13億人のトイレ 下から見た経済大国インド (角川新書)

著者 :
  • KADOKAWA
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本棚登録 : 151
レビュー : 17
  • Amazon.co.jp ・本 (232ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784040823614

作品紹介・あらすじ

トイレを見れば、丸わかり。
都市と農村、カーストとイノベーション……
ありそうでなかった、「トイレから見た国家」。
海外特派員が地べたから徹底取材!!

インドはトイレなき経済成長だった!?
携帯電話の契約件数は11億件以上。
トイレのない生活を送っている人は、約6億人。
経済データという「上から」ではなく、トイレ事情という「下から」経済大国に海外特派員が迫る。
モディ政権の看板政策(トイレ建設)の成功は忖度の産物?
マニュアル・スカベンジャーだった女性がカーストを否定しない理由とは? 
差別される清掃労働者を救うためにベンチャーが作ったあるモノとは? 
ありそうでなかった、トイレから国家を斬るルポルタージュ!

トイレを求めてインド全土をかけめぐる!
■家にトイレはないけれど、携帯電話ならある
■トイレに行くのも命がけ
■盗水と盗電で生きる人たち
■「乾式トイレ」清掃の過酷さはブラック企業を超える
■「差別」ではなく「区別」と強弁する僧
■アジア最大のスラムの実情 etc.

【目次】
はじめに

第一章 「史上最大のトイレ作戦」――看板政策の実像と虚像
第二章 トイレなき日常生活――農村部と経済格差
第三章 人口爆発とトイレ――成長する都市の光と影
第四章 トイレとカースト――清掃を担う人たち
第五章 トイレというビジネス――地べたからのイノベーション
終章 コロナとトイレ――清掃労働者の苦渋

おわりに
主要参考文献一覧

感想・レビュー・書評

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  • 『日本では、ほとんど誰もが清潔なトイレにアクセスすることができ、トイレのある暮らしが日常に組み込まれている。しかし、インドではそうではない。「トイレ」というキーワードで、貧富の差やカースト、都市と農村の格差といった、インドのさまざまな姿が見えてくるのではないか。そう思って、取材のためにインド各地を歩いた。そこから見えてきたのは、経済成長という言葉の陰でさまざまな問題を抱え、多くの人たちが苦闘しているインドの姿だった。』

    日本から遥か遠くにある国。インド。
    パソコン上に飾られた、成長率という数字だけ見れば、「めざましい経済成長をしている国」と思うのは当たり前かもしれない。でも、どことなく違和感が残るのはなぜだろう、と頭の片隅に思っていた。

    その違和感の正体は、この本を通して、トイレというフィルターから、少しずつ明らかになっていった。
    トイレを増やすことで、衛生面の改善を図ろうとする政策から始まる物語は、トイレを増やすことが目的になってしまった現実を浮き彫りにしている。
    たくさん作ったところで、トイレにまつわる問題…下水管の掃除をするのは身分が低い人だったり、「聖なる川」がどんどん汚れていったり、と、種々の問題は何も改善されていないのだ。
    そして、世襲制であるカースト制度は、改善されつつあるものの、21世紀を迎えた今でも当たり前のように横たわっている。

    トイレを囲む、水回り。そして、衛生環境。
    日本とインドの共通点といえば、カレーくらいしかないと思っていた自分にとって、この本が示す、インドがどんな国かという説明は、ものすごくわかりやすかったし、その着眼点には、脱帽した。

    インドだけでなく、どんな国においても、わかりやすい指標ではなく、数値化しにくいものも見ることで、はじめて全体像がぼんやりと浮かび上がってくるのかもしれない。

    インドのことを全く知らない自分にとっては、単行本レベルの内容の深さでした。

  • スピリッチュアルな世界に関心のあるひとにとっての
    世界の路地裏を歩くバックパッカーたちにとっての
    インドではない
    それこそ 13億人の人間が暮らす
    インドを「トイレ」から見たレポート

    都市であれ村であれ
    どんな場所でも
    バラモンであれダリットであれ
    カーストなど関係なく
    「出すこと」は
    平等で必要なこと

    きっちりとした取材に
    裏打ちされた
    「トイレから見た国家」が
    小気味よくあぶり出されていく

    著者の着眼点のすばらしさに脱帽
    取材をされた人たちへの
    リスペクトも感じられる
    だからこそ
    本音が聞きだせることができ
    だからこそ
    インドの今を語ることに
    つながっている

    現在のインドを語る
    好著の一冊です

  • サブタイトルは「下から見た経済大国インド」~携帯電話の契約件数は11億以上。トイレの無い生活を送っている人は約6億人。インド首相のナレンドラ・モディが提唱した「スワッチ・バーラト」が成功を収めたのは2019年。クリーンインドを目指すトイレ普及運動だが、どうやら各段階での忖度の積み重ねだったらしく、補助金と借金で家の敷地内にトイレを作っても使わないのは、地下のタンクの汚物の除去に金が掛かるというだけではなく、インド人が不浄とする排泄物は、脂肪・血液・ふけ・耳垢・痰・涙・目やに・汗・鼻汁・精液・小便・大便で沐浴などによって清められなくてはならないとされる。トイレも不浄のもの。乾式トイレが普及してマニュアル・スカベンジャーであるダリッドと呼ばれる不可触賤民が生まれたとする見解もある。不可触賤民は廃止されたとされ、カーストによる差別は禁止しているが、カースト自体は廃止されていない。ガンジーも、モディも、トイレの聖人・ビンデシュワル・パタクもカースト自体は否定していないのだ。トイレビジネスは大きな可能性を持っているが、不浄感を変えることはできるのか?屋外で用を足す人は多いし、近代的なトイレで用を足す人たちの下水も処理し切れていない~良い本だったね。他国のことだが、我がこととも考えられる。浄不浄感は日本にも共通するから

  • 518-S
    閲覧新書

  • <閲覧スタッフより>
    トイレから見るインドの話。家にトイレのある生活が当たり前の日本では、考えられないインドのトイレ事情。インド独自のカースト制度は今も根付いており、最下層カーストが、マスクも手袋もなしで、素手で排泄物を処理をしている状況に衝撃を受けます。女性がトイレに行くのも命がけだったり…。想像を超えるインドの闇を書いた一冊です。
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    所在記号:518.51||サト
    資料番号:10255647
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  • インドは、どこか謎めいた遠くの国というイメージで、身近に感じることはあまりありません。本書は日本人が共感を持てる「トイレ」というテーマから、インドの政治、習慣、カーストに由来する社会問題を、取材という手法でまとめたものです。

    データから判断するとインドは成長を続ける経済大国であることは明らかで、この視点を「上から」と本書は例えています。これに対して 「下から」という言葉は、生活の視点からインドを眺めてみるという意味に加え、メインの取材対象である「ダリット」と呼ばれるカースト最下層の人たちの存在も示唆しているのだと思います。

  • トイレを切り口にしたインドのルポ。貧し過ぎてトイレを設置出来ない人々、その必要性を認めない人々、トイレ設置を政治利用する人々、利権を貪る人々、清掃カースト(ダリット)に束縛される人々、彼らに手を差し伸べようとする人々、技術力(ロボット)に解決策を見出す人々...。ウォシュレットの有無で悩む日本にあって、トイレ自体の有無が問題になるインドの有り様は、習慣や考え方含め全てがインパクトが大きかった。例えば、トイレに行く行為が身の安全を脅かすなど、我々には想像もできないが、そんな一例にインド村落が抱える問題が潜んでいるなど。その点インドをどう伝えようかと思索した著者の思惑は、図に当たっていると感じた。

  • トイレから覗く現代インド事情

    本書は、現地の日本人記者がトイレ事情から現代のインドを語るというもの。

    モーディ首相の看板政策、スワッチ・バーラト政策。野外での排泄が今でも普通なインドにおいて、1億2000万基のトイレを設置して、野外排泄をゼロにするというもの。

    野外排泄の問題点は、住環境が不衛生になり、感染症等の温床になるだけでなく、夜、離れたトイレに向かう女性を狙ったレイプなども多発していたことにある。

    しかしトイレを補助金をどっかり使って設置しようとしたところで、しっかりとした管理システムが整っていなかったり、賄賂や中抜きも横行していて整備もままならない。それにトイレを入れたところで、水洗式ではなく乾式(排泄物を一定期間貯めて、あとで取り除く)だったりなので、自分の家に汚物を貯めたくないので結局使わなかったり、汚物を取り除くのにもお金がかかる(それをやる人は素手でやったり)するので野外排泄もまだまだ普通に行われているとか。。。またトイレ問題から、インドにおける上下水道の問題や、今でも普通に行われている便所掃除人や下水処理人の劣悪な労働環境(マスクなしの素手作業、ときには首まで下水にどっぷり)の問題、コロナとトイレの問題、そして勢いのあるインドらしくテクノロジーやITを使ってトイレ問題をビジネスチャンスに変える取り組みまで、短いながらも読みがいがある一冊だった。

  • 【本書の概要】
    急速な経済発展を遂げるインド。しかしその経済発展は「トイレ無き成長」であった。
    インド人13億人のうち半分がトイレのない暮らしをしており、特に農村部の住民ほどトイレを使用していない。そこには都市と農村の経済格差や、カースト制度による「浄・不浄」の考えかたの違いが潜んでいる。
    また、比較的トイレがある都市部でも、下水管理がきちんとされておらず、水質汚染や感染症の危険と隣り合わせだ。
    そうした病気の憂き目に合うのは、カースト制度の最下層である「ダリット」の人々だ。彼らは排せつ物の清掃の仕事を割り当てられており、劣悪な環境で働かされている。
    インドのトイレの問題は、貧富の差やカースト、都市と農村の格差といった社会的問題を浮き彫りにするものである。

    【詳細】
    ①都市と農村におけるトイレ設置の実情

    13億人のうち半分がトイレのない暮らしをするインド。モディ首相は2014年に、5年間で野外排泄をゼロにするためのスワッチ・バラート政策を提唱し、2019年に達成の宣言をした。
    しかしその実態は、地域にトイレが一定程度設置されていればOKというどんぶり勘定であった。また、家にトイレがある人の半数は、トイレの清掃や管理が面倒だからという理由で依然として野外排泄している。

    同時に、トイレを建設したのに補助金が貰えない、架空のトイレが計上されているという問題も起こった。それはインドが強い汚職と賄賂の社会であるからだ。

    トイレの設置状況に関しては、都市部が圧倒的に高い。これは都市と地方の強い経済格差が背景にあるからだ。

    インドの人口比で約7割を占める農村部では、トイレが使用されない割合が高い。女性たちがトイレとして使う茂みや草むらには多くの野生動物が潜み、蛇やサソリに襲われる危険がある。また女性はレイプとの危険も隣り合わせである。家父長制の残るインドにおいては、農村部だけでなく社会全体としてレイプが深刻な問題になっている。


    ②水質汚染や感染症と隣り合わせの劣悪な労働環境

    都市部で発生する下水のおよそ7割は処理されないまま放出されており、インドの水資源の4分の3が汚染されている可能性がある。都市部でも下水インフラが未発達であり、汚れた排水――特にスラムから排出されたもの――がそのままガンジス川に流されていることもあり、水質汚染と感染症の原因になっている。

    そうした劣悪な衛生環境の憂き目に合うのは、カースト制度の最下層で不可触民とされたダリットと呼ばれる人たちだ。
    彼らはカースト制度により排せつ物の清掃を押し付けられ、他に労働の機会を与えられていない。収入が低いため手袋やマスクを買う余裕もなく、素手で排せつ物を扱うなど、奴隷同然の労働をしている。

    下水処理の仕事が最下層民の役割とされているのは、ヒンドゥー教には「浄」と「不浄」を分ける考え方があり、死に関するものや血、排せつ物、垢、死者などは不浄なものとして、最下層の清掃カーストに押し付けられたからだ。もちろん、ダリット自体も「不浄」のカテゴリに入る。
    そのため、ダリットは日常的な差別に合っている。差別は農村部で特に酷く、いじめや社会的分離を受けている。

    インドのトイレの問題は、貧富の差やカースト、都市と農村の格差といった社会的問題を浮き彫りにするものである。


    【感想】
    トイレから見たインドの姿をまとめると、
    ①「成長著しいインド」は都市部の発展だけを見た描写
    ②都市部と農村の経済格差は他国の比ではない
    ③汚職とカースト差別が蔓延
    である。
    「まあ、そうだろうなあ」という感覚であった。

    インド全体でトイレの普及が進まない理由が、経済格差にもあり社会規範にもありと、かなり複雑化している。カースト制度が「格差を格差のまま固定化する」という設計になってしまっていることが、トイレ無き経済成長の一因であるのは間違いないだろう。しかし、そこはヒンドゥー教という「宗教」の範囲であり、政治的に踏み込むことが難しい。せめて、格差が大きいままでも国民全体がもう少し豊かになれば、インフラの整備も進むだろう。依然として残された差別意識は、貧困が減少した後に取り組むほかないと思う。

    本書のベクトルとはずれるが、読んでいて面白いと思った情報を一つ。

    インドは州制をとっており、州政府によって地域に特色が生まれる。インドの中で突出して特異なのは南西部のアラビア海沿いに位置する「ケーララ州」であり、なんと普通選挙を通じた共産党政権である。国自体が民主政権なのに州が共産政権というのは世界的にもかなり珍しいらしい。
    そんなケーララ州はかなりリベラルな州であり、教育や保健に相当な力を入れている。識字率はほぼ100%、幼児死亡率も先進国並みで、平均寿命もインド全体の平均と比べて10年ほど長い。ヒンドゥー教がイスラム教やキリスト教と融和しているため、カースト制の影響も薄いという。

    インドにおいても政権が変わればしきたりがここまで違うものなのか、と思わず感心してしまった。

  • インドはカレー、ヨガぐらしいか知らなかった私。衛生面より、なによりも大事とされる宗教。宗教とともに生まれ生きる人々が衝撃だった。

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著者プロフィール

共同通信社記者。1972年、北海道生まれ。明治学院大学法学部卒業後、毎日新聞社入社。長野支局、社会部を経て2002年、共同通信社入社。06年、外信部へ配属され、07年6月から1年間、韓国・延世大学に社命留学。09年3月から11年末までソウル特派員。帰国後、経済部で経済産業省を担当するなどし、16年9月から20年5月までニューデリー特派員。インド各地の都市や農村だけでなく、スリランカ、バングラデシュなどの周辺国も担当し、取材で現地をめぐってきた。同6月より外信部所属。著書に『オーディション社会 韓国』など。

「2020年 『13億人のトイレ 下から見た経済大国インド』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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