八九六四 完全版 「天安門事件」から香港デモへ (角川新書)
- KADOKAWA (2021年5月10日発売)


- Amazon.co.jp ・本 (392ページ)
- / ISBN・EAN: 9784040823966
作品紹介・あらすじ
第50回大宅壮一ノンフィクション賞、第5回城山三郎賞をダブル受賞した傑作ルポの完全版。
2019年香港デモと八九六四の連関を描く新章を収録!
「“その事件”を、口にしてはいけない」
現代中国最大のタブー、天安門事件に迫る!
1989年6月4日。変革の夢は戦車の前に砕け散った。
毎年、6月4日前後の中国では治安警備が従来以上に強化され、スマホ決済の送金ですら「六四」「八九.六四」元の金額指定が不可能になるほどだ。
あの時、中国全土で数百万人の若者が民主化の声をあげていた。
世界史に刻まれた運動に携わっていた者、傍観していた者、そして生まれてもいなかった現代の若者は、いま「八九六四」をどう見るのか?
そして、事件は2019年の香港デモにどう影響したのか? 歴史は繰り返されるのか?
中国、香港、台湾、そして日本。60名以上を取材し、世界史に刻まれた事件を抉る大型ルポ。
語り継ぐことを許されない歴史は忘れ去られる。これは、天安門の最後の記録といえるだろう。
●“現代中国”で民主化に目覚めた者たち
●タイに亡命し、逼塞する民主化活動家
●香港の本土(独立)派、民主派、親中派リーダー
●未だ諦めぬ、当時の有名リーダー
●社会の成功者として“現実”を選んだ者、未だ地べたから“希望”を描く者 etc.
※本書は2018年5月に小社より刊行された単行本を改題の上、修正し、新章を加筆したものです。
【目次】
序章 君は八九六四を知っているか?
第一章 ふたつの北京
第二章 僕らの反抗と挫折
第三章 持たざる者たち
第四章 生真面目な抵抗者
第五章 「天安門の都」の変質
第六章 馬上、少年過ぐ
終章 未来への夢が終わった先に
あとがき
新章 〇七二一 香港動乱
主要参考文献
感想・レビュー・書評
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熱い本。前半の天安門事件インタビューはひたすら読ませる。新章の香港問題は気付きもあった。
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2021/6/28(月)夜読了。honto電子書籍にて。
私は、天安門事件や中国の歴史に対する知識がまだ少ないので、この書籍を読み解けているかどうか疑問だが、できるだけ生々しいインタビューで多くの部分を構成された本書は、やはり読んでおくべき本なのだろうと思う。読んでよかったと思う。
ドキュメンタリーとはいえ、著者というフィルターはどんな書籍においても避けられない。しかもそれが映像ではなく文字・文章のみとなれば、著者の色はより濃く出やすい。
それでも、できるだけフィルターを強めないように、何かの考えに一辺倒にならないように丁寧に編集されている印象を受けた。
事実、真実、それは検証が難しいものもあるけれど、できるだけフラットに情報を集める、人生の変遷も含めて読んで受け止めて頭の中に入れてみる、そういうことができる本のように思う。
中国の近現代の一側面であり、直近の香港デモまで含めた最新の中国の意思を外形的に(市井のプレイヤーの姿を通して)把握する一助となりそう。
コロナで目の前の日本がぐちゃぐちゃになりすぎていて、香港の今はあまり見えてこないけれども、昨年2020年の余韻がまだあるのではないかと思ううちに読んだ方が時代の温度感を理解しやすいと思うが、
今後いつの時代においても、人々の生のインタビューは色褪せなく、いつ読んでも誰が読んでも有意義さが一定程度あるものだろうと想像する。 -
安田峰俊(1982年~)氏は、立命館大学文学部卒、広島大学大学院文学研究科博士前期課程修了のルポライター。立命館大学人文科学研究所客員協力研究員。大在学中に中国・深圳大学に交換留学した経験から身に付けた流暢な中国語を駆使した、中国関連の書籍や雑誌媒体、テレビ等での活動で注目されている。
本書は、2018年に発表され、大宅壮一ノンフィクション賞及び城山三郎賞を受賞した作品に、新章「〇七二一 香港動乱」を加えて、2021年に新書版で出版されたものである。
本書の題名の「八九六四」とは、1989年6月4日に、北京市の天安門広場に民主化を求めて集結していたデモ隊に対し、軍隊が武力行使し、多数の死傷者を出した「(六四)天安門事件」を指す。事件による死者数は数百人とも数万人とも言われる。
本書は、著者が、2011年以降、60人以上の中国人(当時、北京にいなかった人、それほど大変な目には遭わなかった人、事件に何も興味がなかった人なども含む)に取材を行い、なかでも印象深かった十数人の目から見た天安門事件の姿と、その後の生きざまを綴ったものである。
この事件は現代中国史の最大の汚点とされ、中国共産党は徹底した情報管理により(毎年その時期には、スマホ決済の送金機能で「六四」元や「八九.六四」元の金額指定が不可能になるほどだという)、事件を歴史から抹消しようとさえしている。特に、習近平体制となった2012年以降の中国は、「八九六四」以降で最も政治的に抑圧された雰囲気が強まり、スマホなどのデジタル・データや監視カメラを使った管理体制の強化も進み、著者によれば、今後、中国国内で本書のために行ったような取材は困難だろうという。
読了して、登場するそれぞれの人びとの話は大変興味深かったが、「八九六四」から30余年を経た今、最も関心が向くのは、香港と台湾の行方である。著者は、「『八九六四』の完全版を作るには、香港デモの取材と考察が絶対に必要だった。」として、本新書版に香港デモに関する新章を加えているのだが、香港国家安全維持法の施行により、香港デモが事実上崩壊したことは、(香港のデモ隊の前には、人民解放軍の戦車や兵士は現れなかったとはいえ)実質的な「八九六四」ともいえるものだ。「八九六四」のデモの参加者たちは、その後、様々な人生の選択肢を突き付けられて、逃れるか、忘れるか、寝返るか、あくまでも戦うか。。。各人たちの答を選ばざるを得なかったのだが、香港デモの参加者たちも今や同様の問いに直面している。また、いずれ台湾も同じ道を辿ることになるのかも知れない。(そうならないことを願うが)
民主主義の価値観を尊重するためにも、我々はこうした事件に強い関心を持ち続けなければならない。
(2021年5月了) -
「完全版」となるにあたって2019年の香港動乱が追加蠡されたとのことで、再読。
中共の強権が強化されたことで香港社会、特に若者の生活空間の息苦しさは如実に増している。
今は半ば諦め不満は潜伏しているとしても、本土の経済が悪化し、縛りが緩んだ時にどのようになるのだろうか。 -
中国と日本の違い、歴史観とか、国家観とか、色々な事を教えられる本だけれど、出てくる人の多くがが同年代からちょっと上で自分より優秀で夢破れた人達なだけに内容よりもその責任の取り方や今の心境、後悔の方が心に残った。
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2019年香港デモに関する新章を読んだ。「正しい民主化運動」と単純化せず、勇武派(本土派と大いに重なる?)の暴力、陰惨さにも目を向ける。
デモ最中の2019年9月時点で、著者は6月9日の逃亡犯条例改正案強行採決企図がデモ暴力化の最大要因だとみていた。しかしデモ後に書き下ろした文章では、出口が見えないデモの長期化や社会混乱、若者のフラストレーション、集団ヒステリーなどをデモ側の過激化や陰謀論の要因としている。
著者が「過去の牢獄」という表現で指摘するように、ネイサン・ローをはじめ香港デモの参加者が、まさにかつての天安門事件参加者に重なる。 -
東2法経図・6F開架:222.07A/Y62h//K
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222-Y
閲覧新書 -
単行本で読んだ
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天安門事件から香港デモへ...と副題にあり、興味を持って読みました。多くの人物が登場しますが、王丹氏やマー運転手が印象的でした。中国・北朝鮮・韓国・日本の同一性と相違性にたいへん興味関心があります...
著者プロフィール
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