青い夜の底 小池真理子 怪奇幻想傑作選2 (角川ホラー文庫)
- KADOKAWA (2011年11月25日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
- / ISBN・EAN: 9784041000359
作品紹介・あらすじ
互いが互いに溺れる日々を送っていた男と女。だが突然、女との連絡が途絶えた。シナリオライターとしての仕事にも行き詰まり、苦悩する男が路上で出会ったのは…(「青い夜の底」)。死んだ水原が、今夜もまた訪ねてきた。恐れる妻を説得し旧友をもてなすが…(「親友」)。本書のために書き下ろされた表題作を含む全8編。異界のもの、異形のものとの、どこか懐かしく甘やかな交流を綴る怪奇幻想傑作選、第2弾。
感想・レビュー・書評
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角川ホラー文庫での一作目の短編集より、こちらの方が断然面白かった。叙情的なホラーで、恐怖よりも人生の悲哀を強く感じさせる作品が多く、読んでいてとても感傷的な気分にさせられてしまった。
死んだ友人が夜ごと訪ねてくる「親友」、優しくしてくれた父の愛人との思い出を綴った「鬼灯」など、味わいのある作品が詰まっている。
夏は過ぎたというのに、ホラーが面白い秋だ。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
久しぶりに読んだ、小池真理子さんの作品。
怪奇幻想傑作選というだけあって、なかなか雰囲気のある作品たちがズラリと並ぶ。
ふんわりと(?)スーっと掻き消えるような、
異様な雰囲気を余韻に残していくさまは、やはり不気味である。
だが、なぜか不思議な美しさを伴う描写に、いつも惹き込まれていくのを改めて思い起こされた…そんな印象を強く待った。
長編の『墓地を見おろす家』も私的にとてもゾワゾワしたが、こういった短編集もまた良いなと痛感。
素敵な楽しい読書時間、持てました。 -
Kindleunlimitedにて読了。
災厄の犬、だけはちょっとしんどかったけど、まさに幻想的な話ばかりで面白かった。
夢十夜みたいに、夢を見ているような感覚。不思議な世界を旅できて心地よかった。 -
小池真理子さんのホラー短編小説集。初出のデータが不備のため個々の作品の年代は不明。主に80年代から20世紀末にかけての作品と思われる。KADOKAWAの編集者はちゃんと仕事してほしい。
やはり小池さんのホラー小説はとても良い。どうやら作者自身、「美しさ」を心がけて書いているらしいが、全くその通り、美しいのである。淡々とした大人しい筆致で、どの短編も途中までは普通小説として書き上げられている。それから怪異が起こっても、その淡々としたたたずまいは変わらず、絶叫などはない。むしろごく当たり前の日常であるかのようにさえスーパーナチュラルな事象が馴染んでおり、その静かなタッチにはいささかのケレン味もなく、夢野久作などとは真逆である。
小池真理子さんはホラーよりもメインは恋愛小説の方なのかも知れず、私はそちらはまだ読んだことが無いのだが、ホラーにおいてこそ、この文体は生えるのではないかと思う。
以前にも書いたが、これでもうちょっと文章に工夫を凝らせば、立派な第1級の芸術小説である。ただしその際でもメインストリームの文学史は、こういう幻想文学は無視するであろう。坪内逍遙が上田秋成を無視したように。正しく評価されるには、少なくとも100年はかかるだろう。 -
小池真理子さんのホラー短編集。小池さんのホラーは好きなので未読はないと思っていたが、結構あった。小池さんの短編ホラーはどれも似てるけど、面白い。この本の中では「足」が好き。でホラーじゃないけど「災厄の犬」に出てくるスナックのママがすごく不気味で怖い。小池さんのホラーって、じんわり怖いですね。
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表題作を含む八篇からなる短編集。怪奇幻想傑作選です。
小池さんと言えば恋愛もの、というイメージが強いですね。
私の個人的なイメージでは、恋愛ものとホラー系と、半々くらいかなぁ。
とっくに旅立ったあの人と古い家で邂逅した…あの人が今日も訪ねて来る…。
夢か現か、怖さより切なさ物悲しさが上回ります。
本作は怪奇幻想傑作選の第二弾だったようなので、一作目も近いうちに読みたいな。 -
2018 5/11
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「災厄の犬」が特に面白かった。
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「ディオリッシモ」が、特に好きです。
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怖いというだけでなく、時にユーモラスだったり。だからこそ、怖さの余韻が残るのかもしれない。
「足」や「ディオリッシモ」など、途中で話の行方の見当はつくけれども、完結度は高いと思う。 -
1よりすごい怖い話が多かったのですが!!ひい!!朝読書の間、一人でひぃひぃ怖がっておりましたよ。
生きがい
人を世話することが生きがいの女性。彼女は、飛行機事故で夫と子供を同時に失って以来、生きる気力を失っていた。そんな時、彼女の管理するアパートに住む、息子と良く似た大学生が、風邪をひいて寝込んでしまう。
彼女は献身的に彼を看病し、久しぶりに生きがいを見つけるのだが、その結果、思わぬ事実に気がついてしまう。
青い夜の底
売れないシナリオライター。今回の原稿も没を食らい、愛する女とはしばらく連絡が取れていない。無気力になった主人公の目の前に、数週間ぶりに彼女が現れる。しかし、彼女が連れていく先は…。
ディオリッシモ
うまくいかぬ人生。昔の事を思い出しながら電車に揺られていると、自分が子供時代に住んでいた町に着いてしまう。そこには、もう亡き両親と幸せそうな自分の姿があった。
どれも読み終わってしばらくは茫然自失とします。ていうか怖い。自分は今、本当に生きているのでしょうか。それを証明するすべはあるのでしょうか。 -
幻想的なホラー短編集。ノスタルジックな雰囲気の漂うものが多くて、怖がらされるよりもむしろしんみりとした気分にさせられます。
お気に入りは「足」。こういう手法はこの方多いんですけどね。なんだかワンパターンという気はしなくて、「ああ、そうだったのかあ」と自然に思わせられます。 -
ホラーっぽさを求めて読んだからなのか、いまひとつパンチの弱い作品ばかりだったような。