カサンドラ症候群 身近な人がアスペルガーだったら (角川新書)
- KADOKAWA (2018年10月6日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (248ページ)
- / ISBN・EAN: 9784040822693
作品紹介・あらすじ
「カサンドラ症候群」とは、カサンドラ症候群とは、ある種の障害や特性により心が通わない夫(または妻)をもったパートナーに生じる心身の不調。
現在、明確な診断基準は定められていないが、発達障害の急増とともにカサンドラ症候群の症状を訴える人も増えている。
本書では、カサンドラ症候群の概要や症状、対処法について紹介する。
感想・レビュー・書評
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一般的に悪妻と称されているソクラテスや夏目漱石の妻への新しいもの見方が面白く思いました。
以前、同じ著者が書いた愛着障害という本を読んだのですが、それと同様、とても参考になる内容でした。また、このような本を読んだときの私の常として、あれ?私も当てはまるところがあるのではという気持ちが今回もありました。程度の差はあれ、きっと誰もが持っている要素なのだろうと個人的には思っています。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
アスペルガー症候群、回避型愛着のの夫を持った、不安型愛着の女性といった単純な構図でないことがわかった。
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アスペルガーだけに限らず、回避型愛着スタイルのパートナーを持つと、陥ってしまうカサンドラ症候群という状態。
夫がアスペルガーか、回避型愛着スタイルなのではないかと疑っています。
どちらの傾向も持っているのですが、どちらかといえば回避型愛着スタイルかな……
問題なく一緒に過ごせる時もありますが、大部分、穏やかには過ごせません。とても疲れます。
離婚という選択肢もありますが、うまく一緒に暮らしていけるなら、その方がいいので、この本がその一助になればと思い。
読んだからといって解決することでもないですが、何も知識がないまま、相手にイライラするよりは、イライラの背景などが理解できて少し気持ちも落ち着いたように思います。
どちらか一方が努力すれば済む話でもなく、お互いが努力をしたり、思いやったり、意識を少し変えていったりしなければならないことですが、ちょっとでも良い方向に進めばいいなと、この本を読んで思いました。
とりとめもない感想ですが……
アスペルガーだけにくくらず、愛着スタイルについても十分説明してある所が良かったです。 -
関心の共有と共感的応答の乏しさ
毎日毎日ちょっとしたことが、澱のように沈み、突然非難や罵声を浴びることになる。理不尽なように思えるが、それはある意味必然の結果。
幼い時に親との愛着が形成されなかったり、生得的なもので共感性が乏しかったりすることもある
そうでない人でも、家庭以外の場所でのストレスなどで、心の余裕が失われると、共感的応答が出来なくなる。
一時的な非応答ではなくて、常態的な場合は、一見上手く行っていそうな関係でも、臨界に達すると、非難などでこぼれてしまう。
今度は関係が逆転してしまう。
不機嫌の椅子のは一脚しかない。
顔色を伺う、ある種の安定となるが、健全とは言えない。
解消には患う方に加えてパートーナー、そして相互の周囲の状況までを見て改善すること良い。
片方がストレスフルの職場から離れることで改善された事例がある -
愛着障害について、さらに詳しく知りたくなった。
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アスペルガー症候群や、回避性愛着など、相手への共感性が乏しいパートナーを持った場合に発症する可能性のある「カサンドラ症候群」について紹介した本。
この著者の本は「アスペルガー症候群」「回避性愛着」それぞれを読んできていているが、今作ではこれらの傾向を持った人と深くかかわる家族のメンタルに焦点が当てられています。
興味深いのは、人格が周囲の人間関係から独立して存在するものとも言い切れないことでしょうか。
個人の性格については、当然、独立した人格として他者からの影響でも変わらない部分はあります。
しかし、その性格がどのように発現するかは、近しい人との関係性によるところが非常に大きい。回避性愛着スタイルのパートナーを持つ不安型愛着スタイルの人が、必ずしも上手く行かないわけではなく、安定した関係性を築けているケースもあるわけです。
その場合は、不安型愛着スタイルの人であっても、相手に執着したり、まして二分法的認知でもって相手を攻撃することもなく、穏やかな状態でいられるということです。
関係性にとって、必要なのは互いの「安全基地」であるということだと著者は言います。
2人の関係性についてはどちらかが悪いということではなく、互いの愛着スタイルの特徴を知って協力していくことが望ましいようです。
統計によると、離婚を経験した男性の寿命は10年、女性は5年、短い傾向にあるそうです。
だからということでもないですが、相手だけでなく自分の中にもある問題に目を向けず、関係を終わらせて次を探してもまた同じ結果になる可能性があるとのこと。相手だけでなく、自分のことも知り、関係性を修復していくことは、夫婦間に限らず、さまざまな人間関係を豊かにしていくことでもあるかと思いました。
ーー重要な情報ーー
pp63-64
「大人のADHDと呼ばれるものも38年間の研究の
結果、その9割は、発達障害ではなかったという事実が判明した。-(中略)-発達特性以外にも、養育環境の影響による愛着障害やパーソナリティ障害を抱えていることも少なくないし、さらにそこに職場環境のストレスが加わり、ネットやゲーム、アルコールへの依存症、打つなどの気分障害を来し、それらがトータルに作用した結果として、共感性の低下が起きている場合もある。」
「発達障害傾向=治らない」という認識だったけれど、共感性が低いのは、要因が重層的に積み重なった結果であり、環境の変化で変わる可能性もあるということだと解釈しました。
参考)
「回避性愛着障害」
https://booklog.jp/item/1/4334037755
「アスペルガー症候群」
https://booklog.jp/item/1/4344981421 -
カサンドラ症候群 身近な人がアスペルガーだったら。岡田尊司先生の著書。カサンドラ症候群の概要や特徴、カサンドラ症候群の対処法などがわかる良書。本書を読むと、カサンドラ症候群の特徴を持つ人は身近に意外と多いと思うかもしれません。
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さすが岡田先生、とてもわかり易かった!!察してもらえないこと、わかってもらえないことがこんなにも心に悪影響だとは…
p.55 妻のYさんの方は、心配性と世話焼きで、自分が心配しても始まらないとわかっていても、先のことまで取り越し苦労したり、最悪の事態まで考えて悩んでしまうところがある。こうした行動は「強迫的世話」とも呼ばれ、世話や心配を市内では居られないという一つの特性である。この強迫的世話は、子供の頃、不安定な親の顔色を気にしながら、子どもの方が親をなだめたり、機嫌をとったりして育ったという人によく認められる。
p.58 イエローサインで危険を知らせる
お互いの不機嫌や披露の波が重なったりすると、些細なことをきっかけに、非難の応酬が始まる。たとえ一ヶ月ぶりであろうと、喧嘩になってしまうと、その間の平和の時期も無意味に思えて、否定モード全開となり、「全然変わっていない」「努力するだけ無駄だ」「早く別れたい」「出てって」と、極端な結論をぶつけ合ってしまう。しかし、元を辿れば、不機嫌や披露が重なっただけのことである。こうした偶発的な衝突で関係が悪化し、離婚まで至るのは、ある意味、馬鹿げているし、大きな損失である。それを防ぐための工夫としておすすめなのが、イエローカードならぬイエローサイン、今日は疲労がたまっているとか、睡眠不足でイライラしやすい状態を、「危険日」ですよ、と知らせる方法だ。サインや以下のようなカードを使って、それを呈示したときは、相手は配慮してできるだけ優しく接するように心がける。両方ともイエローサインを呈示したときは、その日は最低限の言葉だけ交わして、早めに就寝するというルールを決めておく。そうすることによって、お互いにイライラに相手を巻き込んでしまうことを防ぐ。イエローサイン以外にも、相談したいことがあるときのカードも活用するといいだろう。回避型の人は、自分から相談するのが苦手で、コミュニケ−ションを取り残ってしまい、それが亀裂を生むことにも繋がりやすい。
p.163 家族ミーティングのすすめ
近年イギリスを中心に発展し、注目されている手法に家族ミーティングと呼ばれる物がある。統合失調症などの精神障害を抱える家族では、家庭内の葛藤が強まりやすく、それによって病状の悪化を招くという悪循環を生じやすいが、それを防ぐ方法として導入されるようになったものだ。
担当者(保健師・心理士・ソーシャルワーカー等)が家族を訪問して、家族会議のようなものを行う。原則家族全員参加だが、日によっては参加しない人が居てもいい。司会役と初期を決めて、そこで話し合ったことは会議と同様記録していく。最初は、担当者が司会役を努めてもいいが、次第に家族が司会役を行えるように育てていく。話し合う議題は、家族の誰でも提起することが出来る。困っていることや、家族で話し合いたいことを一人ひとり言い、それについて意見を出し合う。
p.169 アスペルガータイプ
近視の強い人が、相手の顔がよく見えないため、相手の反応に気づかないのと同じで、心の視力が弱いため、相手の気持ちが見えないのである。それをなじられても、本人としてもどうすることもできず、逆にストレスに感じてしまう。
p.194 どうやって、パートナーからの共感的応答がなくなった状況で、自分の痔持ちを支えているのだろうかと、良く観察してみると、失われた部分を想像力で補っていることに気付かされる。相手の些細な仕草や反応を、幸いってくれようとしたのだと、自分で言葉にするのだ。相手の些細な仕草や反応を、こう言ってくれようとしたのだと、自分で言葉にするのだ。まるで、幼い頃、母親が、まだ言葉を話せない子供の気持ちを代弁するように、一人二役で、相手の発言を代弁し、会話として成り立たせるのだ。些細な仕草に、ありがとうの気持ちを汲み取ることができれば、それを励みとして関わり続けることが出来る。→漱石の妻は当代随一の精神科医・呉秀三の診断を受けその診断結果は、「ああいう病気は一生治りきるということがないものだ。治ったと思うのは実は一時沈静しているばかりで、後でまた決まって出てくる」というものだった。つまり、不治の病だと宣告されたのである。ところが、妻・鏡子はかえって納得がいき、覚悟が決まったという。