おそろし 三島屋変調百物語事始 (角川文庫)

著者 :
  • 角川書店(角川グループパブリッシング)
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  • Amazon.co.jp ・本 (496ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041002810

感想・レビュー・書評

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  • 【2024年54冊目】
    変調百物語――通常の百物語は人々が一堂に会して行うが、三島屋で行われているそれは、語り部がやってきて、話が済めば帰ってしまう、まさに変調の百物語だ。とある事情で三島屋に身を寄せている「おちか」は、叔父の伊兵衛の依頼でその百物語の聞き手となるのだが…。

    外れなしの宮部みゆきさんの三島屋変調百物語シリーズ第一作目です。やはり外れなし!五つの連作短編集をドキドキしながら読みました。

    章が進む度に主軸となる主人公のおちかの過去のあれそれも明らかになっていき、最終章の五章では過去話となっていたこれまでのお話が一つになりました。見事!

    おちかの成長ぶりも良いですし、最終章で姿を見せたラスボスも良いですね。いつか彼の話を聞くことにもなりそうな気がします。

    なんとシリーズは9作目まで出ているようで二作目以降を読むのが楽しみです。

  • 面白かった。松太郎が不憫。おちかの両親がせこくて嫌い。

  • 江戸の袋物屋で働く娘が、店に訪れる客から不思議な話を1話ずつ聞いていく、という形で進むホラー歴史小説。
    ホラーといいつつ、ただ怖いという話ではなく、人の心の機微が丁寧に描かれていて、気づくとあらゆる人物に感情移入しながら読んでしまいました。

    怪異譚としての肌触りは、創作怪談や都市伝説ホラーとはまた違った感覚。実話怪談を聞いた時のような、不気味さと「説明のつかなさ」がじわりと滲んでいるように思います。

  • 心の闇、あやかし、どちらもおそろしい。
    枠物語は枠でなく存在感あるメインストーリー。
    ふくよかでこまやかな文章に、ええもん読んでる気分になれます。

    事情あり他者と接したぁあらへんおちかに叔父の染物屋三島屋伊兵衛は、松田屋藤兵衛と曼珠沙華のできごとののち、変わり百物語を集めたいと言い出し訪ねてくる人々から怪談話を聞き出すよう命じる(おちかのリハビリ目的でしょう)。
    心閉ざすおちかが他者の怖い話を聞くうち、なんやしらんけどいつの間にかタフになってもうてて怪談の方を救う。
    メフィスト的なキャラが登場、おちかのライバルとなる?

    曼珠沙華:曼珠沙華の影になにが見える?
    凶宅:安藤坂の屋敷。おたかが語る。
    邪恋:おちかの事情、あまり引っ張らず早くも明かされる。
    魔鏡:お福と、超絶美女の姉お彩と、美形の兄市太郎。
    家鳴り:兄の喜一が来る。安藤坂の屋敷ふたたび。対峙することになる。これまでに話を聞いたことにも意味があり「おちか講」結成。今度はおちかが怪談を救う番だ。

    ■メモ

    おちか。三島屋伊兵衛(叔父、染物屋)。お民(伊兵衛の妻)。おしま(女中頭)。八十助(使用人)。喜一(兄)。松太郎(微妙な位置づけ)。良介(婚約者だった)。松田屋藤兵衛。おたか。安藤坂の屋敷。清太郎(草履問屋越後屋の跡取り)。お福。お彩(石倉屋の娘)。市太郎(石倉屋の息子)。石倉屋鉄五郎。おかね(鉄五郎の妻)。宗助(石倉屋の奉公人)。清六(錠前職人)。お吉(市太郎の妻)。春吉(おたかの弟)。家守。

    世の中には、恐ろしいことも割り切れないことも、たんとある。答えの出ないこともあれば、出口の見つからないこともある。(p.193)

    病というより、呪いみたいなものでございます(p.292)

    ひとつひとつの話は、忘れられてゆく。(p.460)

  • おちかの過去をこのシリーズ二冊目となる事始で知る。この一から順番に読みたかった。図書館でそこそこ借りおわったら、集めてしまうかも。
    おちかって17なんですね。凄惨な過去があったからか、落ち着いていて忘れてしまいます。
    ホラーと言うより切ない百物語。

  • タイトルに『事始』とある様に、何故この物語が始まったかの「始まり」の物語。
    1つ1つ独立している話の様で、第5話の「家鳴り」に全て繋がって行く。細い糸で編まれた様な一冊で作者の構成力が光る。

  • おそろしい、でも怖いわけじゃない

    辛い目にあい、自分の感情自分の存在を肯定出来なくなってしまったおちかさんが
    預かり先となっている叔父のお店三島屋にて、人が話す奇妙な話を百物語として収集する
    その聞き手を担うことで話は始まる

    話をして話を聞いて荷が解けていく、取り残されてしまった人も登場人物も
    この時代の人情も優しく描かれていて良かったです
    シリーズ物らしいので、次の作品もまたゆっくり読みたい

  • 宮部さんの時代小説好きです。
    ただ怪談系はそもそも好きではなかったので、
    こちらの作品(シリーズ)は敬遠してました。
    ところが、読んでみたら流石でした。
    最後まで楽しんで読めました!お話が面白く、文章も好みなのかも。
    次作も読みます。

  • 短編でありながら、大きな流れの連作である本。
    誰しもが持つ心の陰。若い者の過ち、年寄りの懐の深さ。怪談話の底に流れる人情話に涙しました。
    何度読んでも胸に沁みます。

  • 川崎宿の旅籠の娘おちかは、目の前で起こった惨劇で心を閉ざし、神田で袋物問屋を営む叔父の三島屋伊平衛とお民夫婦のもとに預けられる。気丈にふるまうおちかであったが立ち直れないままであった。ある日、急の用事で三島屋夫婦が不在になり来客の相手をすることに。その来客は庭の曼殊沙華の花を見て取り乱し、秘めていた身の上をおちかに語ることになった。その経緯を聞いた三島屋伊平は、おちかの能力に気づき心を開かせるために、不思議な話をしてくれる語り部を募集することに。そして不思議な、おどろおどろしい話が展開していく。
    個々の話はそれぞで小編となっているが、最後の第5話の「家鳴り」で、おちかの心を閉ざした惨劇とともに全てがまとめ上げられる。

    宮部みゆき時代小説ワールドにはまり、この三島屋変調百物語シリーズに到達したが、どうもこの手のホラー、オカルト系の話は苦手だ。怖いというより、霊の世界を信じない自分としては、死人との会話とかになるとあまりに現実感がなく気持ちが入っていかないのです。SF小説なども現実感がないと言えばないのだけど、割と好きなので何が基準か自分でもわからないのですが、、、
    というわけで、このシリーズは現時点で8巻まで刊行されているようですが、好んでは手を出すことはなさそう。

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著者プロフィール

1960年東京都生まれ。87年『我らが隣人の犯罪』で、「オール讀物推理小説新人賞」を受賞し、デビュー。92年『龍は眠る』で「日本推理作家協会賞」、『本所深川ふしぎ草紙』で「吉川英治文学新人賞」を受賞。93年『火車』で「山本周五郎賞」、99年『理由』で「直木賞」を受賞する。その他著書に、『おそろし』『あんじゅう』『泣き童子』『三鬼』『あやかし草紙』『黒武御神火御殿』「三島屋」シリーズ等がある。

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