フェイクニュース 新しい戦略的戦争兵器 (角川新書)

著者 :
  • KADOKAWA
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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784040822440

作品紹介・あらすじ

「ハイブリッド戦」を理解せずにフェイクニュースを語ることはできない――。いまやネット世論操作は「産業化」している。そして、一方で日本でも進行する民主主義の危機はこの「ハイブリッド戦」への移行を意味しているのだ――。

フェイクニュースがここまで大げさな話になっていることには理由がある。ネット世論操作は近年各国が対応を進めているハイブリッド戦という新しい戦争のツールとして重要な役割を担っている。ハイブリッド戦とは兵器を用いた戦争ではなく、経済、文化。宗教、サイバー攻撃などあらゆる手段を駆使した、なんでもありの戦争を指す。この戦争に宣戦布告はなく、匿名性が高く、兵器を使った戦闘よりも重要度が高い。EU、アメリカ、ロシア、中国はすでにハイブリッド戦の態勢に移行している(あるいは、しつつある)。そのためフェイクニュース、ネット世論操作はハイブリッド戦という枠組みの中で考える必要がある。単体でフェイクニュースのことを取り上げても有効な解決策は生まれない。(略)本書ではハイブリッド戦を軸に多面的にフェイクニュース、ネット世論操作を考察したい。(「はじめに」より)

感想・レビュー・書評

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  • フェイクニュースと聞くとトランプ大統領のTwitterを想起し、嘘の情報と捉えていた。
    本書を読み、ガラリと変わった。
    フェイクニュースはネット世論捜査の戦場であり、安保や政治を揺るがす影響力がある。
    戦略として行われている諸外国の事例を挙げ、日本に警笛を鳴らしている。

    グローバル化、ボットやサイボーグの存在、メディアの崩壊などの要因により、日本にもフェイクニュースは溢れている。しかし、フェイクニュースをウォッチする組織も法律もないことで、野放しになっている。

    ガラパゴスである故の平和ボケ、単一民族ゆえに人権が軽んじられていること、自分ごととして捉えられない国民性の所以であろう。

    誰もが騙されるフェイクニュースに恐ろしさを感じた。

  • ●現実のフェイクニュースにはもっと広い範囲で様々な人々が関わっており、組織的に世論操作が仕掛けられていることも少なくない。もはやフェイクニュースは国が本気で取り組むものになっている。
    ●ハイブリット戦のもとになる考え方は1999年、中国の2人の軍人が発表した「超限戦」で明示された。
    ●ロシアのトロールアーミーがアメリカを攻撃した方法。1日に50回新規の投稿を押し、一人当たり6つFacebookアカウントを保有し、最低5回発言し、うち二回は何らかのやり取りをすることになっている。
    ●金融も恰好のターゲット。
    ● FacebookやGoogleはできれば自分たちが「真実の裁定者」になることを避けたいので、外部の組織(ファクトチェック団体など)と協力関係を築いている。
    ●どこでも神奈川県構想

  • 繰り返しの箇所が多いのと、ファクトをちゃんと積み上げる記述が多いので、実となる部分はちょっと少なめなので書籍としてはあれですが、「なるほどフェイクニュースとはこういうことなのか」「超大国の情報戦とはこういうことなのね」というのがわかりますし、この視点をインストールすることによって、TwitterやFBでみるいろんな投稿をあらためて見ると、「お、これフェイクニュースじゃん」というのが結構あったりして、面白いです。まぁ各企業がこんだけSNSマーケやるんだから国も本気やりますよね。日本は日本語という言語の壁に守られてこの分野はすごく遅れている感じもするので、是非とも読んでおいた方がいいと思います(2019.11月ごろ読了)

  • Twitterで話題!偽情報を考える
    機能的識字率の低さがフェイクニュース蔓延の遠因!?
    フェイク、世論操作を考察する書!

  • ネット世論操作の手段としてのフェイクニュース。

  • 【目次】
    1.フェイクニュースが引き起こした約十三兆円の暴落
    2.フェイクニュースとハイブリッド戦
    3.世界四十八カ国でネット世論操作が進行中
    4.アジアに拡がるネット世論操作 政権ダッシュからリンチまで
    5.日本における世論操作のエコシステム

  • フェイクニュースについて、軍事/国際政治―ハイブリッド情報戦という観点を踏まえて、概念整理分類、エコシステムなど、仮説交え広範に記載。非常に興味深かった。

  • フェイスニュースは世論操作をするための武器。ハイブリッド戦の重要な武器である。他国が自国の政府がフェイスニュースを戦略的に流している。これは民主主義を破壊する威力にもなっている。
    この本にも書かれてあるように「すかし現実のフェイスニュースにはもっと広い範囲で様々な人々が関わっており、組織的に世論操作を仕掛けられている(略)。もちろん、こうした大規模な作戦を展開できる組織は限られる。その中でも大きな影響力を持っているのが国家である。フェイスニュースは国が本気で取り込むものになっている」

  • 東2法経図・6F開架 KW/2018//K

  • ハイブリッド戦という戦争の概念を元に、世界に蔓延するネットによる世論操作の実態を解説している。

    ハイブリッド戦とは、軍事行動だけでなく、経済、政治、文化など国家のあらゆるものを兵器として、相手国を支配して操る戦争の形態のこと。本書によると、国家間の「戦争」は、かつての軍事行動をともなうものから、このハイブリッド戦に移行したとされる。ハイブリッド戦は宣戦布告もなく平時から行われている。その中でも重要な位置を占めているのは、ネットによる世論操作であるという。下手すると陰謀論だと思われかねないこれらの事を、本書は実例を挙げながら、手ぎわよく整理して解説してくれる。

    個人的には「第4章 アジアに拡がるネット世論操作」が興味深かった。Facebookが結果的に独裁体制を支えているカンボジアや、ロヒンギャ族への差別拡散にFacebookが一役買ってしまったミャンマーなど、例が悲惨すぎる。情報環境が整っていない社会でフェイクニュースがはびこると、社会の安定性が脅かされることがよくわかる。大統領選へのロシアの介入をうまく退けたフランスとは好対照だ。

    その流れで日本の現状を分析した第5章を読むと、第4章で紹介されたアジアの国々の状況は他人事じゃないなあと思う。著者はさまざまなファクトや自らによる調査の結果、「日本でネット世論操作が行われている可能性は高く、その主体は現政権と考えるのが妥当である」と言う。まったく意外ではなく、悲観的にならざるを得ない。

    同時期に出た津田大介「情報戦争を生き抜く」と合わせて読むのがおススメ。事例を取り上げていても津田大介は「メディア」、本書は「インテリジェンス」の視点から記されている。問題が立体的に見えて、理解が深まると思う。

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著者プロフィール

いちだかずき●小説家及びサイバーセキュリティの専門家、明治大学サイバーセキュリティ研究所客員研究員。I T 企業の経営を経て、2 0 1 1 年にカナダの永住権を取得。同時に小説家としてデビュー。サイバー犯罪をテーマにした小説とネット世論操作に関する著作や評論を多数発表している。『原発サイバートラップ』(集英社)、『天才ハッカー安部響子と五分間の相棒』(集英社)、『フェイクニュース新しい戦略的戦争兵器』(角川新書)、『新しい世界を生きるためのサイバー社会用語集』(原書房)など著作多数

「2022年 『ウクライナ侵攻と情報戦』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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