鬼の跫音 (角川文庫 み 39-1)

著者 :
  • 角川書店(角川グループパブリッシング)
3.48
  • (121)
  • (401)
  • (466)
  • (96)
  • (12)
本棚登録 : 3472
感想 : 375
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (232ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041000120

作品紹介・あらすじ

刑務所で作られた椅子に奇妙な文章が彫られていた。家族を惨殺した猟奇殺人犯が残した不可解な単語は哀しい事件の真相を示しており…(「〓(ケモノ)」)。同級生のひどい攻撃に怯えて毎日を送る僕は、ある女の人と出会う。彼女が持つ、何でも中に入れられる不思議なキャンバス。僕はその中に恐怖心を取って欲しいと頼むが…(「悪意の顔」)。心の「鬼」に捕らわれた男女が迎える予想外の終局とは。驚愕必至の衝撃作。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 怖い! ほら…あなたの後ろに居ませんか? 鬼と不幸の気配を感じられるホラーミステリー #鬼の跫音

    ■レビュー
    鬼怖い!
    いや、 ホントの意味で鬼が怖いホラーミステリー。

    世にも奇妙な物語、トワイライトゾーンのようなゾクッとさせる短編が六編。
    道夫秀介先生の初期の作品ですよね~、純粋に面白いし、芸術性も高いし、やっぱり人気作家さんは最初からスゴイな。

    なんといっても本作の読みどころ、人の醜さ。そして不幸への気配ですよ。
    マジ怖いんですけど、やめて。

    ホラーがベースながらもミステリー要素もいっぱい、プロットも登場人物もバラエティーに富んでいてGOOD! 最後まで楽しく読ませていただきました。

    ■作品ごと簡単レビュー
    ・鈴虫
    情景や心情描写が光る作品、人ってあさましいなと感じる作品。

    ・ケモノ
    ミステリー感が満載で、不気味ながらも楽しく読める作品。

    ・よいぎつね
    抜け出せない闇と、すぐそばに死を感じる。一番好きな作品、超こえーーよっ!

    ・箱詰めの文字
    捻ったプロットが面白いですね、冒頭から読ませる手腕はさすが。

    ・冬の鬼
    一文一文が綺麗、芸術性が高すぎ。全体から染み出る薄気味悪さが最高。

    ・悪意の顔
    まさに世にも奇妙な物語、映像化してください。人の汚さを強烈に感じられる作品。

    ■推しポイント
    この本は道夫秀介先生が描く、罪と罰ですよ。
    手塚治虫の火の鳥異形編を読んだときと同じ感覚です。死の匂い、無の怯えがすぐそこにあるんですっ

    短編なのでさらっと読めちゃいますが、テーマ性は超絶重い作品でした。

  • 見事な狂人達。暴走系と違う、静かなる美しい狂気達を楽しんだ。

    どの作品も好きだが、個人的には「冬の鬼」がお気に入りだ。恐らく誰もがやるであろう読み終えてからの逆読み...勿論私もやりました。
    どの作品にも当て嵌るのだが、短い中でのストーリーを時系列や綴り方でここまで物語に没頭させる手法が凄い、秀逸だ。

    燃え上がる炎、澄んだ空に上がる白煙とだんだん形を変え消えていく達磨。そして白い息を吐きながらマフラーでも巻いて幸せな二人が手を繋いでいる。
    彼らは狂ってなんかいない。
    狂ってなんかいないのだ。

    「鬼」って悪なのだろうか。私は身近に感じる。
    ステータス防御力に全振りし、磨くスキルは「偵察能力」。そちらより、自ら鬼を纏い行った行動を一人として後悔していないそんな彼らの方が美しく感じた。

  • どれもこれも、鬼が出て来る。
    鬼と言っても、角生えてとかではない。人の心を亡くすってこと。
    短編集6作品やけど、どれも鬼が出てくる。契機は、鈴虫やったり、椅子に刻まれた文字、紙切れに書かれた文字etc。
    それによって、人で無くなる=鬼なる。
    何か、怖いなぁ〜
    自分も含めて人って。
    こんな簡単に壊れて…
    何か、壊れてるというか、壊れそうなのを鬼になる事で、平衡を保つのか…
    どの作品も終始重い。
    ミステリー要素もあって、結構イケるけど、どれもこれも、後味が凄くよろしいでございます(−_−;)
    夢見そうやわ(ーー;)

  • 全ての物語に“S”が登場する6つの短編集。
    6つの物語が繋がっているわけではなく独立していますが、
    歪んでいて仄暗い印象の”S”たちはどこか共通しているようにも思えました。
    短編集なので読みやすく、隙間時間に1話ずつ読み進めていきました。
    どの物語も薄雲がかかったような雰囲気で、恐いのはもちろんですが読んでいて不安になる作品ばかりでした。
    この読後感は何とも言えないですが、この雰囲気が個人的には堪らなく好きです。

  • どの短編もプロットが見事でおもしろかった。
    特に悪意の顔。ラストを読み、ある考えに至りはっとした。Sは恐らく、自分に襲いかかってきた女の人を殺して床下に埋めたのだ。そして、彼は絵を描くことが得意だったから、主人公が話したことを逆手に取り、キャンバスに女の人を描いたのだ。そして、自分の悪意もキャンバスに残した。主人公を騙すために。
    切なくてきれいに終わるはずだった物語が音を立てて崩れていくラストは見事だった。

    箱詰めの文字もおもしろかった。間の抜けた始まりからは予想できない着地。

    冬の鬼も、日記を逆行していく手法が見事だった。

  • 6作からなる短編集です。

    短編集には珍しく表題となっている「鬼の跫音」という作品は納められていません。

    しかも普段我々が想像するツノが生え、赤色や青色の「鬼」という存在自体が明確に描かれている訳でもありません。

    しかし、読み終えた後には全ての作品に「鬼」がいたこと、そして一見してそこまで変ではないどちらかと言えばどこにでもいそうな人達が変容していく過程で忍び寄る跫音が聞こえた気がしました。

    6人の「S」と「鬼」に変容した人の物語。

    恐怖の跫音を聞きながら読み終えた著者らしい短編集でした。

    説明
    内容紹介
    ねじれた愛、消せない過ち、哀しい嘘、暗い疑惑――。心の鬼に捕らわれた6人の「S」が迎える予想外の結末とは。一篇ごとに繰り返される奇想と驚愕。人の心の哀しさと愛おしさを描き出す、著者の真骨頂!
    内容(「BOOK」データベースより)
    刑務所で作られた椅子に奇妙な文章が彫られていた。家族を惨殺した猟奇殺人犯が残した不可解な単語は哀しい事件の真相を示しており…(「〓(ケモノ)」)。同級生のひどい攻撃に怯えて毎日を送る僕は、ある女の人と出会う。彼女が持つ、何でも中に入れられる不思議なキャンバス。僕はその中に恐怖心を取って欲しいと頼むが…(「悪意の顔」)。心の「鬼」に捕らわれた男女が迎える予想外の終局とは。驚愕必至の衝撃作。
    著者について
    1975年生まれ。04年「背の眼」でホラーサスペンス大賞特別賞を受賞しデビュー。07年『シャドウ』で本格ミステリ大賞、09年『カラスの親指』で日本推理作家協会賞、10年『龍神の雨』で大藪春彦賞、『光媒の花』で山本周五郎賞、11年『月と蟹』で直木賞を受賞。
    著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
    道尾/秀介
    1975年生まれ。2004年『背の眼』で第5回ホラーサスペンス大賞特別賞を受賞しデビュー。05年に上梓された『向日葵の咲かない夏』が08年に文庫化されベストセラーに。07年『シャドウ』で第7回本格ミステリ大賞を受賞。09年『カラスの親指』で第62回日本推理作家協会賞長編及び連作短編集部門を受賞。10年『龍神の雨』で第12回大藪春彦賞、『光媒の花』で第23回山本周五郎賞を受賞。11年『月と蟹』で第144回直木賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

  • 裏表紙に驚愕必至の襲撃作!と書いてあったので買った一冊。

    6つの短編集だった。

    どの話も主人公が闇を抱えている。
    闇が鬼なのかね?

    短い話しだがそれぞれ意外な結末で、読みごたえがあった。

    でも驚愕!とは思えなかった。

    この本に書かれている闇は案外身近にあったりするかもとも感じた。

    なんとなくもう少し短編を読んでみたいなと感じた小説でした。

  • こわい。こわくて不思議なニンゲンの短編集。ゾクゾク、こころが重くなる、でも知りたい、心の鬼について。
    読後にそうだったのか、と納得するものもあれば、ずっと考えてしまうものもあり、道尾秀介さん、大好きだ!

  • 道尾秀介さんの短篇集。中学一年生くらいの頃に読み、衝撃を受けた記憶があるので読み返してみた。その頃は「冬の鬼」という作品が印象に残ったが、先ほど読んだところ「悪意の顔」という作品が特に印象深かった。というか怖かった。

    解説にも書かれていたが、道尾秀介さんの作品の素晴らしい点は「プロットの精巧さ」である。中学生の頃の私は単純だったので、衝撃的な展開やどんでん返しがあるだけで「面白い!」と感じていたのだが、道尾さんには、そのように物語の本質に気づかない人間すら楽しませる力がある。これは恐ろしいことなのでは?
    というのも、道尾さんの作品には、単純な、わかりやすい展開の面白さというものが備わっている。しかしながらこの歳になって再び読み返し、道尾秀介という作家の醍醐味はそこではないと気付かされた。道尾さんの他の著書も拝読したことがあるが、彼の小説は、プロットという大きな筋道が通った上で、あちらこちらに仕掛けが張り巡らされているのである。しかもそれは、読者自身が気づかなければならない不親切であるものが多い。
    大仰なことを並べ立てているが、私自身思考力には全く自信がないので、道尾さんが用意したトリックをどれだけ感じ取ることができているかは定かではない。しかしながら、先述した「悪意の顔」のトリック、約10年前には気がつくことができなかったその物語の真相にたどりついた時、その時感じられなかった高揚感と恐怖を私が得られたことは確かである。

    ストーリーとしては別個の短篇集であるが、そのすべてに「鬼」が出てくる。「鬼」は誰しもが抱えている。「鬼の跫音」では、その感情を多くは語らず、読者に委ねてくる。「あなたの心にも鬼は住んでいるでしょう?」と。

  • むっー…確かに怖いけど、上手さが目立って、物語にインパクトがないのかなー。でも私はが短編集があまり好きでないからだと思います。

    「鈴虫」お前かー!旦那さん…の愛?
    「ケモノ」 現実にありそう…
    「よいぎつね」 悪い事したら返ります!
    「箱詰めの字」コイツが1番キライ!!
    「冬の鬼」 どっちも怖い愛情だ…
    「悪意の顔」むっー最後が気になる…

全375件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1975年生まれ。2004年『背の眼』で「ホラーサスペンス大賞特別賞」を受賞し、作家デビュー。同年刊行の『向日葵の咲かない夏』が100万部超えのベストセラーとなる。07年『シャドウ』で「本格ミステリー大賞」、09年『カラスの親指』で「日本推理作家協会賞」、10年『龍神の雨』で「大藪春彦賞」、同年『光媒の花』で「山本周五郎賞」を受賞する。11年『月と蟹』が、史上初の5連続候補を経ての「直木賞」を受賞した。その他著書に、『鬼の跫音』『球体の蛇』『スタフ』『サーモン・キャッチャー the Novel』『満月の泥枕』『風神の手』『N』『カエルの小指』『いけない』『きこえる』等がある。

道尾秀介の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
米澤 穂信
伊坂幸太郎
伊坂 幸太郎
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×