行人 (角川文庫)

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  • 角川書店
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本棚登録 : 35
レビュー : 5
  • Amazon.co.jp ・本 (432ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041001110

感想・レビュー・書評

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  •  独善的で独我論的な男性身体が、どうして世界は自分の思う通りにならないのだと叫ぶ話。

     自分の妻の「正体」がつかめないと悩む男が、妻との関係が疑われている弟に貞操を試してほしいと懇願する奇妙な物語として記憶されている作品。しかし、ほんとうに最も奇妙なのは、最終章「塵労」の「Hさん」の手紙で語られている一郎の姿に他なるまい。
     「僕は絶対だ」とうそぶきながら、まるで世界のあらゆる苦悩を一身に体現するかのように、まるで世界のあらゆる知を渉猟しきったかのように、一郎はひとりで苦悩している。勝手にしろ、と思わず言いたくなるような知的なヒロイズムこそが、おそらく「大正的」なのだ。
     漱石は、阿部次郎の『三太郎の日記』を好まないといった。しかし、『行人』は、考えられるかぎりもっとも典型的に大正教養主義の精神・エートスを具体化して見せている。ここから、島田清次郎や『死線をこえて』まで導き出すことはじゅうぶんに可能だ。

  • 何回目の再読か覚えていないけど、相変わらず良い。
    暴風雨の夜のくだりは有名ですが、いつも『彼岸過迄』と取り違えていて、読み始めてそうだった、そうだったと思い出す。
    まぁそれはどうでも良いのでさておき、あまりに急な展開は確かに構成上の問題はあるのかもしれないけど、そこに主眼を置くのではなく、あくまで一郎とそれを取り巻く人々の無声の交錯に注意を注ぐだけでこの本の読み応えは十分にあるかと。誰にでも身に覚えのあるような振る舞いだけで、かつ、現在のようなどぎつい設定・描写もなく読ませる、漱石ってよく人を見ているし、上手いなと感心します、毎度ながら(って文豪に対して傍若無人な態度ですか)。
    ところで暴風の状況が異なるほど和歌の浦と市内の距離ってそんなに遠くないかと、そこのところはご愛敬?

  • 00.4.22

  • '10.1.20読破

  • 「死ぬか、気が違うか、宗教に入るか』。一郎が徐々に追いつめられていく過程が、とても恐ろしく、また悲しくもある。周りに理解されないことをわかったうえでの苦しみなのかな。何かを感じる1冊です。

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著者プロフィール

明治、大正時代の小説家、英文学者。1867年、江戸(東京都)に生まれる。愛媛県松山で教師をしたのち、イギリスに留学。帰国後、執筆活動を始める。『吾輩は猫である』『三四郎』『こころ』など作品多数。

「2017年 『坊っちゃん』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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