排出権商人 (角川文庫)

著者 :
  • 角川書店(角川グループパブリッシング)
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レビュー : 22
  • Amazon.co.jp ・本 (470ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041000243

作品紹介・あらすじ

大手エンジニアリング会社の地球環境室長・松川冴子は、排出権市場開拓のため世界各地を飛び回る。そこは国連、各国政府、企業、金融機関が利害をかけて激突する温暖化ビジネスの戦場だった。一方、同社の次期社長の座を狙う専務の仙波は収益目標達成のため粉飾決算に手を染め、それを嗅ぎつけたニューヨークのカラ売り屋「パンゲア」の北川が、猛然と株を売り浴びせる。知られざる排出権ビジネスの実態を徹底解明した衝撃作。

感想・レビュー・書評

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  • 【Business】排出権商人/黒木亮/201700201/(13/609) <470/69456>
    ◆きっかけ
    ・仕事の関わりありそうな小説と思いだして。組合図書室より借りる。

    ◆感想
    ・排出権の売り手と買い手を仲介ビジネスを開始したエンジニアリング会社(プラントの設計・建設会社)の女性担当者の奮闘を描くビジネス小説。幅広い取材をベースにしていることから、ビジネスの交渉といった小説の根幹の部分から、食事・文化などの細部に至るまで臨場感があり、まさに主人公と体験を共有している感覚で読み進めることができる。
    ・ただ、排出権ビジネスの教科書的な意味合いが強く出ている分、登場人物の心の葛藤や奥行に限りがあって、小説としては物足りなさも感じた。
    ・排出権をめぐっては、京都議定書において、世界の中で日本が大きくビハインドさせられた現実が色濃く反映されている。また、欧米の立場(自国の企業が仲介で儲けさせる/日本にばばを引かせる)・中国の立場(排出カットの義務は負わないが、排出権の売り手として儲けたい)・ブラジルの立場(排出権の売り手として、価格が下がらないようにしたい)がCDM理事会の理事の主張の中で説明されており、今更ながら勉強になった。

    ◆引用
    ・中国、今から省エネやったり産業を効率化したりすると日本の二の舞にある。そんあことやらずに、CO2だしっぱなしにして、それをペースに削減目標を受け入れたらいい、
    ・国民の金1.2兆円で条約のネーミングライト(命名権)買ったようなもの。
    ・原油高=>石炭へシフトー>CO2排出量が多いから、排出権需要増、排出権価格高
    ・国際的な話し合いの場ではノーをすぐにいって流れを止めないと、相手のペースで議論が運ばれてしまう。
    ・UNFCCCは、発行される排出権料に応じて、登録料をピンハネしているので、国連機関の中では例外的に財政が豊か。そのため、職員を増員したり、方法論を複雑化して、マフィア化している。
    ★温暖化問題は、冷戦が終了し、仕事がなくなった科学者たちを大量にかかえた欧米諸国が、国際的影響力の拡大、新たな商売ネタ、中東へのエネルギー依存度の低減を狙ってでっちあげた「世紀のペテン」である。そこに、クリーンエネルギーであるLGNや原子力関係者、国連官僚、認証機関、コンサルタント、金融機関などが乗っかった。
    ・日本が3.11でぐちゃぐちゃな状態になっている事態を追い風に利用して、再生可能エネルギーを大大的に普及させようという環境マフィアが台頭し、イニシアティブをとろうとしはじめた。その武器が、太陽光と風力。
    ・日本の再エネはNPOが推進していることが多く、まるでボランティア活動。原発が悪玉なら、再エネは善玉、という国民認識。
    ・管政権は支持したくないけど、退陣の条件として付けた再エネ法案成立は立派。
    ・私財を投じて再生エネルギー普及に命をかける、と語った孫氏同様。
    ★本作品は、美しい理念で語られてきた環境問題がうんざりするほど金儲けに結び付けられている現状と、環境ビジネスこそは、虎視眈々と狙いを定めていた新しいエネルギービジネスだったことを教えてくれている。

  • えっ、というところで終わってしまい、微妙に物足りなかった

  • 主人公の冴子みたいだな、と言われて読んだ本。
    なるほど…と納得する部分もあり(マッサージ好きなところとか、すぐ感情移入するところとか)、そうでもない部分もあり。でもなんとなく重ねて読んでしまった。
    あと、国際的な会談の場の描写などが個人的に面白かった。平常心を装いつつも心の中で「こいつ…!(ギリギリ)」みたいな場面もあるんだろうな〜と。

  • 排出権と女性のキャリアについて描いたお話。
    排出権って難しいですね。
    仕組そのものも難しいが、一番難しいのが排出権の存在意義。
    物語中にも出てきたが、物そのものだけでなく、それに携わる人の心が伴って本当に良いものができあがるわけ。
    排出権は本当に環境のためになっているのか?
    読んでいて、いろいろと考えさせるお話でした。

  • 考えたこともない世界。

    イイも悪いも世界はドライだなと思う。まるで0と1の羅列、デジタルな世界とで言わんばかり。


    それに一番怖いのは最後、排出権の存在意義。ある博士から話を聞かせてもらい、本当に二酸化炭素が地球の温暖化に関与しているかどうかだ。

    ビジネス先行の思考が歪めてしまっているのではないかとボク自身も感じました。

    何を持ち、何を考え、どう行動するか。

    一つ間違えれば、すべてが揺らぐ綱渡りのような世界をボクらは生きているのかもしれない。

  •  当時の鳩山由紀夫首相が国連気候変動サミットで温室効果ガズ排出量を2020年までに25%削減すると公約した。これをチャンスと捉えた企業は排出権、環境ビジネスを世界景気低迷の救世主と位置づける。現在の状況はというと、2020年ごろには二酸化炭素の排出が増えることで気温がほとんど上昇しないことが明らかになり、温暖化バブルは崩壊している。知りたいことはエピローグとあとがきを読めば十分である。

  • 排出権のしくみが小説ならではの読みやすさでよくわかる。今の仕事に役に立ちそう。ただ、興味のない方は読むのが疲れるかも。

  • エンジニアリング会社の仕事が分かる。世界中の僻地を飛び回って切った張ったの交渉をする、こういう働き方は自分には出来なさそうだな。日本を支える立派な仕事。
    もちろん、排出権の仕組みも分かります。

  • 排出権取引をテーマとしたストーリーに、空売り屋のパンゲアメンバーが絡んでくる。
    排出権取引の仕組みがなんと無く理解できた。
    この本が出版された当時と大きく状況は変わっているが、それを含めて知るよい機会となった。

  • 概要に書かれているスリリングな展開がなかなかはじまらない…そして始まったと思ったらあっさりと終わっていました。
    期待していたものとは違っていましたが、排出権取引の様子がわかったという意味では良かった。(ところで、この本はどこまでリアリティがあるのでしょうか)

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プロフィール

1957年、北海道生まれ。カイロ・アメリカン大学大学院修士(中東研究科)。都市銀行、証券会社、総合商社を経て2000年、大型シンジケートローンを巡る攻防を描いた『トップ・レフト』でデビュー。著書に『エネルギー』『冬の喝采』『貸し込み』『カラ売り屋』など。英国在住。

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