ネットは社会を分断しない (角川新書)

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レビュー : 15
  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784040823034

作品紹介・あらすじ

罵詈雑言が飛び交い、生産的な議論を行うことは不可能に思われる現在のインターネット。しかし、ネットの利用は本当に人々を分断しているのか? 10万人規模の実証調査で迫る、インターネットと現代社会の実態。

感想・レビュー・書評

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  • 東2法経図・6F開架:007.3A/Ta84n//K

  • 分極化の果てに人々が相互理解を拒否し始め、攻撃的議論の応酬に疲れた人々が強いリーダーを求め始める時に独裁者が登場する(「民主主義の死に方」)。

    コストがかかり、少数のマスメディアは、視聴者獲得のために穏健化する(ホテリングの理論)。しかし、インターネットはコストが安く、少数の読者を獲得するだけで成立し、むしろ大手がターゲットとしない分布の裾の部分で読者を獲得しやすいため、偏った立場のメディアが登場する。

    キャス・サンスティーンは、考え方の似た者同士だけが交流し続けると、次第に意見は強化され、社会は分裂していくことを指摘した(「インターネットは民主主義の敵か」)。

    著者らの調査によれば、分極化がみられるのは年齢が高い層であり、ネットをより利用している若年層ではない。ネットの利用開始によって分極度は、むしろ低下する。ただし、政治的に強い意見の持ち主(全体の2割)がツイッターを使い始めると、分極化が進行する。ただし、残りの8割は逆に穏健化する。

    異なる政治的意見に接触するクロス接触率は4割前後あるが、分極化が高い人は2割程度になる。クロス接触率はテレビや雑誌の方が低く、選択的接触は、ネットよりもテレビや雑誌において起きている。

    ネットで実りのある議論をすることには、47%の人が難しいと回答し、32%の人がネットには不寛容な人が多いと思うと回答している。ネットが政治を良くしていると思う人は5%しかいない。

    争点となる話題に関するネットの書き込みの50%は、0.23%のヘビーライターによって占められている。分極度別では、ある争点に対して強く賛成または反対と回答した約2割の人の書き込みが、4割強を占めている。このような状況が、穏健派が発言をためらう萎縮効果をもたらしており、54%の人がネットで自由に発言していないと回答している。

  • ネットが極端な意見に分けるという一般の考えに実証性で反論をした書物である。そして極端な意見をマスメディアと比較して行わないという理由に選択的接触を与えている。マスメディアは経費のゆえ、新聞を2紙以上購入しないなど、のゆえに選択的接触が起きるということを挙げた竜には納得させられる。そして、ネットで一部の極端な意見が目立つので分断しているという理由もなっとくである。

  • 【配架場所、貸出状況はこちらから確認できます】
    https://libipu.iwate-pu.ac.jp/opac/volume/523040

  • 10万人規模のアンケートを分析して得た結論。ネットは社会を分断せず、むしろ相互理解を進めている可能性がある。ネットにおいては、極端な意見を持ち実人数が少なくなるほど、発言数が多い。ネットで見える世論は真の世論と乖離している。

    多様な意見を聞く機会が多いほど穏健になる。ならネットによらずとも、人生経験を経た高齢者ほど穏健になりそうなのに、調査結果はそうじゃない。「歳とともに頑固になる」っていうのもデータで分析して欲しい。

  • ネット世論は一部の人が大量に書き込んでいるから、極端な思想を持っているのは中高年が多い、というなんとなく知ってたことが統計的に示されています。
    サンプリングの正しさは本書だけではわからないので類似研究が望まれるところです。
    たぶん中高年になると片寄るのは脳科学的に避けられないことだと思うので、
    自分が中高年になったときは、お互いの思想を尊重し会えるように抗っていきたい。

  • 「へえ~」って思いました。たまには、こういう本を読むのもいいですね。(2020年1月11日読了)

  • この本の主張はタイトル通り。その根拠は以下の通り。
    意見の分断は、ネット利用率の高いであろう若年層よりも、中高年層のほうが激しいこと。
    ネットを頻繁に利用する人のほうが、一定期間の経過による意見の穏健化が見られること。
    新聞や雑誌よりもネットのほうが多様な意見を見ることが容易であること。
    ネット利用者が実際に見ている情報のうち、30%~40%は自分の意見と反する論調のものであること。

  • ネットは社会を分断していない事実は安心するけど、ネットに見える現実は分断を可視化している事実にも気が重くなる。

  • アメリカの調査会社ピューリサーチセンターのレポートでは1994年と2014年ではリベラルと保守の支持者の意見の分布、分断が広がったことを示した。日本にはこのように長期にわたって国民意識を調査する機関がない。トランプとサンダースは極端に意見が異なり、もし政権交代すれば180度違う政治が行われる。個人レベルでの分極化は問題ないが、社会が分極化するのはよくない。民主主義は異なる意見が議論によって、気づかなかった改善点を見い出し折り合うことが重要。どちらの意見も完璧ではないので、多数決によって無理に折り合いのつかない結論を出すとやがて、不本意な結論を強いられた方は分裂、独立を目指すようにまでなる。
    中国共産党は2018年4月にニュースアプリの配信を停止。「関心のある情報だけ」を届ける方を危険視。党の公式見解のニュースを見なくなると判断した。
    ネトウヨは中高年が多い。分断が起きているのはネット利用の多い若者ではない。
    ネットは極端な意見が突出し、罵倒と中傷の場になりやすい。
    紙媒体はコストがかかるので支持しない新聞や雑誌を買うのはハードルがある。ネットは反対意見であってもフォローしたり、クリックするだけで読むことができる。
    もともと極端な意見の人はネットでさらに意見が偏りやすい。一方的な情報に警戒するリテラシーは根付いてきている。

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著者プロフィール

1957年、東京生まれ。東京大学大学院経済学研究科単位取得退学。現在、慶應義塾大学経済学部教授。専攻は計量経済学。著書に『ゲーム産業の経済分析』(共編著・東洋経済新報社)、『ネット炎上の研究』(共著、勁草書房)など。

「2019年 『ネットは社会を分断しない』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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