こゝろ (角川文庫 な 1-10)

著者 :
  • KADOKAWA
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  • Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041001202

作品紹介・あらすじ

「自分は寂しい人間だ」「恋は罪悪だ」。断片的な言葉の羅列にとまどいながらも、奇妙な友情で結ばれている「先生」と私。ある日、先生から私に遺書が届いた。「あなただけに私の過去を書きたいのです…。」遺書で初めて明かされる先生の過去とは?エゴイズムと罪の意識の狭間で苦しむ先生の姿が克明に描かれた、時代をこえて読み継がれる夏目漱石の最高傑作。解説、年譜のほか、本書の内容がすぐにわかる「あらすじ」つき。

感想・レビュー・書評

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  • 学校で遺書の部分しか学んでおらず、全部読んでみたいと思い購入。
    本当に難しいです。繊細で、残酷で、登場人物の言葉一つ一つに重みを感じる作品でした。大体内容は掴めるのですが、細かい心情表現となると、全て理解するのには大変骨が折れます。今回は解説や注釈をしっかり読んで自分の解釈が合っているのか確認したぐらいです。また数年後、自身の成長と照らし合わせて読み返したいです。

    私はこれほど心悩ませる恋愛をしてきていません。臆病で慎重な私ですから、このような大それたこと出来るはずないと今は思うのですが、本当にこの人としか生きて行けないと思う時が来れば、友人を出し抜き嫁にするほどの勇気を私は得られるのでしょうか。

  • 2023年の読み初め。
    新春に読むものではないきもするが、わたしはこの本が好きだ。

    Kの死に、毎回鳥肌がたつ。
    Kの血潮は、眠る先生の顔にまで及んだのではないかと初めて思いいたる。
    頸動脈は首のどこにあって、どう切るとああなるのかを検証したレポートまで読んでしまった。

    半藤氏によると、先生の遺書がこんなに長くなったのは、漱石の次に連載予定だった志賀直哉がなかなか書けなくて、間を持たせるためだったんだとか。
    それを差し引いても長いが、つくづく漱石は専属作家としても連載作家としても優秀だ。

    当時のエゴやら孤独やらも、令和になって一周まわった感がある。
    もはや孤独は普通だし、資産家じゃなくても遊んで暮らせるし、天皇にはなんの権限もない。
    また、時代の変わり目に読もう。

  • 誰にも見せたことのない胸の中を明かされたような気分がしてこわい

  • '22年4月11日、読了。角川文庫版では、初、かな…

    東野圭吾さんの「学生街の殺人」を読んで、なんだか幸せな気分になってしまって…なんとなく「久しぶりに」読みたくなって、再再再……もう何度目か、全く覚えていません(少なくとも、数十回、かな)が、読みました。
    角川文庫版を選んだのは、中村明さんの解説だったからです。(因みに、その解説は、今はまだ未読です)

    「ここがこう」とか「あそこがああ」とかは、語りません。でも、こころに残ったものを…

    『ペンには、つまり文学には、「力」がある…そして、「美」は、揺るがない』なんて、おセンチにも思ってしまいました。やはり、何度読んでも、巨大な感動(。ŏ﹏ŏ)

  • 何回目かの再読。

    カリスマホストの書評に「他の男に対して威嚇し、マウンティングを取りたい先生が、お嬢さんをそのための道具として結婚する、現代においては賞味期限の切れた話」というようなこと(かなり要約したがズレてないつもり)が書いてあった。

    「高尚な文学作品」を、このように扱われると怒り出す人もいるだろうか。
    かくいう私の前回のレビューにも、内容については割と似たようなことを書いていて、思わず、えっ、私こんなこと書いたっけ?と驚いてしまった(笑)

    誰かが自分の人生を決めることが当たり前だった世の中から、自分が自分の人生を決めることの当たり前に移ってゆく。
    先生とKがその先駆けだったとすると、「私」の時にはそれがもっと敷衍していたとも言える。
    「私」にとって実父は田舎の悪習でしかなく、先生こそが新時代のお手本として、上・中は展開する。

    しかし、先生もKも故郷を失った人間だった。
    そういう意味で、二人は同じ「寂しさ」を抱えていたのではないだろうか。
    先生はKを「人間らしく」するために奮闘するわけだが、その実、二人ともきれいなまま、自分として生きることを誰かに認められたかったようにも思う。
    結局、それは恋という形で、お嬢さんに向かうしかなかったのかもしれない。

    私はずっと、乃木大将の自殺と先生の自殺に何の因果があるんだろうと、疑問に思っていた。
    時代の終わりって、何なんだろう、と。

    乃木大将は、忠君という、誰かによって自分の人生を決める時代の象徴だったのだろうか。(言い方が難しいけれど)
    先生とKもまた、そんな時代に抗おうとする一方で、個人として生きてゆくことの「寂しさ」を抱え続けてきたのかな。

    一途すぎる二人の大学生と、友人を亡くして後もきれいであろうとする先生を見ていると、今回の再読は苦しかった。
    死を選ぶことで解放される、そんなエンディングは人間に何を残すんだろう。

    作品に賞味期限は、ないと思う。

  • 有名すぎて今更レビュー書くまでもないけど。笑

    これは多分昔一度読んでるなと思いながら読んだけど記憶が曖昧で、大方学生時代に感想文を書くために読んだというところだろうと推測。
    でもこの物語の深み、中高生の時に理解出来てたかな?と思った。

    「先生と私」「両親と私」「先生と遺書」からなる長編。
    奇妙な友情で結ばれている先生と私。ある日先生から私に遺書が届き、初めて先生の過去が明かされる。そこには、エゴイズムと罪の意識の狭間で苦しむ先生の姿が在った。

    「こうなってしまったのは自分のせいだ」と思う出来事は生きていればけっこうな確率で起こる。些細なことから、人の命が関わることまで。
    その罪の意識を抱え続けるのはあまりにも苦しいから、大抵の人はそれを薄れさせる図太さと時間に身を任せる。そして実際だんだんと忘れていく。
    だけどそれが出来ない人間もいて、先生はそういう人間だったのだと思う。
    それは物凄い自己陶酔でもあると思うけれど、本人にしてみたら逃れられない思いなのだろう。
    もしかしたら頭では色んなことを理解していたかもしれなくて、起きてしまった出来事も様々な要素から成っていて自分一人の責任ではないことも先生は分かっていたのかもしれない。でも頭では理解出来ても“こころ”が許さない。人の心は、思うようには操れないから。

    先生の奥さんは本当に何も気づいてなかったのか?とひとつの疑問。ある程度勘の鋭い女なら気づきそうな気がする。
    でもそれは男性作家の作品だから、善良すぎて鈍感な女性として描かれているのかも。

    そしてこの装丁が素敵。昔の純文学の小説がちょくちょくこういう装丁で売られてるから、ついつい買ってしまうという罠が。笑

  • この作品の愛ゆえに、先生に対してかなり辛辣な感想になってます。
    不快に感じる可能性のある人は、読むのをお控えくださいm(_ _)m


    …………………………………………

    只今、私38歳。
    この歳になって何度目かの再読で、新しい側面発見しまくり。
    こころって、こんなに人間の身勝手さ、エゴの強さを見せつけられる作品だったのか…
    マジで反面教師かよ、(先生だけに)


    「先生と私」「両親と私」
    先生の思わせぶり、構ってぶりが凄い

    「私々は最も幸福に生まれた人間のいっついであるべきはずです」
    「また悪いことを言った。焦らせるのが悪いと思って説明しようとすると、その説明がまたあなたを焦らせるような結果になる。どうも仕方がない」

    あとは先生の奥さんが可哀想すぎる。
    「自分と夫の間にはなんのわだかまりもない。またないはずであるのに、やはり何かある。
    それだのに目を開けて見極めようとするとやはり何にもない。奥さんの苦にする点はここにあった。…疑いの塊をその日その日の情合で包んで、そっと胸の奥にしまっておいた奥さんは、その晩その包みの中を私の前で開けてみせた」
    ↑表現好きすぎる

    そして「先生と遺書」

    最初、修行僧のような友人のKを不憫に思ってお嬢さんの下宿に引き入れるが、お嬢さんとKが必要以上に仲良くなると面白くない…

    人の心はままならんのう( ; ; )

    しかしだね
    「私は〇〇に思い切って思いを打ち明けようと思った。無論その勇気もあった。でも(外的な要因)のためにできなかった」みたいなとこがめっちゃ目につく

    ごちゃごちゃうるっせえええ!
    この言い訳野郎が!
    結局は怖くて出来なかったんだろうが!

    問題のKの部分も、Kと先生の対比がエグい。
    他人への思いやりのために自分の辛さや、肝心の部分は一言を言わずに全てを無に帰したK。
    そんなKを目の当たりにして保身に走った先生。
    更に極め付けはこうだ。

    「私はわざとそれをみんなの目につくように、元の通り机の上におきました」
    オイイイイ!このゲスーーーー!!!!


    その上、妻には何も知らせたくないだの、妻の記憶を純白に保存したいだの勝手すぎる(☝︎ ՞ਊ ՞)☝︎

    女性は、好きな人から上限一杯の愛情を注がれている!という事実が大事なんだよ!
    俺のことカッコいい完璧な俺のまま好きでいてほしいーなんて男の勝手
    これで奥さんの切ない疑惑が晴れることは一生ない。お前が理解されない寂しさを語るなよ!
    奥さんの方が1000倍寂しいわアホ!!

    奥さんに一生隠すつもりなら別れろよ、と思う。
    そこは自分が痛めよ!
    奥さんとのささやかな幸せを受け取っておきながら、都合が悪いところはずっと隠しておきたいなんて、どんだけ!

    お陰で奥さんはお前の死後もその後の人生ずっとずっと辛いんだぞ!別れてくれれば、時間がかかったかもしれないけど、別の幸せがあったかもしれないのに。


    ああーでも人間の永遠のテーマですよね
    自分の利益を優先してしまう
    先生はムカつくけど、気持ちが分かるからムカつくんだよね
    自分を優先したい気持ちをグッと堪えてKのように他人のために自分を削るのは辛い
    けど、より良い人間になるためにそこを目指していこうや…ってメッセージを感じた


    憎いのは、遺書と共に物語もバッサリ終わってるところなんだよね…
    だから「私」がどう思ったか、先生は自殺したのかは結局分からないんだよね

    この余白が物語に一層の深みを与えてる気がする
    フゥ….気が済んだよ…

    暴言すみませんでした


    • naonaonao16gさん
      ねー、聴いてよ、今日38歳になっちゃったよ、、

      『こころ』中学の教科書以来読んでないな、、
      普段あんまり授業に集中していないクラス全体が息...
      ねー、聴いてよ、今日38歳になっちゃったよ、、

      『こころ』中学の教科書以来読んでないな、、
      普段あんまり授業に集中していないクラス全体が息を呑んでその瞬間を迎えたなぁ、と思い出に浸っちゃった。
      2023/05/13
    • ミオナさん
      わあ!誕生日おめでとう╰(*´︶`*)╯♡
      38歳、私数えで39だから一つ下だね
      やっぱり同世代だった!
      嬉しい♡♡♡

      私もめっちゃ久しぶ...
      わあ!誕生日おめでとう╰(*´︶`*)╯♡
      38歳、私数えで39だから一つ下だね
      やっぱり同世代だった!
      嬉しい♡♡♡

      私もめっちゃ久しぶりに読んだんだよ
      こんな話だったの?ってびっくり
      国語でやった時のこと思い出すよねー
      やっぱり名作は授業で扱ってもちょっと引き締まる感じだよね
      2023/05/14
  • 生きていた三十五年が苦しいか、また刀を腹へ突き立てた一刹那が苦しいか、どっちが苦しいだろう…


    妻の記憶を純白のままに保存してやりたい、というのは先生の卑下とエゴだな… 私は女なので、お嬢さん(妻)の孤独を考えると、たとえ若き日の清い記憶が汚れたとしても共有して欲しいと思ってしまう。妻が「今」を生きているのに対して、先生が「過去」を生きてしまってるがゆえに起こるすれ違いだと思った。

    でも、苦しみを誰にも共有せず自ら孤独になろうとする先生やK(や漱石)に共感する部分もある。その不器用が己の弱点なのだと、頭で理解しててもどうにもできないのが不器用なんだよね。読んでてなんだか苦い気持ちになった。

    解説にある通り、この作品を読むときに問われるのは、もはや他人の人生ではなく、私の生き方の方なのだ。きっと、重ねて読むたびにまた違う響きをもって、私の心に訴えかけてくれるのだろう。

    (2020. 8. 16)


  • 夏目漱石の作品は「坊っちゃん」に引き続き2作目。
    主人公である「私」が鎌倉で「先生」と出会ったことから話は始まる。「私」はなぜかその「先生」が気になり声をかけ、そこから二人の交流が始まる。交流を深める中で「先生」にはある隠された秘密があるであろうことを知る。それを知るのは後半の「先生と遺書」のパートで、「先生」からの遺書が届くことで明らかになる。
    簡単に言えば、友人であるKと一人の女性を取り合うような形となり、結果的には「私」がその女性(お嬢さん)と結婚することになったが、それにより友人Kは自殺をしてしまう。そのことが「先生」自身の人生、考え方自体を変えてしまい、最終的には「先生」も自殺という道を選んでしまう。
    坊っちゃんに比べるとだいぶ重い話。今の時代でもありそうな話ではあるが、今とはこういった題材に対する世間の受け止め方はかなり違うものであったのだろうと想像される。当時の人はこの作品をどう解釈しどう感じて見ていたのかということがすごく気になった。
    やはり古典作品というものは、その当時の時代背景も含めてでないとその良さが伝わりづらいなと個人的には感じる。

  • 単語の独自性や文体の美しさを味合うつもりで読んだ。
    好きな表現は「私の心臓を立ち割って、暖かく流れる血潮をすすろうとしたからです。」のような熱量をかんじさせるような表現。


    現代小説しかほぼ読まないので
    物語としてどう捉えていいのかわからない。
    時勢の推移から来る人間の相違だと言って片付けていいのか、歴史文化的遺産として眺めるものなのか。

    時代背景や先生の恵まれた境遇も大分通常と違って遺産だけで家族を養っていけるという設定もすごいし、昔の男女のあり方も、全く知らないものでした。
    主人公は書生でありながら
    先生の虚栄心、嫉妬心、恐怖心や衛生的な心地等ひしひしと伝わり、嫌というほどの薄暗い心理描写に疲労感が凄い。

    恥の文化なのぞ知らないものです。
    物語の部分を今の私の価値観で本音で言うならば
    、先生は始終ずるく酷い人だったと思います。
     思想を巡らせる繊細で図太くなれず世間ずれしていない大人。
     けれど親友にも妻にも向き合わないし、それどころか大分年下である自分を慕う書生に、望んだと言ってこんなトラウマを背負わせるとは…

    私たちは心を鈍く図太く生きることで世間と折り合いを表面上つけていくけれど、
    成熟するとはどういうことなのか考えさせられます。


    書生が先生を優先して置き去りにした父の死に際も、書生の幼さを思います。
    先生と似たりよったりのボンボンであるから
    このあとの書生の人生を思うとこころが重いです。

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著者プロフィール

1867(慶応3)年、江戸牛込馬場下(現在の新宿区喜久井町)にて誕生。帝国大学英文科卒。松山中学、五高等で英語を教え、英国に留学。帰国後、一高、東大で教鞭をとる。1905(明治38)年、『吾輩は猫である』を発表。翌年、『坊っちゃん』『草枕』など次々と話題作を発表。1907年、新聞社に入社して創作に専念。『三四郎』『それから』『行人』『こころ』等、日本文学史に輝く数々の傑作を著した。最後の大作『明暗』執筆中に胃潰瘍が悪化し永眠。享年50。

「2021年 『夏目漱石大活字本シリーズ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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