おそろし 三島屋変調百物語事始 (角川文庫)

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  • 角川書店(角川グループパブリッシング)
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  • Amazon.co.jp ・本 (496ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041002810

感想・レビュー・書評

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  • 三島屋シリーズの第一弾。
    黒白の間という部屋で聞き手のおちかが客人の話し手から怪談話を聞くと言った内容でした。
    怪談話と言っても実際に話し手が経験した話で、ホラー的な怖さはないですが人間の醜さというか弱さというか違う意味では怖いと思いました。
    最後の方はファンタジーのような展開になっていき、別々の話が合わさっていくんですが、ちょっと強引に感じてしまいました。

  • 久しぶりの宮部さん。さすが!世界に引き込むのがお上手。百物語、私も全部聞いたら何か起こるの!?って考えてしまったりして。怖くなったら99話でやめておこう。何も考えずにシリーズものに色々手を出してしまっており、若干迷子ですが、事続、また夏の季節に読みたいな。

  • <三島屋変調百物語事始>シリーズ第一作。
    久しぶりの再読。
    改めて読んでみて、宮部さんはやはり、人間の表立った厭らしさではなく、むしろ無意識レベルの狡さや悪どさ、汚さを描くのが上手いと感じる。
    表立って誰かを攻撃するのではなく、心の奥底でそうなれば良いとどす黒い願いを持ってしまったり、相手が分かっているものと決めつけて相手の心のことなど何も考えていなかったり、なんとなく悪いとは思っていながらも改めることをしなかったり。

    初読の時にはそれほど気にならなかった、おちかの心の持ち様というものにも今回は気になった。
    家守の『あなたは私なんぞが思っていたより、ずっと冷たいお人だった』というセリフも今回は腑に落ちる。
    「魔境」の話を聞き終えて、お民から忘れ去られたかのように語られなかった脇役の人々のことを指摘されて、同じく全くそこに思い至らなかった自分にハッとするおちかに空恐ろしいものを感じる。
    旅籠を営む家に生まれて、幼い頃から女中たちと同じように働きつつも、その心持は女中たちや飯盛女たちとは全く違う。やはりそこは『お嬢さん』なんだろうなと思う。
    おちか自身の事件にしても、もちろん松太郎や良助にも問題はあったが、改めて読んでみると、おちかの立ち位置は何とも曖昧で狡く感じる。
    とここまで書いてしまうと、おちかに対してかなり意地悪だろうか。
    家守に自分の心持を指摘されたおちかは続編以降でどう変わるのか、そこを中心に再読していきたい。
    そして家守が同じく指摘した良助はどうなったのか。無事に成仏したのかどうか。

  • 宮部さんの現代ものはあらかた読み終わり、残るは時代小説だけに。とはいえ、とんでもない著作がありますけども……。

    宮部さんの本を読む度に感じるのが、「なんて語る力が強いんだろう」ということ。
    物語で扱われるテーマは決して身近なものとはいえず、文量もずっしりとあるのに、いつしかぐいぐいと引き込まれてゆく。だからこそ何度も、宮部さんの本を手に取ってしまうのだと思います。
    そんな宮部さんの「語る力」と、「百物語の聞き手」はまさにぴったりの要素ではないでしょうか。
    最初に収められた「曼珠沙華」はふむふむと読み進めていたのに、続く「凶宅」では背筋がゾゾゾ……。終わってみればこれが最後の舞台にもなっていますから、それだけ気合が入っていたのかもしれません。

    そして聞き手である「おちか」の成長ぶりといったら!
    ある惨劇から心を閉ざしていたおちか。最終章ではなんとも頼もしく、その凛とした姿に惚れ惚れしてしまいました。

    私自身怖い話があまり得意ではなく、そういった理由でこのシリーズも避けていたのですが。
    怖いといっても「人間が怖い」系ですし、何よりそれ以上に描こうとしているのは、起こったことをどう解釈するか/どう許すか、という我々生きている人間に共通する命題だったのではないかなと思います。
    これらの出来事を受けて一回りもニ回りも人間として大きくなったおちか。そして某お面屋さんそっくりなお屋敷の家守はまた登場するのか……?
    今後のシリーズでの新たな活躍が楽しみです。

  • ハズレなしの作家、宮部みゆきの江戸・怪談もの。
    おちかの奮闘はさらに続いていく。怖さも盛り上がりもさらに深まることを次巻以降期待したい。

  • 内容(「BOOK」データベースより)
    17歳のおちかは、ある事件を境に、ぴたりと他人に心を閉ざした。ふさぎ込む日々を、叔父夫婦が江戸で営む袋物屋「三島屋」に身を寄せ、黙々と働くことでやり過ごしている。ある日、叔父の伊兵衛はおちかに、これから訪ねてくるという客の応対を任せると告げ、出かけてしまう。客と会ったおちかは、次第にその話に引き込まれていき、いつしか次々に訪れる客のふしぎ話は、おちかの心を溶かし始める。三島屋百物語、ここに開幕。

  • 4年ぐらい前にNHKで、
    この作品のドラマを観て、
    かなり面白かったので原作も
    読んでみたいと思っていたことを、
    つい最近思い出し読了。
    やはり、やはり原作も面白い。
    江戸の町に迷い込んだような、
    丁寧な描写が余計に恐ろしいものを
    浮かび上がせる。もののけも不浄の魂も、
    人の業によって作り出されるのだから、
    人をきちんと描かないと怖さは伝わらない。
    あの世とこの世の受け渡しのあの番頭風情の
    化けものがこれからも現れてくるのか、
    次の『あんじゅう』『泣き童子』『三鬼』
    『あやかし草紙』を読むのが楽しみです。

  • 宮部みゆきさんは上手だな。文豪の様な美しい文章を書くわけではない、初期東野圭吾の様にうーん…と考させられるヘビーな問題を投げかけるわけでもない。
    誰でもが抱える心の闇を浮かび上がらせるのが、上手いのかな?

    心に傷を抱えたおちか。最初は無理やりおしつけられた百物語の聞き手。聞いているうちに、「人に聞いてもらう」という効能を知り、誰にも言えなかった心の枷を語りだすおちかの再生の物語。百話終わった時には、悪いことが起こるはずなのだけれど、そこをハッピーエンドに持って行ってほしい。おちかは、そんなすごく友達になりたいと思うタイプではないけどね。

  • 時代物。全五話からなる怪談の連作。主人公は17歳の少女、おちか。彼女はある事件で心に大きな傷を抱えたため、袋物屋「三島屋」の叔父夫婦の元に身を寄せることになる。
    そこで、叔父の提案で、店に訪ねてくる様々な客の話の聞き役をすることに。(この設定が、おちかが江戸時代のカウンセラーのようで面白い。)
    導入の「曼珠沙華」では、まず話の導入が上手い。花の中にある顔を見るという語り手のぞくっとする話の内容には引きつけられる。「凶卓」「魔鏡」はさらにぞくっとさせられる。そしてラストはどれも悲しい。
    第三話で、やっとおちかの過去が語られる。そこでようやく、おちかの心の闇を知ることになり、物語全体のキーとなっていく。
    語り手たちは、おちかに話すことで、救われていく。それと同時に、おちかも少しずつ心が癒されていく。
    物語の流れは素晴らしい。章ごとに単発でひとつの事件が語られ、それらが何らかの形で関わりあっていく。読みやすく、また徐々にキャラクターたちへの愛着が不思議と湧いてくる。しかし、ラストの章が個人的に残念。今まで出てきたキャラクター達が一気に出てきてカオス状態。。。しかも小出しにしていたファンタジーもここで全開になり、テンションの変化があまりにも激しいのだ。
    ただ、ハッピーエンドで良かったな。
    お気に入りの一文はこちら。
    「子供時代に戻ったような有様で、口先で押し合いへしあい、話の骨を折ったり互いの言葉におっかぶせたりで、かしましいことこの上ない。掛け軸の恵比寿様が釣り竿をしまい、鯛を小脇に、耳をふさいで逃げ出してしまってもおかしくなかった。」
    おちかと喜一が三春屋で再会し、お互い詰まっていた怖れを涙で流しきってしまったあとの兄妹のシーン。物語全体は重く不吉なのに対し、ここだけは飛び抜け明るく家族の温かさ、兄妹の絆をストレートに感じさせる。ここが私的にクライマックス。電車で読みながら涙をこらえるのが大変だった。

    会社のチームで、課題図書を持ち込み、みんなで交換してレビューする、という企画を発足した。もちろん私が図書委員長。エクセルのフォーマットまで作ってしまった。
    早速一冊目の先輩の本を読んでいるところ。色んな人の推薦本が読めるのはとても楽しみ!

  • 連作短編5作。
    やはり一番恐ろしいのは人なんだな。
    ライトでファンタジック、さすがはストーリーテラー。
    続編もあるみたいなので楽しみ。

著者プロフィール

1960年東京都生まれ。87年『我らが隣人の犯罪』で、「オール讀物推理小説新人賞」を受賞し、デビュー。92年『龍は眠る』で「日本推理作家協会賞」、『本所深川ふしぎ草紙』で「吉川英治文学新人賞」を受賞。93年『火車』で「山本周五郎賞」、99年『理由』で「直木賞」を受賞する。その他著書に、『おそろし』『あんじゅう』『泣き童子』『三鬼』『あやかし草紙』『黒武御神火御殿』「三島屋」シリーズ等がある。

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