表する野球短編全12作品を収録。解説は河野通和氏(編集者・ほぼ日の学校長)。

感想・レビュー・書評

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  • 衣笠選手が亡くなったと聞いて真っ先に思い出したのが、故 山際淳司氏の代表作、「江夏の21球」で、この本を見っけ出して購入した。最初に読んだのはいつだろう?書かれたのは昭和55年で、僕はこの作品が収録された「スローカーブをもう一球」という文庫本で読んだから、高校生か、大学生の頃じゃないだろうか。
    「江夏の・・・」は単純な話だ。
    恐らく当時の日本において、野球を見たことはなくても、スポーツニュースを見たことのある人なら、必ず日にしたことのある昭和54年の日本シリーズ第7戦の大詰め、スクイズバントが失敗するに至る江夏、そして彼のマウンドをとり囲む人々の話だ。そして、その中でマウンドに立つ江夏のただ一人の理解者として衣笠祥雄氏が登場する。
    それが衣笠選手の訃報を聞いてこの本を思い出した理由だ。

  • 山際淳司を一躍売れっ子スポーツノンフィクションライターにならしめた「江夏の21球」。昭和54年近鉄VS広島の日本シリーズ第7戦。9回裏無死満塁の攻防。広島の守護神江夏がこの絶体絶命の窮地に投じた21球。近鉄かほとんど掌中にしていた念願の日本一を引き剥がした運命の19球目。要した時間は26分49秒。40年経った今なお多く野球ファンの記憶に残る、あの伝説の試合がありありと蘇る。

    復刻版となり数十年ぶりに再読。あらためて著者の複眼的な筆致の巧さに唸ってしまった。視点が江夏ひとりに注がれるのではなく、古葉監督に向けられたかと思えば、サードの衣笠に、そして西本監督へとパーン。各々の立場から見た戦況に切り替わる。次から次へとあたかもテレビ中継で駆使されるひとつの状況を複数台のカメラで展開を追う、まさしくアレを筆1本でやってのける。野球は静→動、動→静のスポーツ。次の展開を息をこらして待つ。そんな繰り返しのスポーツゆえ目まぐるしい視点の変換が成立するとは言え、そのまま映像に使えるような筆致はスゴい。この筆法が山際淳司の真骨頂であり、彼の出現がスポーツノンフィクションの分水嶺となったと言わしめるんでしょうなぁ。

    表題作だけでなく、1980年のセンバツに出場した群馬県立高崎高校を描く『スローカーブをもう一球』、1985年の夏、創立3年目で甲子園に初出場した滋賀県立甲西高校を描く『<ゲンさん>の甲子園』、2つの祖国の間で大戦を経験した野球人を描く『異邦人たちの天覧試合』…、野球に取り憑かれた男の流儀を人生を描く。文体はいたってクール。これは著者の熱情のほとばしりを過剰に塗れさせないという思いが、あの渇いた文体を生んだのではと見る。

  • 私が生まれる前の野球の話、見たことのない試合が描かれているが、その試合の緊張、球場のざわめきが、今眼前で現実に起こっていることかのように感じられる。ちりちりとした緊張感のなか、読んでいるというよりは、観戦しているかのような気持ちになる。また、決して大活躍して名を残したわけではない野球選手の人生にスポットを当て、綿密に描写した短編を読むと、人生と野球の面白さや苦労、不思議さを感じた。
    野球の面白さを再確認できる一冊で、オススメです。

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プロフィール

作家。1948年神奈川県生まれ。中央大学法学部卒業後、ライターとして活動。80年「Sports Graphic Number」(文藝春秋)創刊号に掲載された短編ノンフィクション「江夏の21球」で注目を集める。81年同作が収録された『スローカーブを、もう一球』(角川書店)で第8回日本ノンフィクション賞を受賞。NHKのスポーツキャスターとしても活躍。95年5月29日没。著書多数。

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