出口のない部屋 (角川文庫)

著者 :
  • 角川書店(角川グループパブリッシング)
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レビュー : 12
  • Amazon.co.jp ・本 (365ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041001240

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  •  プロローグで描かれるホラー作家と編集者のいわくありげなやり取り。そして出口のない部屋に閉じ込められた、医療研究者、売れっ子作家、開業医の妻。彼らの身の上話とつながりを描いたミステリー。

     絶妙に嫌な人間を描くのが巧いなあ、と岸田さんの作品を読んでいると思います。特に秀逸なのが医療研究者の夏木祐子。こういう女の人っていそうだな、と読んでいて思わずイライラしてしまいました(笑)

     見ず知らずの人が同じ密室に閉じ込められて、という作品は一時期小説や映画でよく取り上げられていましたが、どれもデス・ゲームの側面が強くて、面白くはあるのですが大枠は一緒で細かいところでしか差がつかなかったような印象があります。

     この作品は状況は似ていても「出口のない部屋」というのは、あくまで作品に深みを与えるため、犯人の闇を描くためのの一つの装置だったのだと思います。そういう意味では同じ作風のフィクションの中でもかなり異色です。現に密室状態でのサスペンスやスリラーの側面は弱く、あくまで三人の人生を結んだものは何か? という謎が主題です。

     多少強引ではあるものの、三つのつながりをつなぐ要素が明かされるシーンは読みごたえがありました。部分的にこう来るのかな、と読める箇所はあったのですが、真相はそれをもう一つ上を行くものでやられたなあ、という感じでした。

  • 初・岸田るり子。
    良かったです、すごく・・・面白かった!!
    構成がとても良いし、ストーリーもキャラクターも良い。
    上質なミステリーだと思いました。
    後半、「え、このスピードでこの残ページ数で、謎解き全部出来るのか・・・?」と不安になってしまったんですが、そこからの風呂敷の畳み方が上手!
    この分量ですっきりまとまった。
    「出口のない部屋」のシンプルな不思議さと、キャラクターの内面描写のリアリティが、絶妙な加減でひとつになっているのがすごい。
    止まらなくて一気に読んでしまったし、そんなに長くないのにたくさんの経験をするような感覚があって、そして最後まで読んだあとまた最初に戻って読みたくなる。
    ちょっと残酷な描写があって、そこはそんなに必要でもない気がしたけれど、キャラクターの歪みを上手く見せていたと思えば良し。

    もっと他の作品も読んでみようと思いました。
    思いがけず良い出会いをした!

  • とある部屋に迷い込んで出られなくなった3人が、こんな事態に陥った理由を探るためそれぞれが抱えた問題を思い起こしていくホラーテイストのミステリ作品。

    大学講師、若手小説家、開業医の妻。
    3人がどうして閉じ込められたのか、どうやって抜け出すのかというテーマではないのが新しい。

    まったく接点のないと思われた3人が終盤、ある一点で繋がっていくのが鮮やかである。
    殺人トリックの点はうまくいきすぎな感もあったものの、全体としての破綻なく綺麗に物事が流れていてうまいなと思う。
    トリックとレトリックに誤魔化しがないしきちんと伏線を引いているのでちゃんと読めば引っかかったところが解消され、謎解きの押し付け感がなくてよい。
    何より物語に出てくる人物の誰もがリアルで人間ドラマとして面白い。

    派手さはないけどうまいな~という秀作です。

  • 自分という存在に違和感を感じてしまったら、人はどう生きていけばいいのだろう。
    いま、ここにいる自分。それは本当に自分なのか。
    誰かの思い通りに操られ、自分の意思など関係なく生きらされているだけなのか。
    自分のアイデンティティーがわからなくなってしまったとき、すがれるものがあればすがってしまうのが人の弱さなのかもしれない。
    自分を他者に反映し、他者を自分に取り込む。
    そうして、歪んだ形でも自分を保つしかなかったのかと思うと切ない。
    閉じ込められた部屋での三人の会話が面白かった。
    それぞれ、自分に都合のいいところだけを語り、真実は告げない。
    そして語らなかった部分は、人生から削除してしまったように最初からなかったことにして生きてきた。
    語らなかった部分にこそ込められている心理描写が深い。
    何よりも物語としての構成がよかった。
    途中で「もしや?」と結末が見えてくる場面もあったけれど、読み終わってみればいろいろと違った面もみえてくる。
    三人が語り合う「出口のない部屋」の小説部分は特に面白いと思った。
    しかし、結末はあれでよかったのだろうか?
    最後にぬくもりを感じられたことが救いになったのだろうか?
    「他者は地獄である」(サルトル)の意味が、いまひとつ理解しきれなかった。
    様々な真実に対し、意識が否定をくわえていく。
    そして結局は真実を見失っていってしまう。
    ゆえに、その精神世界は地獄である・・・こんな意味なんだろうか。

  • なんだか違和感が大

  • プロローグとエピローグ以外は、ホラー作家仁科千里がかいた小説という作りになっているのだが、これにすっかり騙された。

    ただ事件のあらまし自体は「そんなに上手くいくかぁ?」と感じた。
    リアリティのない作品だった。

  • 割りと面白い。出口のない部屋に入り込んでしまった3人の男女。なぜなのか?どんな意味があるのか?この3人の共通点は?
    知りたい事ばかりで先を急いでしまう。終盤の衝撃。しかし、気持ち悪さが先に来てしまう。

  • 初の岸田るり子作品。面白かった!謎の部屋に閉じ込められた見知らぬ者同士の三人。共通点を見いだすためにお互いの身の上話を始める…という話。各章で少しずつヒントとなるファクターが見え隠れするが、真相までは届かない、というさじ加減が見事。気になって最後まで一気に読んでしまう。驚きの展開に満足!

  • 出口のない部屋に閉じ込められた3人の男女。
    研究員の女性、人気作家の男性、医師の妻。

    その部屋にはドアがあるが外から鍵がかけられて開かず、窓の外はコンクリート。
    外に出る事は不可能。
    3人は何故自分がこの部屋にいるのか分からない。
    3人に何か共通点はあるのか。
    それぞれ、自分の身の上について話し始める。

    研究者の女性はキレイ事ばかりの母親に育てられ、表面上はそんな母親の希望に沿うように生きている弟がいた。

    だが、弟にはある秘密があった。
    また、彼女は最近、ある研究が元で研究員の女性とイザコザがあった。

    作家の男性は人気女流作家と結婚し、人気作家となる足がかりをつかむ。
    しかし、彼はある女性と出会い、だんだん妻を疎ましく思うようになる。
    そして、とうとう・・・。

    医師の妻は現在の夫と結婚する前にもうけた娘が一人いる。
    その娘からは時折思い出したように金の無心をするハガキが届く。
    気の合わない姑がいるものの、今の生活に満足している女性にとってそのハガキは迷惑なものでしかない。
    所が、彼女の義理の息子はハガキを出す娘に興味をもち、彼女に会いに行く。

    全くつながりのないと思われれる3人の内訳話。
    そこから見えてきたものとは-。

    -と、ここまではある作家の書いた小説のあらすじ。
    プロローグ、エピローグで作家と編集者のやりとりが書かれている。

    作中、作家が書いたとされている本文はそれぞれ登場する人物の目線で描かれている。
    研究者の女性の話では途中で弟目線の話になるし、作家男性の話では彼の不倫相手の女性目線の話に、そして、医師の妻の話では義理の息子目線で描かれている。
    だからどの話もその登場人物の心情にスッと入っていける。

    このプロローグ、小説の中の話を読んでいて、どこでどういうつながりがあるんだろう?と思いながら読んだが、全く分からない。
    見えそうなのに見えてこない。
    それがエピローグでひとつの事が明らかになると、絡まった糸がスッと解けるようにあっという間に全てが分かってしまった。

    きれいに全ての出来事がつながっていた事が分かる。
    うまいな~と思った。
    何が何なのか全く分からないまま読んでいる時もストーリーに引きつけられてあっという間に読んでしまった。

    この作者の本はまだ2冊目ですが、断然最初に読んだ作品よりもこちらの方が良かった。
    同じ作者が書いたもの?と思うくらい。
    最初に読んだのは短編だったけど、もしかしたらこの人の文章は長編向きなのかも?
    ただのエンタメとしてだけでなく、しっかりとテーマをもった作品として読みがいのある本だとも思います。
    読み終えた時、「出口のない部屋」というタイトルがしみじみきます。

  • 赤いドアの小さな部屋に誘われるように入り込んだ3人の男女。自信あふれる免疫学専門の大学講師・夏木祐子、善良そうな開業医の妻・船出鏡子、そして若く傲慢な売れっ子作家・佐島響。見ず知らずの彼らは、なぜ一緒にこの部屋に閉じ込められたのか?それぞれが語りだした身の上話にちりばめられた謎。そして全ての物語が終わったとき、浮かび上がる驚くべき真実―。

    東京創元社 (2006.04)
    角川文庫 (2012.04)

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