新版 ナチズムとユダヤ人 アイヒマンの人間像 (角川新書)

著者 :
  • KADOKAWA
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レビュー : 8
  • Amazon.co.jp ・本 (280ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784040822563

作品紹介・あらすじ

アイヒマン裁判を、ハンナ・アーレントらと共に傍聴していた「日本人」作家がいた!
裁判の現場にいた著者による、生々しき傍聴記とアイヒマンの評論。
絶対に許してはならない優生思想と排外主義。その負の歴史を語り継ぐために、当時ベストセラーとなった本書を復刊する。

人類史に残る、恐るべきナチスによるユダヤ人絶滅計画。
その実態と、その背景にある思想は何か、またこの計画の実際的推進者であったアイヒマンの思想はどのようにして形成されたのか。
当時、イスラエルに赴いてアイヒマン裁判を直に傍聴してきた著者が、この謎に独自の光をあてたものである。
まだハンナ・アーレントが著名になる前、裁判の翌年(1962年)に刊行された本書には、「凡庸な悪・アイヒマン」と、裁判の生々しき様子が描かれている。

※本書は一九六二年に角川新書で刊行され、一九七二年に文庫化された作品を復刊し、著作権承継者による解説を加えたものです。
底本には一九七五年の文庫第七版を使用しました。

感想・レビュー・書評

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  •  ユダヤ人(など)の大量殺人、ホロコーストにおける、主に殺害対象者の絶滅収容所等への鉄道輸送を一手に担ったアドルフ・アイヒマンの経歴と裁判記録。生き残りの被害者の生々しい虐待の経験の証言が第一部に置かれその後アイヒマンの経歴とナチ・ドイツによるユダヤ人迫害の経過が折り混ざったような文章が続く。  全体として、アイヒマン裁判の記録の面もあるがアイヒマンの個性とナチ・ドイツのホロコーストの概説書の側面が強いか。

     本書にもあるように、文学を超えた出来事であるのでこのような本の方がいわゆるホロコースト文学を読むより今日的教訓になると思われる。例を上げれば、やはりホロコースト研究所を読む方が「夜と霧」や「アンネの日記」を読むより、ヨーロッパ近現代史におけるホロコーストの位置づけやその台頭の理由が視野広く見通せるようになるし、これらの蛮行の背景的思想である反ユダヤ主義(他民族差別)や、本書には殆ど触れられないが今日では欠かすわけにはいかぬ安楽死作戦における優生思想に対抗する視座を獲得しやすくなる。日本人によるヨーロッパ文明の根幹をなすキリスト教やその起源であるユダヤ教などへの文明批評的側面も持つ書籍である。良書認定。

  • 【1.読む目的】 
    •関心のあるナチスナチズムについて理解を深める
    (誤解のなきように、ナチスの所業は人類最大の愚行の一つだと思っていて、それがときに集団や組織としてまかり通ってしまうことに対して関心がある。)
    •凡庸な悪、と形容されるアイヒマンの裁判記録からその人物像や危うさを知る。

    【2.気付きや気になった点、面白かった点等】
    •ふつうならできることではないし、してはならないことだ。しかし、われわれは嫌悪にうちかたなければならない。少なくともここで起こったことを人びとに告げるために、だれかが生き残らなければならない。


    【3.感想】

  • ユダヤ教から生まれたキリスト教のローマ征覇以来、ヨーロッパにおいてユダヤ人がどのような立場に置かれてきたのか。またそれがどのようにナチスドイツに受け継がれたのか。

    はじめて、そういうことを知れた。

  • アイヒマンの生涯について読む機会が少なかったため、改めて為人を知ることとなった。環境が人を変えるのは戦下においても現代においても変わらないものであると感じた。誰もがナチになり誰もがユダヤ人になる可能性は人が生きてる限りある。ナチズムに傾倒した理由があり、そこから学ぶことは多い。

  • 東2法経図・6F開架:316.8A/Mu48n//K

  • 読み応えがある。前半は心が辛かった

  • ハンナ・アーレントが「凡庸な悪」と読んだ(らしい)アイヒマン。

    収容所の様子、アイヒマンの伝記、ナチズム、ユダヤ人などなど。収容所から生き残った人たちの証言は虐殺のむごさを伝え、ほんの数十年前に人間が人間に対して行ったことだと頭で理解しているつもりでも、信じたくないような、想像するのも嫌になるくらいだった。

    そしてアイヒマン。彼自身はユダヤ人の考えに好意的な印象も持ちつつも、ヒトラーの言葉が最優先、命令が絶対、ナチスで出世することのみを考えて仕事をしてきたということがよくわかった。決して同情はしないけど。

    組織の中に埋もれ、その組織で成功することだけを考えるとこんなことまでできてしまうのか。そう考えると「凡庸な悪」とは実に恐ろしい。

    最近のスポーツ界の問題や官僚の不祥事、内向きな各国の動向など色々な問題に通ずる気がした。

    こうした記録は人類共通の遺産として残すべきだと思う。アーレントの本もまた読んでみたい。

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著者プロフィール

評論家。筑波大学名誉教授。1929年生。東京大学大学院文学研究科仏語仏文学専攻〔59年〕博士課程修了。94年没。大学院在学中から文芸評論家として活躍。58年には遠藤周作らと『批評』を創刊する。ナチズムに対する関心から、61年アイヒマン裁判傍聴のためイスラエルへ赴く。62年にはアルジェリア独立戦争に従軍取材。立教大学教授などを務めたのち、74年筑波大学教授。著書に『アルジェリア戦争従軍記』『死の日本文学史』『評伝アンドレ・マルロオ』『帝王後醍醐 「中世」の光と影』『三島由紀夫の世界』など。

「2018年 『新版 ナチズムとユダヤ人 アイヒマンの人間像』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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