ネットは社会を分断しない (角川新書)

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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784040823034

作品紹介・あらすじ

罵詈雑言が飛び交い、生産的な議論を行うことは不可能に思われる現在のインターネット。しかし、ネットの利用は本当に人々を分断しているのか? 10万人規模の実証調査で迫る、インターネットと現代社会の実態。

感想・レビュー・書評

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  • 自分用のメモ

    マスメディアはマスにアプローチする必要があるから、ボリュームゾーンの中庸にアプローチする必要がある。だから、思想も強くなく分断を起こさない傾向がある。
    対立意見なども出る。

    他方で、Twitter、YouTube、ブログなどはコストが低いのでマスにアプローチする必要はなく、強い思想を発信し、強い思想の人にアプローチすることができる。
    これにより分断が進む。なお、右傾化も左傾化も起きる。

    また本書では中高年の過激化が進んでいることからネットは社会を分断しないとしている。なぜなら若年層のほうがテレビ新聞を見ずにネットを見ているから。
    ただ私の予想では、若年層は政治にそんなに関心がない。かつ、自身の社会活動にある程度やりがいを感じている。他方で中高年は自己実現の機会が少なく、政治にすがるしかないイメージ。

  • 文字通り、ネットは必ずしも社会を分断しないということを説いた一冊。

    最近あまりネットを見ない自分から見ても、説得力のある内容だった。

  • 日本で実施した10万人規模のアンケート調査を通じてわかったことをまとめている本になります。ですからこれは「日本」についての結論だ、ということを念頭に置く必要があるでしょう。まず著者は、ネットに関する一般的な社会通念を提示します。それは「ネットが社会を分断する原因である」というものです。例えばフェイスブックなどのSNSでは、行動ターゲティングといって、ユーザーのプロフィールや思想・価値観を分析し、それにあったニュースや製品・サービスを当該ユーザーに提示するので、ユーザーは偏った情報にばかり晒されるようになって(※これを「選択的接触」と呼ぶ)、自分の信念がどんどん強化されるだろう、というロジックです。「エコーチェンバー化」とも言いますが、思想・価値観が似通った人ばかりがネット上では集まるので、あたかも自分の声が屋内で響き渡っている(エコーしている部屋)かのようになる、という現象です。つまり右寄りの人はより右寄りに、左寄りの人はより左寄りになって社会が分断化される、という論調です。

    このような考え方に対して、著者は10万人規模のアンケート結果を通じて、「ネットは社会を分断しない」(むしろ穏健化させている可能性すらある)という結論を提示します。詳細は述べませんが、たとえば若者は中高年よりもネットをたくさん利用するけれども、若者ほど思想が穏健化(中庸)であることがデータで示されます。また確かに「ネット利用」と「思想の極端度」は相関があるけれども、「ネット利用」が「思想の極端化」につながるという因果関係ではないことを示しています。むしろ因果関係は逆で、極端な思想を持った人(高齢者が多い)がネット利用を始めて、その考えを披露するのだ、ということを2時点のアンケートを通じて主張します。またネットでは、自分の思想とは逆陣営とみられているメディア(ブログ、ツイッター他)にも40%くらい接触しているということで、上の仮説が述べているようなエコーチェンバー化は(少なくとも日本では)起こっていないと結論付けています。

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  • 東2法経図・6F開架:007.3A/Ta84n//K

  • 分極化の果てに人々が相互理解を拒否し始め、攻撃的議論の応酬に疲れた人々が強いリーダーを求め始める時に独裁者が登場する(「民主主義の死に方」)。

    コストがかかり、少数のマスメディアは、視聴者獲得のために穏健化する(ホテリングの理論)。しかし、インターネットはコストが安く、少数の読者を獲得するだけで成立し、むしろ大手がターゲットとしない分布の裾の部分で読者を獲得しやすいため、偏った立場のメディアが登場する。

    キャス・サンスティーンは、考え方の似た者同士だけが交流し続けると、次第に意見は強化され、社会は分裂していくことを指摘した(「インターネットは民主主義の敵か」)。

    著者らの調査によれば、分極化がみられるのは年齢が高い層であり、ネットをより利用している若年層ではない。ネットの利用開始によって分極度は、むしろ低下する。ただし、政治的に強い意見の持ち主(全体の2割)がツイッターを使い始めると、分極化が進行する。ただし、残りの8割は逆に穏健化する。

    異なる政治的意見に接触するクロス接触率は4割前後あるが、分極化が高い人は2割程度になる。クロス接触率はテレビや雑誌の方が低く、選択的接触は、ネットよりもテレビや雑誌において起きている。

    ネットで実りのある議論をすることには、47%の人が難しいと回答し、32%の人がネットには不寛容な人が多いと思うと回答している。ネットが政治を良くしていると思う人は5%しかいない。

    争点となる話題に関するネットの書き込みの50%は、0.23%のヘビーライターによって占められている。分極度別では、ある争点に対して強く賛成または反対と回答した約2割の人の書き込みが、4割強を占めている。このような状況が、穏健派が発言をためらう萎縮効果をもたらしており、54%の人がネットで自由に発言していないと回答している。

  • ネットが極端な意見に分けるという一般の考えに実証性で反論をした書物である。そして極端な意見をマスメディアと比較して行わないという理由に選択的接触を与えている。マスメディアは経費のゆえ、新聞を2紙以上購入しないなど、のゆえに選択的接触が起きるということを挙げた竜には納得させられる。そして、ネットで一部の極端な意見が目立つので分断しているという理由もなっとくである。

  • 10万人規模のアンケートを分析して得た結論。ネットは社会を分断せず、むしろ相互理解を進めている可能性がある。ネットにおいては、極端な意見を持ち実人数が少なくなるほど、発言数が多い。ネットで見える世論は真の世論と乖離している。

    多様な意見を聞く機会が多いほど穏健になる。ならネットによらずとも、人生経験を経た高齢者ほど穏健になりそうなのに、調査結果はそうじゃない。「歳とともに頑固になる」っていうのもデータで分析して欲しい。

  • ネット世論は一部の人が大量に書き込んでいるから、極端な思想を持っているのは中高年が多い、というなんとなく知ってたことが統計的に示されています。
    サンプリングの正しさは本書だけではわからないので類似研究が望まれるところです。
    たぶん中高年になると片寄るのは脳科学的に避けられないことだと思うので、
    自分が中高年になったときは、お互いの思想を尊重し会えるように抗っていきたい。

  • 「へえ~」って思いました。たまには、こういう本を読むのもいいですね。(2020年1月11日読了)

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著者プロフィール

田中 辰雄(たなか たつお) 1957年、東京都に生まれる。東京大学大学院経済学研究科単位取得退学。国際大学グローバルコミュニケーションセンター研究員、コロンビア大学客員研究員を経て、現在、慶應義塾大学経済学部教授。専攻は計量経済学。主要著作:『ゲーム産業の経済分析』(共編著、東洋経済新報社、2003年)、『モジュール化の終焉』(NTT 出版、2007年)、『著作権保護期間』(共編著、勁草書房、2008年)、『ソーシャルゲームのビジネスモデル』(共著、勁草書房、2015年)、『ネット炎上の研究』(共著、勁草書房、2016年)、『ネットは社会を分断しない』(共著、角川新書、2019年)ほか。

「2022年 『ネット分断への処方箋』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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