- Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
- / ISBN・EAN: 9784041001219
作品紹介・あらすじ
単純明快な江戸っ子の「おれ」(坊っちゃん)は、物理学校を卒業後、四国の中学校教師として赴任する。一本気な性格から様々な事件を起こし、また巻き込まれるが。欺瞞に満ちた社会への清新な反骨精神を描く。
感想・レビュー・書評
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冒頭の部分だけは、教科書でおなじみなので頭にこびりついていましたが、こんなに歯切れが良くて、面白い話だったなんて。
こんなスカッとした小説を読んだのは、初めてです。
登場人物のあだ名も、坊ちゃんのべらんめえ口調も、この小説が長く愛されている理由の一つなのかもしれませんね。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
近所の古本屋で100円で売っているのを見つけて、ついつい買って読んでしまいました。
これまで何度か読んでいて、ストーリーもよく分かっているのですが、何度読んでも面白いですね。いちばん最初に私がこれを読んだのは今から四十年以上前の中学生のころで、旧仮名遣い・旧字体が混じった本でした。下女の清の名前が旧字体(淸)で書かれていて、「なんて読むのかなあ?」と戸惑ったことを記憶しています。角川文庫版は新仮名遣いで文字も大きいので本当に読みやすいです。
この作品、以前はただ痛快なお話としか感じませんでしたが、その後だんだん感じ方が変わってきました。要するにこのお話は、「真っ直ぐに生きているつもりでいたがその結果として世の中との折り合いをつけられなかった若者の失敗談」なのですね。このような若者を「坊ちゃん」と呼ぶことは理にかなっています。
社会のあちこちにある様々な人間模様を巧みに戯画化しています。狸、赤シャツ、うらなり、山嵐、のだいこなど、登場人物に面白おかしく付けられたあだ名は実に的を射ていて、漱石の人を見る目の鋭さに驚かされます。また、漱石の他の作品には知恵者としての言葉がふんだんに盛り込まれていますが、この作品でも坊ちゃんの口を借りて、面白おかしい人間批評がなされています。例えばこんなところです;
── 議論のいい人が善人とはきまらない。やりこめられる方が悪人とはかぎらない。表向きは赤シャツのほうが重々もっともだが、表向きがいくらりっぱだって、腹の中までほれさせるわけにはゆかない。金や威力や理屈で人間の心が買えるものなら、高利貸しでも巡査でも大学教授でもいちばん人に好かれなくてはならない。(p127)
── 商人が頭ばかりさげて、ずるいことをやめないのと一般で生徒も謝罪だけはするが、いたずらはけっしてやめるものではない。よく考えてみると世の中はみんなこの生徒のようなものから成立しているかもしれない。人があやまったりわびたりするのを、まじめに受けて勘弁するのは正直すぎるばかというんだろう。(p146)
物語の構成も見事ですね。細かなエピソードを積み上げていき、中学校と師範学校の生徒の乱闘騒ぎを一つの山として、それから間を置かず赤シャツとのだいこに「天誅」を下すというクライマックスに持っていってあっけなく終わりにしてしまう。山嵐と坊ちゃんが学校を去るという、「勧善懲悪のハッピーエンド」だけではないほろ苦い終わり方もいいと思います。
ところで、この小説は漱石自身の松山中学教諭時代の体験を基に書かれていることは間違いないですが、それでは坊ちゃんのモデルが漱石かといえば、ことはそう単純ではないようです。漱石は「当時其中学に文学士と云ったら私一人なのだから、赤シャツは私の事にならなければならん」と語っているとか(https://ja.m.wikipedia.org/wiki/%E5%9D%8A%E3%81%A4%E3%81%A1%E3%82%84%E3%82%93)。 -
文章のテンポがいいからスイスイ読み進められる。
『こころ』を読んだ後ということもあり、軽快に読める。 -
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2020/10/17
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2020/10/17
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「坊っちゃん」……好きになってしまった。
夏目漱石。読書好きながら「夢十夜」以外まともに読んだことがなかった。教科書で読んだ「こころ」の陰気な印象ばかり持っていた。
最近「吾輩は猫である」くらい読んでおこうと思い立ち、夏目漱石が実は茶目っ気のある小説を書く人だと初めて知った。風刺も効いている。面白い。読み終わって、他にも読んでみたくなって、すぐ「坊っちゃん」に取り掛かった。通勤電車の中で目が離せなくなった。坊っちゃんは、私だ。無鉄砲で損ばかり。単純だから、いい人そうだとすぐ信じる、悪そうだったらすぐ疑う。後先考えず喧嘩を吹っかける。誤解を受けやすい。
だけど私は坊っちゃんみたいに素直ではない。見習わなければ。などと、くるくる考えが浮かぶ。こんなに楽しい読書は久しぶり。何度でも読み返したい。 -
坊っちゃん理論がおもしろくて、何度も笑った!
江戸っ子は、みんなこんな性格なのかなぁ。
読んで元気が出る作品だった。 -
生まれも育ちも江戸っ子気質の坊っちゃんが愛媛の学校の教師として暮らす話。
コミカルで真っ直ぐな坊っちゃんは漱石そのものではないか?と思ってしまうような感覚になる。
文学!な堅いイメージがあったけど、どこまでもコミカル。
でも人として曲がったことは許せない。
誠実な漱石が垣間見える。 -
恥ずかしながら坊っちゃんはいい年して初読なのだ。どうも夏目漱石に限らずだが文豪と呼ばれる人たちを敬遠していたわけで。それはそれとしても、今読んでも違和感なく、坊っちゃんのちょっ早でへそ曲がりな性格にあぁいるいる。そういう人と。そそっかしくて、粗忽者で、そら清さんも心配だっただろうな。と、思った次第。