SRサイタマノラッパー (角川文庫)

著者 :
制作 : 金子 ナンペイ 
  • 角川書店(角川グループパブリッシング)
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本棚登録 : 34
レビュー : 9
  • Amazon.co.jp ・本 (285ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041002308

感想・レビュー・書評

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  • 路傍の石ころを見るかのような顔 粗相のひとつ 天からの蜘蛛の糸 大仰なグループ名 隣の熊谷市 JR高崎線に乗って2駅 2年間ただ机上の空論として霧散していた 大きな溝が露呈 ライブ経験がないという重苦しいコンプレックスを払拭 隣の群馬県から北風が容赦なく吹き続けた 埼玉県の北部では冬の「赤城颪」として忌み嫌われる強烈な寒風だ 今日までの努力と緊張が水泡に帰す 柔和な笑顔 窮状を訴えた 白髪からの最後通牒 オレたちの退路を完全に塞ぐ強烈な一言 夢中で一気呵成に最後まで歌いあげた 質疑応答という弾劾だんがい裁判が 恐々として 慇懃さと幼稚さが絡み合って凄まじい湿度だ 然もありなんという具合に頷きあった ご多分に漏れず俺もその一員だったわけだ 一顧だにせず もろもろ諸々な問題に対して 気宇壮大な狙い 例に洩れずそうだったからよくわかる 束の間のモラトリアム いんがみ韻神 老木が風に吹かれたような乾いた笑い マイルストーン 画一的な一戸建て 国道17号沿いのブックオフ 金をかけずに人生の余暇を満喫しようと目論む年寄り連中 事勿れ主義の権化 高崎線の線路が南北を分ける赤道というわけだ その豪放磊落さが魅力といえば魅力だ 侃侃諤諤の議論が行われ 「宇宙人かよ、お前」 不敬な教師 深谷名物の長ネギ セーブオン 明治時代に渋沢栄一とかいう偉人が出て日本銀行か何かを創ったらしいけど 怒気を孕んだ声だった 「一生そのままだよ、お前」 関越道の上の橋はトムのお気に入りポイントで 慇懃なお辞儀 豚にパール 暗い廃工場は活気を失って閑散としていた 頑として聞かず オレはティンバーランドで土を蹴って駅へ走った 思考は錯綜する オレは言葉のスパイスを振りかける 全身を痺れさせるほど強烈な香辛料でラップの歴史を更新する。ヒップホップ街道を更新する。 日の出にはまだ幾分時間がかかりそうな夜明け前の深い谷の暗闇 無味乾燥な意匠をまとうお役所系の施設 「ファスト風土」 脱臭された空間がただ端的に広がっている 空疎 一緒に考えていくことをうなが促していく 新しい世界と個人との関係(の記述法)を探していく 不様な

  • 「北関東のど田舎で毎日うだつの上がらない生活をループしているオレにとって、ロックの熱さはおやじの説教みたいで重苦しく感じられたし、ポップスの甘さは遠い幻想の国の夢物語だった。ヒップホップは、出口の見えない単調さの中で息をするだけのオレにすっぽりとはまった」

    ヒップホップってまさに空虚であったり単調であったりする生活のリズムにもピッタリ当てはまるなと思う。ただ、別にそれは自堕落な生活を反復させ続けることを肯定してくれるということだけを意味しているのではなくて、その反復するリズムこそが加速度的に何かを生み出してくれそうな気がするというか。

    ロックやポップのメロディーでは流れてしまいそうな”力”が、HIPHOPのループの中に閉じ込められて蓄積されて、それがいつか噴出するんじゃないかというような幻想がHIPHOPにはあるんじゃないかな、と。HIPHOP好きとしてはそういう感覚がある。

  • 北関東、埼玉県越谷、26歳、男、無職、実家暮らし。金も車も、何も持ってない。体重は100kg超。
    だけど彼には夢がある。有名なラッパーになりたい。

    無職でニートのイック! 親友のトム! ブロッコリー農家のマイティ! 魚好きな先輩!

    越谷で結成されたヒップホップグループ”SHO-GUNG”。
    彼らの数か月の空回りし続ける日々と膨らみ続ける理想と何もない現実。好きだった女の子。北関東の中心でライムを刻む青春小説。

    -----------------------------

    結局のところ、イックは何もできなかった。夢と理想は堂々と語るくせに何も行動できなかった。金もなければ自信もない。女の前でカッコつけることもできない。
    ダメ過ぎる男。いなくなっても誰も困らない。誰にも愛されていない。
    彼のことを唯一愛しているひと、それは彼自身。
    だからこそ自分がデブニートだとわかっていてもヒップホップにすがる。そしてそのヒップホップで失敗するのも怖いからライブもできないし、東京にも行けない。
    読みながら思った。これは自分の話だと。
    中途半端な距離にある東京。甘えが許される暮らし。地元の人間関係に縛られる生活。北関東のコンプレックス。こんなはずじゃない。俺はまだ大丈夫だ、大丈夫だと自尊心をなだめる日常。

    つまらない日常で、クソみたいな北関東で、不恰好に自分のヒップホップにしがみつくイックがカッコ良かった。
    何かを成し遂げたわけでもない。頑張っているわけでもない。
    だけど、過去の恋愛感情を引きずったまま、駅に走るイック。街を出ていく女の前でもカッコつけらないイック。
    頑張りたくてもどうやって頑張ればいいかわからない気持ちがわかり過ぎるほどわかる。

    これは北関東100%の青春小説だ。
    夢の終わりが見えても夢を捨てられない男の話だ。

  • デブとガリと、ブロッコリー農家のアホな3人が、深谷市からヒップホップでの成功を夢見る。
    大きな夢から小さな現実へ移行していく過程は、誰もが経験したことがある青春の切なさを含んでいる。でも、そっちにいくことはあまり期待していなかった。
    久しぶりに電車で笑いをこらえるほどの、冒頭公民館での質疑応答があったのに、以降はそのギャグっぷりが鳴りを潜めてしまい、残念だった。

  • 映画から入ったので、とても懐かしくなった。TOMもIKKUも、なにか理不尽さを感じているからこそヒップホップをやっていたんだろうけど、それをうまく表現できないもどかしさがあるように見えた。最後のシーンは映画でもすごく好きで、二人の思いがぶつかり合う迫力感があった。読み終えたあと、ついDJ TAKEDAの辞世のラップを聴きたくなった。

  • 映画では分からなかった時間の経過が分かってよかった。これで、もう一度映画を見るんだ。

  • 著者が映画監督だからか、
    やっぱりこれは映像の方が楽しいのかも。
    というか、映像で見てみたいなーと思いました。
    そして「シュアリーサムディ」を思い出しました。
    こちらも映画の小説。

    文章は平な感じです。
    なので個人的には読みやすいけど、
    なんか、あっ・・・あー!ってなる。苦笑

    行き場のない大事な気持ちを
    掃き溜めみたいな場所に追いやってしまって
    このままでいいわけないじゃないかと、
    現状打破をしよう、っていうような感じが。

    デブとか小心者とか鈍感とか臆病とか。
    怒りとか負をエネルギーに変えようと。

    だけど、
    お金も脳みそもなんもない。
    ほんとになんもない。
    なんもないことを否定されて
    なんもないことを否定したい。

    それをリリックにのせて。
    ヒップホップにのせて。

    イックとトムの行方がきになります。

    続きそうな予感がしますが、
    それは映画で解消されてるのかな??

  • 本屋で適当に手にとってみたが、期待以上におもしろかった。解説まで読んでいて面白かった本は久しぶり。冒頭から笑える。映画見てみたいと思った。

  • IKKU、TOM、千夏のバックボーンが知れてファンとしては読むべき本。

    ただ、四の五の言わず、
    熱量を叩きつけてくる映画で観るべき作品。
    それが、サイタマノラッパー。

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