環境再興史 よみがえる日本の自然 (角川新書)

著者 :
  • KADOKAWA
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感想 : 6
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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784040822372

作品紹介・あらすじ

まえがき

第一章 鳥たちが戻ってきた
1 「千羽鶴」になったタンチョウ
2 孤島で全滅を免れたアホウドリ
3 大空にガンが返ってきた
4 野生が復活したトキ

第二章 きれいになった水と大気
1 数字でみる環境改善
2 回復に向かう東京湾
3 多摩川にアユが踊る  
4 川崎に青空が戻った
5 ブナの森が残った

第三章 どこへゆく日本の環境
1 日本人の生命観の変化
2 何が環境を変えたのか
3 環境を救ったものは
4 環境保護の将来

感想・レビュー・書評

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  • 日本の環境再生について、丹念に調べられていて参考になった
    日本人と自然の共生と対立の歴史的な視点が得られる

  • 平成に入ってからの歴史は、同時代史だからもちろん個別の話としてはよく知っているけど、物語に沿って理解できていないと自分でも思う。

    高度成長をして公害でとか、多摩川が汚染されて、とかいうほうが理解しやすいという。

    なんか自分がとんでもなく年をとった気がする。

  • 著者は環境問題を長く取材してきた新聞記者。
    鳥島では明治時代にアホウドリの羽毛輸出がさかんになり、警戒心がなく、陸地では不器用に歩くことから容易に撲殺でき、大量に捕獲されて一時は絶滅の危機に陥る。1977年に初めて上陸した東邦大学教授によって、営巣地を増やすためのイソギクの移植など地道な努力により、200羽から1000羽に増やす。
    秋分を過ぎると空に現れた雁はかつては季節を告げる風物詩だった。万葉集には雁を詠んだ歌が80もあり、ホトトギスに次いで多い。著者の思い出は「雁(かり)、雁、棹になれ、さきになれ・・」東京の空では雁が見られなくなって久しいが、「冬水田んぼ」など雁が休める浅い水場を守り、一時は2000~3000だった飛来数が8万羽まで回復した。
    オススメのブナ林は朝日連峰、飯豊連峰。忘れられない思い出はブナ林で見たクマタカ。翼を広げると170センチにもなる大きさ。ブナ林の水筒いらずと言われるほどいたるところに水が湧く。1950年代から木材需要が拡大し、ブナなどの広葉樹林は経済的に価値の高い針葉樹林に置きかえられ、わずか30年で人工林の総面積約1000万ヘクタールのうち約400万ヘクタールが造林され、スギ花粉にもつながることになる。1964年に木材輸入が自由化され、国産材は需要が激減するが政策は見直されず、1996年に拡大造林政策はようやく終わる。日本列島の森林の被覆率は67%。フィンランド、スウェーデンに次いで世界3位。生物多様性も豊かでガラパゴス諸島より固有種の数が多い。陸上哺乳類130種のうち36%が日本にしかいない。両生類で約74%、爬虫類で約38%。約7000種の植物のうち4割に当たる約2900種が日本だけに生育する。万葉集の3分の1は花や植物を詠んだもの。
    北九州市の環境ミュージアム館長いわく、公害反対の起爆剤になったのは婦人会の活動。
    まさに自分が生まれた70年代が公害のピークで、少しづつ改善していったんだと実感。光化学スモッグで胸が痛いと感じた小中学生時代を思い出した。恐ろしい環境に生きていたものだ。

  • 絶滅に瀕している生物の保護、繁殖活動も必要ではありますが、そこだけにとらわれていると、
    それを取り巻く生態系の変化により、他の生物への影響や、我々の生活への影響も出てしまいます。
    またどこまで生育数を増やすのか?ただ増やせばいいという問題でもないと思います。
    森林伐採からの保護活動にしても同じことが言えます。
    かつては、どのような状態で生態系が保たれていたのか調べ、戻さなければ意味がありません。
    生態系は地球環境の変化(人類の手によるもの以外)でも常に変化しているものです。
    たやすく人類が生物のためと思い、あまりにも大きく手を加えてもいてないと思います。
    公害防止の観点では、企業がよくよく環境への影響を考え、対策を取らなければなりません。
    かつての公害被害においては、企業が責任を認めないがために更に被害を拡大させてしまっています。
    再生可能エレルギーの観点から太陽光発電も増やしていますが、地方では木々を倒し造成されているところも見受けられます。
    これでは本末転倒なのでは?とも考えさせられてしまします。
    一人一人が環境への意識を高くし、知識をつけ、将来について真剣に考えないければいけないと思います。

  • 産業革命、資本主義の導入と普及により問題が深刻化した人間の自然環境への負荷、資源の搾取、生態系の破壊、それらにどう気づき、どう取り戻していったか、そして新たな課題についても書き記されている。

  • 本書の最大の特徴は、筆者が1940年生まれであるという点だ。自らの実体験を通して、日本の自然の推移、環境汚染とその回復の過程を語ることができたということだ。加えて、朝日新聞の特派員、編集委員といった社会人生活の期間、多くの取材活動や執筆勝港を行ってきたということだ。
    戦後、いかに国家が経済優先の立場から、時には死に至るほどの公害の被害から目をそむけ、救済措置を後回しにしてきたか、また反対に、そうした状況を打開すべく、自ら立ち上がった人々の活動などが詳しく書かれている。

    「ブクログ」の作品紹介
    まえがき
    第一章 鳥たちが戻ってきた
    1 「千羽鶴」になったタンチョウ
    2 孤島で全滅を免れたアホウドリ
    3 大空にガンが返ってきた
    4 野生が復活したトキ
    第二章 きれいになった水と大気
    1 数字でみる環境改善
    2 回復に向かう東京湾
    3 多摩川にアユが踊る  
    4 川崎に青空が戻った
    5 ブナの森が残った
    第三章 どこへゆく日本の環境
    1 日本人の生命観の変化
    2 何が環境を変えたのか
    3 環境を救ったものは
    4 環境保護の将来

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著者プロフィール

1940年東京都生まれ。東京大学卒業後、朝日新聞入社。ニューヨーク特派員、編集委員などを経て退社。国連環境計画上級顧問。96年より東京大学大学院教授、ザンビア特命全権大使、北海道大学大学院教授、東京農業大学教授を歴任。この間、国際協力事業団参与、東中欧環境センター理事などを兼務。国連ボーマ賞、国連グローバル500賞、毎日出版文化賞をそれぞれ受賞。主な著書に『感染症の世界史』『鉄条網の世界史』(角川ソフィア文庫)、『環境再興史』(角川新書)、『地球環境報告』(岩波新書)など多数。

「2022年 『噴火と寒冷化の災害史 「火山の冬」がやってくる』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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