コレクションと資本主義 「美術と蒐集」を知れば経済の核心がわかる (角川新書)

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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784040821849

作品紹介・あらすじ

何百年スパンでの超長期的な視点から目下の経済を議論することで、「資本主義の終焉」を看破したエコノミスト、水野和夫氏。その「水野史観」において最も重要かつ絶対に理解すべき概念が、「コレクション=蒐集」である。

本書では、まさに「コレクション」の専門家である博覧強記のギャラリスト(画商)、山本豊津氏が水野氏のあらゆる疑問に答えながら、そのなかでマクロ経済のトレンドとアート表現のあいだにある、驚くべき関係が明らかにされる。

低金利になるとなぜ決まったアート表現が登場するのか? スペイン、イギリスなどの帝国、メディチ家などのパトロン=コレクターはどう変遷したか? そこで彼らが「蒐集」した対象は、どのように変化してきたのか?

さらに、資本主義が終焉するならば「コレクション」も終わりを迎えるのか? 資本の本質が最も先鋭的に現れる最先端の美術は、資本主義の先にある世界をいったい、どのように予言しているのだろうか?

この一冊で、資本主義の勃興と終焉、それにみごとに一致するアートのトレンド、ゼロ金利時代における日本の戦略までを一気に理解できる、唯一無二の対話である。


第1章 なぜ資本の本質が芸術に現れるのか  水野和夫
第2章 「コレクション」の本質を歴史から考える  水野和夫×山本豊津 
第3章 利子、自我、そして絵画の「作者」の誕生  水野和夫×山本豊津 
第4章 「長い十六世紀」とパトロン=コレクターたち  水野和夫×山本豊津 
第5章 近代資本主義を「蒐集」から読み解く  水野和夫×山本豊津 
第6章 そして戦後、「長い二十一世紀」が始まった  水野和夫×山本豊津 
第7章 最先端の芸術が予言する「新中世時代」  水野和夫×山本豊津 
第8章 芸術、蒐集、資本主義のしたたかさ  山本豊津

感想・レビュー・書評

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  • 借りたもの。
    経済の流れを見れば世界史が分かり、それらをアートは描き出している。アートの価値はそこにある。

    私は美術史を学んだ身だが、政変と美術の流れはあまり密接に感じていなかった。それがこの本を読んで経済という流れによって繋がっていく…!

    ウェストファリア条約によって、近代国家の基礎が作られる…
    富の蒐集からビジネス――資本主義による利益、利子の増殖――という概念への変化が、アートにも影響、反映されていることを読み解いてゆく。
    閉じた世界と開けた世界、陸と海という対立構造は、
    蒐集が価値を生み、信用が価値を増速させるという視点から、アートの価値が紙幣経済の変化系となる様を映し出す。
    蒐集の象徴であったアートが、投資・投機対象になる。
    ダブついたお金の使い道、使いどころとしての“ビジネスモデル”となっていく様が映し出される。
    正にアートは“今”を映していた。
    徳光健治『教養としてのアート、投資としてのアート』( https://booklog.jp/item/1/429540294X )とも併読。
    映画『アートのお値段』( http://artonedan.com/ )の根底にあるもの。

  • 東2法経図・6F開架:332.06A/Mi96k//K

  • 日本で最初の、現代美術専門画廊「東京画廊」。
    その2代目社長である山本豊津の著作『アートは資本主義の行方を予言する』が、「興味深い内容だったなあ」と強く印象に残っています。
    https://booklog.jp/users/makabe38/archives/1/4569826172

    その山本が対談した内容が新書になっていると知り、読んでみることにしました。

    まず第1章では、対談相手であり『アートは〜』に感銘を受けたという大学教授水野和夫が、利率の長期的なトレンドグラフを提示して、「近代資本主義は終焉を迎えている」という自説を提示しています。

    第2章から第7章が、二人の対談。
    経済と政治体制、そして芸術を中心に、主にヨーロッパの歴史を追いながら、話が展開していきます。

    そして最終第8章で山本が総括する、というのが全体の構成。

    以下に、特に印象に残ったキーワードを書き出します。
    ・宗教と自我
    ・蒐集と利子
    ・芸術が扱う題材と、芸術家の評価の変化
    ・永続性および空間の無限性と、資本主義との関連

    自分自身これまであまり関連が見出せていなかった事柄について、点と点が線になり、線と線が面になるような”気づき”を、かなり得ることができました。

    経済や美術について、このような視点で考えることができるのですね。
    知的好奇心を、大いに刺激された一冊でした。
     
     .

  • 経済と芸術に何の関係があるんだろうと思って読み始めた。また、水野さんのいう「蒐集」という概念が気になっていたことにもよる。二人の専門家による対話は興味深く、大変勉強になった。素晴らしい!

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著者プロフィール

1953年愛媛県生まれ。埼玉大学大学院経済科学研究科博士課程修了。博士(経済学)。三菱UFJモルガン・スタンレー証券チーフエコノミストを経て、内閣府大臣官房審議官(経済財政分析担当)、内閣官房内閣審議官(国家戦略室)を歴任。現在、法政大学法学部教授。専門は、現代日本経済論。著書に『正義の政治経済学』古川元久との共著(朝日新書 2021)、『閉じてゆく帝国と逆説の21世紀経済』(集英社新書 2017)、『資本主義の終焉と歴史の危機』(集英社新書 2014)他

「2021年 『談 no.121』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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