翔べ麒麟(下) (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
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本棚登録 : 21
レビュー : 1
  • Amazon.co.jp ・本 (368ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041000274

作品紹介・あらすじ

玄宗側近の楊国忠に賄賂が流れ込む。国難を憂えた朝衡、すなわち阿倍仲麻呂は、密かに楊貴妃暗殺計画を練るが、真備は冊封体制下に入ることと引替に、玄宗から新羅への不干渉と、天皇号承認を引き出す。揺れ動く国情、戦いの予感。一方、冊封使となった朝衡は実に三十七年ぶりに帰国することになり、鑑真の渡海に手を貸すが遭難、唐に舞い戻ると、安禄山が謀反を起こし-。近衛兵となった真幸の運命は?歴史活劇の白眉。1999年読売文学賞受賞作。

感想・レビュー・書評

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  • 遣唐使として奈良時代に唐に留学、そのまま勉学に励み唐人でも大変だった科挙に合格し王である玄宗に使えるまでになった阿倍仲麻呂の活躍を描いた小説「翔べ麒麟」を読了。

    上下刊とちょっと読みのが大変な分量の小説ではあったが読みがいはあった。阿倍仲麻呂は名前こそ覚えていたが唐に留学し、玄宗に仕え、現地名朝衡という名前までもち朝廷で活躍していた事など全くもってこの本を読むまで知らなかった。もしかしたら高校の頃授業で聴いたかもしれないが日本史は大の不得手で受験も世界史でしたので恥ずかしながらこの時代の史実には全くもって疎いのだから仕方がないが。

    この物語は玄宗の統治も後半になり楊貴妃に骨抜きになり唐の統治ががたがたになりはじめ戦乱の世がやってきてしまう時期の唐を舞台にしている。

    今で言えばハーバードやスタンフォードを優秀な成績で卒業し政府で頭角を現し、ホワイトハウスの顔役になりアメリカ大統領補佐官を勤めるくらいの位置に日本人がいた訳でこの事実だけで驚きである。

    その阿倍仲麻呂が大活躍する物語なのだからいまの時期なんだか非常にある意味痛快な物語だ。歴史も学べるしある意味歴史サスペンスとしても楽しめる面白い小説だ。

     物語の中で、これまた名前だけをかろうじて知っている李白が阿倍仲麻呂が帰国をしようとして難破し亡くなったという誤報が届いたときに、彼が阿倍仲麻呂の死を悼んで七言絶句を詠んだという史実を知るにつけなんと大きな存在であったのだろうかとさらに驚いたりも出来た。

     王維、李白、顔真卿、杜甫が次々と登場し阿倍仲麻呂とのエピソードを展開するのだから面白くない訳がないわけで。

     ただ阿倍仲麻呂が帰国が決まり(結局は難破しかなわずに唐で亡くなったのだが)、彼の帰国を祝う宴席で詠んだという「天の原 ふりさけみれば 春日なる 三笠の山に いでし月かも」が古今集に納められたというのが史実とされているがこの真偽に関してはこの物語を読んでいて疑問を持たざるを得なかった。唐でふと詠んだ歌を誰が持ち帰り記録したという記録が全くない訳でこのあたりはちょっと調べてみたくなった。

     そんなとてつもない唐の時代の国際人阿倍仲麻呂の大活劇を読むBGMに選んだのがVruce Springsteenの"The RIver"。夢を追いかけていた80年ころを思い出したので。
    https://www.youtube.com/watch?v=nAB4vOkL6cE

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著者プロフィール

1945年生まれ。90年「村の名前」で芥川賞を受賞。『飛べ麒麟』で読売文学賞、『遊動亭円木』で谷崎賞、「枯葉の中の青い炎」で川端賞、『許されざる者』で毎日芸術賞受賞。著書多数。

「2016年 『松尾芭蕉 おくのほそ道/与謝蕪村/小林一茶/とくとく歌仙』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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