秘帖・源氏物語 翁‐OKINA (角川文庫 ゆ 3-10)
- 角川書店(角川グループパブリッシング) (2011年11月30日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
- / ISBN・EAN: 9784041001905
感想・レビュー・書評
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光源氏の話とは知らずに読みはじめ、途中で気づいた。ミステリー調で話が進み、最後までどうなるんだろうと気になってしまう本だった。壮大な神話の話がメインでもうちょっと知識がついた時に読み直すと深みが増しそうだなと思った。
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楽~な気分で取りかかれ、読み終わることができました。
一応源氏物語を土台にして、夢枕さんらしくもののけというか、霊というかをはめていておもしろかったです。
また、続、書いてほしいです。
源氏物語の、霊とかもののけからのとらえ方っていいですよね。
源氏物語って、
恋愛物語と思うと、気も滅入るしなんとなくもういいかなぁって感じです。
光源氏勝手すぎるから。 -
夢枕獏 著「秘帖・源氏物語 翁」を読みました。
光源氏の妻、葵の上に怪しいものがとり憑く。彼女を救うため、光の君は外法の陰陽師・蘆屋道満に調伏を依頼するが、謎は深まるばかりだった。
陰陽師「源氏物語」版といった感じでした。
今回は安倍晴明は全く出番がなく、代わりに光源氏とあの蘆屋道満がコンビを組んで、謎を解き明かしていく展開で、陰陽師同様楽しく読ませてもらいました。
恥ずかしながら、源氏物語のさわりしか知らない自分でも源氏物語の世界を少し味わえた感じがしました。
謎が解明する件では、世界の神話まで登場し、この物語のダイナミックな展開に驚かされました。
もう少し、神話の勉強をしていればもっと楽しめたのかもしれないとも思いました。
人の愛憎は現代より平安時代の方がやはり深かったのでしょうか。 -
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森美夏の表紙イラストに惹かれて購入したのですが、暫く寝かせてあります。
夏に丁度良い話だから(根拠ナシ)、そろそろ読もうかな。。。森美夏の表紙イラストに惹かれて購入したのですが、暫く寝かせてあります。
夏に丁度良い話だから(根拠ナシ)、そろそろ読もうかな。。。2012/08/06
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鬼、妖怪が見える光源氏と「陰陽師」にもでてくる蘆屋道満とが葵の上の憑き物の謎に挑む話。仏教を信仰した聖徳太子、聖徳太子を支援した秦河勝と太秦寺、景教(キリスト教)やダビデ(古代イスラエルの王)まで絡めて、作者自身が傑作と言った作品。獏さんらしい雰囲気があり、面白い。
「源氏物語」の作者紫式部は10世紀末から11世紀初頭の人、この物語の序章にでてくるので源融は9世紀後半の人(光源氏のモデルともいわれているが)、陰陽師 阿部晴明は10世紀中頃の人なので、この物語は10世紀中頃の設定と思う。 -
【谷崎源氏】、【与謝野源氏】、【円地源氏】、【瀬戸内源氏】……と、基本的に“作家名+源氏”てのは、現代語訳作品をさすのだけど、この獏先生の作品も“作家名+源氏”としていいとおもう。
『あさきゆめみし』も今や【大和源氏】って言われてるくらいだし。
で、本作品も現代語訳じゃなくて、『源氏』の登場人物と、有名な逸話をもとにして、獏さんが獏さん流にアレンジしたオリジナル小説。
この手法の『源氏』では、わたしはおセイさんの『私本・源氏』シリーズが最高だとおもっていたのだけど、この『翁』もそれに勝るとも劣らない物語になってた。
とはいえまぁ、獏さんなんで、ぶっちゃけ『陰陽師』のスピンオフ、といえなくも無い作風。
だって道満出てくるし、光の君の容貌も晴明のそれを現すときによく用いられる言葉を使ってるし、妖かしのものの書きかたは、まんま本家、だし。
口悪くツッコむなら
「晴明が光の君になっただけかよ!」
という。
でもきっと獏さんは、そんなツッコミがあるのも解ってて、この世界観をあえて持ってきたんだとおもう。
なにしろ『源氏物語』が書かれた時代に、まさしく本物の安倍晴明は生きていたのだから(小説ほど若くはなかっただろうけど)。
これ以上にマッチングする組み合わせもなかろうというもの。
事実、読んでても全然違和感無く読めたし。
しかしやはり、現代の作家さんが『源氏』の数多(あまた)ある帖の中から選び出すのは、六条御息所のエピソードなんだなあ。
だからこそ、の道満登場、でもあるのだけれど。
とりあえずあとがきで、獏さんご本人が
「傑作ですぜ」
と言い切っているのもうなずける本作。
(これを書くために『あさきゆめみし』を読まれたという話は愉快)
ほんと、傑作ですよ。 -
なるほど~、夢枕獏が源氏物語を描くとこうなるのね。
源氏物語を“物の怪”を中心に読み解くという人は国文学者の中にもいるんだけど、そこに蘆屋道満を絡めてくる辺りが夢枕流かな?
蘆屋道満のキャラ設定は『陰陽師』シリーズと共通っぽい。
で、『陰陽師』の晴明の役どころも道満が果たしている感じ。
真相がわかっているんだかいないんだか、煙に巻くところまで晴明そっくり。
ミノタウロスやゴルディアスの結び目まで引っ張り出したワールドワイドな展開はやっぱり夢枕獏です。
とりあえず、飽きる間もなく一気読みさせてくれました。 -
ものの怪は物の気配、本来は人と物との間に生じた気配、それを感じ取ったもの。しかしそれに名を与え、人の思いを乗せることで神にも鬼にもなると言う。鬼がまだ「もの」と呼ばれていた時代の話…
これもやはり、人と物との関係性を起点に産み出されるという点では「われーなんじ」の世界に繋がるものと言えるだろうか。
人間は「人と間」によって形作られる存在と言えるか。しかし決して「人」と「間」は切り離せない。われーなんじの「ー」こそ「間」であるのか。となると「間=ー」とは、なんじに対するアプローチ、動的な側面を持ちうる文字(記号)となるだろうか。
人間は、人ー間間ー人(「物」でもよいが)ということでしか存在し得ない。絶対的な個としての単体の「人」の存在はあり得ない。故に人間と書くのか。否応なくそうせざるを得ないから。
陰陽師やシャーマンが当たり前にいた時代、文化は「間」との繋がり、アプローチ、認識がより身近だったのだろうな。それ故、間と間が混ざりあうことで、多くの物の怪が生まれたのだろう。
物の怪のもつ不思議な魅力…それは、かつては当たり前に共有できたが、時代と共に消え失せていった「間」への狂おしいほどの憧憬がそうさせるのかもしれない。
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夢枕獏さんの作品が好きで購入。
源氏物語が元とは思えないほど、非常に読みやすい作品であるものの…後半の盛り上がりは他の作品と比べると薄いようにも感じた。
陰陽師シリーズの安倍晴明から妖に関する知識を抜かれたような光源氏が主人公で、それを補っていくのが蘆屋道満という形で進んでいきます。
作中に登場する謎々も宗教を絡めており非常に面白かったです。 -
十年近く積読になっていたらしいけれど、ようやく読了。源氏物語の世界をベースに、光の君と蘆屋道満が葵の上に憑いた「もの」を探るミステリなのかファンタジーなのか。
基本的に光の君がほぼ晴明。「もの」を見ることができ、妖や伝承にも詳しいということで、蘆屋道満が狂言回しの役割。仏教とキリスト教の融合の話は前にも読んだ気もするけれど、うまく源氏物語とミックスさせたかなあという印象。相変わらずの独特な雰囲気がいい。けど、やっぱり晴明&博雅のコンビの方が好きかなー。
あとがきで、源氏物語は結局挫折して「あさきゆめみし」を読んでこれを書いたというのに思わずクスッとしてしまいました。