坊っちゃん (角川文庫 な 1-2)

著者 :
  • KADOKAWA
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本棚登録 : 2137
感想 : 181
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041001219

作品紹介・あらすじ

単純明快な江戸っ子の「おれ」(坊っちゃん)は、物理学校を卒業後、四国の中学校教師として赴任する。一本気な性格から様々な事件を起こし、また巻き込まれるが。欺瞞に満ちた社会への清新な反骨精神を描く。

感想・レビュー・書評

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  • 冒頭の部分だけは、教科書でおなじみなので頭にこびりついていましたが、こんなに歯切れが良くて、面白い話だったなんて。
    こんなスカッとした小説を読んだのは、初めてです。
    登場人物のあだ名も、坊ちゃんのべらんめえ口調も、この小説が長く愛されている理由の一つなのかもしれませんね。

  •  近所の古本屋で100円で売っているのを見つけて、ついつい買って読んでしまいました。

     これまで何度か読んでいて、ストーリーもよく分かっているのですが、何度読んでも面白いですね。いちばん最初に私がこれを読んだのは今から四十年以上前の中学生のころで、旧仮名遣い・旧字体が混じった本でした。下女の清の名前が旧字体(淸)で書かれていて、「なんて読むのかなあ?」と戸惑ったことを記憶しています。角川文庫版は新仮名遣いで文字も大きいので本当に読みやすいです。

     この作品、以前はただ痛快なお話としか感じませんでしたが、その後だんだん感じ方が変わってきました。要するにこのお話は、「真っ直ぐに生きているつもりでいたがその結果として世の中との折り合いをつけられなかった若者の失敗談」なのですね。このような若者を「坊ちゃん」と呼ぶことは理にかなっています。

     社会のあちこちにある様々な人間模様を巧みに戯画化しています。狸、赤シャツ、うらなり、山嵐、のだいこなど、登場人物に面白おかしく付けられたあだ名は実に的を射ていて、漱石の人を見る目の鋭さに驚かされます。また、漱石の他の作品には知恵者としての言葉がふんだんに盛り込まれていますが、この作品でも坊ちゃんの口を借りて、面白おかしい人間批評がなされています。例えばこんなところです;
    ── 議論のいい人が善人とはきまらない。やりこめられる方が悪人とはかぎらない。表向きは赤シャツのほうが重々もっともだが、表向きがいくらりっぱだって、腹の中までほれさせるわけにはゆかない。金や威力や理屈で人間の心が買えるものなら、高利貸しでも巡査でも大学教授でもいちばん人に好かれなくてはならない。(p127)
    ── 商人が頭ばかりさげて、ずるいことをやめないのと一般で生徒も謝罪だけはするが、いたずらはけっしてやめるものではない。よく考えてみると世の中はみんなこの生徒のようなものから成立しているかもしれない。人があやまったりわびたりするのを、まじめに受けて勘弁するのは正直すぎるばかというんだろう。(p146)

     物語の構成も見事ですね。細かなエピソードを積み上げていき、中学校と師範学校の生徒の乱闘騒ぎを一つの山として、それから間を置かず赤シャツとのだいこに「天誅」を下すというクライマックスに持っていってあっけなく終わりにしてしまう。山嵐と坊ちゃんが学校を去るという、「勧善懲悪のハッピーエンド」だけではないほろ苦い終わり方もいいと思います。

     ところで、この小説は漱石自身の松山中学教諭時代の体験を基に書かれていることは間違いないですが、それでは坊ちゃんのモデルが漱石かといえば、ことはそう単純ではないようです。漱石は「当時其中学に文学士と云ったら私一人なのだから、赤シャツは私の事にならなければならん」と語っているとか(https://ja.m.wikipedia.org/wiki/%E5%9D%8A%E3%81%A4%E3%81%A1%E3%82%84%E3%82%93)。

  • 文章のテンポがいいからスイスイ読み進められる。

    『こころ』を読んだ後ということもあり、軽快に読める。

  •  道後へ旅行へ行ったのでちゃんと読み直してみた。
     松山の街の様子が細かく描かれていて、松山の人からすると「あーわかるわかる」となる部分が多いのだそう。
     江戸っ子の坊っちゃんが松山の人を見下す様子が読み取れるが、どこか暖かみも感じられる。
     100年以上前の作品にしてはかなり読みやすかった。

    • わっかーさん
      おれも道後行く前に読んだけど、1ミリも褒めてなくてくさぁって思ったわ笑
      おれも道後行く前に読んだけど、1ミリも褒めてなくてくさぁって思ったわ笑
      2020/10/17
    • だいちゃんさん
      田舎バカにしまくってるな笑
      漱石の人柄があらわれてるんかねぇ
      田舎バカにしまくってるな笑
      漱石の人柄があらわれてるんかねぇ
      2020/10/17
  • 「坊っちゃん」……好きになってしまった。
    夏目漱石。読書好きながら「夢十夜」以外まともに読んだことがなかった。教科書で読んだ「こころ」の陰気な印象ばかり持っていた。
    最近「吾輩は猫である」くらい読んでおこうと思い立ち、夏目漱石が実は茶目っ気のある小説を書く人だと初めて知った。風刺も効いている。面白い。読み終わって、他にも読んでみたくなって、すぐ「坊っちゃん」に取り掛かった。通勤電車の中で目が離せなくなった。坊っちゃんは、私だ。無鉄砲で損ばかり。単純だから、いい人そうだとすぐ信じる、悪そうだったらすぐ疑う。後先考えず喧嘩を吹っかける。誤解を受けやすい。
    だけど私は坊っちゃんみたいに素直ではない。見習わなければ。などと、くるくる考えが浮かぶ。こんなに楽しい読書は久しぶり。何度でも読み返したい。

  • 坊っちゃん理論がおもしろくて、何度も笑った!
    江戸っ子は、みんなこんな性格なのかなぁ。
    読んで元気が出る作品だった。

  • 読書家の父に「松山に行かないか」と言われ渡された一冊。
    やはり面白い!明治に書かれたということを忘れるくらい面白かった。
    最後の一行が好き。

  • とても面白かった。痛快すぎる上に良い話だ。聞き慣れない言葉やなまりのある方言もたくさんあるが、それでもとても読みやすく、話もわかりやすい。中学生の生意気さ、大人の難しさや狡賢さ、教師の姿勢など、人間の心理描写や人間との向き合い方の表現がとても面白い。タメになることもたくさんあった。主人公である坊っちゃんの名前を最後まで出さずに終わる作品も中々珍しい。今、教師が色々な面で苦境に立たされる事が多いが、これくらいの気概があってもいいだろうし、周りももっと教師に寛容になってもいいかもしれない。

  • 恥ずかしながら坊っちゃんはいい年して初読なのだ。どうも夏目漱石に限らずだが文豪と呼ばれる人たちを敬遠していたわけで。それはそれとしても、今読んでも違和感なく、坊っちゃんのちょっ早でへそ曲がりな性格にあぁいるいる。そういう人と。そそっかしくて、粗忽者で、そら清さんも心配だっただろうな。と、思った次第。

  • テレビで東大生、京大生がスゴイと思う本として紹介されていて、単純なので読んでみようと思いました。以前も読もうと思ったことがあって読んでなかったし、これだけの名作を読んだことがないというのも、日本人として恥ずかしいかと思って。

    100年以上も前に書かれた本とは思えない、というのが一番の感想です。
    無鉄砲な主人公に、嫌味な教頭やその下につくスネオみたいな下っ端先生、大人しい先生や味方になってくれる先生など、現代のドラマとかでもありそうな相関図。(こう書くとGTOみたい)

    先日ドラマ化して放送されていましたが、現代版で時代を変えてドラマ化しても、何の違和感もないだろうなと思います。

    とても素直でまっすぐで、読みやすい文章でした。日本人としてこの作品を知れた喜びがありました。他の作品も楽しみです。

    最後の1文が愛に溢れていて、本当に素敵。

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著者プロフィール

1867(慶応3)年、江戸牛込馬場下(現在の新宿区喜久井町)にて誕生。帝国大学英文科卒。松山中学、五高等で英語を教え、英国に留学。帰国後、一高、東大で教鞭をとる。1905(明治38)年、『吾輩は猫である』を発表。翌年、『坊っちゃん』『草枕』など次々と話題作を発表。1907年、新聞社に入社して創作に専念。『三四郎』『それから』『行人』『こころ』等、日本文学史に輝く数々の傑作を著した。最後の大作『明暗』執筆中に胃潰瘍が悪化し永眠。享年50。

「2021年 『夏目漱石大活字本シリーズ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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