- Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
- / ISBN・EAN: 9784041001288
作品紹介・あらすじ
「友達」なんて言葉じゃ表現できない、戦友としか呼べない玖美子。彼女は突然の病に倒れ、帰らぬ人となった。彼女がいない世界はからっぽで、心細くて……大注目の作家が描いた喪失と再生の最高傑作!
感想・レビュー・書評
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ブクログで評価を確認して、珍しく自分で購入したが、自分の好みではなかった(笑)
まぁ、そんなこともありますね(笑)
漫画家志望だった佐紀が、とある雑誌の編集者玖美子に出会い、漫画家の夢を捨て、漫画原作者になる。
佐紀と玖美子は偶然にも同学年で、20代の頃に知り合い、お互いお酒が大好きで、仕事の話をしたり、恋の行方を話したり。
いつのまにかかけがえのない戦友となっていた。
何もかも分かち合ってきた2人だったのだが、ある時玖美子が急逝する。
玖美子との戦友時代。玖美子を失った後の佐紀の人生が丁寧に描かれている作品。
作品のボリュームによるものなのか?私がアホだからか?佐紀の個性は面白く読ませて頂いたが、淡々と物語が幕を閉じたなぁという印象(^_^;)
大きな感動も希望も無い(^_^;)
でもここまで気楽な女友達がいたら楽しいだろうなぁ。
毎日お酒飲んでクダまいて!詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
”完璧な小説だ。”とは北上次郎さんの文庫解説の冒頭の文。
これは単行本の時の感想で、装丁・挿画・造本等はこの原稿を書いている文庫版がどうなるかは判らない。と書いている訳だが、この文庫は「北上さんの解説まで含めて完璧」だ。
漫画原作者の主人公佐紀と同年齢の編集者玖未子との関係を描いた小説だが、実は冒頭から仕掛けが施されている。
六話の連作短編の中で時間は過ぎ行き、あっというまの20年前後を描いている。
話の終らせ方が実に巧みで、短編にありがちな「それからどうなった?」と思わせないところがいい。それでいて、解説によれば「それから」が描かれた小説もあるらしいからニクイな。 -
読むのが怖い、で、北上さん・大森さんともに評価が高かった印象があり、読んでみよう、となった本書。
文庫版では北上さんの解説もあり、ベタ褒め!
・・・なのに、私の評価は普通、、だ。北上さんごめんなさい。
ただ、戦友を喪った佐紀が喪失感を抱えながら、それでも自分は生きていかなくてはいけない、その静かだけど深い悲しみが胸を打つのは確かだ。
激しい悲しみを劇的な出来事を持って描くのではなく、佐紀の日常を追いながら、日常にこそ滲む寂しさが、何ともリアルで、親しい人を喪った時の喪失感て、こんな感じだよなあ、と思うのだ。
「喪うことに慣れた」と思っていても、月日が流れても、急に波のように寂しさが打ち寄せて来る、そんなことの繰り返しだよなあと。 -
戦友を突然亡くし、でも、日常は続く。
亡くなってもなお、どこかしらに彼女の存在があり続けていくが、決してそれは囚われているわけではなく、いい意味で人生に関わっているところが、前向きだなと思った。
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漫画原作者の佐紀と編集者の玖美子。デビュー前からの戦友である玖美子が急逝したことにより、佐紀はスランプに。玖美子がいた日々といなくなってからの日々とを淡々とつむぐ連作短編集。
大人になって、戦友という言葉がしっくりくる。かさぶたや古傷みたいのもたまってきた。とにかく健やかに生きようという佐紀の境地に共感できた。いい小説を読んだ。 -
親友、という以上に、人生の一時期を濃密にわかちあった女友達を、突然失ってしまったとしたら。
さみしい、とか、辛いという言葉では言い表せない喪失を抱えて、でも何気ない顔をしながら、その後の人生を生きていく、30代半ばの女性の話。
死んだ彼女をともに知っていた人たちや、主人公がそうと知らない形で愛した人たちが搭乗するけれど、そこから何か、流行りの「エモい」ドラマに発展するわけではない。人生ってそんなものじゃない。淡々と日は流れるようでいて、でもそこかしこに、永遠に喪われた人の影がともにある。
「喪うことに慣れてしまったからこそ、ようやく繋がった、ようやく見つけたこの細い線を手放してはならないのではないか」。そう気づかせてくれたことこそ、今はいない友が残してくれた最後の贈り物といえるのだろう。
とはいえ、主人公より年をかさねてきた今でも、これから来るはずの喪失に耐えられるかどうか、まったく自信はないのだが。いつか来るその日の先に、開けた風景の中に立つことを願って。 -
「ほどけるとける」が面白かったので,解説で紹介されていたサイドストーリーの本書も講読.
漫画原作者の佐紀さんが主人公のバディもの.ただし,相方の玖美子さんはすでに亡くなっている.
「戦友」を失った喪失感と,「長い長い喪中」を経てゆっくりと再生して行く姿が,日常の生活を通してゆったりと描かれている.
ラストシーンの,達貴君の得意げな顔と夕日の光に満たされていく二人の姿が印象的.
本書だけでも十分面白い(と思う)のだが,「ほどけるとける」のあの場面で,佐紀さんはこうだったんだと言うのがわかって,より楽しめた.
大島先生,君津君や律子さん視点の話もお願いします. -
本の雑誌を購読している。その中で、蔦屋書店を通じて本の雑誌社が選んだ数冊を送ってもらえるサービスがある。いつもどうしても偏ったものを読んでしまう。
こういった、「恋」と名のつくもの、ページ数が少ないものは、内容も見ずに手に取らない。
人に選んでもらった数冊は、すべて大変刺激的であった。このお話も、じんわりと胸に残る。どこが、と言われたら人間関係なのかな、はっきりと言えないが、数年後に必ず読み返すと思う。ミステリばかり読んでいたが、
これを機会に同じような作品に手を伸ばし始めている。 -
はぇ〜。なんで私は今までこの人の本に出会ってこなかったんだろう??
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恋愛小説と思うと構えてしまう自分がいて、というのはそれを読んで感じ入った記憶が殆ど無いからであって、本作も入手してみたものの、なかなか手が出なかった作品。”読むのが怖い”で大森氏も絶賛しているのを見て、それならばってことでトライ。で、これがまた素晴らしかったんです。やはり出色は表題作だけど、それ以外も色んな人間模様が描かれていて、バラエティ豊かで○。サラッと読める分量だけど、しっかり余韻を残す物語でした。
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おもしろかった
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泣ける。漫画原作者×編集者(百合要素)
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読み終わってすぐ、もう一度読んだ。
淡々と語られる、大島真寿美の文章は心地よい。
1行目にして“生前”という単語が出てくる、亡き友を偲ぶ物語だ。
親友の玖美子の他にも、別れや、別れの予感のようなものに満ちている。
元彼、すなわち、既に別れた人との食事。
親友との思い出の場所のオーナーは、病に倒れ、入退院を繰り返し、確実に弱っているように思われる。
それに伴い、想い出のその店も、なんとなくもう潮時を迎えていそうな…
逆に、死んだと思っていた音信不通の人がひょっこり現れたり、偶然、幼なじみに再会したり。
平凡な一日は、しかし健やかな一日でもあり、友の死につづける世界の中で、ヒロインは毎日生き続ける。
毎日が繰り返されるという事は、今日が終わり、明日が再生されること。
輪廻転生のように、新しい若い人たちに、かつての自分と戦友を見る。
喪失と再生の物語だ。
ちょっと気の毒だったのが、玖美子の後を引き継いで、担当になった編集者、君津。
ちょっと、この作品の中では場違いに元気が良く、感情もはっきりしている。
ある意味、異端分子?
良いアクセントを添えているのだが、しかし完全なつなぎの立場だった(笑)
そんな君津も成長した。
良い作品でした。
あと、佐紀が食べる、漬物やお魚といった和風ご飯が何気にとても美味しそう。
リズのぺペロンチーノもにんにくの香り立つようで食欲をそそる。 -
読書部課題図書その17
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漫画原作者である佐紀(あかね)はデビューより共に戦ってきた編集者の玖美子を突然の死により失う。喪失した中でスランプにおちいり、淡々と日々をこなす佐紀が、幼馴染、新しい編集者、元彼などと接し、何気ない穏やかな毎日をすごすことで、徐々に緩やかに立ち直っていくお話。喪失やスランプがあったとしても人間は生き続ける。立ち直るのに、特別なことがあるわけではなくて。何気ない日々の生活を描かせたら、大島さんに勝る人はいないのではないだろうか。酸いも甘いも知った年だからこそ、その中であきらめの心境もあり、複雑なんだけど、これが大人というものなのかなと思う作品でした。連作短編集。
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変わってしまったかつて行きつけのライブハウスで、自分の歴史を知らない若い女子の横に座り、変わってしまった味のペペロンチーノを食べながら、昔の思い出に耽る。この年取った感がいい。戦友のような友人を突然亡くしてからの日々が淡々と綴られる本書。生きてる彼女は年を取るのだ。優本!
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巻末に添えられた北上次郎さんの解説の一行が物語る…完璧で美しく、静かで力強く、、の見事な時間の経過、時の流れ、、玖美子と一緒に年を重ねる佐紀と単独のあかね。頁内の幾つかの言葉が突き刺ささってくる作品と違い、こんなに頁毎にしんなりと溶け込んでくる作品も珍しい。ほんのり軽いエッセイ感も漂わせながら…リズに行きたくなる♪
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この人の文体はちょっと癖になるなあ
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ある女性が、大切な人を失った喪失感から、立ち直っていくお話なんだけど、その大切な人が、恋人ではなく肉親でもなく、友人でもない。そう、戦友なんである。
この表現、距離感。心得てるな~。
立ち直っていく過程も、劇的なことがおきるのではなく、どちらかというと、地味に淡々と日々を過ごしている。このリアルさなんですよねー。
ピエタの慎とした、凛とした感じも好きだけど、本作の方がより身近な印象を受けた。
が、ラストが??な終わり方。 -
仕事の、そして私生活でも、
かけがえのない友達を喪ったところから
始まる。
友達が「死につづけている世界」で「生き続ける」私の
物語。
かけがえのない人がいなくなった世界でも、
忙しかったり、スランプになったり、
その底辺に流れる日常の生活、出会い、再会、
変わっていく気持ち、育っていく感情・・・。
生きてゆく・・・ということは、大変だけれど、
美しくて、愛しいことだなぁ・・・と
ラストを読んでしみじみと思った。
ふつうの生活を、もっと愛したくなる
好きな作品が、またひとつ増えた。 -
期待を大きくして読んだのに、アレッ?期待はずれ
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ひとりの原作者をとりまく、連作短編集。
ゆるやかなようで、事件がおきる淡々とした日常。 -
出てくる方たちはお酒好きなのだが、自分はのめないので、お酒のみの主人公に共感できなかった。世代的にも微妙にずれていた。働き小説としてはいいのだけど。
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大島真寿美さんは本当に素敵。「ピエタ」とは違う着地点で、この作品があったから、「ピエタ」が生まれたのだと思う。大島さんが描く女性というのは、喪失感やコンプレックスを持っていて、けれど、それがすべてではなくて、きちんとそういう「人生の重み」というものを持っている上で、時に明るく、時に真面目に生きている。だから尊敬できる。人生ってそんなもんだよなって頷ける。
小説と料理とは似ていて、どうにも僕も、こういう出汁の効いた作品が好きになるだけの歳月を、それなりに過ごしてきたみたいだ。 -
23歳、漫画原作者の佐紀にとって大事なパートナーだった同い年の編集者、石堂玖美子が急逝した。「新人同士一緒に頑張ろう。一泡吹かせてやろうよ」。打ち合わせと称して二人で酒をぐだぐだと飲んだり、恋の悩みを打ち明けたり。仕事が順調で、これからさあ駆け上がっていくぞという時の悲しい出来事。スランプに陥る早紀。そんななか、幼馴染の木山達貴と20年ぶりに偶然再会する。再会を心から喜ぶ彼女は思う。「悪いことばかりじゃないんだから、いいことだってあるんだから」。悲しみを乗り越えてゆっくりと前へ進んでいく。
『青いリボン』もそうだったけど今回もう~んって感じでした。『虹色天気雨』のような大勢の人を巻き込んでわちゃわちゃするにぎやかな作品のほうが僕は好きなようです。