人もいない春 (角川文庫)

著者 :
  • 角川書店(角川グループパブリッシング)
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レビュー : 34
  • Amazon.co.jp ・本 (181ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041001264

作品紹介・あらすじ

小さいころから執念深く、生来の根がまるで歪み根性にできている北町貫多。中卒で家を飛びだして以来、流転の日々を送る貫多は、長い年月を経てても人とうまく付き合うことができない。アルバイト先の上司やそこで出会った大学生、一方的に見初めたウエイトレス、そして唯一同棲をした秋恵…。一時の交情を覆し、自ら関係破壊を繰り返す貫多の孤独。芥川賞受賞作『苦役列車』へと連なる破滅型私小説集、待望の文庫化。

感想・レビュー・書評

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  • 短編集。私小説で有名な西村賢太だが、中ほどに収録されている「悪夢ー或いは『閉鎖されたレストランの話』」は創作ものである。同氏の多彩な文才を実感させる、秀作である。この一遍のためだけでも本書を手に取る価値はあるだろう。

  • 『だめんずウォーカー』的面白さといえばよいか。仕事仲間に対する卑下する態度、秋恵に対する酷い態度、金銭に対する著しいルーズさなどなど、貫多の屑っぷりを味わう私小説である(脚色はあるだろうが著者の体験を基とすると、、、なかなか恐ろしい)。

    (登場人物の方々には申し訳ないが)貫多の小市民的破天荒さは娯楽作品としては面白いのだが、文学作品として見た場合『どうで死ぬ身の一踊り』と比べると言葉選びの推敲がやや稚拙な印象を受けてしまう。従って、十分に面白いが、少し辛めに4点に近い3点。

  • テレビに出てる作者をみて興味をもったので読んでみた。自分勝手だけど少しの温かさを持ってる主人公がなかなか良かった。彼女がやさしすぎ。
    主人公関係ないけどネズミ目線の短編が激しかった。
    kobo


    親類を捨て、友人もなく、孤独を抱える北町貫多17歳。製本所で短期契約のアルバイトを始めた貫多は、持ち前の自己中心的な短気さと喧嘩っぱやさでまたしても独りになってしまう……。話題の芥川賞作家の渾身作!

    内容(「BOOK」データベースより)
    小さいころから執念深く、生来の根がまるで歪み根性にできている北町貫多。中卒で家を飛びだして以来、流転の日々を送る貫多は、長い年月を経てても人とうまく付き合うことができない。アルバイト先の上司やそこで出会った大学生、一方的に見初めたウエイトレス、そして唯一同棲をした秋恵…。一時の交情を覆し、自ら関係破壊を繰り返す貫多の孤独。芥川賞受賞作『苦役列車』へと連なる破滅型私小説集、待望の文庫化。

  • 著者と同世代の人たちはバブルの真っ只中で青春を過ごしているはず。その世代における底辺の日常は実はいつの時代にもある。70年代の松本零士の「男おいどん」の世界も然り。人の生き方、生活は一様ではない。正解も理想もない。それぞれの世界でのやり方、生き方がある。

  •  私小説だから目を瞠る新展開があるはずもなく、内容は相変わらず。私は彼の本を読むたび、レビューで「もう飽きた」とか書いているのだが、それでも新著が出るたび手を伸ばしてしまう。不思議な吸引力をもつ作家である。

     本書では、作中の主人公の名は西村賢太ならぬ「北町貫多」となっている。これは、本書同様『野生時代』掲載作を集めた『二度はゆけぬ町の地図』でも使われていた名前。
     主人公の名が変わったからといって、ほかの西村作品ととくに色合いが異なるわけではない。掲載誌を区別する符丁程度の意味合いであろうか。

     『二度はゆけぬ町の地図』は、西村がまだ10代のころの青春時代を描いた作品が中心で、そのすさみっぷりがなんともよかった。本書の冒頭を飾る表題作も10代の日々を描いたもので、これがとてもよい。
     なので、「これは『二度はゆけぬ町の地図』の続編のような作品集かな」と大いに期待したのだが、10代のころの話は1編のみで、あとは中年になってからの話。

     おなじみの「女」(本書では「秋恵」という名になっている)との同棲生活を綴ったものが3編、神保町の古書肆を舞台に手ひどい失恋体験を綴ったものが1編(「二十三夜」という作品。これもかなりよい)。そしてもう一つ、レストランに巣くったクマネズミたちを主人公にした、異色の寓話風掌編が入っている。

     寓話風の掌編は、西村賢太らしさが感じられず、印象希薄。
     女との同棲生活を描いた3編も、これまでの同種の作品と比べて、わりと薄味。
     とくに「昼寝る」は、女が風邪を引いて寝込み、主人公がかいがいしく看病するという描写が延々とつづき、「こんな優しい男、西村賢太じゃない!」と思ってしまった(笑)。まあ、その後、看病することに飽きた主人公が「てめえは一体、いつまで病んでりゃ満足するんだ!」と床に伏せった女を怒鳴りつけ、毎度おなじみの展開となるのだが……。
     西村賢太の小説はいわば「ルサンチマンの文学」であるわけだが、この3編は燃料たるルサンチマンが不足している印象を受ける。

     そこへいくと、10代のころの悶々とした孤独な日々を描いた「人もいない春」は、煮えたぎるようなルサンチマンがみなぎっており、「西村賢太はこうでなくちゃ」と思わせる。たとえば、こんな一節――。

    《もう自分と同じ年齢の者は、来春には高校も卒業するはずで、その大半は間違いなく大学にも進学するのであろう。彼はそれを考えると、また改めて自分が取り残される一方であることを痛感させられる。二年半前、彼が高校へゆかぬ事態になったのを聞いた同級生は、陰で、これであいつは一生土方だと嗤っていたらしく、それを知った貫多は烈火のごとく怒り狂い、その同級生の家にゆき、呼びだした上で叩きのめしてやったものだが、しかしどうもその不快な予言は、案外貫多の将来を見事に言い当てたような気配にもなってきている。》

  • 苦役列車から流れて読んでみた。
    相変わらずの貫多の大冒険物語。

    バイト先でのトラブル、
    知り合った女性とのいざこざストーリーが、
    やはりおもしろい。
    最低な人間だけど、人間くさい貫多。
    友だちには絶対なりたくないタイプとおもいつつも、その飾り無いゲス語りに、妙に共感出来てしまうところもあり、ぐいぐい読み進めてしまう。

    物語後半のその貫多に出来た天使のような彼女の話も貫多とのコントラストがあいまって、妙に考えさせられる。

    途中のネズミ一家の話も秀逸。

  • 短編小説集。特に何も残らないが読んでいるぶんには面白い。鼠が主人公のような小説も書けるのが意外だった。

  • 自分のこと(だと思われる)をここまで客観的に書けるのってすごい。

  • 北町貫多 パレット ソープランドに行く為の積立資金 日雇いの湾岸人足仕事 件の職工に見咎まれる 歪み根性 醜女の部類 余裕の舌舐めずり 金輪奈落の憎しみを抱いてしまう 鬱憤が蓄積 睥睨 潜在的に抱いている雰囲気を、敏に感じとってしまった。 イニシアチブ ろう弄し 肉慾の計画 排斥はいせき 無能視 疎まれて 瞬間興醒め 飯田橋の厚生年金病院裏のアパート 青春を、十全に謳歌 これで彼奴は一生土方だと嗤ってあたらしく 不快な予言 屈辱の澱 インフェリオリティーコンプレックが再度頭を擡げてくる 鶯谷 諦観めいたものを抱きながら 脳を麻痺させる為にも 顰めっ面 異常な嗜虐の虫 嗄れた声 ゲテモノによる、グロテスクなマンズリをな 蔑んで 所詮は性根の糞袋 上野桜木町 強烈なカタルシスめいたもの 陳腐な言い草 彷徨いぶり 懲罰的な報い 嘆願して 憑き物が落ちた 甘くプラトニックな焦れったい恋情 一穴主義 新宿一丁目の豚小屋めいた八畳間の自室 自分の積年の理想像 生来短気で我儘者 能登の七尾 化粧函 何か痛々しそうな口調 勇足 哀れみをこめた目 岡惚れ アングラ劇団員 邂逅 サルモネラ菌 捨て身の復讐 更地 乞食の糧途 大学出でインテリの秋恵 成就 相思相愛 常に感謝と尊敬の念を忘れず 忘恩の質 本性が極めて冷血にできてる男 覚束ぬ 赤い脳梁 旧花園町の一角の、八畳一間の豚小屋 仔細しさい 立つ瀬 成程 爾来 興を喚起せしめてきた 清楚 邪推が妙に嬉しく 埋没 境遇 絶対的な自負 甘美な優越感 ブルマーなんて最低だよ。あんなの、一種のセクハラだよ 催しものよし 三白眼 劣情 萎えて 想起 興醒め 徹宵てっしょう 沽券 シフトを組んで 当日欠勤 ルル 微熱の範疇 破顔 邪慳 恬然と甘受 結句は変に拗らせ 欠如 芝公園で狂凍死したある私小説作家の月命日 潜伏期間 越後の辺りで客死 位牌 檀家 煩い 練り梅 頑是ない童女みたいな表情 殊勝な気持ち 瞼 聖母像めいた高貴な厳粛さ 訝しく 苦役列車 勝手に貫多とオーバーラップ オブラートに包まないブラックな感情 ズボラ 人一倍 鏤め 脱帽 失うものはもう何もない 酷く孤独で残酷 滑稽さ マイノリティ 存在することでの主張、圧力のようなものを感じます。 パフォーマンスと呼ばれてもいい 南沢奈央

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著者プロフィール

1967(昭和42)年7月12日、東京都江戸川区生まれ。中卒。新潮文庫版『根津権現裏』『藤澤清造短篇集』角川文庫版『田中英光傑作選 オリンポスの果実/さようなら他』を編集、校訂、解題。著書に『どうで死ぬ身の一踊り』『暗渠の宿』『二度はゆけぬ町の地図』『小銭をかぞえる』『随筆集 一私小説書きの弁』『人もいない春』『寒灯・腐泥の果実』『西村賢太対話集』『一私小説書きの日乗』(既刊六冊)『棺に跨がる』『形影相弔・歪んだ忌日』『けがれなき酒のへど 西村賢太自薦短篇集』『薄明鬼語 西村賢太対談集』『随筆集 一私小説書きの独語』『やまいだれの歌』『下手に居丈高』『無銭横町』『夢魔去りぬ』『風来鬼語 西村賢太対談集3』『蠕動で渉れ、汚泥の川を』『芝公園六角堂跡』『夜更けの川に落葉は流れて』『藤澤清造追影』などがある。

「2019年 『狼の吐息/愛憎一念 藤澤清造 負の小説集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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