砂戦争 知られざる資源争奪戦 (角川新書)

著者 :
  • KADOKAWA
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784040823638

作品紹介・あらすじ

(目次、主なもの)
まえがき

第一章 砂のコモンズの悲劇
砂資源の枯渇がはじまった
都市化の世紀
増える高層ビル
都市化の功罪

第二章 資源略奪の現場から
中国の都市化
戸籍制度の緩和
上海の驚異の発展
採掘で自然災害が甚大に
犠牲になる生き物たち
朝鮮半島を狙う中国
アラブ首長国連邦のドバイ
300を超える人工島
膨張するジャカルタ
島が消えていく
活動家暗殺未遂
アジアで進む海岸侵食
沈みゆく国家
海面上昇で国沈む?
誰が砂を奪ったのか
ツバルは拡大している

第三章 砂はどこからきたのか
砂とは何か
白砂・黒砂・赤砂
河川は砂の製造工場
建築に使えない砂漠の砂
長距離移動する砂塵
砂の用途
オイル採掘が引き起こすトラブル

第四章 砂マフィアの暗躍
サルデーニャ島の砂泥棒
都市化の進むインド
砂マフィアの暗躍
ジャーナリストのもっとも危険な国
抹殺された人びと
アフリカの砂をめぐる紛争
ナイジェリアの発展
住民を分断する砂採取
シンガポールの発展
世界最大の砂輸入国に
禁輸に踏み切った3カ国
メコンデルタの危機
中国のダム建設
 
第五章 白砂青松はどうしてできたのか
砂と日本人
土木技術の発達
森林消失が生み出す砂
燃料材が森を奪った
庄内砂丘の飛砂との戦い
森が戻った新屋村
新潟砂丘
松と日本人
砂浜が消えていく
台無しになった砂浜
増える砂需要
川砂が戻ってきた
波消しブロックの蔓延
ダム堆砂
森林飽和と砂浜

第六章 今後の砂問題
水も空気も砂も
世界人口の楽観論
廃建材の再利用
ガラスの浜
新たな骨材の素材
地球をスイカにみたてるなら
オーバーシュート・デー

あとがき

感想・レビュー・書評

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  • 非常に興味深く読むことができた。

    「砂」なんてどこにでもあるじゃないか?
    なぜこれが資源なのだ?

    という興味で読んだのだが、まさに「砂」は「資源」だった。

    我々の町や建物を作るにはコンクリートが必要だ。
    そのコンクリートを作る為には良質な「砂」が必要なのだ。

    「砂」といってもどこにでもある砂ではだめだ。
    例えば「砂漠の砂」は粒子が細かすぎてコンクリートには使えないという。
    使える砂は、「川の底の砂」や「海の砂浜の砂」なのだ。

    こういった資源となる「砂」が闇取引される。
    勝手に「砂」が持ち去られるのだ。

    簡単に「砂」と言っても、「砂」は一朝一夕には作ることができない。
    それこそ「石油」や「天然ガス」といった資源と同じくらい価値があるものなのだ。

    こういったことは全く知らなかった。
    世の中はまだまだ知らないことばかりだ。
    日々、勉強だ。

  • 知らなかったことばかりで興味深く読めました。
    ここでいう砂は主に建設用コンクリートの材料になる骨材。中国やドバイの建設ラッシュや世界あちこちの都市化によって、コンクリートが枯渇しているらしい。砂マフィアまでいるとのこと。
    砂漠の砂はコンクリートに使えないとのこと。角が丸くてコンクリートに馴染まず、アルカリ骨材反応で脆くなってしまうとのこと。うまくいかないものですね。
    砂はガラスや半導体シリコンウェハーなどの素材でもある。そもそも砂が資源という感覚がなかったけど、環境破壊になるほど枯渇して争奪しているとは知らなかった。

  • 「世界中で”砂”の争奪戦が始まっている」と言われてピンとくる方は少ないのではないでしょうか。「砂なんて地面を掘ったらいくらでも手に入るやん」と思いがちですが、本書を読むとそのイメージは一変します。
    砂の主な用途はコンクリートの骨材です。ビルなどの建物、高架道路、地下鉄、堤防、何を作るにもコンクリートが必要で、その分”砂”が必要になります。コンクリートに使える砂は粒の大きさや形、化学的性質など非常に制限の多いものであることが本書で述べられています。
    中国はもちろんですが、都市化の進むインドネシア、インド、マレーシア、シンガポールなどの東南アジア諸国、ナイジェリア、エジプト、ドバイなどのアフリカ諸国では”砂”が自給できず大量に輸入しています。砂漠に有り余るほど存在する”砂”は前述の理由からコンクリートには使用できず、国内に砂漠を抱えている国でも”砂”は輸入に頼っているのが実情です。高騰する”砂”の取引に、砂マフィアと呼ばれる違法業者が暗躍し、無秩序に川や海から砂を採取した結果、環境破壊、漁業への打撃、氾濫等の自然災害の誘発など様々な問題が起こっており、本書はそれぞれの国ごとの実情を紹介しています。
    本書後半は日本における”砂”、なかでも砂浜の衰退について詳しく述べられています。意外だったのは戦後一貫して日本では森林面積はほぼ一定で、森林における樹木の総量は増加しており、その結果として土壌が安定化され、河川を通じて供給される砂の量が減少しているという事実でした。
    河川による砂の供給量減少、ダムなどの治水が進んだことによる中流域での砂の堆積、さらに砂需要増大が重なり、日本の砂浜は減少の一途です。衰退する砂浜を護るため、護岸には消波ブロック(テトラポット)などが配置され、日本の海岸線の美しい景観が失われつつあることに警鐘を鳴らしています。
    身近な”砂”が重要な資源であり、無秩序な採取が様々な問題を引き起こしていることをわかりやすく解説している印象でした。

  • 砂が、重量や容積で計量すれば世界最大級の取引量のある資源であるということに、まず驚いた。

    また、石油や鉱石などとは異なり、その採掘が河川や海岸といった比較的人間の生活圏に近いところで行われることが多いため、生活環境の破壊や災害による人的な被害にもつながりやすいという点も、この本を読んで認識を新たにさせられた。

    多くはコンクリートを構成する建設材料として使われており、その量は年々増加しているという。確かに、世界の都市化のスピードを考えると、その事実には納得できる。

    また、昔から多く使われてきた資源であることも関係してか、採掘や運搬にあたっての環境規制が整備されないまま長く採掘されてきた場所も多く、この産業を適正な姿にしていくことは、一筋縄ではないという印象を受けた。

    石油における石油化学工業や鉄鉱石における製鉄業のように、採掘から商品化に至るプロセスで資本と技術の必要な産業を経る必要がないため、採掘者も需要家である建設産業も比較的零細なところが多い。そのことも、この市場を管理していくことの難しさの一因になるのではないかと感じた。

    しかし、これだけ世界各国で生活に直結する環境破壊や労働環境の問題を起こしているのであれば、その採掘や流通が適切に行われているかを管理していく何らかの仕組みの構築が必要であり、大手の需要家からでも取組みを進めていく必要があるであろう。

    筆者は長く環境問題などを取材してきたジャーナリストであるため、建設材料としての砂の問題だけではなく、白砂青松と呼ばれるような海岸線がどのように作られてきたかや、森林と砂浜の関係、地球温暖化による島しょ国への影響などについても、様々な報道や研究成果を参照しながら解説をしてくれている。

    砂にまつわるグローバルかつローカルな課題を、複合的に理解できる本であると感じた。

  • 仕事関連で読了。
    砂を希少と捉えたことはなく、また偏在性も低い資源と認識していたが、本書を通じ時に主導権を巡り戦闘が勃発するほど、希少性の高い商材であると認識を改めた(砂漠には大量の砂があるが、砂漠の砂は細か過ぎて建築に使えない)。
    特に印象的であったのは、シンガポールの経済成長(伴いコンクリート/骨材としての砂の使用)の背景には、インドネシア、カンボジアなどの近隣国からの輸入があったということ。そして最終的には彼らも禁輸に至ったという点が面白い。
    革新的な技術開発がなければ、暫く砂は希少資源としてその地位を維持すると想定されるため、引き続き注視していきたい商材の1つ。

  •  人口の増加と都市化により、コンクリートの需要がますます増加する。しかし、その裏で、各国が砂資源をめぐって争っている。砂と聞くと、中東やアフリカの砂漠を思い浮かべるが、実は、そこで得られる砂は、セメントと混ぜるのに、砂の粒が細かい、つまり、コンクリートに適していないのである。ゆえに、砂資源は、想像以上に限られている。コンクリートのみならず、コンピュータや半導体など、現代の生活を支える重要資源である。

  • 文明社会を支えるビルや道路、パソコンの半導体などの原料は「砂」。地球規模で都市化が進む現在、すでに砂の争奪戦が始まっている。違法採掘、マフィアの暗躍…。人間の欲望と砂資源の今を、環境問題の第一人者がレポート。【「TRC MARC」の商品解説】

    関西外大図書館OPACのURLはこちら↓
    https://opac1.kansaigaidai.ac.jp/iwjs0015opc/BB40278101

  • コンクリートを作る原料として必須の砂を巡る世界的な奪い合いやそれにまつわる犯罪などを解説している。砂と言えば砂漠化の進行を防ぐ話題しか思い付かなかったが、資源としての砂の奪い合いが起きているとは思わず、なかなか衝撃を受けた。ちなみに砂漠の砂では角が取れ過ぎていてコンクリートの材料にはなれず、形が色々な砂でないと使えないらしい。

    特に衝撃だったのは、「砂マフィア」の存在や、砂の輸出入とその制限が各国で発生していること。本書のタイトルそのままに、砂の違法売買と政治家や警察まで取り込んだマフィアの暗躍、それを糾弾する人達の暗殺など、砂はもはや貴重な資源であり、利権や犯罪の温床にさえなっていることだ。

    締め括りは砂に限らず、人類が様々な資源をここ数十年で一気に使い込んでいることへの警鐘を鳴らしている。本書を書いた時点で筆者は80歳。今後の世代のことを深く心配している。

  • 砂はガラスや半導体、鋳物などに欠かせないが、最大の用途はコンクリートの骨材。世界各地で砂の違法採取などが増えており、事件化するようなことも多い。

    ブルジュ・ハリファには76万トンのコンクリートが使用されており、その7割が砂。
    中国では年間25億トンのコンクリートが消費されている。アメリカが20世紀100年間に使ったコンクリートの総量が45億トンなので、中国の二年分がそれを上回る。

    砂漠にはたくさんの砂があるのでこれを使えば砂漠化も防止されて一石二鳥のように思えるが、砂漠の砂は風に吹かれて運ばれていく途中でぶつかりあい、細かくなりすぎている上に表面がツルツルになっているので砂通しが絡み合わず、コンクリートに混ぜても強度が得られない。塩分の含有性が多いため、アルカリ骨材反応というものを起こしてやはり強度が下がる。

  • 東2法経図・6F開架:569A/I71s//K

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著者プロフィール

1940年東京都生まれ。東京大学卒業後、朝日新聞入社。ニューヨーク特派員、編集委員などを経て退社。国連環境計画上級顧問。96年より東京大学大学院教授、ザンビア特命全権大使、北海道大学大学院教授、東京農業大学教授を歴任。この間、国際協力事業団参与、東中欧環境センター理事などを兼務。国連ボーマ賞、国連グローバル500賞、毎日出版文化賞をそれぞれ受賞。主な著書に『感染症の世界史』『鉄条網の世界史』(角川ソフィア文庫)、『環境再興史』(角川新書)、『地球環境報告』(岩波新書)など多数。

「2022年 『噴火と寒冷化の災害史 「火山の冬」がやってくる』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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