座右の書『貞観政要』 中国古典に学ぶ「世界最高のリーダー論」 (角川新書)

著者 :
  • KADOKAWA
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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784040823515

作品紹介・あらすじ

「僕は毎日、この古典に叱られています」(著者)――

中国は唐の2代皇帝・太宗による統治(貞観時代の政治)の要諦が凝縮された『貞観政要』。

クビライ、徳川家康、北条政子、明治天皇……と時代を超えて、世界最高のリーダー論として読み継がれている古典である。

本書では、稀代の読書家であり、『貞観政要』を座右の書にする著者が、その内容とポイントを、具体的に解説。

全組織人、必読の中国古典。

感想・レビュー・書評

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  • 器を大きくせず中身を捨てる むしろ空っぽ
    君は舟なり、ひとはみずなり
    諫言を受け入れなければ裸の王様
    自分の足の肉を割いて食べる人の愚
    十思、九徳
    適材適所
    小言を聞き続けるという能力
    人は「瓦タイプ」「鉄タイプ」に分けられる
    三鏡 銅の鏡 歴史の鏡 人の鏡
    人間社会の洞察に必要な礼と楽
    時間軸を正しく設定する
    人は濁ってはいけない、澄み過ぎてもよくない
    小人閑居して不善をなす
    疾風、勁草を知る
    伝家の宝刀は抜かないほうが怖い
    少数にするから精鋭が生まれる
    創業と守成はどちらが難しいか
    組織の急務は後継者を選ぶこと

    などなど
    心にしみた言葉 
    古き歴史を重ねてきた国にはやはりそれなりの
    深い言葉がある
    「長」と名がつく人にぜひ読んでいただきたい

  • 三鏡
    器の中身を捨てる
    諫言
    頭の中に時間軸を持つ
    信と誠のある言葉

  • 『感想』
    〇古典は教科書であり、学ぶとよいものであることは分かっているが、いざ読みだすと今とは違う文体に意味を理解することがすぐにはできなく、なかなか進まない。それは時代背景を知ることなく核心に迫ろうとしていたこともあった。そこから教えていただけたのはありがたい。

    〇相手に説明するとき、話を理解してもらわなければ意味がないので、比喩を使ってでも歴史上の故事を使ってでも相手に伝えなければならない。それができるかが本人の力。

    〇部下に指示したとき、その本当の意味を理解して実践できない姿をみるとつい口を出したくなってしまう。だがある程度までは我慢する。そのことで生じた責任を自分がおうだけでよいのだ。それぐらい思っていないと部下は成長しないし、結局自分も成長しない。

    〇部下に対しても謙虚でいるということは正しいとわかっていても難しい。どこかで部下を下に見ているし、こっちの立場もわからないくせに言いたいことだけ言うなと思ってしまう。それにもしそれが正しいことだと理解したとしても、相手や気分によってはそれを認めることが難しい。

    〇人間なのだからすぐにできないのは当たり前なので、時間をおいてでも部下の意見にも耳を傾けよう。私は文句の言葉を言わずとも表情に出ているそうなので、そこだけは出さないように努力しよう。

    〇逆に上司に意見を言う時について。これも意見が正しいか間違っているか以外に、基本的な人間関係ができているかどうかが重要。感情でなく理論で意見を取捨選択するべきだが、それを相手に押し付けられない。上司に認めさせるにはその前に、こいつの意見は聞くに値すると思わせるだけの態度・実績を示さなければならない。

    〇人は自分のことは分からなくても他人のことはよく見て知っている。だから表面上の言葉や態度をそのまま信頼することなく、本心はどう思っているのかをたえず観察しておきたい。

    〇結局貞観政要にある教えは良いのだが、それを実践するだけの力がない人が世の中に多いのだ。だから自分はそれができるよう精進し、相手はどの程度できているのかを観察し、相手に合わせた応対をしていかなければならない。

    『フレーズ』
    ・組織として生産性を上げていこうと思ったら、「元気に、明るく、楽しく」意外に解はない。(p.9)

    ・上司は、部下の権限を代行できない。これが、権限を付与するときの基本的な考え方です。ひとたび権限を委譲したら、その権限は部下の固有のものであり、上司といえども、口を挟んではいけません。(p.94)

    ・あまりに心が清らかで、行いも正しく潔白すぎる人は、逆に、他人から敬遠されて孤立してしまうのです。(略)輝くほど心が澄んでいる人は、誰の心にもダークサイドがあることをわかっていない。だから、他人の弱さを理解できないのです。(p.171)

    ・君主が命令をしても下が行動を起こさないとしたら、それは、君主の命令の言葉に信念や誠実さがないからだ。(p.196)

    ・これからのリーダーに必要な力(p.258)
      ・強く思う力
      ・共感力
      ・統率する力
      ・正しく決断する力

    ・喜怒哀楽のすべてが人生であると考えれば、挫折もすばらしい体験になります。うまくいかないことがあっても、「これでまた喜怒哀楽の総量が増えた」と思うと、怒りや悲しみといった負の感情を受け入れやすくなるはずです。(p.266)

  • ・完全でありえない人間、人の能力に大差ない。自らの器を大きくするのではなく、器を空にして新しい考え方を受け入れ正しく判断することが大切である。多様なキャリはや職種の人達から広く話を聴く事は容量を拡げるのでは無しに入れ替えるという考え方に自分への学びを含め人を育成する事の意義を深めることができた。
    ・(歴史上の偉大なリーダーでさえ)大差ない人間としてすぐにできない、または大切さを忘れてしまうものなのだと思うと気持ちが楽になった。

  • 権力を握る者が、どうやって政治を間違わず、自身を戒めるためのシステムを作りあげるかという興味深い話。
    それがこの「貞観政要」なのである。
    約1300年前の西暦700年代に編纂され、今でも語り継がれているのだから、真のリーダーシップ論と言ってもよいのではないだろうか。
    国を治めるのも、会社でも、ピラミッド型組織になるのは変わらない。
    これからの時代は分散化されてネットワーク型が主流と言われるが、それではピラミッド型組織が無くなるかというと、そういうことは決してないだろう。
    この形の組織体が残る以上は、トップに君臨する人物は存在する訳だし、そのトップ次第で組織の力が大きく変わることも間違いないだろう。
    人間というのは不思議なもので、どれだけ人格者であっても、権力を握ると変わってしまう。
    人の欲というのは際限のないものだからだ。
    逆にトップの座で安心して隙を見せれば、その権力の地位を奪おうと目論む輩の餌食になる。
    そういう矛盾があるにも関わらず、ピラミッド型組織のメリットもある訳だから、なかなか組織の形は変わりようがない。
    トップのマネジメント次第で、部下の結束が強まり、ものすごい結果を出すことがある。
    これは軍隊などは顕著だろう。
    やはり人間が社会的な生物である以上は、この「組織で生きる」という呪縛からは逃れられないのだと思う。
    だからこそトップはどう振舞わなばならないのか。
    暴君になっては絶対にいけない。苦言を呈してくれる部下を決して排除してはならない。
    こういう戒めは本当に大事だ。
    リーダーの最も大事な仕事は後継者の育成である。
    これもものすごく腹落ちする。
    これだけ真実が語り継がれ、大事なポイントは分かっているはずなのに、今でも組織はこれらの問題を抱えたままになっている。
    私の所属する会社でも全く同じだ。
    「三鏡の教え」があるはずなのに、何も出来ていない。
    銅の鏡で、自分自身の姿を見つめ内省する。
    歴史の鏡で、過去の事例を学んで未来を構想する。
    人の鏡で、部下の厳しい直言や諫言を受け入れる。
    それぞれ本当に正しいことを言っている。
    教えはシンプルだからこそ、実行することが難しいということなのだろうか。
    翻って私自身がこれらを実践出来ているだろうか。
    組織のリーダーとまではいかないが、そこそこ年齢も重ね、チームを率いているのは確かだ。
    部員から私がどう見られているかは分からないが、言いにくいことも言ってくれているだろうか。
    自分自身の振舞いを振り返って、内省出来ているだろうか。
    正しく歴史から学びを得ているだろうか。
    今の時代も混沌としているが、本書の時代も相当に混沌としていたことだろう。
    つまり、いつの時代にもそれなりに混乱があり、そしてその中でも1000年以上も変わらない本質があるということなのだ。
    愚直にまずはこれらを実践してみるのが大切な気がする。
    皇帝であった太宗には及ばないとしても、その気持ちを重ねることはできる。
    これからの新しい時代に向けてのリーダーシップ、組織論はどうなるのだろうか。
    結局は大事な本質が変わらないとすれば、「貞観政要」こそが学ぶべき歴史の鏡ということにならないか。
    日々意識して実践してみたいと思う。
    (2023/1/27)

  • 素晴らしい。
    トップの自制と部下の直言
    少数だから精鋭になる
    部下を信じるから成果が上がる
    そんな甘く無いけどね…
    つまり、必死に働く姿を見せる、これ。

  • 最近の新書は多くのトピックスを羅列しただけの薄っぺらいものが多いが、これは芯となるメッセージが貫かれていて、自然と理解が深まるよう巧みに構成されている。自分はしがない中間管理職でしかないが、リーダーとして備えているべき資質を理解することはどの階層の人にも役に立つ。
    「権限の感覚」=リーダーとしての仕事に専念し、実務は適任者に任せる、任せたら部下の決定に口出ししない、任せているのにいちいち裁可を仰ぐな、が実践できている人はほとんどいないのではないか。少なくとも自分の会社には皆無である。事業本部長クラスまで日々のオペレーションに口を挟むし、部下は部下で何でも裁可を仰いで自分で決めようとしない。結局責任は曖昧になる。ダメだこりゃ。

  • 歴史に学び組織に還元する。そんな生き方の1つを提言してくれる内容であった。
    リーダーに必要な三鏡(自分を映す銅鏡、将来を予想する教材となる歴史の鏡、直言、諫言を映し出す人の鏡)はリーダーでなくとも生きる上で持つべき視点であると思う。器は広げられないいっそ空にする。全能感を捨て謙虚さを持ち合わせ、新しい価値観を受け入れる。変化の激しい時代だからより必要となる考え方だ。
    マイナスもプラスもあって人生。プラマイゼロでも振れ幅を大きく生きたいものだ。

    • ウッズさん
      歴史に学び組織に還元する。そんな生き方の1つを提言してくれる内容であった。
      リーダーに必要な三鏡(自分を映す銅鏡、将来を予想する教材となる歴...
      歴史に学び組織に還元する。そんな生き方の1つを提言してくれる内容であった。
      リーダーに必要な三鏡(自分を映す銅鏡、将来を予想する教材となる歴史の鏡、直言、諫言を映し出す人の鏡)はリーダーでなくとも生きる上で持つべき視点であると思う。器は広げられないいっそ空にする。全能感を捨て謙虚さを持ち合わせ、新しい価値観を受け入れる。変化の激しい時代だからより必要な考え方だ。
      マイナスもプラスもあって人生。プラマイゼロでも振れ幅を大きく生きたいものだ。
      2021/03/29
  • 愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶのだ。

    古今東西、リーダーの本質は変わらないのかもしれない。

  • 中身が濃くて、覚えなきゃいけないこと、わきまえなきゃいけないことか盛りだくさんで、読み疲れました 苦笑。
    でも大事なことは、①諫言をしてくれる部下をきちんと側に置き、②権限の感覚があること、③三鏡(銅、歴史、人)、④組織はリーダー以上の器にならない、⑤リーダーは寄生階級など、他にもたくさんありますが、まずはこの辺りを頭に入れておこうと思います。

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著者プロフィール

出口 治明(でぐち・はるあき):立命館アジア太平洋大学(APU)学長。ライフネット生命創業者。1948年、三重県生まれ。京都大学法学部卒。日本生命入社。ロンドン現地法人社長、国際業務部長などを経て2006年に退職。同年、ネットライフ企画(株)を設立し、代表取締役社長に就任。2008年4月、生命保険業免許取得に伴いライフネット生命株式会社に変更。2012年上場。2018年より現職。著書に『全世界史(上・下)』(新潮文庫)、『0から学ぶ「日本史」講義』シリーズ(文春文庫)、『歴史を活かす力』『日本の伸びしろ』(文春新書)、『哲学と宗教全史』(ダイヤモンド社)、『一気読み世界史』(日経BP)、『ぼくは古典を読み続ける』(光文社)等多数。

「2023年 『人類5000年史Ⅴ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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