坊っちゃん (角川文庫 な 1-2)

著者 :
  • KADOKAWA
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感想 : 181
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041001219

作品紹介・あらすじ

単純明快な江戸っ子の「おれ」(坊っちゃん)は、物理学校を卒業後、四国の中学校教師として赴任する。一本気な性格から様々な事件を起こし、また巻き込まれるが。欺瞞に満ちた社会への清新な反骨精神を描く。

感想・レビュー・書評

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  • 冒頭の部分だけは、教科書でおなじみなので頭にこびりついていましたが、こんなに歯切れが良くて、面白い話だったなんて。
    こんなスカッとした小説を読んだのは、初めてです。
    登場人物のあだ名も、坊ちゃんのべらんめえ口調も、この小説が長く愛されている理由の一つなのかもしれませんね。

  •  近所の古本屋で100円で売っているのを見つけて、ついつい買って読んでしまいました。

     これまで何度か読んでいて、ストーリーもよく分かっているのですが、何度読んでも面白いですね。いちばん最初に私がこれを読んだのは今から四十年以上前の中学生のころで、旧仮名遣い・旧字体が混じった本でした。下女の清の名前が旧字体(淸)で書かれていて、「なんて読むのかなあ?」と戸惑ったことを記憶しています。角川文庫版は新仮名遣いで文字も大きいので本当に読みやすいです。

     この作品、以前はただ痛快なお話としか感じませんでしたが、その後だんだん感じ方が変わってきました。要するにこのお話は、「真っ直ぐに生きているつもりでいたがその結果として世の中との折り合いをつけられなかった若者の失敗談」なのですね。このような若者を「坊ちゃん」と呼ぶことは理にかなっています。

     社会のあちこちにある様々な人間模様を巧みに戯画化しています。狸、赤シャツ、うらなり、山嵐、のだいこなど、登場人物に面白おかしく付けられたあだ名は実に的を射ていて、漱石の人を見る目の鋭さに驚かされます。また、漱石の他の作品には知恵者としての言葉がふんだんに盛り込まれていますが、この作品でも坊ちゃんの口を借りて、面白おかしい人間批評がなされています。例えばこんなところです;
    ── 議論のいい人が善人とはきまらない。やりこめられる方が悪人とはかぎらない。表向きは赤シャツのほうが重々もっともだが、表向きがいくらりっぱだって、腹の中までほれさせるわけにはゆかない。金や威力や理屈で人間の心が買えるものなら、高利貸しでも巡査でも大学教授でもいちばん人に好かれなくてはならない。(p127)
    ── 商人が頭ばかりさげて、ずるいことをやめないのと一般で生徒も謝罪だけはするが、いたずらはけっしてやめるものではない。よく考えてみると世の中はみんなこの生徒のようなものから成立しているかもしれない。人があやまったりわびたりするのを、まじめに受けて勘弁するのは正直すぎるばかというんだろう。(p146)

     物語の構成も見事ですね。細かなエピソードを積み上げていき、中学校と師範学校の生徒の乱闘騒ぎを一つの山として、それから間を置かず赤シャツとのだいこに「天誅」を下すというクライマックスに持っていってあっけなく終わりにしてしまう。山嵐と坊ちゃんが学校を去るという、「勧善懲悪のハッピーエンド」だけではないほろ苦い終わり方もいいと思います。

     ところで、この小説は漱石自身の松山中学教諭時代の体験を基に書かれていることは間違いないですが、それでは坊ちゃんのモデルが漱石かといえば、ことはそう単純ではないようです。漱石は「当時其中学に文学士と云ったら私一人なのだから、赤シャツは私の事にならなければならん」と語っているとか(https://ja.m.wikipedia.org/wiki/%E5%9D%8A%E3%81%A4%E3%81%A1%E3%82%84%E3%82%93)。

  • 文章のテンポがいいからスイスイ読み進められる。

    『こころ』を読んだ後ということもあり、軽快に読める。

  •  道後へ旅行へ行ったのでちゃんと読み直してみた。
     松山の街の様子が細かく描かれていて、松山の人からすると「あーわかるわかる」となる部分が多いのだそう。
     江戸っ子の坊っちゃんが松山の人を見下す様子が読み取れるが、どこか暖かみも感じられる。
     100年以上前の作品にしてはかなり読みやすかった。

    • わっかーさん
      おれも道後行く前に読んだけど、1ミリも褒めてなくてくさぁって思ったわ笑
      おれも道後行く前に読んだけど、1ミリも褒めてなくてくさぁって思ったわ笑
      2020/10/17
    • だいちゃんさん
      田舎バカにしまくってるな笑
      漱石の人柄があらわれてるんかねぇ
      田舎バカにしまくってるな笑
      漱石の人柄があらわれてるんかねぇ
      2020/10/17
  • 「坊っちゃん」……好きになってしまった。
    夏目漱石。読書好きながら「夢十夜」以外まともに読んだことがなかった。教科書で読んだ「こころ」の陰気な印象ばかり持っていた。
    最近「吾輩は猫である」くらい読んでおこうと思い立ち、夏目漱石が実は茶目っ気のある小説を書く人だと初めて知った。風刺も効いている。面白い。読み終わって、他にも読んでみたくなって、すぐ「坊っちゃん」に取り掛かった。通勤電車の中で目が離せなくなった。坊っちゃんは、私だ。無鉄砲で損ばかり。単純だから、いい人そうだとすぐ信じる、悪そうだったらすぐ疑う。後先考えず喧嘩を吹っかける。誤解を受けやすい。
    だけど私は坊っちゃんみたいに素直ではない。見習わなければ。などと、くるくる考えが浮かぶ。こんなに楽しい読書は久しぶり。何度でも読み返したい。

  • 坊っちゃん理論がおもしろくて、何度も笑った!
    江戸っ子は、みんなこんな性格なのかなぁ。
    読んで元気が出る作品だった。

  • 読書家の父に「松山に行かないか」と言われ渡された一冊。
    やはり面白い!明治に書かれたということを忘れるくらい面白かった。
    最後の一行が好き。

  • とても面白かった。痛快すぎる上に良い話だ。聞き慣れない言葉やなまりのある方言もたくさんあるが、それでもとても読みやすく、話もわかりやすい。中学生の生意気さ、大人の難しさや狡賢さ、教師の姿勢など、人間の心理描写や人間との向き合い方の表現がとても面白い。タメになることもたくさんあった。主人公である坊っちゃんの名前を最後まで出さずに終わる作品も中々珍しい。今、教師が色々な面で苦境に立たされる事が多いが、これくらいの気概があってもいいだろうし、周りももっと教師に寛容になってもいいかもしれない。

  • 生まれも育ちも江戸っ子気質の坊っちゃんが愛媛の学校の教師として暮らす話。

    コミカルで真っ直ぐな坊っちゃんは漱石そのものではないか?と思ってしまうような感覚になる。

    文学!な堅いイメージがあったけど、どこまでもコミカル。
    でも人として曲がったことは許せない。
    誠実な漱石が垣間見える。

  • 恥ずかしながら坊っちゃんはいい年して初読なのだ。どうも夏目漱石に限らずだが文豪と呼ばれる人たちを敬遠していたわけで。それはそれとしても、今読んでも違和感なく、坊っちゃんのちょっ早でへそ曲がりな性格にあぁいるいる。そういう人と。そそっかしくて、粗忽者で、そら清さんも心配だっただろうな。と、思った次第。

  • テレビで東大生、京大生がスゴイと思う本として紹介されていて、単純なので読んでみようと思いました。以前も読もうと思ったことがあって読んでなかったし、これだけの名作を読んだことがないというのも、日本人として恥ずかしいかと思って。

    100年以上も前に書かれた本とは思えない、というのが一番の感想です。
    無鉄砲な主人公に、嫌味な教頭やその下につくスネオみたいな下っ端先生、大人しい先生や味方になってくれる先生など、現代のドラマとかでもありそうな相関図。(こう書くとGTOみたい)

    先日ドラマ化して放送されていましたが、現代版で時代を変えてドラマ化しても、何の違和感もないだろうなと思います。

    とても素直でまっすぐで、読みやすい文章でした。日本人としてこの作品を知れた喜びがありました。他の作品も楽しみです。

    最後の1文が愛に溢れていて、本当に素敵。

  • 夏っぽいぜ、恥ずかしいぜ、今さらな感じが(笑)
    とある飲み屋で、小・中学生の時分で夏休みの読書感想文を書いた記憶がない、憶えていない、あったとしても“いわゆる定番作品”を読んでいないと言ったら、後日友人がプレゼントしてくれた。
    (よくよく振り返ると『野口英世』『消えたカナリヤ』『小公女』『小公子』あたりで書いたかもしれない。『野口英世』は親に薦められてイヤイヤ読んだ本だし、『消えたカナリヤ』は児童向けミステリ、『小公女』『小公子』は定番ちゃ定番か……)

    というわけで本書。思ったよりも面白く読めた。
    今感覚で名作かと問われれば、まあまあかなぁな作品だけど、読み継がれているにはそれなりの理由(ワケ)があるんだろう。
    主人公はどちらかといえばダメなタイプ。読み進めてもパキっとした輪郭が見えてこない不思議な人柄。そのくせ憎めないのが最大の魅力か——。

    いつの時代にも通ずるであろう戯画化された人間模様を平易な文章で綴っているとはいえ、暴力に訴えてケツまくって終了な物語を小・中学生が読んでいいのだろうか、などとちょっと思ったり。

  • 図書館に行ったら開いてなかったので腹いせに本屋に行って買いました
    最初私が想像してたのは
    なんか上品でホホホとかいってる坊っちゃんの本の
    イメージでしたが読んでみると
    やんちゃで無鉄砲 
    でも心はまっすぐまっすぐ、曲がったことが嫌いな
    面白く素敵な坊っちゃんでした 
    くすくすと笑ってしまったところもいくつかあります
    漱石らしいなと読んでて思います

    正直で素直な人ほど評価されず
    ズルくて卑怯なやつほど評価される社会のおかしさは
    腹立ちますね まぁ私も卑怯な人なんですけどね
    ちょうどいい読み応えでした 
    おもしろかった

  • 昔に冒頭だけ読んだ覚えがある。でも途中でやめた気がする。
    今回、ナツイチで装丁が気に入ったので、『こころ』と一緒に買って読んだ。

    すぐ読めた!めっちゃおもしろい!
    天麩羅事件、団子事件、温泉事件がかなり面白かった。
    いつの時代も、生徒が先生をからかうのは変わらないと思った。

    とにかく、この作品をひと言で述べるなら
    「親譲りの無鉄砲で子供の時から損ばかりしている。」
    これに尽きる。
    まるでコメディータッチ。
    道後温泉に行きたくなった。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「親譲りの無鉄砲で子供の時から損ばかりしている」
      私も、このフレーズ好きなんです。

      「道後温泉に行きたくなった」
      漱石だけじゃなく、正岡子...
      「親譲りの無鉄砲で子供の時から損ばかりしている」
      私も、このフレーズ好きなんです。

      「道後温泉に行きたくなった」
      漱石だけじゃなく、正岡子規も読んでから。。。

      えっと原作・関川夏央、絵・谷口ジローの「"坊っちゃん"とその時代」をご存知ですか?
      「坊っちゃん」の裏話的内容で、とってもお薦めです。
      http://www.futabasha.com/botchan/index.html
      2012/08/29
    • mariさん
      nyancomaruさん
      「坊っちゃんとその時代」知らなかったです!!
      読んでみたい!探します♪ありがとうございます☆
      正岡子規も読んでから...
      nyancomaruさん
      「坊っちゃんとその時代」知らなかったです!!
      読んでみたい!探します♪ありがとうございます☆
      正岡子規も読んでから道後温泉行きましょうかね(笑)
      2012/09/02
    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「道後温泉行きましょうかね」
      温泉でノンビリしたいです。。。
      子規は「仰臥漫録」か、石森章太郎が同人誌のタイトルとして借用したという「墨汁一...
      「道後温泉行きましょうかね」
      温泉でノンビリしたいです。。。
      子規は「仰臥漫録」か、石森章太郎が同人誌のタイトルとして借用したという「墨汁一滴」が読みたい。俳句はその後かな、、、

      2012/09/04
  • 名作といわれている作品だから読むのに抵抗があったけど、
    読みはじめたら全然昔の話と思えなくて面白かった。

  • キャラは中々魅力的、淡々とした印象!

  • この本でまず感じたのが、純朴な江戸っ子(都会人)と陰険な田舎者という対立構造である。
    読めば読むほど、陰険な田舎者を懲らしめなければならないと読者に感じさせる話の進め方であった。

    "こんな婆さんにあってはかなわない。自分の好きなものは必ずえらい人物になって、きらいなひとはきっと落ちぶれるものと信じている。"

    主人公が序盤で述べているにもかかわらず、終盤ではこの思考法に陥っている点に違和感を感じた。当初は良い悪い、という善悪の論理から、好きとか嫌いという個人の正義に毒されていくような危うさがあった。

    勧善懲悪は受けが良いので、あえてこういった書き方にしているのかもしれない。ただ、その純朴さ、無鉄砲さを支える清の愛があったことは忘れてはならない作品であった。

    愛媛に縁がある身として、ようやくこの本を読み終わることができて良かった。近いうちに道後温泉を訪ねようと思う。

  • これが昔に書かれた話だなんて、本当に驚きである。
    主人公は良い意味でも悪い意味でも「漢」というような人間であると感じた。
    最後の清さんとの再開や、山嵐との友情は読んでいる途中でほっこりした。最後の食べるために買ったはずの卵を投げつけるシーンもスカッとした。

  • 初読。恥ずかしながら夏目漱石の作品を読み切ったのが初めて。取っ付き難いイメージだったけどサクサク読める。あらすじだけで勝手に清は物静かに見守ってくれるタイプかと思ったら全く違った(笑)

  • 初めて読んだのは小学生の頃だったと思うが、小学生の自分でもどんどん読み進めるぐらい面白いくて読みやすかった。

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著者プロフィール

1867(慶応3)年、江戸牛込馬場下(現在の新宿区喜久井町)にて誕生。帝国大学英文科卒。松山中学、五高等で英語を教え、英国に留学。帰国後、一高、東大で教鞭をとる。1905(明治38)年、『吾輩は猫である』を発表。翌年、『坊っちゃん』『草枕』など次々と話題作を発表。1907年、新聞社に入社して創作に専念。『三四郎』『それから』『行人』『こころ』等、日本文学史に輝く数々の傑作を著した。最後の大作『明暗』執筆中に胃潰瘍が悪化し永眠。享年50。

「2021年 『夏目漱石大活字本シリーズ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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