- Amazon.co.jp ・本 (368ページ)
- / ISBN・EAN: 9784041000670
作品紹介・あらすじ
筑前の小藩・秋月藩で、専横を極める家老・宮崎織部への不満が高まっていた。間小四郎は、志を同じくする仲間の藩士たちとともに糾弾に立ち上がり、本藩・福岡藩の援助を得てその排除に成功する。藩政の刷新に情熱を傾けようとする小四郎だったが、家老失脚の背後には福岡藩の策謀があり、いつしか仲間との絆も揺らぎ始めて、小四郎はひとり、捨て石となる決意を固めるが-。絶賛を浴びた時代小説の傑作、待望の文庫化。
感想・レビュー・書評
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H29.6.17 読了。
・「山は山であることを迷わぬ。雲は雲であることを疑わぬ。ひとだけが、おのれであることを迷い、疑う。それゆえ、風景を見ると、心が落ち着くのだ。」・・・作中の言葉です。とても深い言葉ですね。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
福岡出身の私にとって秋月は小さい頃何度か行った思い出の土地である。覚えている記憶は、紅葉と葛餅。最近では台風や水害で話題になっているが、本作は私の知っている秋月をふんだんに詰め込んだ作品だった。
話自体は歴史物でよくある巨悪と対峙する青春一代記物。怖がりの小四郎が同年代の仲間とともに乗っ取りを狙う福岡藩と戦い、自藩を守っていく。戦いの場面や友情の話などそれぞれの要素で高揚するものがあったが、それがどれも秋月の美しい風景に根付いているのが素晴らしい。
史実に根付いているからか、最後の悪に徹しても自藩を守ったというのが少し納得はいかなかったが、「織部崩し」の青春期から守るものが増えた「成年期」の葛藤など現代にもよく観られるテーマも歴史小説らしく清廉に美しく描いていて、読んでいて清々しかった。
その中でも、いとが「葛」を見つけ出し、それを名産に借金を返していくことに繋げるシーンは鳥肌物だった。ここが葛餅の原点なのかと。 -
深く澄んだ湖を見ているような気分にさせる素晴らしい作品です。力を尽くして作り上げた静謐、受け継がれると良いですね。毅然とした生き方、そして信念。私も見倣わなければ…
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時代小説好きにはたまらないと思う。さらに、どちらかと言えば男性向けかなぁ。
藩のために捨て石になり、憎まれ役を引き受け…そんな男の生き方。 -
いつの時代にも、どんな事象にも、どんな政策にも裏と面がある。
とかく若さは明るみに出ている正義の面だけを見て動きがちなのだけれど、老獪な大人に操られている危険がある事に気が付きにくい。
学びて思わざれば則ち罔し(くらし)、思いて学ばざれば則ち殆し(あやうし)。
むずかしい。 -
面白かった!
勧善懲悪だけど勧善懲悪ではないストーリ(?)が魅力!
当時の政治っていうか藩政に生涯をかけた人物の物語。
主人公の間小四郎は小藩の秋月藩の藩士。
仲間達の力と本藩の福岡藩の援助を借りて、専横を極める家老宮崎織部の排除に成功!
しかし、その裏には福岡藩の陰謀が...
そして、当時の仲間達との関係も揺らぎ始めます。
そんな中、秋月藩のため、その民ために、さらには、福岡藩の介入から守るために、自らを捨石になる決意を固め立ち向かっていきます。
グッときたシーンは、やはり、チャンバラ(笑)
仇討という名目で小四郎を討とうとする福岡藩の謀略。
さらに、その仇打ちの助太刀として16人。
一方の小四郎は助太刀を頼まず、一人で戦う決意をします。小四郎を思う女が小四郎の昔の仲間達に助太刀を依頼するも、今の生活や立場から、断られます。
小四郎は17人の相手と戦う事に..
そして、いざ、仇討ちの場所での決闘では...
昔の仲間達が助太刀にやって来て、一緒に戦うことになります。
このシーン、昔の仲間の想いにグッときました。
こうした福岡藩からの支配、確執を防ぎ、さらに秋月藩の民の為には自ら悪人になることを厭わず、生き抜いた小四郎の凛とした生き方が清々しい。
ということで、お勧め! -
福岡藩の支藩である秋月藩の藩士、間小四郎の物語。家老の悪事から藩を守るため、本藩からの政治介入から守るため、時には謀議を企て、悪人になることも厭わず生きた。最後は流罪となるが藩のため民のためにを貫き、すがすがしい表情を浮かべる。「静謐こそ、われらが多年、力を尽くして作り上げたもの。されば、それがしにとっては誇りでござる」。政事に携わる者たちの思いを上手く描いた時代小説だ。
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淡々とした筋運びで、いまひとつ物語に入り込めなかった。登場人物やエピソードが多すぎて、私には消化しきれなかったのかもしれない。
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付箋
・おのれが弱いことを知っておる者はいつか強くなれる。お主がわしより臆病ならわしより強くなるだろう
・もし、いとがいなくなっても、葛はあの久助という男が作り続けるのではないかな。そうすることでいとのしたことは生き続けるのだ
・剣は無心でなければならん。命を捨ててというのは、逆に命にとらわれておるのだ
・自らの大事なものは自ら守らねばならぬ。そうしなければ大事なものは、いつかなくなってしまう。わたしは命がけで守るものがあって幸せだ、と思っておる
・孤り幽谷の裏に生じ 豈世人の知るを願わんや 時に清風の至る有れば 芬芳自ら持し難し 広瀬淡窓「蘭」 蘭は奥深い谷間に独り生え、世間に知られることを願わない。しかし、一たび、清々しい風が吹けば、その香を自ら隠そうしても隠せない
・目の前の敵がいなくなれば、味方の中に敵ができる
・どれだけ手が汚れても胸の内まで汚れるわけではない。心は内側より汚れるものです
・山は山であることに迷わぬ。雲は雲であることを疑わぬ。ひとだけが、おのれであることを迷い、疑う。それゆえ、風景を見ると心が落ち着くのだ
・その静謐こそ、われらが多年、力を尽くして作り上げたもの。 -
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著者プロフィール
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